コーポレートガバナンスとは何か「決定版 これがガバナンス経営だ!」

コーポレートガバナンスは、不祥事防止などのコンプライアンスの確保だけではなく、中長期的に企業価値を向上させるためにある、ということを分かりやすく解説してあり、試行錯誤している身としては非常に勉強になりました。かつ途中物語になっていて、すごく分かりやすかったです。

創業者という主要株主がいることが多いスタートアップであっても、この概念を整理して知ることは非常に有用かと思います。

以下は抜粋・コメントです

失敗に対して、無限の責任を負うからこそ、うまく行ったらアップサイドを全部取れるという構造が、本来は公平で倫理的な制度である。株式会社は、アップサイドは無限で、ダウンサイドは有限の、ある意味、お気楽で無責任な制度である。  すなわち、非倫理的なリスク、モラルハザードを内包するものとして例外的な存在であり、本来であれば、厳格に制限され、統制されるべき存在なのである。この潜在的な非倫理性こそが、株式会社においてコーポレートガバナンスが重要である根源的な背景の一つなのだ。このことは以下の株式会社の歴史にも符合する。

株式会社の起源まで遡り、有限責任だからこその非倫理的なリスク、モラルハザードを防ぐ必要があると。

トップの資質、業務遂行能力に問題があると判断したとき、独立社外取締役としては、是正のための然るべき忠告や辞任勧告を、まずは取締役会の外で直接に行うのが手順だろう。しかし、その忠告や勧告に迫力があるのは、独立社外取締役にトップ解任に関する動議提出権と議決権があるからなのだ。  この意味で、監査役は「守りのガバナンス」では一定程度役割を果たすことができるとしても、「攻めのガバナンス」においては機能に大きな限界があると言わざるを得ない。

取締役と監査役の役割の違い。

取締役会では、企業が進むべき基本方向性とその観点からみた経営者・経営陣のパフォーマンスの評価、評価に連動した経営者・経営陣の任免などモニタリングに力を注ぐべきである。さらには、大型のM& A案件や重大不祥事など、企業の存続に関わるようなリスクを内包した事項、あるいは大きな戦略的方向性に関する議論に十分に時間を使うべきである。取締役会の決議事項における「選択と捨象」が問われるのだ。

監督責任を負う独立社外取締役の役割は、あくまでも監督が主であり、アドバイスが従である。もちろん取締役会の議論において、日常的に交わされる議論のかなりの部分は、アドバイス的な意見交換になるだろう。しかし、そこで本質的にモニタリングされるべきは、そういったやり取りから、「この会社の経営プロセスはちゃんと機能しているのか」「この経営者はその任にたえられる人物なのか」ということを読み取ることなのである。

改めてコーポレートガバナンス・コードを読んでみると、そこでは、あくまでも、「経営方針や経営改善について」という企業のかなり上位概念に関する助言、すなわちガバナンスの観点からの助言が期待しているのである。個別の業務執行に関する助言までをも、独立社外取締役の責務だと想定するものではない。その証左として、コーポレートガバナンス・コードでは、経営の監督と執行の分離を図ることが推奨されているのである。

上場会社は、取締役会による独立かつ客観的な経営の監督の実効性を確保すべく、業務の執行には携わらない、業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用について検討すべきである。  監督の本質は、個別の業務執行や経営判断を採点することや、そこに細かく介入することではなく、業務執行全体の妥当性、経営者の資質・能力の適性を評価することである。  独立社外取締役は経営者ほど当該意思決定に関わる詳細な情報を持たず、業界に関する専門的知見も保有していないことが通常であるから、執行レベルの意思決定に貢献することは難しいし、それは本来、期待される役割ではない。

取締役会と執行の役割の違いや、社外取締役の役割はあくまでアドバイスではなく、監督が主であるという話。

田中室長  ということはコーポレートガバナンスの整備とは、経営の仕組みが健全に機能し続けるための環境整備だということですか?
肥塚氏  そのとおりです。経営の根本的なあり方を問うています。その企業の特性、業態などを踏まえたときに、その長所を最大化し、短所をできるだけ消せるような経営スタイル、経営組織がどうあるべきかを、株主総会、取締役会を含めデザインする、まさに経営的な環境整備です。だから企業も色々、あるべきガバナンスも色々となるはずです。

答えは一つではないので会社に合わせてデザインする必要があると。