ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態/ロバート・フランク

ニューリッチとは資産1000万ドル以上の新富裕層のことで、本書ではニューリッチは、どういうひとびとで、どういう生活をし、何をしようとしているのかを明らかにした良書。新しい動きをウォッチしたいひとは必読だと思います。

個人的に一番おもしろかったのは、ニューリッチが自らの財産を子孫に残す、のではなく、どのように使うか、に焦点を当てているというところでした。そういったお金の使い道として、新しいタイプのNGOやNPOが生まれており、特にニューリッチの多くを占める成功した起業家が社会問題の解決に自らの力と金を使うのであれば、もっと世の中はよくなっていくのではないかと希望が持てました。

<抜粋>
・1980年代に、流れが変わりはじめた。情報技術と資本市場、政府による規制緩和の進展により、富裕層が經濟的地歩を取り戻し始めたのだ。資産額上位1%の層が国全体の資産に占める割合は、1989年には30%に急上昇し、その後33%にまで上がっている。
・長年、「ミリオネア(百万長者)」という言葉は「富裕層」と同義語だった。だが今日では、100万ドルあったところで、マンハッタンに2LDKのアパートを買うのがやっとで、高級住宅地のハンプトンズに住むことなどかなわぬ夢だ。(中略)その結果、両者の考える「富裕層」の定義は大きく異なってきている。
・富は人間の最低の部分も、最良の部分も引き出す、とティムは言う。つまり、富は人間性を誇張するのだ。「金は自白剤のようなもので、人間の本質を引き出してしまう。だから、嫌なやつは金をもつとますます嫌なやつになる」
・エチオピア国民や慈善家仲間からは賞賛されているバーバーも、大手の非営利組織からの受けは悪い。実際、彼はこうした組織にとって悪夢のような存在である。バーバーは「一縷の望み」によって、ユナイテッド・ウェイや赤十字、CAREといっった既存の大手慈善団体に寄付する必要がないことを示した。(中略)「ほとんどのNGOは、民間企業だったら破産している。私たちが生きているうちに変革の風が吹き、寄付をする人々が寄付金の使途についてもっとよく知るようになるだろう。実際の援助に寄付金の19%しか使っていない団体もあると知ったら、誰でもショックなはずだ」
・リッチスタン人、特に短期間で富を築いた人々は、自分の能力を過信し、複雑化する社会問題も自分なら解決できると思いがちだと、マリーノは指摘する。「簡単に金を儲けると、財産がほのめかすほど自分は賢くないという事実を見失ってしまうのです。自己顕示欲が強く、世界を変えようとする人が多すぎる。最初の数年は私も同じ過ちを犯しました。でもいまは、この世界では傲慢は凶と出ることを知っています」
・バーバーは、どんな援助にも成果目標を取り入れている。エチオピアの小規模NGOに資金を提供する場合、最初は第1四半期分の援助金しか渡さない。そのNGOが一定数の井戸を掘るなり、学校を設立するなりして目標を達成したら、初めて第2四半期分の援助金を渡す。目標を達成できなければ、援助を打ち切る。