量子コンピュータ周りの歴史から原理、現状が幅広く書かれており非常に勉強になりました。
長年、研究が続けられていた量子コンピュータが「量子ゲート方式」と呼ばれるのに対して、ここ数年で突然商用化された量子コンピュータは「量子アニーリング方式」と呼ばれている
これがカナダのD-Waveのことなのですが、そもそも量子アニーリングの理論は本書の筆者でもある西森氏らが東京工業大学で提案したものであったらしい。
量子アニーリングについては、ハード面では北米がはるかに進んでいる。カナダのD‐Waveに加え、グーグル、そしてアメリカ政府のIARPAが、さらなる高性能化に向けて、すでに壮大なレースを繰り広げている。日本が同じような路線で量子アニーリングマシンを今から開発しても、蜃気楼のように目標が遠ざかっていく、長く険しい道になるだろう。度肝を抜くような発想をもとに、まったく違うことをやるしかない。
北米でD‐Waveマシンを使い始めている企業は、4、5年後あるいはそれ以上の時間スケールで圧倒的な優位性を確保するために、基本ソフトやアプリケーションを含めた基盤技術を自ら開発して独占しようとしているのである。すぐに役に立てようとは思ってないし、すぐには役立たないことは先刻承知である。グーグルにいたっては、検索や広告などの自社製品の品質改良と環境負担の軽減(つまりコスト削減)を目指して、量子コンピュータをハードウェアのレベルから自社開発しようとしているのである。このような中長期にわたる大胆な投資をするダイナミズムを、かつてのように日本企業に取り戻してほしいと願っている。
しかし現状は量子アニーリングマシンでは北米で圧倒的に差をつけられつつあると。しかし日本企業にもやりようはあるという。
量子アニーリングと機械学習の最先端同士が結びつくためには、量子ビット数の向上のみならず、機械学習の分野で発展したアルゴリズムとの親和性も求められる。現在の機械学習の研究では、D‐Waveマシンなど、量子アニーリングとの親和性を意識した研究は少ない。ここにフロンティアが隠されている。日本は「ものづくり」を得意としてきたが、単によりよいハードウェアを作るための技術競争の面では、一部を除いて行き詰まりを見せている。それが社会を覆う停滞感の一因にもなっている。突破口のヒントは、ソフトとハード双方を踏まえた多角的視点、基礎と応用の融合、分野の垣根を超えた交流、過去の慣習からの決別などにあるだろう。停滞感のある今こそチャンスだという逆転の発想が、新たな日本を生み出すのだ。
「量子アニーリング+機械学習」または「ハード+ソフト」ならキャッチアップできるのではという方向性は自分もすごく思っているところで、この辺りで何かしていきたいなと思ってます。