天才ボクサーに対戦相手から迫る「怪物に出会った日」

井上尚弥は25戦負けなし、世界4階級制覇王者で、日本ボクシング史上最高傑作と呼ばれています。その井上尚弥に、過去の対戦相手へのインタビューから迫るドキュメンタリー。

「心・技・体でいうと、技と体が凄いのに心が弱いボクサーって多いんです。井上君は試合中に心の揺らぎがなかった。どんなときでも平然としていた。心がしっかりしているから、あれだけのパフォーマンスができる。僕は闘ってみて、ハートがモンスターだと思いました」  二十八分九秒という長い時間、対峙した者にしか分からない「井上尚弥像」だった。(佐野友樹)

「全部がハイレベルすぎるんです。ディフェンス、オフェンス、パンチの当て勘、スピード、フィジカル……。戦力のグラフを作るとしたら、全部の項目が十で大きい。七とか八がないんです。すべてが必殺技くらいのレベル。試合の後、スパーリングしたじゃないですか。『ジャブがハンマーみたいだった』って僕は言いましたよね。でも、本当はよく分からない。だって、あんなパンチを経験したことがないから、喩えようがない。他にそういう人がいないんですよ」(田口良一)

「今までたくさんの世界王者とやってきたけど、スピードは一番。パンチも一番。パワー、ディフェンス、フットワーク、リズムもいい。全部がバーンと抜けている。普通はパンチが上手い人はディフェンスが悪かったり、どこか欠けている部分がある。みんな井上君みたいな動きをしたい。僕だってそうしたい。でも、できないから今のスタイルになっている。だからボクサーの理想なんですよ」(河野公平)

対戦相手は一様に、その強さを語り、負けても対戦できたことに誇りを持っているのが印象的。当然ながら家族も含めたドラマがあるわけで、一心不乱に努力をしたが叶わなかった物語にも心を打たれます。

また、1章読むごとにYouTubeなどで解説動画を観ると、ものすごい臨場感で大変オススメです。今年12月26日に次の世界王座戦がありますが、ものすごく楽しみです。