なぜ日本に起業家が少ないか

日本に起業家が少ない理由 – Chikirinの日記

このエントリをきっかけに日本の起業家が少ない理由をいろいろな方が分析してくれているようです。起業家としての僕の感覚からすると、情報ギャップがかなりあるんじゃないかと思っています。

例えば、1999年に東証マザーズができるまでは、上場するまでに10年以上かかることが普通でした。僕も大学時に何度か起業家を少人数で囲んで話を聴く機会がありましたが、どの方も非常に苦労されて起業され、しかもすでに30代後半〜40代の方が多かったです。

つまり昔は、普通に起業しても、一定の成功をおさめるまでに、非常に時間がかかっていました。しかし、現在はよいビジネスモデルがあれば数年で上場することも不可能ではありません。
※もちろん上場はゴールではありませんが、創業者が一定のリターンを得る機会でもあります

次に、日本では戦後、会社員が勝ち組の時代が長く続いていました。経済が急激に成長していたのでみな豊かになれたし、安定した立場でもあるわけで、合理的に考えて、どこかのできれば大きな企業に所属することが有利な時代がありました。

しかし、今は企業間の競争も激しくなり、企業内においても熾烈な出世競争や合理化が行われていますし、特に給与も右肩上がりなわけでなく、サラリーマンだから安心とも言えなくなっています。

一方で、起業については、長らくリスクが非常に大きい、あるいはリターンまで時間がかかる、という時代が続いていました。

しかし、最近は、確かにリスクは依然高いものの、資金調達も多様化しつつあり、失敗したからといって、借金に追われないようにすることも(やりようによっては)可能ですし、またネットの普及により(ネットビジネスに限らず)昔に比べると明らかにイニシャルコストが低くなってきています。

さらに、これが僕としては大きいと思うのですが、日本では優秀なひとの多くは大企業や国などに就職するため、世の中の大きな組織が埋められない需要に対する、供給元としてのベンチャーが相対的に少なくなっています。

つまり、大枠で考えると、

・起業は、ハイリスクハイリターンからミドルリスクハイリターンへ
・会社員は、ローリスクミドルリターンからミドルリスクローリターンへ

それぞれ向かっているという傾向があると思います。

しかし、依然多くのひとが「起業はハイリスク」という固定観念に縛られているため、なかなか起業するひとが増えないのではないかと。

なので、個人的には、もっと起業すればいいのに、と思ったりしてます。

P.S.だからというわけでもないですが、ハイパーインターネッツというベンチャーに投資しました。今後も機会があれば、特に若いひとに投資していきたいと思います。

今やっている仕事は、今のユーザー数を何倍にも増やす可能性がありますか?

いろいろと細かく調整していく仕事は、どんどん結果が出て、きちんとなっていくからすごく気持ちよいです。仕事しているという感覚もありますし、心地良い環境で仕事ができるようになります。

でも、そういう仕事って、実はユーザーさんへのバリュー(価値)というのは小さいことが多い。ユーザーさんは本当はそんな細かいことは気にしていなくて、もっと大きな「○○が簡単にできる」とか「××が無料でできる」とか何か一点でのみ惹かれて使ってくれていたりします。

細かく調整していく仕事は、全体へのインパクトはほとんどありません。一気にユーザー数が何倍になったりしません。

大企業ならそれでもいいかもしれません。でもベンチャーならやるべきなのは、圧倒的なバリューをユーザーさんに提案することだと思います。「おお、すごい!」と思ってもらって、クチコミしたくなるような、圧倒的な仕事をすることだと思います。

でも、これはほとんどのひとにとって、恐怖以外の何ものでもありません。大きく変えると、今までのユーザーさんからの反発をくらって、使ってもらえなくなってしまうかもしれません。

だから、ほとんどのベンチャーは、ちょっとした使い勝手をよくするとか整合性を取るとかいう調整ばかりをしてしまいます。今いる少ないユーザーさんを大切にしすぎて、可能性のある大衆を取り込むことができないで終わります。

つまり、自分のやっていることが、自分のための仕事なのか、ユーザーさんのための仕事なのかを常に考える必要があります。今やっている仕事は、今のユーザー数を何倍にも増やす可能性がありますか?

自分の気持良さとか心地良さは無視して、ほとんど失敗するかもしれないけれども、ユーザー体験をダイナミックに変えて、桁の違うユーザーさんに使ってもらえる「可能性のある」仕事をしなければいけません。

失ってもいいから、ダイナミズムに賭ける、ことがベンチャーがやることです。