ソフトバンクのロビイング「孫正義の参謀」

元ソフトバンク社長室長の嶋氏が、ボーダフォン買収からスプリント買収くらいまでの仕事を語っています。嶋氏は元衆議院議員だっただけあり、主にロビイングの話が多いのですが、かなり赤裸々です。ソフトバンク規模の会社がどういうロビイングをしているのか分かり、非常に興味深かったです。

<抜粋>
・「いろいろと検討したが、どうもピンと来ない。ヤケのヤンパチで犬と外国人を使ったら、これが当たった」 孫社長の説明である。
・犬が父親という白戸家のアイディアをクリエーターがプレゼンしたとき、孫社長は「天才だ!」と叫んだという。
・そう決意して携帯電話の電話帳を見た。官房長官、官房副長官、首相補佐官、そして内閣総理大臣まで番号があった。

アップル製品のこだわりを知る「ジョナサン・アイブ」

アップルの近年の製品のデザインをリードしてきたジョナサン・アイブについて丹念に追った作品。最初の辺りが冗長だが、後半はアップル入社後にどのようにチームができていき、復帰したジョブズと関わり、iMac、iPod、iPhone、iPadなんかがデザインされていったのかなどが克明に描かれており、非常におもしろかったです。

とにかくこだわりがすごい。このくらいのこだわりでもってプロダクトを作っていきたいと思いました。

<抜粋>
・アメリカの教育制度が企業への就職を目的にしていたなれば、イギリスのデザイン教育は、情熱を追求し、情熱を核としたチームを築くことを奨励していた。
「違うものを作るのは簡単だが、いいものを作るのは難しい」 ーージョニー・アイブ
・(ジョブズが戻ってきて)「スティーブが、僕らの目標は金儲けではなく、偉大な製品を作ることだと宣言したんだ。その哲学があれば、これまでとは根本的に違う判断を下すはずだと思った」。ジョニーはのちにそう語っている。
・「デザインが差別化の手段だと思っている人が多すぎる。全く嫌になるよ。それは企業側の見方だ。顧客や消費者の視点じゃない。僕たちの目標は差別化じゃなくて、これから先も人に愛される製品を創ることだとわかってほしい。差別化はその結果なんだ」
・「フォーカスグループはやらない。アイデアを出すのはデザイナーの仕事だから」とジョニーは言う。「明日の可能性に触れる機会のない人たちに、未来のデザインについて聞くこと自体が的外れだよ」
・その時点で携帯電話には数曲しか入らなかったが、そう遠くないうちに、だれか、おそらくライバル会社がふたつのデバイスをひとつにすることは目に見えていた。
現在のデザインの前線はハードウェアではなくソフトウェアなのだ。
ジョブズはいつも、集中とはイエスということではなく、ノーということだと語っていた。ジョニーの指導のもと、アップルは「そこそこいい」ものであっても「偉大な製品」でなければ却下することを激しく自分たちに課している。

謙虚さと内省の重要さ「ピクサー流 創造するちから」

ピクサーの創業者&社長のエド・キャットムルがピクサーをいかにして成功に導き「続けている」かについて語った作品。ピクサーの成り立ちから途中のスティーブ・ジョブズがオーナーの時代、そしてディズニー買収後のディズニーのアニメーション部門の立て直しなどが描かれています。

要点は二つかなと思っていて

・とにかく優秀な人間を集めて、相乗効果が出るチームを築くこと
・隠されている罠に気づくような内省的な仕掛けを作ること

これは言うのは簡単ですが実行するのは難しいです。しかし、ピクサーはこれを非常にうまくやっており、施策もこれでもかというくらいあげられており、非常に勉強になります。

特筆すべきはエド・キャットムル自身が繰り返し謙虚さや内省について語っていることです。

チーフたちは、不満を持っていたにもかかわらず、歴史をつくっているという実感はあり、ジョンを才能あるリーダーだと認めていた。『トイ・ストーリー』は、取り組む意味のあるプロジェクトだった。仕事が好きだからこそ、その中での腹立たしいことも我慢できた。私にとって目からウロコだった。よいことが悪いことを隠していたのだ。今後気をつけなければならないことだと認識した。よい状況にもたいていマイナス面が共存しているものだが、実際にそれに気づく人がいても、クレーマーのレッテルを貼られることを恐れて言い控えてしまう。また、こういうことは放置すると悪化し、ピクサーを崩壊させかねないとも思った。

社会的に自分より上の立場の人には本音が言いにくい。さらに、人が大勢いるほど、失敗できないプレッシャーがかかる。強くて自信がある人は、無意識にネガティブなフィードバックや批評を受けつけないオーラを放ち、周囲を威圧することがある。成否が問われる局面で、自分のつくり上げたものが理解されていないと感じた監督は、それまでのすべての努力が攻撃され、危険にさらされていると感じる。そして脳内が過熱状態になり、言外の意味まで読み取ろうとし、築き上げてきたものを脅威から守ろうと必死になる。

会社がうまくいっているときは、リーダーが抜け目のない決断を下した結果だと考えるのは自然なことだ。そのようなリーダーたちは、会社を繁栄させるカギを見つけたとさえ信じるようになる。実際には、偶発性や幸運が果たした役割が大きい。

リーダーの本当の謙虚さは、自分の人生や事業が目に見えない多くの要因によって決定づけられてきたこと、そしてこれからもそうあり続けることを理解するところから始まる。

こんな形です。結局のところ持続的な成功は、経営陣がどれだけ謙虚さを保ち内省し続けるかにかかっていると思いました。

<抜粋>
・私がとくに重視しているのが、不確実性や不安定性、率直さの欠如、そして目に見えないものに対処するメカニズムだ。私は、自分にはわからないことがあることを認め、そのための余白を持っているマネージャーこそ優れたマネージャーだと思っている。それは、謙虚さが美徳だからというわけでなく、そうした認識を持たない限り、本当にはっとするようなブレークスルーは起きないからだ。
・スティーブは正しかった。ピクサー初の映画が興行収入成績を打ち立て、我々の夢が実現しようとしていたとき、IPOによって1億4000万ドル近い金額が調達できた。1995年で最大のIPOだった。それから数カ月後、まるでキューの合図とともにアイズナーから電話があり、契約を見直してピクサーとの提携関係を結びたいと言ってきた。そしてスティーブの折半という条件をのんだ。スティーブの言ったとおりになり、私は感嘆した。その確信と遂行力は見事としか言いようがない。
・チーフたちは、不満を持っていたにもかかわらず、歴史をつくっているという実感はあり、ジョンを才能あるリーダーだと認めていた。『トイ・ストーリー』は、取り組む意味のあるプロジェクトだった。仕事が好きだからこそ、その中での腹立たしいことも我慢できた。私にとって目からウロコだった。よいことが悪いことを隠していたのだ。今後気をつけなければならないことだと認識した。よい状況にもたいていマイナス面が共存しているものだが、実際にそれに気づく人がいても、クレーマーのレッテルを貼られることを恐れて言い控えてしまう。また、こういうことは放置すると悪化し、ピクサーを崩壊させかねないとも思った。
・アイデアをきちんとかたちにするには、第一にいいチームを用意する必要がある。優秀な人材が必要だと言うのは簡単だし、実際に必要なのだが、本当に重要なのはそうした人同士の相互作用だ。どんなに頭のいい人たちでも相性が悪ければ無能なチームになる。したがって、チームを構成する個人の才能ではなく、チームとしてのパフォーマンスに注目したほうがいい。メンバーがお互いを保管し合うのがよいチームだ。当たり前のように聞こえるかもしれないが、私の経験から言って、けっして当たり前ではない、重要な原則がある。いいアイデアよりも、適切な人材と適切な化学反応を得ることのほうが重要なのだ。
・社会的に自分より上の立場の人には本音が言いにくい。さらに、人が大勢いるほど、失敗できないプレッシャーがかかる。強くて自信がある人は、無意識にネガティブなフィードバックや批評を受けつけないオーラを放ち、周囲を威圧することがある。成否が問われる局面で、自分のつくり上げたものが理解されていないと感じた監督は、それまでのすべての努力が攻撃され、危険にさらされていると感じる。そして脳内が過熱状態になり、言外の意味まで読み取ろうとし、築き上げてきたものを脅威から守ろうと必死になる。
監督がクルーからの信頼を失ったら介入する、それが判断基準だ。一本のピクサー映画に関わる300人あまりのスタッフは、物語が独り立ちするまでに発生する途方もない調整や変更に慣れている。
・会社がうまくいっているときは、リーダーが抜け目のない決断を下した結果だと考えるのは自然なことだ。そのようなリーダーたちは、会社を繁栄させるカギを見つけたとさえ信じるようになる。実際には、偶発性や幸運が果たした役割が大きい。
・彼らには経営能力と壮大な野心があり、本人は判断をまちがえたとも自分を尊大だとも思っていなかった。それでも勘違いは生まれる。頭脳明晰なリーダーでさえ、成功し続けるために必要な何かを見失う。私はこう思った。自らの視野の限界を知り、うまくつき合わなければ、ピクサーもいずれ同じ勘違いをするようになると、“隠れしもの”と私が呼ぶものに対処する必要があった。
「見えないものを解き明かし、その本質を理解しようとしない人は、リーダーとして失格である」
・リーダーの本当の謙虚さは、自分の人生や事業が目に見えない多くの要因によって決定づけられてきたこと、そしてこれからもそうあり続けることを理解するところから始まる。
・反省会の「予定」が反省を促す
反省会の準備に費やす時間は、反省会そのものと同じくらい価値がある。言い換えれば、反省会が予定されることで自省を強いられる。反省会がオープンに問題と格闘する場だとすると、プレ反省会は、格闘を成功させる舞台づくりをする期間だ。反省会を行う価値の九割方は、それに至るまでの準備にかかっていると言っても過言ではない。
・どれほど促しても、出席者はあからさまな批評をしたがらない、ということを忘れてはならない。その壁を取り除くために私がとった方法は、出席者に二つのリストをつくらせることだった。一つは、次回もやろうと思っていることトップ5、もう一つは、二度とやらないと思っていることトップ5だ。否定的なことが相殺するため率直な意見を言いやすい。進行役にバランスをとるように頼んでもいい。
・PUはけっしてプログラマーをアーティストに、アーティストをベリーダンサーにするためにやっているのではない。誰もが新しいことを学び続けることの大切さに気づいてもらいたくてやっている。それもまた柔軟性を維持するための重要な部分だ。やったことのないことにあえて挑戦することで、頭を柔らかく保つ。それがPUがもたらすメリットであり、人を強くしていると思う。
・最終的に、4000通のメールがノーツ・デーの投書箱に届いた。全部で1000種類のアイデアがあった。
・ミスを防げば、ミスに対処する必要がなくなるという幻想に陥ってはならない。実際には、ミスを防ぐためのコストのほうが、ミスに対処するコストよりはるかに高くつく場合が多い。
リスクを回避することはマネージャーの仕事ではない。リスクを冒しても大丈夫なようにすることがマネージャーの仕事である。