ルポ 貧困大国アメリカ II/堤未果

ルポ貧困大国アメリカ」の続編。今回は、学資ローン、社会保障、そして前回にひき続き医療改革などを取り上げています。

相変わらずひどい実例のオンパレードで、暗い気持ちになりますが、特に医療改革でオバマ大統領がようやく国民皆保険導入を公約に掲げて当選し、医療関係者などの賛同も経て導入に向けて動き始めたにも関わらず、医療保険会社などの画策により見事に潰されていく様が何とも言えない無力感を覚えます。

日本人でよかったと思う一冊。

<抜粋>
・学資ローンに対しては消費者保護法というものは存在しない。1998年にクリントン大統領が署名した高等教育法改正が、他のローンに通常は適用されている消費者保護法のすべてを学資ローンから削除したからだ。さらに2005年には、住宅ローンやカードローンでよく使われる、借り手が自己破産した場合の借金残高免責も学資ローンの適用から外されていた。
・労使交渉で強気に出られないGMは、従業員と退職者の年金と医療保険を負担し続け、ついに医療費負担は他の業界を抜いて全米一の年間56億ドルにまで膨れ上がった。 自動車一台あたりに上乗せされる年金分のコストは1500ドル(15万円)。これが競争相手のトヨタUSAに大きく引き離される原因の一つとなり、かつては「巨人」と呼ばれたGMの市場での力は失われていった。
・現在アメリカ国内で歯科医療保険を持っていない国民は1億人、約3人に1人いる。 貧困層では数百万の子どもたちが、治療しないままの虫歯を持っている。(中略)歯と貧困には深い関係がある。他の病気と違い、歯には自然治癒というものがないからだ。
・「医療費がこれだけ高い国はどう考えても異常です。カリフォルニア州では医療費請求の21%が保険会社によって却下されている。1錠の薬を4つに割って節約する高齢者や、仕事を持っているのに突然破産する会社員、過労死や鬱病で倒れてゆく医師や看護師。これらを生み出した原因はたった1つ、医療を賞品にしてしまったことです」
・「今のシステムが奪った、目に見えないものとはたとえば何ですか?」 「患者と医師の間のつながりや、医師のなかに存在するはずの誇り、充実感などです。(中略)間に医療保険会社という株主が介在しない世界では、患者は医師を人として信頼し、医師は患者との交流を通して、いのちを救っているという充実感と誇りを受け取るのです。これは数字では測れない、けれど人間が日々生きていくためには失ってはならないものの1つです」
・アメリカの総人口は世界の5%だが、囚人数は世界の25%を占める「囚人大国」なのだ。
・州政府にとってそれら民間刑務所の最大の魅力は、とにかくコストが安いことだという。全米の刑務所運営維持費用は年間570億ドル(5兆7000億円)を超えており、これは国の年間教育予算420億ドルを上回っている。

いくつかのイベント告知

ここのところブログをぜんぜん更新できてなくてすいません。このところ慌しくて、久しぶりに休暇で沖縄に遊びに行ってきてリフレッシュしたところです。

本も読んでいないわけではないのですが、印象に強く残るものがなくて更新できてませんでした(ちなみに、読んだ本すべてをエントリしてるわけではなくて、掲載しているのはよいと思ったごく一部です)。

いくつかのイベントに参加させていただく予定ですので、告知させてください。興味がありましたらぜひご参加ください。