純粋な起業家とは何かを知る「起業家」

サイバーエージェント社長藤田さんの新作。僕がちょうどウノウで会社をやっていた時期とほぼ重なる時期ですごくリアルタイム感があっておもしろかったです。全体的に苦境から成功への物語にも関わらず暗いトーン。藤田さんが愕然としたり、孤独感を告白したり、嫉妬に駆られたりしている姿が正直に告白されています。

僕は起業家である自分を一つの自分というように捉えていますが、藤田さんは起業家であることがすべてというのがよく分かって印象的でした。起業家だけであろうとすると、やはり数字が重要であるし、他社と比べたり、孤独感も感じるだろうと思います。

僕も起業家としては感じます。が、そうでない自分の部分も大きいので、そこまで強く孤独感に苛まれたり、嫉妬したりしないんだろうなと思いました。

そういう意味で、藤田さん=起業家なので、「起業家」というタイトルはまさにぴったりだなと思いました。純粋な起業家というのはどういうひとなのかを知りたい方にオススメです。

<抜粋>
・しかし、赤字企業の経営者で、株価を低迷させ、社会的な評価も落としていたこの時期、将来を語ろうにも、誰一人として私の話に耳を傾けてくれないというのが現実だったのです。 何を言ってもそれは泣き言にすぎませんでした。 将来への道を探し続ける時、私はいつでも一人きりでした。
・メディア事業をやると言っても、自分のキャリア上、メディア事業の実績がない。実績がないのに自分でやらず人任せ、人任せだから自信を持って周囲を説得することもできない。「何かがおかしい」と思いながら手を打てない。 なにもかもが中途半端でした。
・未知の分野で経験者がいないにもかかわらず、その頃多くの人が信じていた、 「既存の業種での経験が、未熟なネット業界で活きる」 という考えは、先行きが見えず、不安な世界ではもっともらしく聞こえました。 しかし、現実はむしろ逆でした。
・孫社長や三木谷社長は、大先輩だし焼き餅を焼く気にもなりません。でも堀江さんは違う。同世代だし実績も同じようなものなのに。 しかし、嫉妬してみたところでなんの足しにもなりません。 私は起業してから初めて、同世代のライバル経営者に引き離され、置いていかれるような感覚を味わいました。
・会話の中で、その女性社員がプライベートのブログはアメーバではなく、他社のブログを使っていたことが判明しました。 この事実が分かった瞬間に私は愕然としました。 いえ、腹が立ったのです。 アメーバのサービスを担当している人間が、アメーバを使っていなくて、ユーザーにとって良いものを作れるはずがありません。
・その頃の私は、なるべく社内でイライラした姿を見せないようにしていたつもりなのですが、そのストレスからか、夜は浴びるように酒を飲み、眠りにつく直前まで自宅で葉巻を吸い続ける毎日でした。 どんなに遅く帰宅してもそこから酒を葉巻をやり始め、頭が朦朧としてくるのを待ちました。仕事のことを考えると怒りや焦りで頭が冴えてしまい、まさに気絶するように頭のスイッチが切れないと眠れなかったのです。
・黒字化した時、私の胸に去来した想いはただ安堵感だけでした。 何か達成感のようなものが湧き上がるのだろうか、とも思っていましたが、特別な感情はなく、その時にはもう次の目標のことが頭の中の大半を占めていました。