テスラ、スペースX、スターリンク、X(Twitter)などなどのイーロン・マスクの伝記。『スティーブ・ジョブズ』伝記も書いたウォルター・アイザックソンが手掛けており、ものすごい臨場感。
とにかく破天荒すぎる。ものすごい勢いでいくつもの事業を立ち上げ、その多くを成功させています。ただその過程では泊まり込みをしたりしながら、めちゃくちゃに現場に入り込み、決定的な意思決定をしています。だからこそ成功しているとも言えますが、100%正解の判断をするというわけではないようです。またその過程では、暴言や突然の解雇も含め、多くのひとの人生を破壊するような言動もしています。
「マスクはスティーブ・ジョブズと同じタイプだと思っているんです。とにかくクソなヤツはいるものだ、と。ところが、ふたりともすごい成果をあげています。で、つい、考えてしまうわけです。『もしかして、あの性格と成果はセットなのか?』と」 セットであればマスクの言動は許されるのかと突っ込んでみた。 「これほどの業績に対して世界が払わなければならない対価が、くそ野郎でなければ達成できないなのであれば、そうですね、たぶん、それだけの価値はあると言えるのではないでしょうか。私はそう思うようになりました」 ちょっと考えて、一言追加が出てきた。 「でも私自身がああなりたいとは思いません」(注:元テスラ暫定CEO マイケル・マークス(元フレクストロニクスCEO))
ロスのマスクに対する思いは複雑だ。まず、関係は基本的によかった。 「合理的だしおもしろいし、魅力的なんですよね。そしてビジョンを語る。ちょっとほらっぽかったりしますが、基本的に、すごく引き込まれる形で」 だが、ときに、高圧的で意地の悪いダークなマスクが顔を出す。 「悪のイーロンです。あのイーロンには耐えられません」 「彼を嫌っていると言わせたい人が多いようですが、そんな単純な話じゃありません。だから彼は魅力的なんじゃないでしょうか。ちょっと夢想家っぽいところがありますよね? 複数惑星にまたがる人類とか再生可能エネルギーとか、それこそ言論の自由とか、グランドビジョンを掲げ、そういう大目標を実現するための精神的・倫理的な世界を身のうちに構築しているわけです。だから、彼を悪党呼ばわりするのは違うと私は思ってしまいます」
自身のことも考えてみると、起業したてのときなんかはこういう色は濃かったように思います。ただ自分の場合、その判断が全然間違ってることが多かったことから、いかにひとに助けてもらって共にいい経営判断をしていくかとシフトしていったという感覚があります。
マスクがそうならなかったのは、性格もあるでしょうけども、それでおそらく本質を掴んで成功することが多かったから、ということのも大きいでしょう。だからこそ、性格が温存されたのかもしれません。
ただ、その人生は気分も事業も(私生活も)ジェットコースターのようで大変そうで、まさにマイケル・マークスが言うように「でも私自身がああなりたいとは思いません」と私も思います。ただそれによって素晴らしく人類を前進させるイノベーションが起こっているわけで、感謝したいです。とはいえ、X(Twitter)とかのディティールを観ていると、逆に触れることもありそうなので注意も必要そうですが。。
いずれにしても伝記といっても、イーロン・マスクは全然存命なので、これからも目が話せない人物だと思います。