サマーウォーズ:古き良き日本と新しい日本

サマーウォーズ (2009)

【監督】細田守

★★★★★ [100点]「古き良き日本と新しい日本」

時をかける少女」の細田監督最新作。まずとにかくストーリーが予測不可能でおもしろいし、世界観が独特だし、泣けるしで傑作と言ってよいかと思います。

ストーリーは、昔日本にありがちな大家族な田舎シーンと、10億人が利用する仮想空間OZを交錯しながら話が進み、古き良き部分と先端な部分が入り交じって極めて独特な世界観を持っています。

まず田舎シーンについては、大黒柱のおばあちゃんがキーポイントになっており、大家族で田舎でありながら、武家出身という設定でさっぱりとした人間関係が築かれています。でありながら現実生活ではケータイを始めとしたデジタルモノもふんだんに取り入れられており、同じアニメの大家である宮崎駿が最近特に警笛を含めたメッセージ色が強まっているのに対して、もっと自然体に「ありえる」日本を描き出していると思いました。

また、OZという仮想空間内のサブカルチャー色を持ったゲーム的な世界感も秀逸で、こういった世界観だと「マトリックス」のような哲学的で終末論的な暗い世界になりがちですが、現代日本人が軽やかにインターネットを「ケータイ」で使いこなして、掲示板やケータイ小説などのサブカルチャー空間を築き上げている感覚を映し込んでいると思います。

つまり、古き良き日本と新しい日本を見事に織り込んでいるところが素晴らしいところかなと思いました。

それ以外にも、高校生の主人公とヒロイン夏希の淡い描写とか、大入道の雲と高校野球とか、OZ内での数々のオマージュと色彩感覚とか、細かい部分でのクオリティが非常に高くてうれしくなってしまいます。

難を言えばストーリー的に無理がある部分が多いところかなとも思いますが、あまりつじつまを合っているか気にしないで畳み掛けるような展開にそのまま乗ってしまうと、あっという間に時間が過ぎてしまうと思います。

個人的には、「ダークナイト」以来の衝撃を受けたので、また観に行っちゃうかもしれません。

Posted by suadd on 2009/08/26 with 映画生活