2019年謹賀新年+本ベスト5

■2018年の振り返りと今年のテーマ

2018年は、メルカリのIPOという大きなマイルストーンもあったのですが、個人的には、1,000人を超えた組織をどう経営していくのか、ますます社会性が求められるC2C事業をどう展開していくか、が大きなチャレンジで、未知の体験にすごく苦しんだ一年でした。

2018年のテーマは「現実を知る」だったのですが、自分(たち)が現実の一部になってしまっていて、自分(たち)を知らないと現実も知れないし、現実を知ると同時に自分(たち)や現実が変質する、というシュレディンガーの猫のような状況になってきている気がします。

こういった状況下では、自分(たち)だけが理想を追求するわけにはいかず、様々な社会的な問題を(少しだけ)解決したり、折り合いをつけたりしながら、それでも自分たちが信じるよりよい世界の実現を目指していく苦しい仕事になっていきます。

しかし、それこそが「現実を知る」ということだし、昨年も書いた「こういった紆余曲折こそ生きている実感が大きかった」のをさらに強く感じた一年でした。

そういった中で、2019年は2年前にも掲げた「寛容(クレメンティア)」を再度テーマにします。まずは自らが何事にも寛容になることが、少しでも世の中をよくすることの第一歩になると信じてます。

■2018年の本ベスト5

5位 最近5年間のこと「メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間」

手前味噌感はありますが、いわゆるメルカリ本を入れさせてください。ここ5年間丹精込めてやってきたことをこうしてまとめていただけるのは大変ありがたいことです。どうやら売れ行きはよいようで胸をなでおろしています。

4位 複雑な人物「江副浩正」

取締役会は江副の独壇場になった。江副の成功体験に引きずられ、誰も反対意見を言い出せないまま、取締役会は江副の思い通りに動いていった。そしてリクルートは「誰もしていないことをする主義」からはほど遠い、デジタル回線、コンピュータレンタルの下請け事業、そして不動産業へと急激に傾斜していく。  次々と新規事業を開設していった「江副一号」。それとは対照的に、「江副二号」は何一つ新しい事業を開発し、軌道に乗せられずに、リクルート王国の国王として君臨した。

リクルート創業者がどのようにリクルートを成功させていったのか、やがてその歯車が狂い始める。リクルート事件はそのきっかけにすぎなかった。しかし、その後リクルートが数兆円企業にまで成長していることを考えると、江副氏の目論見はほとんど成功したとも言えるのかもしれない。

3位 幅広い知識で迫る「貨幣の「新」世界史」

人類学者のデイヴィッド・グレーバーは、ピタゴラス、ブッダ、孔子など影響力の大きな宗教指導者が、紀元前六世紀に硬貨が発明された地域──ギリシア、インド、中国──に暮らしていた事実を指摘する(15)。そして、お金も永続的な宗教も、どちらも紀元前八〇〇年から紀元六〇〇年にかけて誕生したのは、決して偶然ではないという。市場の重要性が高まるにつれ、組織的な宗教が広がったのではないかと考えている。たとえば、イエス・キリストの初期の弟子たちの多くは貧しかったので、物質的な富に関して逆説的かつ解放的な見識を素直に受け入れたのかもしれない。

昨年は仮想通貨バブルが弾けた年でもありましたが、歴史的にみれば仮想通貨によりお金の意味が変質しつつあるのは避けられないと思います。

2位 ローマへと続く「ギリシア人の物語」

 「決定的な何か」とは、言い換えれば洞察力である。これを辞書は、見通す力であり見抜く力、と説明している。イタリアでは、この種の能力に欠ける人を、自分の鼻の先までしか見る力がない人、という。だから、洞察力のある人とは、その先まで見る力がある人、のことである。  だが、洞察力とは、自分の頭で考える力がなくてはホンモノにはならない。  私には、アレクサンドロスは配下の将たちに、考える時間を与えなかったのではないか、とさえ思えるのである。

ギリシアの勃興から、アレキサンダー大王までを描いた塩野七生の歴史書。連戦連勝でペルシアを滅ぼし、インドまで東征する凄まじさ。わずか32歳で死去したためその後の混乱も印象的でしたが、歴史を作るというのはこういうことかとも思いました。

1位 ホモ・サピエンスの行く末「ホモ・デウス」

やがてテクノロジーが途方もない豊かさをもたらし、そうした無用の大衆がたとえまったく努力をしなくても、おそらく食べ物や支援を受けられるようになるだろう。だが、彼らには何をやらせて満足させておけばいいのか? 人は何かする必要がある。することがないと、頭がおかしくなる。彼らは一日中、何をすればいいのか? 薬物とコンピューターゲームというのが一つの答えかもしれない。必要とされない人々は、3Dのバーチャルリアリティの世界でしだいに多くの時間を費やすようになるかもしれない。その世界は外の単調な現実の世界よりもよほど刺激的で、そこでははるかに強い感情を持って物事にかかわれるだろう。とはいえ、そのような展開は、人間の人生と経験は神聖であるという自由主義の信念に致命的な一撃を見舞うことになる。夢の国で人工的な経験を貪って日々を送る無用の怠け者たちの、どこがそれほど神聖だというのか?

ひとは神になろうとしていることを明らかにしようとする超意欲作。僕の周りでは2018年一番議論になったし、そういった時代にどういう戦略で生きていくのかを考えさせられました。

P.S.2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年2017年のベスト本はこちらからどうぞ。