メタップス創業者が描く「未来に先回りする思考法」

先日上場したメタップス創業者で社長の佐藤航陽氏が考え方をまとめた作品。佐藤さんとは同じ業界で付き合いもありますが、佐藤さんの今の頭の中が分かって非常に勉強になり、かつおもしろかったです。

タイトルにある「未来に先回りする思考法」というのは

もし何か新しいことをはじめるのであれば、ルールメーカーがまだ存在していない領域を選ぶことをおすすめします。当時のシリコンバレーのように、すでに多くの人から名指しされるようなフィールドにこれから飛びこむようでは、アクションが一歩遅れている可能性があります。

リアルタイムの状況を見ると自分も含めて誰もがそうは思えないのだけれど、原理を突き詰めていくと必ずそうなるだろうという未来にこそ、投資をする必要があります。あなた自身がそう感じられないということは、競合もまたそう感じられないからです。

等と書かれています。が、実際のところはこれがかなり難しい。何が未来にも有効な「ルール」かなんて分からないし、「原理」も分からないからです。

誰がいつ実現するかは最後までわかりません。しかし、何が起きるかについては、おおよその流れはすでに決まっています。人が未来をつくるのではなく、未来のほうが誰かに変えられるのを待っているのです。適切なタイミングでリソースを揃えた人間が、その成果を手にします。

実際のところGoogleもSNSが来ると思ってGoogle+とか作っていたけども、Facebookに惨敗しています。さらに言えば、FacebookがいなければGoogle+がFacebookの代わりになったかすら非常に怪しいと思っています。

つまり、GoogleやFacebook、Appleが同じような未来を描いていようが、彼らの思う通りにならないで、結果無名の企業から次のGoogleやFacebookが誕生する。

むしろタレブが「ブラック・スワン」で言うように、何かが起こった途端に世界が(「ルール」や「原理」も含めて)一変する、が、何も起こらなければずっと何も変わらない、というのが僕の世界観です。

だから個人的には、個人の裁量による未来の変動はかなり大きいと思っていて、自分が信じる未来、こうあってほしいという未来を作るためにモノ・サービスを作る意味は大きいし、やりがいもあると思っています。

というわけで、すべて賛同するわけではありませんが、佐藤さんのあらゆる方面への幅広い知識や世界観は非常におもしろくて勉強になりました。もちろん僕も自分が正しいと思っているわけでもありません。

P.S.いきなり途中で名前を挙げていただいてて驚いたんですが、

以前、ウノウという会社を起業したのちアメリカのZyngaに売却し、今はメルカリというサービスを展開している山田進太郎さんに、なぜIT業界に入ったのかを聞いたことがあります。彼の答えは「当時は、他の業界よりも優秀な人が少なかったから」というものでした。

実際はインターネットビジネスやってみたいというのが第一だったんですが、1999年当時って僕の周りでもみんな大企業に就職するのが当たり前で、スタートアップに行くひとが本当にいなかったんですよね。僕は頭も良くないので普通に優秀な人たちと同じ勝負をするのではなくて違う山に登ろうと思った、というのがこの話ですね。

<抜粋>
・情報の伝達コストが高く、スピードが遅かったために、様々なハブをつくり代理人を立てて「伝言ゲーム」をしていたのが近代の基本構造です。必然的に、ハブの中心には権力が集中するようになります。 実は今私たちが生きている社会も、多くはまだ「情報の非対称性」を前提に運営されています。
・共有することのメリットや楽しさがより大きくなっていく以上、プライバシーの概念もそれに伴い今よりもゆるやかになっていく可能性は高いでしょう。
・もともと、国家も企業も世の中の「必要性」を満たすために誕生した組織であり、異なるのはそのアプローチだけです。国家は法律を執行し、公共サービスを提供することで国民の「必要性」に応えます。企業は、同じことを自社の製品やサービスを通じて行います。
・アメリカには、人を使った諜報活動を担うかの有名なCIAの他に、情報技術による諜報活動を行うNSAと呼ばれる組織があります。NSAは日本での知名度こそCIAに劣りますが、人員10万人、5兆円というCIAの4倍以上の予算規模を持つ巨大組織です。
・経済的な活動には「公益性」が求められるようになり、政治的な活動にはビジネスとしての「持続可能性」が求められる。こうなると、経済と政治の境界線はどんどん曖昧になってきます。政治は経済化し、経済は政治化し、その境界線もまた融解しはじめているのです。
・結局は、資本が重要な社会でも情報が重要な社会でも、そのシステムの根幹を握る存在の力が強まってしまいます。それをどのようにコントロールしていくかが、今後社会全体の課題になってくるでしょう。
・新興企業でいえば、本書執筆時ではNextdoorにも注目が集まっています。Nextdoorはネット時代のご近所付き合いを再現するソーシャルネットワークサービスです。近隣の人たちと、いらなくなった家具からイベント情報まで、様々なモノや情報を共有しあうことができます。Nextdoorは2015年3月に資金調達をしましたが、そのときの企業の評価額は10億ドルを超えています。2010年の創業でありながら、いまや、全米で4万を超える地域で普及しています。
・こちらの過去の行動を学習し、自分に適した情報を提供してくれるサービスは、とても楽だし、便利です。しかし、パーソナライズの技術は「思ってもみなかった発見」は提供してくれません。過去の行動履歴からパーソナライズをしていくことは、本当の意味での「最適化」をむしろ遠ざけてしまう危険性があるのです。
本当に大きな成果を上げたいのであれば、真っ先に考えなければいけないのは今の自分が進んでいる道は「そもそも本当に進むべき道なのかどうか」です。
・短期間で大きな企業をつくりあげた企業経営者に会うと、意外な共通点があることに気付きます。実は、彼らが、コミュニケーション能力が高く、リーダーシップや人望にあふれるスーパービジネスマンであることは稀です。そのかわり、彼らが共通して持っているのが「世の中の流れを読み、今どの場所にいるのが最も有利なのかを適切に察知する能力」です。
・自分の経験からいえば、いきなりグローバルに事業を展開した当時は、自分が成功するとはとてもではありませんが、確信できませんでした。今ならどの国がどのぐらいの市場規模で、どのように構成されているか、どう攻略すべきかをすぐに頭の中に思い浮かべることができますが、当時は何もわかりませんでした。それでもなぜ足を一歩踏み出せたかというと、自分の認識を信用していなかったからです。今の自分の狭い視野によってつくられた認識のほうが「間違っている」と考えていましたし、今だってそう考えています。
・もし何か新しいことをはじめるのであれば、ルールメーカーがまだ存在していない領域を選ぶことをおすすめします。当時のシリコンバレーのように、すでに多くの人から名指しされるようなフィールドにこれから飛びこむようでは、アクションが一歩遅れている可能性があります。
・以前、ウノウという会社を起業したのちアメリカのZyngaに売却し、今はメルカリというサービスを展開している山田進太郎さんに、なぜIT業界に入ったのかを聞いたことがあります。彼の答えは「当時は、他の業界よりも優秀な人が少なかったから」というものでした。
プレイヤーは、逆立ちしてもルールそのものにはかなわないからです。本当に一番になりたいのなら、自分自身がルールをつくり、誰もいないフィールドに飛びこんでください。
・リアルタイムの状況を見ると自分も含めて誰もがそうは思えないのだけれど、原理を突き詰めていくと必ずそうなるだろうという未来にこそ、投資をする必要があります。あなた自身がそう感じられないということは、競合もまたそう感じられないからです。
・誰がいつ実現するかは最後までわかりません。しかし、何が起きるかについては、おおよその流れはすでに決まっています。人が未来をつくるのではなく、未来のほうが誰かに変えられるのを待っているのです。適切なタイミングでリソースを揃えた人間が、その成果を手にします。