深化と探索「両利きの経営」

「両利きの経営」とは、既存事業において「深化」を、新規事業において「探索」を実施するという両方ができているという状態のこと。抜粋すると

なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為が「探索」である。探索によって認知の範囲が広がり、やがて新しいアイディアにつながるのだ。しかし一方で、探索は成果の不確実性が高く、その割にコストがかかることも特徴だ。

一方、探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深掘りし、磨き込んでいく活動が「深化」である。深化活動があるからこそ、企業は安定して質の高い製品・サービスを出したり、社会的な信用を得て収益化を果たすことができる。  このように、不確実性の高い探索を行いながらも、深化によって安定した収益を確保しつつ、そのバランスを取って二兎を追いながら両者を高いレベルで行うことが、「両利きの経営」である。両利きの経営が行えている企業ほどパフォーマンスが高くなる傾向は、多くの経営学の実証研究で示されている。

となり、クレイトン・クリステンセン著「イノベーションのジレンマ」よりも、実践的だという触れ込みで、確かに豊富な事例を元に解決策まで提示しようとしており、意欲的な内容になっています。

ただ解決策としては、明確な戦略的意図、経営陣の保護や支援、対象を絞って統合された適切な組織アーキテクチャー、共通の組織アイデンティティが必要ということで、様々な実例を示してくれてはいるもの、理論化まではいま一歩かもしれません。しかし、各社の取組みは失敗例も含めて非常に勉強になります。

個人的には、社内でやはりみんな同じという公平性を保とうとする力は非常に強いわけですが、深化と探索では必要とされている組織の能力が違うから、ダブルスタンダードを許容し、矛盾を抱えながらも協力し合うように強いリーダーシップをとるべき、というのは目から鱗でした。よく考えれば極めて当たり前なのですが、、、

既存事業がありながら、新規事業をどう立ち上げればよいかを考える立場の方には非常にオススメできる一冊です。