より世界を知る「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」

世の中、特に先進国のひとびとは、自分はよくこの世界を知っていると思っているが、実は知らない、ということを事実(ファクト)の積み重ねで説明しています。著者ハンス・ロスリングはスウェーデンの医師、公衆衛生学者で豊富な経験があるだけでなく、TEDトークなどでも有名で本書もすごく分かりやすく読みやすい作品になっています。

確かに世界が誤解されているというのはすごくあると思います。僕も様々な書籍やネットの情報や世界一周などする過程で徐々に分かってきた部分が大きかったなと思っていて、それは今のビジネスにも繋がっています。本書を読みながら改めて思い返す部分多かったので、書評というよりはメルカリへの繋がりを抜粋コメントしていきたいと思います。

ナイジェリアと中国のレベル2家庭では調理方法がほとんど同じだったことを思い出してほしい。あの中国の写真だけを見た人は、「なるほど、中国ではこうやってお湯を沸かすんだな。鉄瓶を火にくべるのか。それが中国の文化なんだ」と思うだろう。だが違う。世界中のレベル2の人たちはみんな、同じような方法で湯を沸かしている。つまり、所得の問題なのだ。それに、中国でもそれ以外の国でも、違うやり方で湯を沸かす人たちがいる。それは文化の違いではなく所得の違いによるものだ。  人の行動の理由を、国や文化や宗教のせいにする人がいたら、疑ってかかったほうがいい。同じ集団の中に違う行動の例はあるだろうか? あるいは違う集団でも同じ行動があるだろうか? 考えてみよう。

僕も世界一周で感じたことのひとつが世の中一物一価なんだなということです。例えば、ホテル。新興国であろうがよいホテルは数万するし、お湯が出れば1,000円を下回ることはない。モノも歯ブラシは安いが質は悪く、日本と同じクオリティの高い歯ブラシは売っていない。恐らく高い歯ブラシがあれば同じ値段になります。同じようなものは同じ価格になっている。そしてどんな価格帯のものが多く求められるかはその社会の所得水準による、というのは大きな気付きでした。

時を重ねるごとに少しずつ、世界は良くなっている。何もかもが毎年改善するわけではないし、課題は山積みだ。だが、人類が大いなる進歩を遂げたのは間違いない。これが、「事実に基づく世界の見方」だ。

また、世界はどんどん良くなっているということも一つの大きなうれしい気付きでした。この本にあるように貧しい国は貧しいままだと僕も思っていましたが、全然そんなことはなく、みんな豊かになろうとがんばっていて、実際所得や生活水準もあがってきていました。

 「地球温暖化を引き起こしているのはインドや中国やそのほかの所得レベルの上がっている国だ。その国の人たちはがまんして貧しい暮らしを続けるべきだ」という考え方は、西洋では驚くほどあたりまえになっている。バンクーバーの大学でグローバルトレンドについて講演したとき、弁の立つ学生が声に絶望をにじませてこう言った。「あの人たちがあのまま生活してたら、地球が持ちません。あの人たちに発展を続けさせてたらダメなんです。あの人たちの国の排気ガスで地球が死んでしまいます」。まるで、西洋人がリモコンひとつでほかの国の数十億人の生活を操作できるかのように話しているのを聞いて、わたしはいつもあきれてしまう。周りを見回したが、ほかの学生たちはあたりまえのように聞いていた。みんなあの学生に賛成していたのだ。  人間によって大気に蓄積されてきた二酸化炭素の大部分は、現在レベル4にいる国々がこの 50 年間に放出してきたものだ。カナダのひとりあたり二酸化炭素排出量は、いまでも中国の2倍にのぼるし、インドと比べると8倍にものぼる。世界を金持ち順に並べて、いちばん上の 10 億人が毎年どれほどの化石燃料を燃やしているかをご存じだろうか? 全体の半分以上だ。次に金持ちな 10 億人が残りの半分を燃やし、その次の 10 億人が残りの半分を燃やし……と続いていく。いちばん貧しい 10 億人は、全体のたった1%しか使っていない。

そして、問題意識のひとつがこういった新興国が豊かになるために、リソースやエネルギーの観点から、先進国がこのままの生活をすることはできないということでした。

帰国した2012年末スマートフォンの急激な普及をみてこれは全世界のひとがスマートフォンを持つ時代が来ると確信できたし、スマホ向けのC2Cサービスがいくつか始まっていたのをみて、こういったC2Cサービスがもっと求められるようになるし、それはむしろ全世界でこそ必要とされるだろうと思いました。そうしてメルカリを創りはじめたのでした。

現実的に考えてみようじゃないか。いまも洗濯物を手で洗っている世界中の 50 億人は、何を望んでいるのだろう? 彼らがどんなことをしてでも手に入れたいと思っているものは何だろう? 彼らが「経済成長を控えます」なんて自分から言い出すのを期待するのは、ばかばかしいほど非現実的だとわかるはずだ。洗濯機、照明、まともな下水道設備、食べ物を保存できる冷蔵庫、目の悪い人にはメガネ、糖尿病ならインシュリン、家族との旅行のための交通手段を、わたしたちと同じように彼らが欲しがるのはあたりまえだ。  そうしたものをすべて手放して、ジーンズやシーツを手洗いする覚悟が、あなたにはあるのだろうか? あなたにそれができないのなら、どうして彼らに不便でもがまんしろなんて言えるのだろう? 犯人を捜し出して責任を押し付けても仕方がない。とてつもなく深刻な地球温暖化のリスクから地球を守りたい? だったら必要なのは、現実的な計画だ。110億人全員が望んだ生活を送れるような新しいテクノロジーを開発することに、力を注ぐべきなのだ。みんながわたしたちと同じレベル4の生活を送り、全員がいまより快適に暮らせるようなスマートな解決策を見出さなければならない。

特に先進国のひとびとはもっとリソースを大切に使っていく必要があって、新興国はひとっ飛びにそういった世の中になっていくと思います。

メルカリはまだUSすら成功できたと言えない状況ですが、海外にこだわっているのもその先の他の先進国だけでなく、新興国こそこういったC2Cサービスが必要とされていて、そのための第一歩だと考えているからです。

僕自身も世の中をより知ることが、ビジネスの着眼点になったし、よりよい世界を作ることの第一歩になると思うので、本書で本当の世界を知ることにはすごく意味があるはずです。そして、それだけでなく実際に行ってみるのもよいのではと思ってます。

チンパンジークイズ、ぜひトライしてみてください。