台湾自転車メーカーの劇的成功ストーリー「銀輪の巨人」

台湾にある世界的な高級自転車メーカー「ジャイアント」の劇的な発展を追ったドキュメンタリー。初めは平凡な自転車メーカーが、大手へのOEM提携により技術力をつけ、オリジナルブランドを立ち上げていく成功物語で、非常にドラマチックでおもしろいです。

一方で、一時期は世界を席巻した日本の自転車メーカーがママチャリ文化から抜けだせず衰退していく様も描かれていて、日本の電機メーカーなんかを連想させて少し悲しくなりました。

それでも、この物語からは、今後日本の製造業がどのように発展していくべきかへの指針が示されていると思います。ぜひその辺りの業界の方に読んでいただきたい作品です。

<抜粋>
・台湾の自転車輸出額はここ10年、一貫して右肩上がりを続けている。 輸出額は2002年の5億米ドルから、2011年には16億米ドルと3倍以上になった。輸出台数のほうは2002年と2010年との間はともに400〜500万台程度で、ほとんど変わっていない。 これは、自転車1台当たりの平均輸出単価が大きく跳ね上がったためで、2002年は124米ドルだったのが、2011年には380米ドルに達している。
・ジャイアント自身の業績の伸び方はもっと激しい。 1999年に319万台を売って総売上高は118億台湾ドルだったが、2011年には577万台を販売し、総売上高は474億台湾ドル(注:約1250億円)にふくれあがっている。営業利益からみた地域別の貢献度では、ヨーロッパが27%、北米が23%、中国や日本、台湾などのアジアが40%と世界すべての土地で売れており、特にロード車やマウンテンバイクなど中・高級車の自転車業界において、ジャイアントは紛れもなく世界トップの完成車メーカーとして君臨している。
・「うちの自転車はどの国に行っても、マスマーケット(量販店など)では買えません。マスマーケットはどうしても販売オンリー、販売優先になってしまう。アフターケア、アフターサービスをやってくださらない。しかし、自転車は乗ったら必ず修理が必要な乗り物であり、自転車産業にはアフターサービスがなくてはならない。だから、専門店以外ではジャイアントは買えないし、ジャイアントの自転車にはアフターサービスが必ずついてくる、という大前提を一度も崩しておりません」
・(注:ブリジストンサイクル社長が、1996年に語った)「現地メーカー品の中心価格が600元(1元=13円)なのに対し、当社の中国向け製品は800元程度で高い。東南アジアには中国製品が浸透しており、市場開拓は不可能に近い」 現地メーカーの作っている製品との価格差が10倍あるならともかく、800元に対して200元の差しかないのならば、品質が良いものを作って差別化していくことは可能ではないだろうか。その気概もなければ、長期的に中国という巨大人口を持っている潜勢的なマーケットを開拓していくという戦略もまた感じられないコメントである。