テンペスト
旧suadd blog » 本・芸術 » テンペスト
開国直前の琉球王朝末期を舞台にした壮大な物語。沖縄には縁がなくて一昨年に初めて行って(昨年2回目)、その奥深さに関心を持ち始めていたところだったので、民俗の描写が非常に興味深かったです。清と薩摩の間、さらに黒船到来、新政府の日本で揺れ動く王朝、科挙のような試験と王府の仕組み、最高神官の聞得大君加那志(きこえおおきみがなし)や王妃、側室が対決する男子禁制の御内原(うーちばら)などなど。
もちろん小説ですから、すべてが真実ではないわけですが、沖縄がこれだけ豊かな文化を持った一つの王国であったということを知ることができてよかったです。沖縄に行ってももっと楽しむことができそうです。
さて、内容についてですが、基本的にはおもしろいのですが、主人公がいじめられて危機に陥りなんとか切り抜けることの繰り返しの展開に、正直だんだん飽きてきてしまうのは否めません。浦沢直樹「Happy!」や韓流ドラマのような展開と言えば分かりやすいかもしれません。個人的には苦手なタイプなので、もう少しカタルシスのある気持ちのいいストーリーだったらよかったのになと思いました。
とはいえそれは好みの問題で、琉球を知るにも非常によい作品だと思いますので、ぜひたくさんの方に読んで欲しいなと思います。