いろいろやらなければならないことが多いように見えるが、実は本当に今すぐ解決すべきイシューは少ない。イシューを特定してから集中して解決していった方がよいということで、そのやり方やアウトプットの質を高めるやり方などが書かれています。
これはまさにそうで、過去を振り返っても、結局のところ本当に成果を出せたということは年に1,2回しかない。しかも、そのうち特大の成果は数年に一度しかないことを考えれば、まさにイシュー設定が非常に重要だということが分かります。
もう一つの観点としては、成果を出せるひととなかなか出せないひとの違いというのは、ほとんどこのイシュー設定がうまいかどうかにかかっています。一見すごくスムーズに的確な判断をしながら仕事をこなしているように見えても、成果がなかなか出ないのはうまくイシューを特定できてないからだったりします。
これらを考えれば、仕事を目一杯詰め込むのではなく、いつもある程度余裕を持って様々なものにアンテナを張りイシュー探しをしていること、何か引っ掛かりがあったときにこれは重要なイシューかもしれないと時間を割いて考えるということが重要だということが分かります。
その他マッキンゼー仕込みのテクニックも役に立つのですが、本書のイシューの考え方は改めて僕にとっても気づきが多く、非常に勉強になりました。
<抜粋>
・世の中にある「問題かもしれない」と言われていることのほとんどは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。
・問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。ただ、これは人間の本能に反したアプローチでもある。
・単純なことのようだが、いざやってみると、これは僕ら日本人にはそれほど簡単ではないことがわかる。言葉で明確に表現しないのは、日本人の言語・文化のもつ思考上の特性でもあるので、ここは意図的に訓練することを薦めたい。
・知らない人に電話でインタビューを申し込むことを英語で「コールドコール」と言うが、これができるようになると生産性は劇的に向上する。あなたがしかるべき会社なり大学・研究所で働いており、相手に「守秘義務に触れることは一切話す必要はなく、そこで聞いた話は内部的検討にしか使われない」といったことをきちんと伝えれば、大半は門戸が開くものだ。実際、僕自身もこれまで数百件の「コールドコール」をしてきたが、断られた記憶は数えるほどしかない。生産性を上げようと思ったらフットワークは軽いほうがいい。
・また、これはビジネスの世界においてコンサルティング会社が存在している理由のひとつでもある。業界に精通した専門家をたくさん抱えているはずの一流の会社が高いフィーを払ってコンサルタントを雇うのは、自分たちは知り過ぎているが故に、その世界のタブーや「べき論」に束縛されてしまい、新しい知恵が出にくくなっていることが大きな理由のひとつだ。優秀であればあるほど、このような「知り過ぎ」の状態に到達しやすく、そこに到達すればするほど知識の呪縛から逃れられなくなる。
・「分析とは何か?」 僕の答えは「分析とは比較、すなわち比べること」というものだ。分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同士を比べ、その違いを見ることだ。
・「どんな説明もこれ以上できないほど簡単にしろ。それでも人はわからないと言うものだ。そして自分が理解できなければ、それをつくった人間のことをバカだと思うものだ。人は決して自分の頭が悪いなんて思わない」