アフリカ 動きだす9億人市場/ヴィジャイ マハジャン

アフリカで本当に起こっていることを慎重に描いた良書。確かに、日本にいるとアフリカのニュースと言えば、紛争やインフレなどばかりで、地理的に遠いということもあって何だか縁も薄く危険なところという印象を受けるわけですが、実は決定的に問題のある国はそんなに多くなく、非常に力強く経済成長していることが分かり、かなり根本から認識を改めさせられます。本書からアフリカもすぐに中国やインドのような存在になっていき、市場としても世界に組み込まれていくのだなということが分かりました。アフリカ、早いうちに一度は行かないとと強く思いました。

<抜粋>
・驚くべきことに、ジンバブエは新たな投資家を引きつけてもいる。状況の悪化にもかかわらず、海外からの直接投資は2003年の400万ドルから、2005年には1億300万ドルまで増加。企業の時価総額が大幅に下落したこと、そしていずれはこの国も回復するだろうとの考えから、リスクを取る価値はあると多くの投資家が信じたのだ。
・仮にアフリカが一つの国だとすると、2006年の国民総所得(GNI)は9783億ドルになる。インドを上回り、世界第10位の経済規模だ。BRICsのうち中国以外の三ヶ国(ブラジル、ロシア、インド)を凌いでいる。もちろん、アフリカは一つの国ではない。だが、意外に豊かなのだ。
・(セルテス創業者モハメド・イブラヒム)「私はアフリカ人だ。アフリカについては内戦、法秩序の欠落、病気など、悪いことばかりが報道されていると常々感じていた。本当に悪いイメージだし、不当な話だと思う。そう、たしかに問題は多いが、アフリカはとても大きな場所だ。53の国があるうち、深刻な問題を抱えているのは4、5ヵ国くらいだろう。ハルツームだって、行ってみたらそこがスーダンの一部だと聞いて驚くと思うね」 一方、このマイナスイメージは、ビジネスという観点からは必ずしも悪いことばかりではないともイブラヒムは指摘する。「現実と認識の間にギャップがあると、いい商売ができる」(中略)「私はその気になれば立派な大型ヨットや飛行機を買うことだってできる。だが、これは私の義務だ。私たちはアフリカという一枚の大きな織物をなしている。私がアフリカで稼いだ金は本当は彼らのものなんだ」
・アフリカはばらばらの小さな国が集まった大陸であり、ビジネスに求められる「規模の経済」が成り立ちにくいという意見がある。だが、人口1億4000万人のナイジェリアはもちろん、アフリカ諸国の約3分の2がシンガポール(400万人)よりも人口が多い。
・アフリカは全人口の過半数が24歳未満であり、世界的に見ても最も若い市場を有している。人口調査局によると、ヨーロッパの人口が2050年までに6000万人減少すると言われている一方で、アフリカは9億人増えて現在の人口から倍増すると予測されている。
・携帯電話を所有しているアフリカ人は現在1億3000万超。世界で最も成長の早い携帯電話市場だ。
・先進国の視点では、アフリカでの携帯電話の成功が持つ意味を見落としがちだ。というのも、欧米において携帯電話は必需品というよりはむしろ目新しい商品であり、ビジネスツールだった。消費者はすでに固定電話を持っていたからだ。アフリカなど多くの発展途上地域では、携帯電話こそが初めて手に入れる通信インフラであり、零細企業に事業基盤を与え、地方と世界をつなぎ、知識を広める道具になる。一言で言えば、携帯電話は経済発展の根幹なのだ。
・サハラ以南のアフリカ人の半数が1日1ドル未満で生活している、という話はよく聞くが、これも慎重に検証しなければならない。人口密集地域では、五人家族や八人家族が一軒の家に住んでいることが多い。つまり、世帯としては1日5ドルから8ドルを稼ぐことができるわけで、1ヵ月にすればそれは180ドルになる。