新たな歴史解釈を提示する「危機と人類」

銃・病原菌・鉄』などで知られるジャレド・ダイアモンドの新作。様々な国がどのように危機を乗り越えていったのかを7つのケースをとりあげていて、非常に興味深く、おもしろかったです。

ただしそのおもしろさは物語(ストーリー)としてのおもしろさであることは否定はできません。例えば、日本も明治維新以降現代まで、取り上げられているのですが、確かに「危機」という観点から日本が追い込まれ、成し遂げてきたことを見るのは非常におもしろいのですが、一方で捕鯨や戦争責任においては重要な論点が欠けているなと思った部分もありました。また日本ではないですが、中国という大国の台頭、テクノロジー的観点についてももう少し解釈があるかなと。

とはいえ複雑な情勢の中で大国への対応は理想論では語れない点、国家が国家たりうるナショナリズムの重要性、地理的な条件や権力者の権力への固執など、すごく興味深く、新たな解釈を提示したという意味で非常に意味があると思います。

ますます不安定になっていく世界について、どう考えるべきかについて非常に参考になる一冊だと思います。