生粋のリバタリアン、ロン・ポールを知る「他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ」

著者のロン・ポールは、アメリカの下院議員であり、生粋のリバタリアンです。共和党として大統領選挙にも出馬していますが、主流派からはまったく支持を得られず破れています。しかし、近年その主張には徐々に注目を集めており、特に若者を中心に支持を集め始めているそうです。

僕自身、リバタリアンだと言いながら、ロン・ポールについてはよく知らなかったのですが、本書を読むとその一貫性のある主張は非常に魅力的でおもしろかったですし、非常に勉強になりました。

本書では、税金から医療制度、麻薬禁止、海外援助、経済政策と連銀、外交と戦争、徴兵まで、様々な論点について論じてありますが、多くは納得できるものでした。連銀は廃止せよ、というのはものすごく革新的なアイデアのように思えますが、この点については別に著作があるようなので、そちらを読んでみたいと思います。

個人的に、長期に渡り一貫して、リバタリアン的主張を押し通してきた政治家がいたことに衝撃を受けました。もっとこの辺りは深堀りしていきたいなと思います。

※本書は副島隆彦氏が監修しており扇動的な序文がついていますが個人的にはこの辺りは態度保留したいと思います

<抜粋>
・政府は誰かから税金でお金を集めて来なければ、誰かのために一セントも使うことは出来ない。そして政府が集めてくるお金は、人々が一生懸命に働き蓄えてきたものだ。税金とは国家による泥棒なのである。
・市場を背景にした企業家は、市民に自社製品を自由に選んで買ってもらうことで利益を得る。ところが政治を背景にした企業家は、政府から独占を与えられたり、政府が競争相手を抑制することで利益を得る。
・つまり、所得税を導入できれば、関税を下げることができ、消費者への負担が軽くなると。「所得税は、あなたにとっては減税。金持ちたちには増税」と喧伝された。所得税の対象は、金持ちの中でも大富豪級の金持ちであるから心配は要らないと、説明されたのだ。 しかし、この約束は長続きせず、二、三年のうちに所得税は大増税された。そして、自分は金持ちではないので所得税を払う必要はないと考えていた庶民も、結局、所得税を払うはめになった。
・私たちは、不法移民に無料の医療診療や、行政サービスを行い、後にアメリカ国民になれる特典を認めている。だから、ますます多くの不法移民がアメリカに密入国してくる。そうしている間に、州政府や地方自治体が医療費を払いきれなくなり、何と病院が閉鎖されるという事態まで起きている。本末転倒だ。
・高齢者向けの医療保険制度や低所得者向け医療費補助制度が、まだ存在しなかった時代を例に考えてみよう。その次代の高齢者や低所得者は、今とほとんど変わらない負担で、実は病院で治療を受けられた。しかも、現在より質の高い治療を受けていたのである。 私は医師として一度も、高齢者向けの医療保険や低所得者向け医療費補助の政府からのお金を受け取ったことはない。その代わりに、治療代を払えない患者には費用を割り引いたり、無料で治療してきた。政府による医療制度ができる前は、すべての医者が、自分たちが経済的に恵まれない人々に対して責任を持っているということをちゃんと理解していた。そして低所得者に無料の医療行為をすることは、当たり前のことであった。今ではこのことを理解している医師は残念ながら、ほとんどいない。
・国民から税金という名目で財産を強制的に没収し、海外の政府に再配分するなど、私にはとても道義的に正当化できない。そして援助金というものは、援助先の国民を貧困な目に遭わせている無責任な指導者の懐に入るのが一般的である。海外援助は、いわばアメリカ人を他国の政権のために強制労働させることであり、私はもちろん賛同できない。しかし政府による海外援助は、このことと同じ意味なのである。
・過去五十年にわたる数々の経済的支援の成功は、海外援助によるものではなく、自由市場の大いなる働きによって生まれてきた。自由市場こそが、人間の健康や幸福の源なのだ。
・(注:大麻の)この禁止令は、少しも科学的でも医学的でもなかった。単にメキシコ人への悪意、連邦麻薬局の権益拡大の意識、低俗で先導的な報道による間違った情報やプロパガンダによって生み出されたものである。連邦議会でのこの重要な問題についての公聴会は、たったの二時間であった。大麻を禁止すべき理由として証拠もなく挙げられた健康被害は、ほとんど扱われなかった。
・その報告書には「すべてのアメリカの幼稚園児以上の子供に、精神疾患の検査を義務づけるべきだ」と提案されていた。(中略)この政策を導入することで誰が利益を得るだろうか。もちろんそれは製薬会社である。このような検査を全米で行えば、何百万人という子供が、新たに向精神薬が必要だと診断されるのは間違いない。
・インフレを明らかにする上で、もっと優れた方法がある。経済学者のミーゼスは、「インフレになると政府は、常に国民に物価に注目するように仕向ける」と書き残している。物価の上昇はインフレの結果であって、インフレ自体ではない。インフレとは通貨供給量の増加のことだ。もし私たちがこのことを理解すれば、インフレをどのように解決すればよいか、即座に解るだろう。単純なことだが、連銀に通貨供給量を増やさないように要求すればよいだけである。私たちは物価ばかりに注目することで、問題の本質を見誤ってしまう。そして賃金や物価の統制のような政府のインチキなインフレ解決策に賛同するようになってしまうのである。
・連銀が人為的に市場に介入して金利を下げた場合は、構造的に投資家を間違った方法に導くことになり、持続性のない好景気を誘発する。フリードリッヒ・ハイエクが1974年にノーベル経済学賞を受賞したのは、実はこのことを学問的に明らかにしたからだ。ハイエクの研究は「中央銀行が金利を操作すると経済全体に混乱を引き起こし、結果的に不況をもたらす」というものであった。
・しかし、いくら国民が自由市場を素晴らしいと思っていても、同時に私たちは経済の根幹である通貨制度を中央銀行に決めさせている。国民は、アラン・グリーンスパンやベン・バーナンキといった連銀総裁だけが、適切な金利や通貨の供給量を知り得るのだという馬鹿げた考え方を、きっぱりと捨て去らなくてはならない。適切な金利や通貨供給量は、市場だけが決定できるのである。
・(注:ショワー)「オサマ・ビン・ラディンがイスラム社会で支持を集め、人々の連帯感を保てる理由はたった一つである。それはイスラム社会に、アメリカの外交方針に対する共通の憎しみが存在しているからである。全イスラム世界が、アメリカの外交方針を嫌っているということでは、意見が一致する。我々がアメリカの国益のために外交方針を転換すれば、イスラム社会の人々の関心は、自分たちが抱えている自国の問題に移っていくことになる」
・(注:モーリー)言い方を換えれば、帝国建設の問題は基本的に曖昧なものなのである。自分の国が偉大だから自分も偉大であるという考えを、人々に植えつけ育てなければならないのである。(中略)個人としての名声や器量を持たない人々は、喜々としてこのような馬鹿げた話に飛びつくのである。それは本人が努力をしないで、自分に対する自信を与えてくれるからである。
・海外援助を受けた国は、援助金でアメリカ製品を買うことを求められる。つまりこれは、間接的なアメリカ企業への福祉なのである。このような政策は、私には絶対に受け入れられない。
・イスラエルのハージリア国際関係研究所によれば、イラクにアメリカと闘うためにやって来た海外の戦闘員たちは、その多くがこれまで一度もテロ活動に参加したことがなかった。しかし、アメリカが、イスラム教で二番目に聖なる場所とされているイラクに軍事侵攻したため、居ても立ってもいられず急進的になったという研究を発表している。
・(続き)つまりテロリストは、アメリカに対抗する正義の味方に自分を変えたのである。必要もなく正当性もないイラク侵攻によって、一般人が自ら望んでテロリストになる状況を、アメリカ政府は与えてしまったのである。
・(注:ウェブスター)私は、この忌まわしい徴兵制度がまったく我が国の憲法の土台に乗っていないと、今日こうしてわざわざ引用や資料を使ってまで説明しなければならないことを恥じるべきだと考えます。我々の憲法は自由な政府を基本に書かれているのです。ですから徴兵制のような権限は、どうしようと個人の自由の概念と両立するものではないのです。難しい説明をしなくても、この簡単な原則を知るだけで十分であります。憲法の条項の上に、この徴兵のような主張を押しつけることは、自由な政府の中身から奴隷制を抽出するような、道理に反した、巧妙ないかさまであります。