世界を変える「デジタル・ゴールド」

ビットコインの誕生から現在までの様々なストーリーを群像劇のように描いていて、非常に読みやすくおもしろいとともに、暗号通貨とは何かということを本質的に捉えることができる素晴らしい作品だと思います。

特にそれぞれの登場人物がビットコインとの出会いや関わるモチベーションなども描いており、通貨の歴史(「21世紀の貨幣論」もオススメ)やリバタリアニズムなどの思想にまで踏み込んでいます。断片的に知っていた内容もありますが、まったく知らなかったことも多かったです。例えば、サトシ・ナカモトがどのようにビットコインを作っていったのか、最初はサトシだけが採掘するような状態だったこと、マウントゴックスはマルク・カルプレスが作ったものではないこと、不正販売闇市シルクロードとその崩壊(逮捕)までの物語、中国でのビットコインや採掘の話、アメリカ政府や銀行とビットコインスタートアップとの関係性、どのようにシリコンバレーの大物たちが支持派に転向していったか、など。

こうしてみると、ビットコインが生まれてここまで普及したのは奇跡でありながら今となっては必然とも考えることもできるし、以後(ビットコインでないにしても)暗号通貨がさらに力を増していくことは確実と思います。国家の一つの力の源泉が通貨であることを考えると、暗号通貨が世界をどのように変えていくか非常に楽しみです。

最近もハードフォークによるビットコイン分裂、各種ICO(トークンセールス)、暗号通貨に対する法制化などかつてないことが行われていて、ほとんど社会実験のようになっています。どんどん新しいことが起こり誰も事前には何が起こるか分からず、後付けではそれで当然だったと思えてしまう。ブラックスワンが起こりまくっているエキサイティングな時代に生まれて極めて幸運だなと思います。

P.S.「ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ」でロン・ポールがFRB(連邦準備銀行)を廃止して金本位制に戻れと主張していましたが、暗号通貨がその受け皿になるのだろうなと。