2020振り返り+本ベスト5

宮古島(かろうじての旅行)

あけましておめでとうございます。

昨年のポストを見返すと、都市スケール(下記紹介の「ブリッツ・スケーリング」での定義)となった会社経営に七転八倒していたのだったな、と思い返されました。その中で、2020年は「結果を出す」をテーマにしてきました。

しかし、年初にはまったく予想だにしなかったコロナという前代未聞の荒波に翻弄された一年になりました。

メルカリでは、3月まで特にUS、メルペイで大きく投資をしてきました。1,2月にはOrigami買収やNTTドコモ提携なども実施しました。3月になりコロナ影響でアクティビティが落ち込み始めると、連結赤字であるメルカリとしては企業存続を第一に、コストセーブなどで筋肉質な体質への転換を図りました。

4月に入り、日本の緊急事態宣言やUSのロックダウンに伴い在宅時間が増えると、逆に日米メルカリのGMV(流通額)は急増しました。特にUSは、継続的なプロダクト改善と1-3月の大規模なマーケティングなどの種まきしてきたことが実ったと考えています。GMV急増に加えコストセーブも相まって、4-6月は上場後初の黒字化という結果になりました。

メルカリは6月期決算のため春に経営体制、ロードマップ、事業計画、予算などの更新をしていくのですが、非常に見通しが悪い中で計画を立てることになりました。数字としてはコンサバティブな計画を立てましたが、コストセーブだけでなく、人事制度刷新、ガバナンス改革(社外多数の取締役会導入など)、プロダクト面では引き続きのデータ基盤整備・マイクロサービス化、東大と社会連携研究開始などを推進してきました。ロードマップ経営も強化され、より力強い筋肉質な組織になってきました。

一方で、世の中もコロナ影響でDXが進むなど急激に変化の兆しが出てきています。メルカリ周辺にも、様々なビジネス・チャンスが見えてきていて、いくつかの新しい取り組みを始めることを決め、年末に株式会社ソウゾウの再設立も決めています。

そんな中で、国内ではマスク転売問題などで世の中のお騒がせし、大変申し訳ありませんでした。メルカリは毎月1,700万人以上のお客さまに使っていただいていますが、これを2倍3倍と伸ばしていくためには、社会的な責任を果たし「循環型社会の実現のために必要不可欠な存在になる」必要があると考えています。サステナビリティ・レポート公開などSDGsへの取り組みも進めていますし、「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」を設置し、議論を重ねており、近々方針をお知らせできる予定です。

コロナによって、三密が難しいなどで多大な影響を受けた産業もありますが、それ以外では「来たるべき未来」が早く来たと感じています。結果、未来へ強く賭けていたメルカリは「結果を出す」ことができました。特にUSの月間GMV $100Mというのは、ずっと追いかけて来た目標だったため、大きなマイルストーンになりました。

これもメルカリ社員のみんな、取引先など関係者の皆さまの不断の努力の結果であり、日本・US中心に全世界で利用していただいているお客さまへは感謝しかありません。誠にありがとうございました。

個人としても、コロナにより今まで当たり前にしていた行動が制限される中で、様々なことが浮き彫りになり、本当に大切なことは何かを考えるよい機会になりました。仕事でもプライベートでもやりたいことはできるうちにやっておこうと改めて強く思いました。

2021年は「足るを知る」をテーマにします。「足るを知る」は老子の言葉で、「身分相応に満足せよ」という意味とも言われますが、僕は、前後の文脈から、もっと積極的に「満足することを知れば、周囲への感謝と共に、本来の自分を知り受け入れることができる。そうすればやりたいことへの努力を続けながら自らに打ち勝ち、豊かな人生を送ることができる」というような解釈をしています。

今年は、さらに大きな変化のある一年になろうかと思いますが、逆に言えばチャンスも多い一年になるはずです。ビジネスとしては、3本柱(メルカリ日本、US、メルペイ)を完全に確立させグローバルなテックカンパニーになること、加えて、新しいことにもGo Boldにチャレンジし、4本目の柱を見出すことを目標にします。プライベートでは、残念ながら昨年途絶えてしまった毎年新しい国に行くことを復活させたいです。

2021年もよろしくお願いいたします。
皆さまにとっても、素晴らしい一年になりますように!!

以下で、恒例の2020年に読んだ本ベスト5を紹介します。

第5位 世界最強のコーチングを知る「1兆ドルコーチ」

人がすべて どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネジャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。われわれには成功を望み、大きなことを成し遂げる力を持ち、やる気に満ちて仕事に来る、とびきり優秀な人材がいる。優秀な人材は、持てるエネルギーを解放し、増幅できる環境でこそ成功する。マネジャーは「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきだ。

世界最強のコーチと言われるビル・キャンベルのコーチングについて、膨大なヒアリングを元に解説しています。結構具体的なのですごく勉強になりました。優れたマネージメントとコーチングはもはや不可分な存在になってきています。僕自身も秋から数ヶ月コーチをつける取り組みをはじめています。

第4位 ほとんど理解されていない「良い戦略、悪い戦略」

戦略を転換し資金や人材やエネルギーや注意をどこか一カ所に集中しようとすれば、会社そのものに倒産の危機が迫っているようなときは別として、必ず不利益を被る人が出てくる。したがってこの人たちは、戦略の転換に頑固に反対する。大きな企業の場合、これは避けられない事態と言える。戦略についての話し合いがいくら行われても、どれほど説得されても、この人たちは変化を望まない。そしてリーダーが選択に踏み切れず、新しい戦略を導入することができないと、八方美人型あるいは当たり障りのない戦略もどきでお茶を濁すことになる。そのような戦略もどきが発表されたら、それはリーダーに困難な選択を貫き通す強固な意志や政治力が欠けていることの証拠と言える。盛りだくさんの目標を掲げる企業では、選択が行われていないと考えてよい。

「戦略」とは何か、を深く考えさせられる良書。経営思想家として大学やコンサルタントとして活躍しているリチャード・P・ルメルトが、様々な事例をもとに良い戦略の作り方を書いています。良い戦略がなければ、まぐれ当たり以外、成功するのは難しいので、特にスタートアップに関わるひとには必読かなと思います。

第3位 ディズニーの最近の歴史「ディズニーCEOが実践する10の原則」

創造のプロセスを管理するということは、それが科学ではないと理解することからはじまる。すべては主観であり、何が正しいかはわからない。何かを生み出すには大きな情熱が必要で、ほとんどのクリエイターは自分のビジョンや流儀が疑われれば、当然ながら傷つく。私は、制作側の人たちと関わる時には、このことをいつも心に留めている。意見や批評を求められたら、制作者がそのプロジェクトに心血を注ぎ込んでいることや、彼らの人生がこの作品にかかっていることを、極端なくらい気にかけるようにしている。  だから決してはじめから否定的なことは言わないし、制作の最終段階でもない限り、細かいことも言わない。正確で 俯瞰 的な判断力がないことを隠すために、どうでもいいような細かいことにこだわる人は多い。小さなことからはじめる人間は、小さく見える。大筋がぐちゃぐちゃなら、小さなことを直しても意味がないし、重箱の隅をつつくのは時間の無駄だ。

直近までディズニーCEOを務めていたロバート・アイガーの自伝。生い立ちから、どのような仕事をしてCEOに上り詰めたのか、CEOになってから戦略をどう根付けてきたかやピクサー、マーベル、ルーカス・フィルム、20世紀フォックスなどなどの買収などの詳しい意図や経緯がかなり詳細に描かれており、非常にエキサイティングで、おもしろいです。グローバル・カンパニーの経営を赤裸々に知ることができます。

第2位 コーポレートガバナンスとは何か「決定版 これがガバナンス経営だ!」

失敗に対して、無限の責任を負うからこそ、うまく行ったらアップサイドを全部取れるという構造が、本来は公平で倫理的な制度である。株式会社は、アップサイドは無限で、ダウンサイドは有限の、ある意味、お気楽で無責任な制度である。  すなわち、非倫理的なリスク、モラルハザードを内包するものとして例外的な存在であり、本来であれば、厳格に制限され、統制されるべき存在なのである。この潜在的な非倫理性こそが、株式会社においてコーポレートガバナンスが重要である根源的な背景の一つなのだ。このことは以下の株式会社の歴史にも符合する

コーポレートガバナンスは、不祥事防止などのコンプライアンスの確保だけではなく、中長期的に企業価値を向上させるためにある、ということを分かりやすく解説しています。メルカリも今年9月、社外取締役を多数とする取締役会改革を行いましたが、本書から学んだものも大きかったです。

第1位 スタートアップの急激な成長で何が起こるか「ブリッツスケーリング」

スタートアップのブリッツスケーリングは単純な外挿法のプロセスではない。みすぼらしいガレージから出発した会社の規模が1000倍になり、モダンな高層ビルに本社が移ってめでたしめでたしというストーリーではすまないのだ。ブリッツスケーリングによる成長には大きな節目がいくつもあり、そのつど会社は質・量とも根本的に変化しなければならない。ドロップボックスのドリュー・ハウストンは私にこのことを「新しい駒が次々に追加され、次元も増えていくチェスのようなものです」と説明した。  物理学では、よく相変化ということを言う。物質は温度、圧力の変化に応じて全く違う状態に変わる。氷は溶けて水となり、水は沸騰して蒸気になる。  スタートアップもある状態から全く異なる状態に相転移することがある。相が変化すればことは同じように運ばない。氷が溶ければスケートはできない。水が水蒸気になれば小石を投げて水面で水切りするわけにはいかない。スケールアップが次のフェーズに達すると、以前のフェーズで有効だったアプローチやプロセスが無効となる。

Linkedinを創業し数兆円まで育て上げMicrosoftに売却し、Facebookなど含め数々の投資でも知られるリード・ホフマンが、スタートアップが急拡大する際に何が起こり、どう対処すべきかをかなり具体的に書いています。ものすごい既視感のある内容で、ある程度の規模感になってきたスタートアップは必読中の必読です。

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