まさか!?/マイケル・J・モーブッサン

LMCMというファンドのチーフ・インベストメント・ストラテジストで、コロンビア・ビジネススクールのファイナンス非常勤教授のマイケル・J・モーブッサン氏が「ブラック・スワン」「なぜビジネス書は間違うのか」などのビジネス書の内容の一部や、研究事例などを元に、意思決定の考え方や、ミスをするポイントについてまとめて書いています。

個人的に、非常に興味のあるテーマなので、大変おもしろかったです。結局のところ、世の中には間違った考え方が氾濫しているので、それらに気づくことが重要ですが、しかし、それらは巧妙に正しいふりをしています。こういった著作を読むことで、気づきを得て、少しは判断ミスを防ぐことができるようになります。

いくらがんばっても、判断ミスをゼロにすることはできませんが、こうやって少しでも前進していきたいなと思っています。

<抜粋>
・よい決断を下したにもかからわず、ひどい結果が出たら、自らを奮い立たせ、再び立ち上がり、もう一度ゲームに取り組む準備をすること。それだけだ。
・他人の意思決定について評価する時もまた、彼らが得た結果よりも決断を下すプロセスに目を向けるのがよいだろう。たまたま偶然に大きな成功を収めるような人も少なくない。たいていは、彼らはどうやってその結果が得られたのか、まったく検討がついていない。しかし、多くの場合、運命の女神が彼らに微笑むのをやめたとたんに、彼らは奈落の底に突き落とされる。同様に、スキルのある人でも、一時期だけひどい結果を被るようなこともあるが、そこで落胆してはならないのだ。
・ある研究で、研究者が二つのグループの社会人に、1ドルで、50ドルの賞金が得られる宝くじに参加してもらった。(中略)抽選の前に、研究者が被験者に、宝くじのカードをいくらで売れるか訊ねてみた。カードを自分で引いたグループの回答は9ドル近くだったのに対して、自分で引けなかったグループは2ドル以下であった。自分である程度、状況をコントロールしていると信じている人は、当選確率は実際よりもよいと思ってしまうのだ。
・統計的に、アクティブにポートフォリオを構築する資産運用マネージャーは、市場のインデックスよりも低いリターンしか得られておらず、これはどの投資会社も認めている。この理由は極めてシンプルだーー市場は非常に競争が激しく、かつ、運用マネージャーは手数料を取るのでリターンが減ってしまう。市場はまた、適度にランダムで、時の経過につれてすべての投資家がよい結果と悪い結果に出合うようになっている。にもかからわず、アクティブ運用マネージャーは、我こそは市場よりもはるかによいリターンを得られるかのように振る舞う。
・心理学者リチャード・ニスベットの研究によれば、東洋人と西洋人の間には大きな文化的な相違があるという。東洋と西洋では経済的、社会的、哲学的な伝統が異なるため、ある出来事に対する受け止め方が変わってくるのだ。東洋人はより周囲の状況に関する説明をしたがり、一方、西洋人は個別の事柄に固執する。東洋と西洋の間で認識の違いが生まれるのもうなずける。例えば、東洋人は環境に合わせようとするが、西洋人は自分がそこにいる目的を明確にしたいと思う。
・よい結果が繰り返し起こると、人は自分のやり方が正しく、それですべてうまくいっていると考える。この錯覚が人に根拠のない自信を植えつけ、(たいていはよくならない)予期せぬ出来事へとつながるのである。
・人が複雑なシステムを考える時に犯すもう一つの過ちは、心理学者が還元主義的先入観と呼ぶ(中略)人間の、複雑な問題をよく考えずにシンプルに片づけてしまおうとする傾向である。
・この先入観のよい例が金融である。早くは1920年代のリサーチですでに、価格は通常の正規分布に当てはまらないと示しているのにもかかわらず、経済学理論はいまだに価格は正規分布するということを前提に置いている。もし金融の専門家がアルファ、ベータ、もしくは標準偏差という言葉を使って証券市場の説明をするのを聞いたことがあるならば、それは実際に目の前で還元的先入観を見ていたことになる。
・非常に稀で極端な出来事は、ポジティブなものもあれば、ネガティブなものもある。集合的なシステムについて考える際には、コストをそれほどかけずに、なるべく多くのポジティブな出来事に出合い、ネガティブな出来事が起きても大丈夫なように対策をしておくことである。
・例えば、ある企業がよい業績を出していると、マスコミが「正しい戦略、ビジョンのあるリーダー、士気の高い社員、すばらしい顧客志向、活気あふれる企業文化……」と賞賛するであろうことをローゼンツワイグは述べている。しかし企業の業績がその後、平均に回帰すると、傍観者たちはこれらすべての指標が悪くなったと結論づけるだろうが、現実にはそのようなことは何も起こっていないのである。多くの場合、同じ経営陣が同じ戦略で、同じ経営を行っているのである。
・本書で述べる意思決定の過ち(判断ミス)はたくさんの人に共通に起こる、よくあるもので、日常で見つけやすく、なおかつ防げるものでなければならないと述べた。私の意図が伝わっていれば、本書に出てくる事例のような過ちをいろいろなところで見かけるようになるだろう。最初にやるべきことは、毎日流れてくる多くの情報の中から、これらの過ちに気づくことである。
・いったん結果が明らかになると「後知恵のバイアス」がかかって、多くのコメンテーターが最初からそんなことはわかっていた、というようなことを偉そうに言いはじめる。また、人は、物事がうまくいかなかったのは他人のせい、うまくいったのは自分のおかげだと言いたがる。そして、本書では、日常で目にする事件や、さまざまな決定の結果を考える際には慎重でいようと呼びかけている。