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NGO、常在戦場

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NGO、常在戦場
大西 健丞
スタジオジブリ
¥ 1,575


2002年、アフガン復興支援会議に鈴木宗男氏の圧力で出席を認められず不当さをマスメディアに訴えて一躍有名になったピースウィンズ・ジャパンの代表の大西氏による著作。2006年刊行です。

不勉強ながらNGOの実態はあまり知らなくて、本書によりNGOが具体的に何をしているのか、その存在意義は何なのか、が非常によく分かり、勉強になりました。

例えば、NGOが人道援助に有効な理由としては以下のように書いています。

イラクで自衛隊がやろうとしているのは、(中略)「人道援助」だという。軍隊組織が人道援助というのは、どう見ても得意分野だとは思えない。たとえば道路や橋を修復するなら、自衛隊よりも地元の建設業者に任せた方がスムーズにいく。病院や水道施設をつくるにしても、NGOの方が何十倍もコストパフォーマンスのいい仕事ができる。 NGOは現地スタッフを何十人も雇うから、事業のコストを抑えられるし、彼らのネットワークを生かして、危険を未然に防ぐために重要な一次情報を得ることもできる。現地の人にとっても雇用機会というメリットがある。

つまり、国や軍隊ではできないことを低コストかつ迅速に行なえるのがNGOのメリットということになります。

また、現場での仕事の行なわれ方は次のような形になっているようです。

世界各国からたくさんのNGOが集まる現場では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが中心になってミーティングを開き、地域や分野ごとに支援の取りまとめ役となる団体を決めていく。コソボでは人や物を一気に投入できる欧米のNGOにその役割を独占された。資金力や交渉力も不十分だったため、苦労して練り上げてきた家の屋根修復のプロジェクトを他の団体にさらわれて、悔しい思いもした。

やはりNGOとしては、歴史のある欧米が圧倒的に強いらしいのですが、現場でこういった激しい競争が行なわれていることもよく知らなかったので、非常に新鮮でした。日本で国際支援というとODAのイメージが強く、ODAというと利権の固まりという印象すらありますが、本書を読む限りではありますが、NGO同士が競い合うことでサービスの向上が行なわれていて、非常に健全だなと思いました。

アフガン復興支援会議の件についても、かなり詳細に書かれていて、最後には、

私自身、あのころは無我夢中で、不当な圧力に負けてなるものかという思いばかりが先に立った。ありていに言えば「窮鼠猫を噛む」というせっぱつまった状況で、政策論の土俵に上がる余裕もなかった。もう少しNGOや私自身に実力がついていれば、世論の盛り上がりを追い風として外交や援助に関する本質の議論を深められたのに、と思うと、内心忸怩たるものがある。いつかこの「宿題」に本腰を入れて取り組めるよう研さんを積むことが、貴重な経験をさせてもらった私の責務だと思っている。

と書いています。個人的にも、事件については、なんだかよく分からないなという印象だったので、こういうこと(想い)だったのか、と思いましたし、このように謙虚に次を考えられるのは純粋にすごいなと思いました。

NGOの世界はまさにグローバルでピースウィンズ・ジャパンも世界のNGOを競争しています。ビジネスやスポーツの世界だけでなく、NGOという世界でも日本から世界に挑戦している人たち(団体)がいるのだなと思い、非常にうれしくなりました。何かしらできることがないか探っていきたいと思います。

国際協力NGO ピースウィンズ・ジャパン|peace winds Japan

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