極端を知る「イーロン・ショック」

イーロン・マスク氏によるTwitter社買収時にTwitterジャパン社長だった笹本裕氏が、その後何があったのかを見解を交えて書いています。イーロンのダイナミックな経営が垣間見れて非常にエキサイティングでした。

棚卸しをする時間がもったいないから、棚を壊してしまう。そこから始めてみることもときには必要なのかもしれません。棚は卸さない。「まず壊して、大事なものがあったらあとで拾えばいい」というような進め方が多くありました。

2回目か3回目のリストラ時には、オンラインで一人ひとりの意思が確かめられました。「今後のTwitterにコミットする覚悟があるのかないのか?」。ある場合にはイエス、ない場合は返答しない。返答しない場合は自主退職とみなされる方式でした。今までのキャリアで経験したことのない方法で、瞬時に判断を求められますが、無理難題をぶつけられると、それに応えようと必死になります。

「能力があるかないか」というよりも「応える意思があるかないか」のほうが大きいのです。それさえあれば、意外とできてしまう。できるための解決策を探そうと、必死になればできてしまうものだと思うことが多かったです。  イーロンがつねに言っているのは「とにかく俺は、強いやつしか残したくないんだ」ということです。それはつまり「棚を壊しても、それをまた作っていこうとする人」を彼は望んでいるということです。

普通は「これを言うと、あの部署の誰々はバツが悪いな」みたいなことをつい気にしてしまいます。でも、そんな忖度をしている暇がないのです。それを意識させないぐらい、頻繁にやりとりする。まわりに気を使うことは許されない。そうやって自然と組織の壁が取り払われていっている感覚がありました。

ちなみに2023年の1月に、Slackを全部リフレッシュしました。スレッドがあまりにもたくさんあって、みんなが自由に会社への批判なんかを書き込んでいたからです。イーロンが「一度全部きれいにする」と言って立て直しをしました。

そうやって残った人たちに宿題を課しました。それが週報や月報の提出です。中には「小学生じゃないんだから、こんなことやってられない」と辞めていく人もいましたが、逆に言えばひたすらそれを真面目にやれる人だけが残っていったのです。

どれもなかなか強烈です。。著者のレスポンスはこちら

まずは自分のタイプを知っておくことです。  突然変革が起きたときに「自分がそれに適しているのか、適していないのか」を最初に見極める。適していないのであれば、速やかに次を考えることです。適性がありそうなら、残る。残るにしても、そこから生き抜いていくためのスキルがあるのかを冷静に見極める。そうしないと、ただ疲弊するだけ。不幸になるだけです。

私はコロナ禍になってリモートで仕事するようになりました。  東京の喧騒を離れて「郊外の自然のなかでゆったりと働けたらいいな」などと思っていた。そこにイーロンがやってきて、そんな悠長なことは言えなくなりました。 「このままユートピアみたいな会社で数年働いて、リタイアするのもいいな」と思っていた自分がいたのですが、それではいけないと思ったのです。

ここまでの極端な事例はなかなかないですし、その結果X社の現状がどうなっているかは非公開会社になったため不明なところはありますし、断続的な大規模レイオフによる疲弊もすごそうです。ただ、チェンジ・マネジメントという意味では、極端を知れたのは大変勉強になりました。