創造とは何か?を知る「ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995」

スティーブ・ジョブズの1995年のインタビュー。映画を観て、素晴らしかったので本(Kindle版)も購入してみました。

1995年というのはジョブズがアップルを追い出されて10年ほど、そしてこの翌年NeXTをアップルに売却し、アップルに返り咲きます。

ジョブズは自分の作った会社を追い出されることで、深い内省により成熟したのではないかなと思います。このインタビューでは創造すること、マイクロソフトやスカリー、インターネットの可能性(95年に)など様々なことについて深い洞察を語っています。それで、アップルに返り咲いた後、自らのそれまでの体験や才能を駆使できたのではないかと。

僕がもっとも感動した部分は以下です。

問題は、すばらしいアイデアとすばらしい製品の間には、とてつもない職人技の積み重ねが必要だということなんだ。それに、アイデアを発展させていく過程で、そのアイデアは変貌し、成長する。とりかかった時点で考えていたものと同じものができあがることなんて絶対にない。細部を詰めていくに従って多くのものを学ぶし、妥協しなければならない点も無数に出てくるからだ。電子にはできないことが必ずある。プラスチックにはできないこと、ガラスにはできないこと、工場やロボットにはできないことがね。こういったことすべてが絡んでくるから、製品を設計するというのは、5000のことを頭の中で考えるのと同じなんだ。そうしたコンセプトを一つにまとめて、それまでとは異なる新しいやり方で組み合わせたりして、自分がほしいものを生み出す。問題であれチャンスであれ、毎日何かしら新しいものが現れるたびに、全体をまた少し違った形で組み直すことになるわけだ。その過程がマジックなんだよ。

何かを創造しているときの躍動感を見事に表わしていると思います。

けっして一人で成し遂げるわけではない。人というのはシンボルが好きだから、私はある種のシンボルにされている。しかし、Macを作り上げたのは、まさにチームの努力なんだ。
(中略)
ソフトウェアの場合ーーかつてはハードウェアもそうだったけど、平均と最高の差は50対1、ひょっとしたら100対1かもしれない。人生でこれほど差がつくものはめったにないけれど、私は幸運にも、こういう世界に身を置くことができた。だから真に才能ある人材をみつけることによって、成功を築き上げることができたんだ。BクラスやCクラスの人材でよしとせずに、Aクラスの人材を本気で求めたんだ。
(中略)
真に優秀な人たちは自分たちが優秀だということを知っているから、その人たちのエゴを甘やかしてやる必要はほとんどない。いちばん大事なのは仕事だし、みんなそれをわかっている。肝心なのは仕事。
(中略)
真に優秀で頼りになる人たちにしてやれることのなかで、何が一番重要かというと、仕事の出来が満足のいくものではない時には、それを指摘してあげることだ。はっきり指摘し、その理由をきちんと説明して、彼らが軌道修正できるようにすることなんだ。 その際、自分たちの能力を疑っているんじゃないかと思わせないようにしながら、同時に、その特定の仕事に関しては、チームの目的に貢献していないとわからせるようにしなければならない。

しかもそれは一人で成し遂げられるものではなくて、Aクラスの人間を集めて、チームとなってぶつかり合いながらプロダクトを生み出していく。この過程こそが創造であることが表現されています。

(正しい方向かどうか、どうすれば分かるんです?)究極的には美意識の問題だね。美意識だ。人類がこれまでに生み出してきたもっとも優れたものに触れ、それをいま自分が進めていることに取り入れていけるかどうかだ。ピカソがこう言ってる。「優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」とね。私たちはすばらしいアイデアをいつも臆面もなく盗んできた。

アップルやグーグル、フェイスブックがすごいと思うのは、「そういうことだったのか」と後で正しい方向性だったことに気づくことがたくさんあるからです。僕は、それは何歩も先に行っている創造の過程では周りには見えていない正しい、というか、あるべき方向性が見えてくるからだと思っています。

上ではジョブズはそれを美意識だと言っていますが、原文は”It comes down to taste”です。tasteには美意識だけではなくて経験や好み、味わうの意味もあり、僕は先に行った自らの経験とそれまでの人類の生み出してきた優れたものを組み合わせて醸成することと解釈しました。

アップルやグーグル、フェイスブックの創業者も最初からすごかったわけではない。グーグルの創業者たちがGoogleを続けるか大学院に戻るか迷っていた話は有名です。自らを創造の場におくことで、徐々に正しい方向が分かるようになっていったというのが正解だと思います。

自分ももっとひたすらもの作りをしなければいけない、と改めて思いました。

素晴らしい作品なので、映画、書籍どちらでもいいのでより多くの方に観て/読んでいただきたいです。

P.S.ギズモードで映画の一部が公開されています。

<抜粋>
・ビジネスの経験を通して気づいたのは、「どうしてこんなやり方をするんだ?」と訊くと、「そういうふうにやるものと決まっているんだ」という答えが必ず返ってくるということ。どうしてそうするのか、その理由を知っている人間は誰もいない。誰もビジネスについて深い思索を巡らせていないんだ。それがわかったよ。
・そんなわけで、ビジネスにおいては多くのものが、私にしてみれば言い伝えにすぎない。どうしてそういうやり方をするかといえば、昨日も、その前もそうしていたからというわけだ。つまり、どんどん質問して、いろんなことを考えて、一生懸命働こうという気があれば、ビジネスはそれほど時間をかけずに学べるんだ。世界一難しいことではない。
アメリカ人は全員コンピュータのプログラミングを学ぶべきだと思うね。なぜなら、コンピュータ言語を学ぶことによって、考え方を学べるからだ。
(お金持ちになったことを問われて)でも、あの当時の私にとっては、いちばん大切なものではなかった。 いちばん大事なのは会社であり、人であり、私たちが作っていた製品であり、その製品を使って人々が何をできるようになるかということだったから、お金のことはあまり考えなかったよ。きみも知ってのとおり、私は一度も株を売らなかった。長期的に見れば、会社は絶対に成功すると確信していたんだ。
・市場を独占していれば、それ以上の成功なんてありえない。だから会社をさらに成功させるのは営業やマーケティング部門の人間であり、結局、彼らが会社の舵を取ることになって、製造部門の人間は意思決定のプロセスから弾き出されてしまうんだ。そして企業は優れた製品を作ることの意味を忘れる。市場を独占するまでに会社を押し上げてくれた、製品に対する感性や先進的な製品を生み出す才能が、製品の良し悪しという概念がない経営陣によって無下にされてしまうんだ。
優れたアイデアを優れた製品にするのに必要な職人芸という概念が彼らにはないし、たいていの場合、顧客をほんとうに助けたいという真摯な思いに欠けている。これがゼロックスで起きたことだよ。
・大きくなり始めると、誰もが最初の成功を再現したいと思う。そして、成功したのはプロセスに何か魔法が潜んでいると考える人間が多い。だから全社的にプロセスを統一しようとするんだ。 ほどなくして、プロセスこそがコンテンツだと、みんな勘違いするようになる。これこそIBMが転落した究極の原因だよ。
私はこれまでのキャリアのなかで、もっとも優れた人材はコンテンツを理解できる人間だということ、同時に彼らはうんざりするほど扱いにくい人間だということを知ったよ。わかるだろう。それでも大目に見て受け入れるしかない。彼らはコンテンツに関してはきわめて優秀だからだ。だからこそ、優れた製品ができあがるんだ。プロセスじゃない。コンテツなんだ。
・その病とは、すばらしいアイデアが仕事の9割を占めていて、そのアイデアをスタッフに示せば、スタッフは当然作業にとりかかってアイデアが実現すると考えてしまうこと。
・問題は、すばらしいアイデアとすばらしい製品の間には、とてつもない職人技の積み重ねが必要だということなんだ。それに、アイデアを発展させていく過程で、そのアイデアは変貌し、成長する。とりかかった時点で考えていたものと同じものができあがることなんて絶対にない。細部を詰めていくに従って多くのものを学ぶし、妥協しなければならない点も無数に出てくるからだ。電子にはできないことが必ずある。プラスチックにはできないこと、ガラスにはできないこと、工場やロボットにはできないことがね。こういったことすべてが絡んでくるから、製品を設計するというのは、5000のことを頭の中で考えるのと同じなんだ。そうしたコンセプトを一つにまとめて、それまでとは異なる新しいやり方で組み合わせたりして、自分がほしいものを生み出す。問題であれチャンスであれ、毎日何かしら新しいものが現れるたびに、全体をまた少し違った形で組み直すことになるわけだ。その過程がマジックなんだよ。
・けっして一人で成し遂げるわけではない。人というのはシンボルが好きだから、私はある種のシンボルにされている。しかし、Macを作り上げたのは、まさにチームの努力なんだ。初期のアップルで私が目の当たりにしたことについて、当時はどう説明すればいいのかわからなくてずっと考え続けてきた。
・でもソフトウェアの場合ーーかつてはハードウェアもそうだったけど、平均と最高の差は50対1、ひょっとしたら100対1かもしれない。人生でこれほど差がつくものはめったにないけれど、私は幸運にも、こういう世界に身を置くことができた。だから真に才能ある人材をみつけることによって、成功を築き上げることができたんだ。BクラスやCクラスの人材でよしとせずに、Aクラスの人材を本気で求めたんだ。
十分な数のAクラスの人材を集めると、たとえば苦労してAクラスの人材を5人集めると、その5人は一緒に働くのがすごく楽しくなる。なぜなら、そんなチャンスはそれまではなかったからだ。そしてその5人は、もはやBクラスやCクラスの人間とは働きたくないと思う。だから彼らは自主的にAクラスの人間ばかりを雇うことになり、こうした精鋭部隊が作られてAクラスの人材がどんどん増えていく。 Macのチームはそんなふうだったんだ。みんなAクラスだったんだよ。ずば抜けて優秀な連中だった。
・Macチームにいた連中に話を聞けば、あんなにハードに働いたのは始めてだったと言うだろう。あれは人生でもっとも幸せな時間だったと話す者もいるだろう。それでも全員が、人生でめったにないほど密度が濃くて大切な経験だったと、口を揃えると思うね。
・真に優秀な人たちは自分たちが優秀だということを知っているから、その人たちのエゴを甘やかしてやる必要はほとんどない。いちばん大事なのは仕事だし、みんなそれをわかっている。肝心なのは仕事。
・真に優秀で頼りになる人たちにしてやれることのなかで、何が一番重要かというと、仕事の出来が満足のいくものではない時には、それを指摘してあげることだ。はっきり指摘し、その理由をきちんと説明して、彼らが軌道修正できるようにすることなんだ。 その際、自分たちの能力を疑っているんじゃないかと思わせないようにしながら、同時に、その特定の仕事に関しては、チームの目的に貢献していないとわからせるようにしなければならない。
・ジョン(・スカリー)のビジョンは、アップルのCEOに留まること。そのためにはどんなことだってしただろう。1985年の初期、アップルは麻痺状態にあり、会社全体を指揮していく能力は当時の私にはなかったと思う。私は30歳だったし、20億ドルの企業を経営できるだけの経験はなかった。残念ながら、ジョンにもね。私の仕事はないと、はっきり言われたよ。きわめて悲劇的だった。
・唯一の問題は、マイクロソフトが美意識に欠けていることだ。完全に欠けている。細かい点を言っているわけではないんだよ。大きな視点で見てだ。マイクロソフトが独自のアイデアを生み出さず、製品にはほとんど文化がないという意味でだ。
・私はマイクロソフトが成功したことが悲しいわけではないんだ。彼らが成功したのはかまわない。大半が彼ら自身の努力の結果なんだしね。私が気に入らないのは、マイクロソフトが作っている製品が三流品だという事実なんだ。マイクロソフトの製品には魂がない。人にひらめきを与えるスピリットがない。実に凡庸だと思う。 悲しいことに、顧客のほとんどもまた、そのような魂をあまり持ち合わせていない。人類が着実に向上するためには、最高のものを手に入れて、それを広めることだ。そうすれば、より良いものに触れてみんなが成長し、眼識を養えるようになる。マイクロソフトはいうなればマクドナルド。私にはそれが悲しいんだよ。マイクロソフトが勝ったからではなく、マイクロソフトの製品が洞察力や創造力を示してくれないことが悲しいんだ。
・ソフトウェアとコンピュータの世界ではいま、ワクワクすることが二つ起きている。一つはオブジェクトだが、もう一つはウェブだ。ウェブはとても刺激的だよ。私たちが抱いてきた夢の多くがこれによって実現するからね。コンピュータが計算中心の装置に留まるのではなく、究極的にはコミュニケーションのための装置へと変化するんだ。ウェブによって、ついにこの変化が起きている。 それに加えて刺激的のあのは、ウェブはマイクロソフトが所有するわけではないから、革新的なアイデアがどんどん生まれていることだ。だから、ウェブは社会に多大な影響を与えるだろうと思う。
・将来、人類の歴史を振り返った時、人類が発明してきたあらゆるもののなかで、コンピュータがもしトップでなかったとしても、トップにきわめて近いところに位置づけられることになると心から確信している。人類の発明品のなかでこれほどすごいものはないし、シリコンバレーという最高の場所に、この発明が登場した絶好の時期に存在している自分は、なんて幸運なんだろうと思うよ。
・知ってのとおり、軌道を定めてロケットを打ち上げる際に、最初に方向をほんのすこし変えるだけで数マイルも飛ぶと、その方向には劇的な違いが生まれるんだ。 私たちはいま、その軌道設定の初期段階にいると感じるんだ。正しい方向へほんの少し動かしてやれば、進んでいくにつれてどんどんよくなっていくだろう。
・(正しい方向かどうか、どうすれば分かるんです?)究極的には美意識の問題だね。美意識だ。人類がこれまでに生み出してきたもっとも優れたものに触れ、それをいま自分が進めていることに取り入れていけるかどうかだ。ピカソがこう言ってる。「優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」とね。私たちはすばらしいアイデアをいつも臆面もなく盗んできた。
・マッキントッシュがすごい製品になった理由の一つは、マッキントッシュを作ったチームのメンバーが音楽や詩、芸術、動物学、歴史学の知識を持ち合わせていると同時に、世界有数のコンピュータ科学者でもあったことだ。
・それと同じものが、銀行員ではなくて詩人になりたいという願いを、人に抱かせるんだ。すばらしいことだと思うし、同じ精神を製品に注ぎ込んで製造し、人々に与えれば、手にした人はその精神を感じとれるだろう。

One thought on “創造とは何か?を知る「ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です