事実に基づいた経営/ジェフリー フェファー、ロバート・I. サットン

スタンフォード大学の教授2人の共著。タイトルがあまりにも固いのですが、内容はかなりおもしろいです。ビジネス書でよく語られている定石に対して、本当にそうなのかを問いかけて、事実ではそうでないケースもありますよ、というのが大体の流れです。しかし、定石を根っから否定しているわけではなく、いろいろなケースがあるのだから事実を冷静に見極めて、判断せよということを書いています。

とはいえ、結局のところ何が正解なのか本書が明らかにしてくれるわけではないので、最後は自分で考え決めなければいけないわけですが。そのための考え方の流れが描かれていて、それが非常におもしろく勉強になるのが、本書の特徴かなと思います。

<抜粋>
・第三に、経営者が、大量のビジネス書、記事、カリスマ、コンサルタントなどから仕入れるアドバイスは全く整合性がないことである。人気のビジネス書から、次のような全く反対のアドバイスの例を挙げてみよう。「カリスマ性のあるCEOを採用せよ」vs「謙虚なCEOがよい」、「複雑系を取り入れろ」vs「シンプルこそベストだ」、「戦略に集中せよ」vs「戦略計画など無益だ」。読めば読むほど混乱する。
・さらに悪いことに、良いアドバイスと悪いアドバイスを見分けることは簡単ではないため、経営者たちは往々にして間違った手法を実践してしまう。その一つの理由は、コンサルタントというのは、仕事を取ってくることで評価されるが、良い仕事をしたかどうかというのは二の次で、実際に提言が効果をあげたかは、評価にほとんど関係ないことである。さらにすごいのは、もし問題が十分解決されなければ、解決されない問題のためにコンサルティング会社の仕事がまた入ってくることである。
・もし、われわれの意見がコンサルティング会社に対してひどすぎると思うのなら、あなたのお気に入りのコンサルタントに、「コンサルティング会社の提言なり経営手法が実際にどのような効果をあげたか」の証拠を見せてくれるように頼んでみよう。
・私たちはベインの調査は評価したいと思っているが、なぜ同社がそのホームページで表を提示し、「われわれのクライアントは市場平均に比べて三倍の業績をあげている」などとホラを吹いているのか、理解に苦しむ。ベインの優秀なコンサルタントたちは、相関関係があるといっても、それがベインのコンサルティングが業績をあげた証明になるわけではないとわかっているはずだ。そもそも、業績の良い会社はコンサルタントを雇うだけの資金の余裕があったと見ることもできる。実際、ベインが本当に業績に貢献したかどうかは何の証拠もない。まさか、ホームページを見た人が、その瞬間に統計のクラスで学んだことを忘れることを期待しているわけではないとは思うが。
・その会社では、その前年に顧客満足度と効率性を上げるためにシックスシグマが導入されていた。サットンは講演の中で、シックスシグマやTQMなどのプロセス改善手法によって、効率は上がるがイノベーションが減ることを指摘した。それに対して、自称「品質管理の鬼」「品質の伝道師」たちがやって来て、シックスシグマはイノベーションも含めた品質の改善に役立っていると反論した。このグルたちは、10年もの経験があり、しかもシックスシグマやTQMがイノベーションに貢献した事例を一つもあげられないのにもかかわらず、そう言い張ったのである。
・「ユニホームを身につけると、個人の好みよりもグループのゴールや価値観を大切にする」心理的な力が働くことが実証されている。
・こうした研究から明らかなことは、「才能がすべてだ」といったような見方は、あたかも才能が初めから決まっていることを前提としている、という意味で危険であるということだ。こうした見方をすると、どうせ始めから決まっているのだから努力しても無駄だ、自分たちは何もできないといった考え方を(部下を含めて)生むことになる。しかし、例えば基本的な認識能力は、テストで測れる部分で見る限り、向上させることは思った以上に簡単なのである。向上できると思えば向上できる。しかし、これは大変重要なのだが、逆にもしこうした能力は上がらないと思い込んでいると、やはり上がらないのである。
・ジェームス・トレイビッグが言ったとおりだ。「金に釣られて入社する奴らは、金に釣られて辞める」。
・最近最もポピュラーな「経営資源から見た企業」という戦略理論によれば、競争優位は価値があり、かつ希少な資源を持つことによって生まれるが、その優位が継続するためには、その資源は競争相手が真似をして追いつけないよう、真似できにくく、何か別のもので代替できないものでなくてはならない。したがって、問題は「企業を成功に導く戦略というのは、(他社にとって)理解したり真似したりすることが難しいのか?」ということになる。
・デルの社員が、製品からねじ一本減らすのにどれだけ時間を使っているか(それによって製造時間が四秒短縮される)を聞いただけで、それまでして製造の効率性を上げようとする取組みは、自分で会社を経営したり、自分のような人を雇って他の会社の問題を解決したいと思っている頭の良いMBAにはあまり魅力的に映らないであろうことは想像がつく。
・変革を成功させた企業は賞賛され、リーダーは神のようにあがめられる一方、過去にこだわる企業は馬鹿にされる。結局、「変わるか、さもなくば死ぬか」なのだ。あるグルに言わせれば、「イノベーションをするか死ぬか、どちらのほうがよいか?」 こうしたスローガンや信念は完全な間違いではないが、半分しか正しくない。変革もイノベーションも危険な両刃の剣なのである。
・インテルの共同創業者であり、元CEOでもあるアンディ・グローブが退任後にこんな告白をしている。「誰も将来のことなんてわからない。私もだ」という彼の意見に対して、それではどのようにして社員を動機づけていたのかと尋ねられ、「うーん、自己規律の面もあるし、幻想という面もある」と答えた。「そして幻想は現実になった。自分を過大評価し、実際よりも良く見せるようにしたという面では幻想かもしれない。しかし、自信を持って行動しているふりをしていると、実際に自信が出てくる。だから、幻想はもう幻想でなくなる」

最近のGoogleの便利サービス

皆さん、Google使ってますか?
最近、実は検索以外もかなり便利なんですよねぇ。最近覚えたGoogleの便利な使い方はこちら。

Gmail
Gmailは前から使ってたのですが、ショートカット使い始めたらこれが異常に便利。今までのメールソフトに戻れないくらい。とりあえず、jとkで前後に行けるのを知るだけでも相当高速に処理できると思います。

Google日本語入力
Googleの作ったいわゆるIMEですが、Mac標準の「ことえり」に比べてかなり賢く、愛用しております。これもGoogleの作るOS「Google Chrome OS」のための下準備なんでしょうね。このまま行くと、ちょっと金かけてもいいひとはMac、そうでない場合はChrome OSとなって、本当にWindowsは沈んでしまうかもしれませんね。
※ことえりからの辞書のインポート方法はこちら

Googleサイト
Googleのホームページ作成ツール。簡単なページがさくっと作れます。あまり知られてないようなのですが、かなり便利。プライベートなブックマーク(スタートページ)なんかを今までは自前でWikiとかをインストールして使ってたのですが、すべてこちらに移行しちゃいました。

こうして今年もGoogle先生に取り込まれて行くのですね。。

アバター[70点]

アバター

【監督】ジェームズ・キャメロン
【出演】サム・ワーシントン / ゾーイ・サルダナ / シガーニー・ウィーヴァー / スティーヴン・ラング / ミシェル・ロドリゲス / ジョヴァンニ・リビシ / ジョエル・デヴィッド・ムーア / CCH・パウンダー / ウェス・ステューディ / ラズ・アロンソ

★★★☆ [70点]「デジタル3D映画の幕開け」

メガネをかけて3Dになるタイプなのですが、初の著名な監督(ジェームズ・キャメロン)による本格的な長編デジタル3D映画ということで注目を集めているようです。

観た感想ですが、確かにすごい。ほとんど違和感がなく立体感があって、本当に異惑星に紛れ込んだような感覚を覚えます。人間よりもかなり大きく体のバランスが違ったりする異星人ナヴィたちや、動植物や景色も本当に自然で、まったく現実とCGの境が分かりません。スピード感のある映像は新体験の連続で本当にこれだけで観る価値ありです。

一方で、ストーリー的には、それなりに工夫されているもののハリウッド的シナリオから抜け出せておらず、映像のすごさに比べて、平凡さが目立っています。とはいえ、退屈するわけではないので平均点は超えていると思いますが。

つまり、ストーリーは平均的であるものの、映像はものすごいですし、今後「ハリー・ポッター」シリーズやディズニー作品も3D化すると言われており、「アバター」がデジタル3D映画の幕開けだったと言われることは間違いないので、観ておいて損はないと思います。

Posted by suadd on 2010/01/02 with ぴあ映画生活

2009年の映画

2007年の映画2008年の映画に続いて、2009年の映画ベスト3。でも、10本くらいしか映画を観に行ってないので。。年々減っていますね。。今年はもっとたくさん映画を観に行こうと思います。

その他観た映画でよかったものは映画カテゴリ旧ブログへどうぞ。
※ちなみに、映画も本も観たもののうちよかったもの一部しかエントリにしてません。

  1. 1位.サマーウォーズ
    日本の昔と今のかっこいい部分をミックスした傑作アニメーション。日本から世界に出るなら、こういう方向性なんだろうなと思いました。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」も新境地が見えてよかったのですが、4部作見ないとなんともといった感じです。
  2. 2位.マイケル・ジャクソン THIS IS IT
    ちょっとこれを入れるというのは抵抗があったのですけど、唯一2回観た作品でもありますし、偶然の産物であろうが、いいものはいいということで。
  3. 3位.チェンジリング
    とにかくすべてにおいてクオリティが高い。「グラン・トリノ」もよかったですし、今年前半はクリント・イーストウッドの年でもありましたね。

2009年の本

あけましておめでとうございます!
昨年もいろんなことがあって楽しかったです。今年も楽しく行きたいと思います。

さて、2007年の本2008年の本に続いて、2009年の本ですが、昨日まとめようと思ったらまとめられず、、

しかし、こう眺めてみると2009年の本は特に豊作だったと思います。「芸術起業論」「ブラック・スワン」「この世でいちばん大事な「カネ」の話」の三冊は特に素晴らしくて、世界の見方が変わる傑作です。ぜひ手に取ってみてください。

この他にもいい本がたくさんあったのですが、途中でブログを変更した関係で、本・芸術カテゴリ旧ブログに分かれてます。よろしければどうぞ。

ほんと今年もいい本を読みたいものです。

  1. 1位.芸術起業論/村上隆
    村上隆の世界的成功から日本人がどのように世界でやっていくべきかのヒントが。傑作すぎて、いろんなひとにプレゼントしました。
  2. 2位.ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質/ナシーム・ニコラス・タレブブラック・スワン[下]
    2008年の1位「まぐれ」の著者タレブが、世の中の不確実性を独特のシニカルな世界観でぶった切る傑作。今の不確実な世の中で生きるひとには必読本と思います。
  3. 3位.この世でいちばん大事な「カネ」の話/西原理恵子
    タイトル通り漫画家西原理恵子が自らの貧困とその後の成功と転落、再生からお金とは、働くとは、才能とは何かを描いた傑作。特に若いひとに読んで欲しいです。
  4. 4位.たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する/レナード・ムロディナウ
    偶然性とは何かだけでなく、偶然の成功を引き寄せるためにどうすればいいかまで踏み込んでいます。「ブラック・スワン」と合わせて読むのがオススメ。
  5. 5位.日本の10大新宗教/島田裕巳
    日本人にとっての宗教とは何かを描き出しており、宗教観が変わります。
  6. 6位.迷惑な進化–病気の遺伝子はどこから来たのか
    常識を覆す最新の進化医学に触れることができる知的興奮度の高い良作。
  7. 7位.堕落する高級ブランド/ダナ・トーマス
    各高級ブランドのルーツを描き、さらに現在のH&Mのようなファスト・ファッションへの流れまで。ブランドとは何かを考えさせれます。
  8. 8位.予想どおりに不合理–行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」/ダン アリエリー
    経済学の常識「全員が合理的に行動する」というのを真っ向から否定。最初にスタバに入ったとき高いと思わなかったか、などドキッとすることがたくさん書かれてます。
  9. 9位.ヤバい社会学/スディール・ヴェンカテッシュ
    社会学者の卵がアメリカと言う豊かな国のスラムへ潜入して、驚くべき実態を明らかにするドキュメント。
  10. 10位.ケータイ小説的。—-“再ヤンキー化”時代の少女たち/速水健朗
    社会学的アプローチで(特に)日本の地方で何が起きているかに迫る。東京がすでに憧れでなくなってしまっているという衝撃。