賀正+2011年の本

あけましておめでとうございます。

昨年も本当にいろいろな方にお世話になり、ありがとうございました。個人的にも、すごくいろいろな気づきのある年で、よかったなと思います。今年はちょっと新機軸を打ち出して行こうかなと思ってます。

それでは、恒例の2011年の本です。今年も昨年に続いて若干不作だったかなと思いますが、それでもこの5作品は読んでおいて損はないと思います。

2006年2007年2008年2009年2010年はこちらからどうぞ。

5位 小説 盛田昭夫学校
ソニーというベンチャーがどのように発展してきたかが非常にいきいきと描かれています。ソニーがどのように世界ブランドになっていったかは、現在どのように世界的なプロダクトを作るかの助けになると思います。

4位 自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門/森村進
これから徐々に主流になっていくであろうリバタリアニズムについての入門書です。

3位 繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史/マット・リドレー
現代は暗い話題が多いですが、過去どの時代に比べても生活水準はあがっていて、世の中どんどんよくなってますよ、ということがよく分かる本。大きな世界の流れを知ることは、これから何をしていけばいいのかのヒントにもなると思います。

2位 強さと脆さ/ナシーム・ニコラス・タレブ
衝撃の名作「ブラック・スワン」のタレブ新作。「ブラック・スワン」の後を考えているため、考察本になっていて、切れ味は劣りますが、いずれにしても合わせて必読本です。

1位 フェイスブック 若き天才の野望/デビッド・カークパトリック
Facebook本の中では図抜けています。現在の世界でもっとも重要なプロダクトの一つであるFacebookの成り立ちを知っていくのは非常に重要だと思います。

小説 盛田昭夫学校(下)/江波戸哲夫

上巻からの続き

76年 4686億円(14%増)
77年 5128億円(9%増)
78年 5423億円(6%増)
絶対額こそ77年には442億円、78年には295億円と着実にふえていたが、伸び率は68年にトリニトロンが登場してからの数年間の30%〜50%を大きく割り込んでいた。(中略)そこで盛田はいくつもの大きな戦争を戦いながら、たえず目を光らせて次のヒット商品を探していた。(中略)浅井は改良型プレスマンを盛田に渡した。 「どれどれ」盛田はデスクの前のソファーに座り、大きなヘッドフォンを、輝く銀髪の頭に被った。すぐに目をつぶり音楽に聞き入った。浅井の視線の先でテープの交響曲に合わせるように盛田の上半身がかすかに揺れた。やがて目を開け、ヘッドフォンを外して盛田が勢いよくいった。 「これは、いいね」 浅井の心臓がぴくんと跳ねた。 「250万台はいけるぞ」

ソニーは常にヒット商品を狙い続けていました。

「初回の3万台はもし売れなかったら、私が責任をとって会長を辞めます。君らは成果のことは何も心配しないで、思い切り売ることにだけ精力を傾けてください」 出席者は一瞬どよめき唖然とした顔で盛田を見た。その視線を盛田は穏やかに受け止めていた。

ウォークマン発売前は「誰かがイヤフォンをつけていると、耳が遠いのだろうと思われかねない時代」で、販売会社のソニー商事含め懐疑論が非常に多く盛田氏はこう言って反対を押し切きりました。

(USにおけるユニバーサルからのベータマックス訴訟で)いくつかの公開討論会には、盛田もパネラーとして出席した。 盛田はアメリカの市民にも高い人気があり、彼がパネラーとなった会場は、いつも溢れんばかりの人が集まった。盛田は決して流暢とはいえない、しかし誰にもはっきりと聞き取れ、説得力のある英語をしゃべった。 「USAは自由の国です。USAはイノベーションを先端で引っ張ってきた国です。それは世界中の国がよく知っています。そのUSAが、自由も技術革新も否定しては、USAではなくなってしまう」

盛田氏は英語が堪能ではなかったが、中身のあるスピーチでアメリカ人を魅了していました。

(ヨーロッパのソニー従業員の懇親会にて)「私がいまどういう気持ちでソニーという会社のことを考えているか、皆さんにお話しておきましょう」 前例のないことである。会場がいっぺんに静まり返った。 「まず、どんなことであれ、ソニーと関係を持ったすべての人が、そのことによってそれまで以上に幸福になって、ソニー商品を買った人はそのことで生活が豊かになって幸福になり、ソニー商品を売る人は利益を得ることで幸せになる。といったように、ソニーとなんらかの関係を持った人はすべていままで以上に幸せになる。これが私の願いであります」

盛田氏の企業観が分かるスピーチです。

ソニーではすでに64年に国内売上高を海外売上高が上回り、その後も着実にその差は開き、岩城が帰国した76年には国内売上げ1911億円に対して海外売上げが2725億円と1.43倍にもなっていた。

設立から18年で海外売上高が国内を逆転しています。

日本はバブル経済の真っ最中で、どこにもここにも金がうなっていた。ソニーも例外ではなかった。この時期、連結の売上げは左記のようにわずか2年で1兆3500億円も伸ばしてほぼ倍増した。
87年 1兆5948億2600万円
88年 2兆2036億100万円(38%増)
89年 2兆9475億9700万円(34%増)

凄まじい伸び。そして、ソニーはコロンビア買収に乗り出します。

日本語のスピーチを行なうときの盛田は、構成とその論点だけを確認すれば、原稿を作ることなどめったになかった。しかし英語の講演の場合は盛田はいつも丁寧に原稿を準備し、実際に声に出して練習もした。あんなに軽やかで絶妙な盛田のスピーチも、大きなエネルギーと緊張感に支えられていた。まれに盛田は緊張のあまり重要な講演を引き受けたことを後悔し、身近なものに愚痴ることさえあった。「なんだってこんな講演を引き受けてしまったのだ」

スピーチが得意だったが、その裏には必死の努力があったという。

<まとめ>
ソニーも昔はいちベンチャーとして始まり、数々のヒット商品を出し、そのたびに猛烈に業容を拡大していきました。特に戦後10年、設立9年で上場、上場後4年間で売上を10倍にしているのは本当に素晴らしいです。一方で、その裏には数々の苦闘があったんだなというのがよく分かって、すごく共感できます。全般ものすごくおもしろいので、特にベンチャーに関わる人にはオススメです。

上巻はこちら

小説 盛田昭夫学校(上)/江波戸哲夫

一応、小説とあるのですが、ソニーの歴史には忠実に、様々な主人公の視点で生き生きと描かれています。経営という視点で見ると、他社をベンチマークするだけではなく、過去の偉大なベンチャーから学ぶことも重要なのではないかと思います。個人的に非常に勉強になることばかりだったので、抜粋コメント方式で行きたいと思います。

東京通信工業の前身「東京通信研究所」は、45年10月1日、終戦からわずか2ヶ月後に、井深大を中心とした数人の仲間によって設立された。最初の拠点は日本橋の百貨店「白木屋」の三階。井深の知人が使わなくなった配電室を貸してくれたのだ。 当初、彼らは会社の存続のために、電気炊飯器の製造やラジオの修理・改造などを行なっていた。ラジオの修理・改造は戦争中、短波放送を聴くことのできないラジオを強要された多くの人に喜ばれた。

終戦からわずか2ヶ月後に開始。この会社の記事を見て、23歳の盛田は、36歳の井深に手紙を書いて、翌年、東京通信工業が設立されました。

発足したばっかりの東通工は、NHKとは第一スタジオの調整卓などいくつもの取引があった。その関係で井深も盛田もしばしばNHKに出入りしていた。(中略)ある日、井深はCIEの職員からテープレコーダーを見せられ、音を聞かされた。 井深はたちまちその音質のよさに魅了させられ、会社に戻るやいなや盛田にいった。  「テープレコーダーだよ、われわれのやるべきものは。ワイヤーではなく、テープで行こう」

テープレコーダーを発売する前はそこまで傑出していたわけではなかったようで、いろいろな仕事をしていました。

テープレコーダーは東通工の規模を急速に大きくした。 G型の試作機が開発された49年には従業員数87名、売上高3200万だったものが、G型が発売された50年には従業員115人、売上高9700万円、H型が発売された51年には従業員159人、売上高1億5500万円、H型よりさらに小型のP型(ポータブル用)が発売された52年には従業員214人、売上高3億4300万円となった。 つまり従業員は2.5倍、売上高は10倍となった。数字の表面だけをたどればかなり順調に見えるが、製品の開発・製造・改良のために雇った従業員はそれが終われば当面の仕事はなくなるし、開発・改良費を惜しみなく使ったので、東通工の財政にはいつも厳しいものがあった。

最初のブレイクスルーはテープレコーダー。

46年に二十数人で始めた東通工は、わずか六年間で300人近い従業員をかかえるようになっていた。テープレコーダーの開発のために多くの専門家も雇い入れている。その開発が一段落しかけているいま、彼らをどうやって食わせていったらいいのだろう? それができなければ彼らを首にしなければならない。しかし一生懸命に口説いて入社させた者ばかりだ、そんなひどいことはできない。 そう思いつめていたところへトランジスタの話が舞い込んだのだ。25000ドル(注:トランジスタ特許の使用料)という金額は当時の為替レートで900万円になる。サラリーマンの平均月給が1万円台の半ばだから、物価がおよそ20倍になっていると考えれば、現在の二億円に近い金額になる。

6年間で300人近い従業員、そして社運を賭けたこの特許の取得後、トランジスタラジオの開発には3年もかかっています。

この(注:トランジスタラジオTR-55)発売と軌を一にして東通工株の店頭公開が実現することとなり、それらを新聞記者など関係者に発表する一連の日程が決められた。55年7月下旬の暑い盛りだった。

なんと設立わずか9年で上場。トランジスタラジオの発売と同時。つまりほとんどテープレコーダーだけで上場。また上場時の従業員は400人程度。

TR-63(注:小型トランジスタラジオ)は東通工の売上げに大いに貢献した。輸出額の推移はこうである。
 55年 954万円
 56年 6408万円
 57年 3億2876年

海外売上も順調に拡大

トランジスタラジオの大成功に伴い東通工は凄まじい勢いで業容を拡大した。
 55年3月期には、
 売上高、3億5100万円
 利益、4700万円
 従業員、384名だったものが、
 4年後の59年3月期には、
 売上高、33億5000万円
 利益、3億9000万円
 従業員、2124名
 となっている。この4年間で売上高は10倍、利益は8倍、従業員数は5.5倍に急膨張した。

上場後の4年間で、売上10倍、利益8倍、従業員数5.5倍まで急拡大。

「海外要員を求む=SONY」59年秋、新聞にこんなキャッチフレーズの全面広告が掲載された。後世に語り継がれるのは「英語でタンカの切れる日本人を求む」というキャッチフレーズだが、それは翌年の求人広告だった。戦争で疲弊した日本経済は、50年から53年にかけての朝鮮戦争のお陰で急速に息を吹き返し、56年の『経済白書』は「もはや戦後ではない」と高らかに宣言し、間もなく高度成長期に足を踏み入れようとしていた。 海外で活躍できる。それは日本中の志ある若者の気持ちを捉えた。そうした若者が一人また一人と品川御殿山のソニー本社を目指した。

こういう雰囲気の中での海外進出。

「ゴミレターを整理してくれっていわれたんだが、ゴミレターって何ですかね?」 大河内が笑みを浮かべた。 「ご承知の通り、トランジスタラジオが飛ぶように売れていましてね。いま世界中の代理店希望者からインクワイアリー「照会状)が着ているんです。欧米関係のものは次々とはけるんだけど、中近東、アフリカなんてところの分は後回しになってどんんどん溜まっている。それをみんなゴミレターと呼んでいるんだ」

トランジスタラジオはその性能から世界中(アフリカ、中近東含む)から注文が殺到していました。

下巻に続きます

人間における勝負の研究―さわやかに勝ちたい人へ/米長邦雄

将棋棋士の米長邦雄氏による「勝負の研究」。すでに引退済みで、もう70近いはずなのですが、Twitterが話題になったりもしてますね。

ビジネスでは直接ライバルと対峙するということはあまりないわけですが、将棋では一対一の勝負しかありません。そういった中で長年、戦ってきた米長氏の勝負感が垣間見れて、非常に勉強になりました。

特にカンが、その人すべてを「しぼったエキス」であるという考え方や、勝負で勝つためには最善手のみを選択するのではなくて、相手にとって難しい手を打って泥沼に引きずり込む、というのはなるほどなぁと思いました。

30年くらい前の著作なんですが、まったく色褪せていなくて、おもしろかったです。

<抜粋>
・カンというのは自分が好きで必死で取り組んでいないと、働かないものです。嫌いな分野とか、やりたくないなと思っている仕事で、鋭いカンが働いたという話は聞いたことがありません。
・人間にとって大切なものは、努力とか根性とか教養とか、いろいろあります。しかし、一番大切なものはカンだ、と私は思っています。カンというのは、努力、知識、体験といった貴重なもののエキスだからです。その人の持っているすべてをしぼったエキスです。
・遊びが勝負のマイナスになるとは、私は信じません。ひと通りの遊びをしましたが、私の将棋にマイナスになったものはない。一歩ゆずって、最低の感想としても、自分が、それを罪悪感のようなものを抱きながらやった場合はマイナスになるかもしれないが、いわれのない罪悪感など持たなければ、マイナスになるはずがない、とだけは言えます。遊びこそ人生修行の課程の一つなのです。
・私は、難局になると、相手の側に立って考え、一番むずかしい手、一番結論の出しにくい手を指して、相手に手を渡すようにしています。手が広くて、わからなくなるような局面に導いていきます。いわば泥沼に引きずり込むわけです。 相手は困る。私だってわからない。そうすると、弱いほうは余計にわからないので、間違いやすくなる。そして、いっぺんに形勢を損なうのです。
・実戦では、必ずしも最善手ばかりを指せなくてもかまわないのだ、という「雑の精神」を言い換えますと、戦いというのは、相手にどこまでなら点数を与えても許されるのか、つまり許容範囲で捉えていく、という発想です。 要するに、決定的に負けになるとすればどこなのか、そういう感覚で、常に対局に臨めば、勝負はなんとかなる、という勝負感なのです。
・世の中に真実が一つしかない、人間のあるべき姿は一つしかないと考えるのはおかしい。将棋では「こう指しても一局」とよく言います。最善手は常に一手だけで、必ずそれを指すべきだと考えれば、誰も将棋は指せなくなる。世の中のことも、きっと同じでしょう。バランスが片一方に偏りすぎていると見た場合に、私は、少々極端に見えることを言うことがあるのは、何事にもバランスと許容範囲というものを大切にしたいからです。

P.S.昨夜、ZyngaはNasdaqに上場しました。私に関わりのあるすべての皆様に感謝いたします。

自分思考/山口絵理子

バングラディッシュなど途上国でブランドバッグなどを作っているマザーハウスの山口絵理子さんの新作エッセー。誰もやってこなかったことを切り開いてビジネスを作り、悩みながらも前に進んでいく姿がとても清々しいです。

前例のないことをやろうとするといつでも人から反対されたり、批判されたりします。しかし、それを乗り越えたところにこそ「創造」があります。

誰もが賛成することに新しさと価値はない。

普段忘れがちなので、しっかり胸に刻んでおこうと思います。

<抜粋>
・自分がこの国で生き残ってビジネスをしていくうちに、どんどん嫌な目に合って、どんどん嫌な自分になっていくようで、自分が壊れてしまいそうで……。自分のこと嫌いになるくらいだったらやめたほうがいいんじゃないかって正直思ったりする。だけど、私は自分が決めた道を歩いているんだから、やっぱりその分の代価は払わなければならない。
・すでにネパールで何年も過ごしている人からは、 「ネパールは難しすぎる」 「今はやめときなさい」 「絶対うまくいかないから」 そんなことを散々言われた。でも本当にそうなのかな? と自分に問う。前を歩いてきた先人たちが言うことが、いつも正しくて、それに従って歩いていたら、「創造」とか「新しいもの」っていう言葉は、この世には生まれてこない。絶対に例外は存在し、その例外が一本の道しかなかったところに、もう一つの小さな道をつくってきたんじゃないかなっていつも私は思っている。

P.S.以下もオススメです。

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繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史/マット・リドレー

世の中には悲観論が溢れています。例えば、石油がなくなりかけている、プリオンで死者が多数出る、地球が温暖化しつつあるなど。しかし、石油はなくならなかったし、プリオンでも死者はそんなに出ませんでした。地球温暖化についても、この地球にイノベーションが起こらなければの前提で、解決可能な可能性が非常に高いと本書は主張します。

また、懐古主義も根強く、昔のほうがよかった、と言うひとがいます。しかし、実際は100年前よりも圧倒的に豊かで安全に生活できるようになっているし、ひとが発展途上国で農場から都市の工場で働くのは、その方がいい暮らしができるからです。

もっと楽観的になって、人生を楽しもう、と思わせてくれる良書です。

<抜粋(上巻)>
・つまり、貧しいとはこういうことだ。自分の必要とするサービスを買えるだけの値段で自分の時間を売れなければ貧しく、必要とするサービスだけでなく望むサービスまで手に入れる余裕があれば豊かだと言える。これまでずっと、繁栄や成長は、自給自足から相互依存への移行と同義語だった。
・近ごろ、「フードマイレージ」を非難するのがはやっている。食べ物があなたの皿の上にたどり着くまでに長い距離を移動すればするほど、多くの石油が燃やされ、その途上で多くの平穏が乱されたことになるというのだ。だが、なぜ食べ物だけを狙い撃ちにするのか? Tシャツマイレージやノートパソコンマイレージにも抗議の声を上げるべきではないのか?
・食品を農家から店頭までに運ぶあいだに排出される二酸化炭素は、その食品の生産・消費の過程で排出される総量のわずか四パーセントにしかならない。イギリスの食品を冷蔵するときには、外国から空輸するときの10倍、消費者が自動車で自宅と店を往復するときには50倍の二酸化炭素が排出される。
・最初のトラクターは優秀な馬に比べて優位なところはほとんどなかったが、地球のことを考えると、たしかに非常に大きなメリットが一つあった。エネルギー源となる餌を育てるための土地が必要なことだ。アメリカの馬の数は、1915年にピークの2100万頭に達しており、当時、全農地の約三分の一が馬の餌の栽培に充てられていた。そのため、役畜を機会に替えることで、広大な土地が人間の食糧を栽培するために放出される。
・「私のような農民は食糧を生産するのに1930年代の技術を使うべきだと言いながら、MRIではなく聴診器を使う医者の診察を受けようとしないような人たちにはうんざりだ」
・現代の遺伝子組み換えは、圧力団体に煽られた不合理な不安によって、生まれたとたんにあやうくもみ消されかけた技術だ。最初、その食品は安全ではないかもしれないと言われた。無数の遺伝子組み換え食品が食されたあとも、遺伝子組み換え食品による人間の病気の症例が一つも出なかったため、その議論は立ち消えになった。
・アフリカ各国政府は、欧米の活動家による強力な運動によって遺伝子組み換え食品を規制するように説得されたため、三カ国(南アフリカ、ブルキナファソ、エジプト)以外では商業生産ができなくなっている。なかでも有名なのが2002年のザンビアの事例だ。グリーンピース・インターナショナルやフレンズ・オブ・ジ・アースなどの団体による運動により、遺伝子組み換え食品だから危険かもしれないと説得された政府が、基金の真っただ中に食糧支援を断る事態にまでなった。
・帝国は、というより政府一般は、初めこそ民衆のためになることをするが、長く続くほど理不尽になる傾向がある。(中略)政府は次第にもっと野心的なエリートを雇うようになる。彼らは民衆の生活に対する干渉を強めることによって、社会が上げる収益からの自分の取り分を増やし、一方で強要する規則を増やし、最終的には金の卵を産むガチョウを殺してしまう。

<抜粋(下巻)>
・ナイロビのスラムやサンパウロのバラック集落はたしかに、静かな田舎の村より暮らしにくい場所ではないのか? そこに移ってきた人びとにとってはそうではない。どんなに生活環境が悪くても、都市にある相対的な自由とチャンスのほうが良い、と彼らは機会があるごとに熱っぽく語る。
・どうやら、1700年から1800年のあいだに、日本人は集団で犂を捨てて鍬を選んだようだ。その理由は、役畜より人間のほうが安く使えたことにある。当時は人口急増の時代であり、それを実現したのは生産性の高い水田だった。(中略)豊富な食糧と衛生に対する入念な取り組みのおかげで日本の人口は急増し、土地は不足したが労働力は安かったので、犂を引く牛馬に食べさせる牧草を育てるために貴重な農地を使うより、人間の労働力を使って土地を耕すほうが、文字どおり經濟的である状態に達した。そうして日本人は自給自足を強め、見事なまでに技術と交易から手を引き、商人を必要としなくなって、あらゆる技術の市場が衰退した。
・「農場からここに移って工場で働くようになったら、農業をしていたときよりもたくさんの服やいろんな種類の食べ物が手に入るようになったよ。それに家も良くなったし。だから、そう、工場に来てからのほうが生活は楽だね」
・もしアメリカ航空宇宙局(NASA)が存在しなかったなら、どこかの富豪がただ名誉のためだけに、月に人を立たせる計画にすでに身代をつぎ込んでいないと断言できるだろうか?
・経済協力開発機構(OECD)による大規模な調査によると、政府が研究開発に支出しても経済成長に目立った影響は見られないという。これは政府の思惑を裏切る結果だ。実際そうした支出は「私企業の研究開発費をはじめ、本来は民間が活用できる資源を占有してしまう」のだ。この少々驚くべき結論は各国政府にほぼ完璧に無視されている。
・どの10年を取っても新たな悲観主義者が続々と登場し、自分が生きる時代こそ歴史が大きくその方向を変える支点だと主張して譲らない。
・彼(注:ハーバード・マルクーゼ)は生活水準が下がり続けることによって起きる、マルクスの「プロレタリアートの貧困化」という概念を逆手に取り、労働者階級は資本主義によって過剰な消費を強いられたと論じた。この見解は学会のセミナーでは反応が良く、聴衆はさもありなんといった顔で頷く。しかし現実にはゴミも同然だ。地元のスーパーマーケットに行っても、選択肢が多すぎて何も選べず惨めな思いをしている人を目にした記憶は、私にはない。私の目に映るのは選択している人びとだ。
・彼(注:プラトン)は書き留めるという行為が記憶力を衰退させていると嘆じた。
・1970年代にイギリスのティーンエージャーだったころ、私が読んだどの新聞も、石油がなくなりかけている、化学物質によって癌が発生するようになる、食糧が不足している、氷河期が訪れようとしている、などと伝えていた。のみならず、イギリス経済の衰退は避けられず、ことによると全面的な破綻を迎えるなどとも報じていた。1980年代から90年代にかけて、イギリスが突如として繁栄をきわめて成長が加速し、健康や寿命、環境も好転したとき、私は大きな衝撃を受けた。
・これまでのところ、20世紀に二度にわたって訪れた温暖化の波にもかかわらず、地球規模の気候変化によって絶滅が確認された種は一つもない。
・世界はいまやネットワーク化されており、アイデアは過去に例を見ないほど盛んに生殖している。したがってイノベーションが起きる速度は倍増し、21世紀における生活水準は経済発展によって想像もつかないほどの高みまで向上するだろう。世界の最貧層までも、必需品はもとより贅沢品に至るまで入手できるようになると主張してきた。こうした楽観論はまちがいなく主流の思潮から外れているが、実際は人類滅亡を唱える悲観論より現実的であることを歴史が示しているとも述べた。

P.S.前エントリで紹介した福岡対談を記事にしてもらってます。我ながら結構おもしろいと思うのでどうぞ。
「起業は若いうちにやればやるほど得」『Zynga Japan』山田進太郎×『gumi』国光宏尚対談レポート

TechCrunchスタートアップバトル審査

TechCrunch Tokyo 2011のスタートアップバトルの一次審査をやりました。いやはや世の中にはおもしろいスタートアップがたくさんあるもんですね。僕がはじめた2004年にはこんなにたくさんなかったので、喜ばしい限りです。イベント本体は29日(火曜)なので時間のある方はぜひどうぞ。僕も行く予定です。

2件お知らせ。

先週末の福岡の対談イベントのまとめができてます。

明星和楽/Zynga(旧ウノウ)の山田進太郎さん×gumiの国光宏尚さんの対談「Fukuoka Startup School」 (個人的メモバージョン)

それから、前にも紹介したインタビューの第二弾が出ています。

失敗こそ成功への近道×山田進太郎氏(2)

追記:福岡の前半部分のまとめも作っていただいてありました!

『Fukuoka StartUP School』

福岡で対談イベント出ます

Zynga(旧ウノウ)の山田進太郎さん×gumiの国光宏尚さんの対談「Fukuoka Startup School」

2011年11月5日(土)に福岡でgumi国光さんと対談イベントに出させていただきます。福岡周辺にお住まいの方は是非。

P.S.世界のエンジェルとかVCのひとが登録するAngelListに登録してみました。

お知らせ×3

いくつかお知らせをば

・TechCrunchのイベント「TechCrunch Tokyo 2011」のスタートアップバトルで審査員やらせていただきます。27日(木曜)締切なので、よければご応募ください。

イベント名称: TechCrunch Tokyo 2011(ハッシュタグ #tctokyo)
開催時間: 2011年11月29日(火)10:00〜20:00
※時刻は現在のところ予定となっております。最終確定次第このサイトでお知らせいたします。
会場: ラフォーレミュージアム六本木(東京都港区六本木1-9-9 六本木ファーストビルB1F)
主催: AOLオンライン・ジャパン株式会社
協力・協賛: 国内および外資系大手インターネット企業/IT企業を予定(近日公開)
プログラム:
セッション・キーノートスピーチ――現在調整中 ※確定次第このサイトでお知らせいたします
スタートアップバトル――スタートアップ企業によるプロダクトのデモプレゼンテーション
ミートアップと表彰式――ミートアップはランチとディナーを予定。夜はスタートアップバトルの勝者の表彰式も執り行います。

「Tokyo StartUp School」に登壇させていただきます。こちらは明日夜締切です。

「Tokyo StartUp School」 
日時:2011年10月30日(日曜)午後3時~6時 

内容:「創業期の経験談、WEBサービスの作り方など」
講師:山田進太郎氏(ウノウ創業者/Zynga Japan)
講師:衛藤バタラ氏(元mixi CTO/East Ventures)
講師:早剛史氏(美人時計創業者) 
講師:家入一真氏(ペパボ創業者/ハイパーインターネッツ代表取締役)
講師:ワイアード石原明彦氏 シフト管理ASPシフター開発者
進行:松山太河(クロノスファンド/East Ventures) 
ほかゲスト来賓(Blau村上直氏、クレイジーワークス村上福之氏)

・Entrepreneurs’ Mindというインタビュー・サイトに「ベンチャーでの経験×山田進太郎氏(1)」が公開されています。よろしければどうぞ。

『なぜ経済予測は間違えるのか?』は必読

前からそうでしたが、2008年に金融危機が起き、明らかに今までの経済学が現実社会では成り立たず、エコノミストの予測にはまったく根拠がなかったということが分かっているにも関わらず、なぜ未だに正規分布から導きだされた金融理論を使い、エコノミストの経済予測がまことしやかに信じられているのか。

ものすごく疑問だったのですが、本書を読むとすごくすっきりとします。一言で言えば代わる理論がない、というだけなのですけど。もちろん本書で代わりとなる統一的な理論が提示されているわけではないですが、それぞれの分野で少しづつ新しい考え方が生まれてきているのだなと思って、安心しました。

個人の戦略として重要なのは、今まで正しいとされていたことすべてに疑問を持って、今までのやりかたが間違っていたなら捨てて、確実に意味のあることをやる、ということでしかないのかなと思いました。

そして、間違っていることには加担しない、ということでしょうか。むしろ、個人的には、明らかに間違っていることが進行している世の中ではアービトラージはすごく取りやすいなと前向きに捉えるようにしています。

<抜粋>
・金融業界のこれほど多くの人々が、自分たちが管理しているリスクを誤解して、危険について知らなかったとすると、それはなぜか。私が思うに、経済理論の基礎をなす根本前提が間違っているからだ。つまり、数理モデルだけではなく、経済についてエコノミストがとる、現行の思考様式が完全に間違っているのだ。
・経済が予測しがたい理由の一つは、創発する特性があって還元論的分析になじまないからだ。これと同じく予測する際に重要な問題は、正のフィードバックと負のフィードバックのからみ合いがあることで、どんな流れにも、間もなくそれに対抗する流れが育つらしい。
・クオンツたちの後ろ暗い秘密は、用いられる道具がたいてい非常に単純だということだーー数学や物理学の博士号はほとんど箔をつけるためのもので、実際のところを言うと、リスクのモデル化という分野は、パスカルとその三角形の時代以降さほど変化していない。
・「たいていの経済学の論考や教科書には『バブル』という言葉は出て来ない。(中略)バブルが存在するという考えが、経済学や金融の世界の大部分ではいかがわしいこととされるようになっていて、経済セミナーでそれを持ち出すのは、天文学者の集まりで占星術を持ち出すようなことになっている」
・ゴールドマン・サックスのような会社に、金融の話がよくわからない人向けの二段階金利サブプライム・ローンをまとめる自由を最大限に与え、ほとんど何もないところから何兆ドルもの信用バブルを作り、うまく行かなくなると政府から金を引き出すというのは、フリードマンの頭にはなかったことだろう。
・学会や政府にいる主流のエコノミストは、完全な経済というピュタゴラス教的な幻想にまだ目をくらまされていて、誤りから学習できていない。この神話を拡げ続けることによって、大学やビジネススクールは、未来の金融危機の種を蒔いている。誤ったリスクモデルが経済のリスクを上げるのと同じように、経済が本来安定して自己調整すると見て、そのように扱うーー規制を緩めることによってーー世界観は、いずれその逆になる。
・言いたいのは、ただ経済が再帰的で、したがって予測しにくいということだけでなく、私たちの考え方や神話が経済を特定の形にし、不安定になるように細工するということでもある。これはたぶん、経済学理論が世界に影響し、そのため客観的だとは言い張れなくなる最も明らかな例だろう。
・利益のために取引することが、必ず善だったり悪だったりすることはない。それは脈絡に左右される秤の上に乗っている。アデア・ターナーは、「市場はすべて初めから善であるか、すべての投機は悪であるか、いずれかの前提で生きていく方がよっぽど難しいでしょう。現実はもっと複雑で、私たちは差引勘定や決断をしなければなりません。けれどもこの複雑な世の中では、それ以外のことはできません」と言う。

34歳になりました

ちょっと前ですが、9月21日、嵐の日に34歳になりました。Facebookでたくさんのメッセージと、サプライズで200本以上のバラをいただき大変うれしかったです。ありがとうございました。

抱負とかは特にないんですが、33歳は着実に前進しているという実感はありながらも、あまり目に見える結果がなかったので、今年は結果を出せればいいなと思っています。が、急いでもあまりいいことはないのでマイペースに長期的な視点で望んでいきます。

<お知らせ>
・YouTubeでプレイリストなるもの作ってみました。ハウスまたはテクノの好きな方は、suadd listを作業用BGMにどうぞ。
・FacebookもTwitterのようにフォロー(Subscribe)できるようになったということで、よろしければ僕のFacebookページもどうぞ。

ここのところの動き

ザ・インタビューズ
とても楽しいです。どしどし聞いてください。

エンジェル投資
趣味の範囲内でぼちぼちやってます。いろいろな方の話を聞くのがとても楽しいです。かつ、勉強になります。

仕事してるんですか?
全力投球で、新作作ってます。お楽しみに!

スピーカーなど
イベントでのスピーカーやパネルなどは現在ZyngaがIPO申請中につき、すべてお断りしています。せっかくお声がけいただいて、ほんと心苦しいのですが。。

ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態/ロバート・フランク

ニューリッチとは資産1000万ドル以上の新富裕層のことで、本書ではニューリッチは、どういうひとびとで、どういう生活をし、何をしようとしているのかを明らかにした良書。新しい動きをウォッチしたいひとは必読だと思います。

個人的に一番おもしろかったのは、ニューリッチが自らの財産を子孫に残す、のではなく、どのように使うか、に焦点を当てているというところでした。そういったお金の使い道として、新しいタイプのNGOやNPOが生まれており、特にニューリッチの多くを占める成功した起業家が社会問題の解決に自らの力と金を使うのであれば、もっと世の中はよくなっていくのではないかと希望が持てました。

<抜粋>
・1980年代に、流れが変わりはじめた。情報技術と資本市場、政府による規制緩和の進展により、富裕層が經濟的地歩を取り戻し始めたのだ。資産額上位1%の層が国全体の資産に占める割合は、1989年には30%に急上昇し、その後33%にまで上がっている。
・長年、「ミリオネア(百万長者)」という言葉は「富裕層」と同義語だった。だが今日では、100万ドルあったところで、マンハッタンに2LDKのアパートを買うのがやっとで、高級住宅地のハンプトンズに住むことなどかなわぬ夢だ。(中略)その結果、両者の考える「富裕層」の定義は大きく異なってきている。
・富は人間の最低の部分も、最良の部分も引き出す、とティムは言う。つまり、富は人間性を誇張するのだ。「金は自白剤のようなもので、人間の本質を引き出してしまう。だから、嫌なやつは金をもつとますます嫌なやつになる」
・エチオピア国民や慈善家仲間からは賞賛されているバーバーも、大手の非営利組織からの受けは悪い。実際、彼はこうした組織にとって悪夢のような存在である。バーバーは「一縷の望み」によって、ユナイテッド・ウェイや赤十字、CAREといっった既存の大手慈善団体に寄付する必要がないことを示した。(中略)「ほとんどのNGOは、民間企業だったら破産している。私たちが生きているうちに変革の風が吹き、寄付をする人々が寄付金の使途についてもっとよく知るようになるだろう。実際の援助に寄付金の19%しか使っていない団体もあると知ったら、誰でもショックなはずだ」
・リッチスタン人、特に短期間で富を築いた人々は、自分の能力を過信し、複雑化する社会問題も自分なら解決できると思いがちだと、マリーノは指摘する。「簡単に金を儲けると、財産がほのめかすほど自分は賢くないという事実を見失ってしまうのです。自己顕示欲が強く、世界を変えようとする人が多すぎる。最初の数年は私も同じ過ちを犯しました。でもいまは、この世界では傲慢は凶と出ることを知っています」
・バーバーは、どんな援助にも成果目標を取り入れている。エチオピアの小規模NGOに資金を提供する場合、最初は第1四半期分の援助金しか渡さない。そのNGOが一定数の井戸を掘るなり、学校を設立するなりして目標を達成したら、初めて第2四半期分の援助金を渡す。目標を達成できなければ、援助を打ち切る。

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門/森村進

リバタリアンはどのように考え、行動するかというのを(リバタリアニズムの中の)様々な説から検証している良書。2001年と少し前の新書なんですが、今読んでもぜんぜん色褪せてません。

僕は自分をリバタリアンだと考えているのですが、実際には今自分が当たり前と考えている考え方について、リバタリアニズムから検討すると、いつの間にか自分がリバタリアニズムと反していることがあることに驚きます。

リバタリアンであれば、国家による婚姻制度は認めるべきではないし、会社の賠償責任は無限であるべきだし、国民栄誉賞は認めるべきではないし、相続税は認めても累進課税は認めるべきではない(ただし、もちろんリバタリアニズムにもいろいろな説があります)。こういう思考実験というのはすごく刺激的でおもしろいです。

いまはまだ自分の中でもまとまっているわけではないけれども、折にふれて深く考えたり、ひとと議論したりしながら、自分の人生観を変えていきたいと思います。そのための入門として素晴らしい作品だと思います。

<抜粋>
・訴訟遅延は確かに重大な問題だが、法的サービスは国家しか提供できないものではない。アメリカのリバタリアンは、紛争の解決は民間でもできるという発想から、専門的な民間の第三者による仲裁や和解といった「代替的紛争解決」(ADR)のサービスを高く評価している。アメリカにはADRを行う大きな会社や非営利組織が多数活動していて、利用者の満足を得ている。
・興味深いことに、リバタリアンの中には、この点でアメリカよりも日本の刑事法制度の方が被害者の権利をよく保護していると主張する論者もいる。(中略)日本の刑事裁判ではアメリカと違って、被告人が悪い環境で育ったなどという言い訳が責任軽減事由としてはほとんど通用せず、また被告人と検察官との間のプリー・バーゲニング(有罪答弁取引)も存在しない一方、犯人が犯行を自白し、真摯に後悔して、被害者側に謝罪・賠償しその許しを得るということが基礎の有無や量刑において重要な役割を果たすといった事実を指摘する。
・国家の中立性というリバタリアニズムの原理は、政府が教育の場などで特定の歴史観(唯物史観、新自由主義史観、民衆史観など)やライフスタイル(核家族、一夫一妻制、禁煙運動など)を押しつけたり援助したりすることも排除する。一夫一妻制だけを法的な婚姻制度として認めたり、特定の近親者だけに遺留分として相続財産への特権を与えたりすることは、この見地からは弁護しがたい。また政府が人々をその功績によってーー官尊民卑の観点からーー格付けする叙勲制度も廃止すべきである。
・そもそも婚姻という制度を法的に定めなければならない理由は明らかでない。実際には多くの法制度は色々な点で既婚者を独身者よりも優遇しているが、この優遇も法の下の中立性と衝突するから、もっと根本的に、婚姻という制度を法的には廃止すべきである。
・相続制度が廃止され、親への扶養義務が法的には最小化された社会の家族は、確かに現在の家族とはかなり変わってくるに違いない。そこでは親の扶養義務をめぐる争いはずっと少なくなり、遺産相続をめぐる紛争はほぼ消滅するだろう。成人した子供と親の間の関係はもっとドライなものになるだろう。そして代々続く「家」という観念も薄くなるだろう。法的な絆がないと(事実上の)離婚も多くなるかもしれない。このような変化を耐え難いと感ずる人もいるだろう。しかし自由を愛する人は、むしろそれをどろどろした血のしがらみからの開放と考えるだろう。親族関係は自発的な友人関係に近くなるのである。
・これらの(注:リバタリアンの)要請をもっともよく満たすのは、何の例外も控除もない、一定率の所得税か消費税である。所得税の税率は、累進課税では、所得の少ない者のために所得が多い者を搾取することになり、不公正である。税金が市場制度の使用料のようなものだと考えれば、その額は市場で得られた所得に比例しているのが公正だろう。
・大気や水の汚染は、その空間や水面の利用者の人身と財産への侵害に他ならない。工場主をはじめとする汚染者たちは、自分の財産の領域を超えて他人の人身と財産に損害を与えているのに、その責任を問われない。したがって最善の公害対策は、私的所有権、特に不動産所有権の厳格な執行ーー侵害行為に対する事前的な差し止めと、事後的な損害賠償ーーである。そしてその際、伝統的な過失責任ではなくて無過失責任主義を取るべきである。

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会社作ってから10年たちました/多謝

約10年前の2001年8月1日にはじめて会社を作りました。フリーランスでウェブ・プロデューサーやエンジニアをしていた僕にとって、特にすごく必要性があったわけではなかったけれども、会社にすれば大きな仕事も取れるかなというのと、節税などお金の流れをきれいにできるかなと思って作ったスモールビジネスとしての有限会社でした。

そのウノウという会社は、2005年に株式会社化して再出発。資金調達をして、ひとを雇って、ウェブサービスを開発して、いわゆるベンチャーになりました。いろいろ試行錯誤する中で、「まちつく!」というケータイゲームを作って、大ヒットしました。

そして昨年のちょうど今日(2010年8月3日)、Zyngaとの契約書を交わして、ウノウはZyngaの日本法人として、Zynga Japanになりました。いま僕はなんとかして、世界でメガヒットするコンテンツを作ろうとしています。

会社を作って10年、少しは成長できただろうか?

会社とは何か、受託とは何か、契約とは何か、コンサルとは何か、エンジニアリングとは何か、共同創業者とは何か、財務諸表とは何か、資金調達とは何か、株主とは何か、ストックオプションとは何か、ひとを雇うということは何か、マネジメントとは何か、監査とは何か、証券会社とは何か、バイアウトとは何か。どうやったらサービスをメガヒットさせることができるのか、どうやったら社員や役員に幸せになってもらえるのか、どうやったらみんなに喜んでもらえるのか。

10年前は何も分かってませんでした。もちろん今でも分かっているなんてとても言えないけども、10年前よりは少しは、徐々に分かるようになってきていると思います。

そしてこの間、とにかくいろんな方からの支援を有形無形に受けてきたと、今ははっきりと分かります(もちろんそれ以前もですが…)。

10年間ウノウとZynga Japan、あるいは僕個人に関わったすべての皆様(ウェブサービスのユーザーの皆様も!)、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

なぜ日本に起業家が少ないか

日本に起業家が少ない理由 – Chikirinの日記

このエントリをきっかけに日本の起業家が少ない理由をいろいろな方が分析してくれているようです。起業家としての僕の感覚からすると、情報ギャップがかなりあるんじゃないかと思っています。

例えば、1999年に東証マザーズができるまでは、上場するまでに10年以上かかることが普通でした。僕も大学時に何度か起業家を少人数で囲んで話を聴く機会がありましたが、どの方も非常に苦労されて起業され、しかもすでに30代後半〜40代の方が多かったです。

つまり昔は、普通に起業しても、一定の成功をおさめるまでに、非常に時間がかかっていました。しかし、現在はよいビジネスモデルがあれば数年で上場することも不可能ではありません。
※もちろん上場はゴールではありませんが、創業者が一定のリターンを得る機会でもあります

次に、日本では戦後、会社員が勝ち組の時代が長く続いていました。経済が急激に成長していたのでみな豊かになれたし、安定した立場でもあるわけで、合理的に考えて、どこかのできれば大きな企業に所属することが有利な時代がありました。

しかし、今は企業間の競争も激しくなり、企業内においても熾烈な出世競争や合理化が行われていますし、特に給与も右肩上がりなわけでなく、サラリーマンだから安心とも言えなくなっています。

一方で、起業については、長らくリスクが非常に大きい、あるいはリターンまで時間がかかる、という時代が続いていました。

しかし、最近は、確かにリスクは依然高いものの、資金調達も多様化しつつあり、失敗したからといって、借金に追われないようにすることも(やりようによっては)可能ですし、またネットの普及により(ネットビジネスに限らず)昔に比べると明らかにイニシャルコストが低くなってきています。

さらに、これが僕としては大きいと思うのですが、日本では優秀なひとの多くは大企業や国などに就職するため、世の中の大きな組織が埋められない需要に対する、供給元としてのベンチャーが相対的に少なくなっています。

つまり、大枠で考えると、

・起業は、ハイリスクハイリターンからミドルリスクハイリターンへ
・会社員は、ローリスクミドルリターンからミドルリスクローリターンへ

それぞれ向かっているという傾向があると思います。

しかし、依然多くのひとが「起業はハイリスク」という固定観念に縛られているため、なかなか起業するひとが増えないのではないかと。

なので、個人的には、もっと起業すればいいのに、と思ったりしてます。

P.S.だからというわけでもないですが、ハイパーインターネッツというベンチャーに投資しました。今後も機会があれば、特に若いひとに投資していきたいと思います。

今やっている仕事は、今のユーザー数を何倍にも増やす可能性がありますか?

いろいろと細かく調整していく仕事は、どんどん結果が出て、きちんとなっていくからすごく気持ちよいです。仕事しているという感覚もありますし、心地良い環境で仕事ができるようになります。

でも、そういう仕事って、実はユーザーさんへのバリュー(価値)というのは小さいことが多い。ユーザーさんは本当はそんな細かいことは気にしていなくて、もっと大きな「○○が簡単にできる」とか「××が無料でできる」とか何か一点でのみ惹かれて使ってくれていたりします。

細かく調整していく仕事は、全体へのインパクトはほとんどありません。一気にユーザー数が何倍になったりしません。

大企業ならそれでもいいかもしれません。でもベンチャーならやるべきなのは、圧倒的なバリューをユーザーさんに提案することだと思います。「おお、すごい!」と思ってもらって、クチコミしたくなるような、圧倒的な仕事をすることだと思います。

でも、これはほとんどのひとにとって、恐怖以外の何ものでもありません。大きく変えると、今までのユーザーさんからの反発をくらって、使ってもらえなくなってしまうかもしれません。

だから、ほとんどのベンチャーは、ちょっとした使い勝手をよくするとか整合性を取るとかいう調整ばかりをしてしまいます。今いる少ないユーザーさんを大切にしすぎて、可能性のある大衆を取り込むことができないで終わります。

つまり、自分のやっていることが、自分のための仕事なのか、ユーザーさんのための仕事なのかを常に考える必要があります。今やっている仕事は、今のユーザー数を何倍にも増やす可能性がありますか?

自分の気持良さとか心地良さは無視して、ほとんど失敗するかもしれないけれども、ユーザー体験をダイナミックに変えて、桁の違うユーザーさんに使ってもらえる「可能性のある」仕事をしなければいけません。

失ってもいいから、ダイナミズムに賭ける、ことがベンチャーがやることです。

誰のいうことを聞くべきか?

最近思うのは、誰のいうことを聞くべきかが実はすごく重要なんじゃないかということです。

普通、ビジネスでもプライベートでも、なんとなく近しかったり、親身なひとのアドバイスだったり、書籍などで読んだ心地いい言葉を重視してしまいがちです。

ここでは分かりやすくビジネスに限定しますが、圧倒的な成果を出せる人というのは本当に少ないです。自分が何かを成し遂げたい場合、やはりその分野で結果を出してきたひとのアドバイスを聞いた方がいいと思います。

よくあるのは、ネット上で発言力の強いひととかマスコミや評論家の言論に左右されるということです。まずそのひとが何を成し遂げたひとなのかを考えるのがいいと思います。さらに、その何かと、その発言の対象がどのくらい密接かを考え、もし全然違う分野であるならばあまり参考にならないと考えます。

この考えには、多くの反論があると思います。言論そのものをひととは切り離して考えるべきだ、というひともいるでしょう。もちろん正しいものは正しいし、実際に何かを成し遂げていなくてもいいことをやっているひとや実績をあげつつあるひとはたくさんいます。

でも僕はあえて、この短い人生で何かを頼りにするのならば、二つの意見があった場合、やはり実績のあるひとの言葉を重視したい。

ユリウス・カエサルは「人は喜んで自己の望むものを信じるものだ」と言っています。

僕は弱い人間なので、自分に心地のよい言葉を受け入れてしまいがちです。だから、自分にとって厳しい言葉であったり理解できない言動であっても、そのひとが自分が目指す分野で本当に圧倒的な結果を出しているひとであれば、じっと心にとめるようにしています。

そうして、後から考えると、やはりあの時のあれは正しかったなと思うのです。逆に言えば、心地良い言葉がその通りうまくいっていることは稀です。

だから、僕はこれからも、何かについて考えるとき、その何か(に近いこと)を成し遂げたひとの言うことを信じて行こうと思います。

魔法少女まどか☆マギカ

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いろんなところからおもしろい、という話を聞くので観てみました。テレビアニメで全12話、4月に完結したばかりです。

キャラクターの絵柄で拒否感出る方もいるかもしれませんが、戦闘シーンなどはサイケデリックな感じだし、内容もかなりおもしろくて、絵柄に似合わず超ハードな展開。深くて斬新で先が読めないストーリーがものすごくおもしろいです。ネタバレになってしまうので、ぜんぜん書けませんが、ぜひ騙されたと思ってとりあえず3話まで観てみてください。

ちなみに、僕は結末はかなりキレイにまとまっていると思うし、こういう物語は好きです。

※いまだとニコニコ動画で2016円で観ることができるようです。

近況

気づいたら2月から1度もポストしてなかったという… これはいかんということで、どんな些細なことでもいいからぽつぽつポストしていきたいと思います…

とりあえず近況なんですが、1月〜3月はZynga本社のあるサンフランシスコに行ってることも多かったのですが、ここのところは日本(Zynga Japan)で新たなミッションを開始しています。ちなみに、よくいつ辞めるんですかなどと聞かれるんですが、ものすごい毎日普通に働いているし、とりあえずZynga Japanから世界的なサービスを生み出すまでは、諦めないつもりです。

ここのところの主だった活動としては、こんなのがありました。

新進の起業家が成功のために大事にすることとは–トーマツがイベント開催

トーマツ ベンチャーサポートが開催した起業家向けイベント「トーマツベンチャーサミット」。そのパネルディスカッションでは、エスクリ 代表取締役社長の岩本博氏、paperboy&co. 創業者の家入一真氏、ビジョン 代表取締役社長の佐野健一氏、ジンガジャパン ジェネラルマネージャーの山田進太郎10 件氏が登壇。それぞれの立場から、起業についての思いや苦労を語った。

僕と山田進太郎で選んだ#givemac2選手権結果発表

#givemac2 22歳以下の学生ひとりに最新のMacBookProかMacBookAir、またはiPad2を無料で進呈します

先週ついに〆切を迎え、週末に審査・・・しようと思ったんだけど、急遽、地震の被災地を視察することになって、審査が伸びてしまった。

しかし昨夜、ついに結果が出たので、みなさんにお伝えする。

今回の#givemac2選手権は、Zynga Japanの山田進太郎さんがスポンサーになった。
Zyngaはいま、Facebookで最も大きな利益を上げている企業の一つ。

だからソーシャルやゲームをテーマに据えてみた。

oxweb – “世界中で使われるインターネットサービスを創る”

インターネット業界で夢を実現する、ってどういうことですか?
Zynga Japan ジェネラル・マネージャー 山田進太郎メールインタビュー

後、ジャカルタで「Jakarta Ventures Night」に参加したりもしました。

[jp]「Jakarta Ventures Night」にインドネシアのスタートアップたちが集結

このインドネシアでもスタートアップの胎動が始まっている。日本では地震の影響により震災被害が続く中ではあったが、従前より予定していた3月17日、18日の両日に首都ジャカルタのスタートアップ企業視察のためにインドネシアを訪れた。というのも、インドネシアでアーリーステージのスタートアップに投資をするベンチャーキャピタル、East Venturesが、スタートアップイベントの「Jakarta Ventures Night」を開催したからだ。

それから直近だと大阪で話す予定があります。

「起業家支援イベントStartUp Engine2011」が5月20日に大阪で開催-ジンガの山田氏や美人時計の早氏が講演

StartUp Engine事務局は、5月20日、「起業家支援イベントStartUp Engine2011」を大阪で開催する。時間は、13時~17時30分まで。

今回のセミナーは、成長志向企業の経営者、起業・事業創造を志望するビジネスパーソンや学生を対象に、「次世代起業家、新事業を生み出す知識・人・気持ちが集まる場の創造」を目的とした企画。注目のベンチャー企業やグローバルカンパニーの最前線で活躍するスピーカー陣を迎えたセミナーとなっているという。

とりあえず軽めのエントリでウォーミングアップということで。