■2017年の振り返り
昨年は春から海外事業に専念することにして、社長から会長になり、サンフランシスコに部屋も借りました。大きく生活や仕事の進め方も変わりましたが、経営という意味では同じなのだなと思いました。とは言え、言語ギャップは大きいものもあり、プロダクトはまだしも、それ以外のBD/PR/Marketing/HR、そしてCSなどコーポレート周りは難しいことがすぐに分かったので、Johnに参画をしてもらいました。
夏には、正式にJohnにUS CEOになってもらうことで、自分としてはステップバックして、側面支援を続けています。昨年前半はアーキテクチャ刷新のためきつい時期もありましたが、リニューアル後は順調に成長しています。
その頃から、日本でもメルカリNOW、R4D、teachaやメルチャリさらにまだ未公開新サービスのような動きが急になってきました。極めつけはメルペイで、青柳さん参画とともに急速に立ち上がりつつあります。
1,000人規模のエンジニアのいるテック・カンパニーを目指すため、中期のロードマップを引いており、今年は大規模なアーキテクチャや組織変更も行う予定です。外国人採用(日本語能力不要)も増え、グローバル化も進みました。こういった動きは経営としては難易度が高くなってきているのを感じます。
が、これはそれだけの人材が集まって(育って)きているからこそ可能でもあり、改めて会社はひと次第だなと思う一年でした。とにかくいろいろなことが進行していて、今年はワクワクが止まらなくなりそうです。
その他国内では、いろいろと報道等もあったように、数々のおしかりを受けました。自分たちはまだまだスタートアップのつもりだったのが、多くのお客さまに使っていただけるサービスになったことで社会の公器としての見られ方をしていることに気づくのが遅れたことで対応が後手に回ってしまい大変申し訳ありませんでした。年末にいくつかの対応をしましたが、もっとできることがあると考えているので(特にAIでできることが多い)、メルカリをもっともっと、あんしん・あんぜんなマーケットプレイスにしていくことで、より多くのお客さまに使っていただけるサービスにしたいと思います。
昨年は寛容(クレメンティア)をテーマにしていたのですが、よくよく考えてみると正直周り(世の中)にもっと寛容になろうよと思っていたところがありました。ただ実際は自分が一番寛容にならなければならなかった。ひとや物事にはいいところもあるし、悪いところもある。そういったものを全て飲み込むためにはピュアではいられないところがあります。しかしそれこそが現実の世界でもある。
とはいえ、こういった紆余曲折こそ生きている実感が大きかったし、意味でもあります。2018年は、もっと現実の世界を知りたいなと思ってます。テーマは「現実を知る」にしてみようかなと。
ほとんどの場合、人間たちは、自分が望んでいることを喜んで信じる(ユリウス・カエサル)
塩野七生訳「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」(詳細)ですが、やっぱり自分としてはつらいとしても現実を知りたいし、その上で自分が何をできるかを考えていきたいなと思います。たとえ無力であっても。
なお、メルカリでは常時フル・スロットルで採用してますので、興味のある方はぜひホームページをご覧ください。
■2017年の本ベスト5
昨年の後半はレビューが滞っていたのですが、実際の読むペースが落ちたというより、ガツンとくる作品がなかっただけです。相変わらず多読(途中止め)しています。しかし以下の5作品はどれも必読です。「反脆弱性」や「サピエンス全史」は消化がすごく難しいですが、何度も読み返したい素晴らしい作品でした。
5位 これからの世界「量子コンピュータが人工知能を加速する」
量子コンピュータ周りの歴史から原理、現状が幅広く書かれており非常に勉強になりました。
特にそれぞれの登場人物がビットコインとの出会いや関わるモチベーションなども描いており、通貨の歴史(「21世紀の貨幣論」もオススメ)やリバタリアニズムなどの思想にまで踏み込んでいます。断片的に知っていた内容もありますが、まったく知らなかったことも多かったです。例えば、サトシ・ナカモトがどのようにビットコインを作っていったのか、最初はサトシだけが採掘するような状態だったこと、マウントゴックスはマルク・カルプレスが作ったものではないこと、不正販売闇市シルクロードとその崩壊(逮捕)までの物語、中国でのビットコインや採掘の話、アメリカ政府や銀行とビットコインスタートアップとの関係性、どのようにシリコンバレーの大物たちが支持派に転向していったか、など。
3位 インテル元社長のマネジメント哲学「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」
昔の本で広範囲の経営の話を扱っていながら、ほぼ色褪せておらず、今でも使える内容ばかりで、非常に勉強になり感銘を受けました。やはりこれくらいの経営哲学を持てるようになりたい。インテルがあそこまで大成功したのも納得でした。
著者は、人類と動物の真の違いを「多数の個体や家族、集団を結びつける神話という接着剤」のあるなしだという。それがゆえに人類は大規模な文明を築くことができたと。確かに家族や村や国家や株式会社というのはある種の神話であって、みなが信じているがゆえに正しいということは多い。だから昔は正しいと思われていたことが今は正しくないことは多い。例えば、奴隷制なんかもそう。今では人々は人は皆平等であって自由な存在であるし、お金というある種の虚構を信じている。だからこそ人と人がお金を使った取引が可能になる。
ここで重要なのは、ブラック・スワンを予測しようとしないこと。悪いブラック・スワンは徹底的に避ける=これが超保守的な戦略の部分。そして、よいブラック・スワンからは利益を得られるように賭けておく。なぜなら大体ブラック・スワンに対しては予測できないので確率を低く見積もられてしまい非対称性が発生しペイオフが非常に大きくなるからです。
例えば、起業について考えてみると、大抵の起業は失敗する。成功を予測することも難しい。成功するかもしれないと思ってやっても失敗することも多くあります。しかしやり続けているとブラック・スワンが起こることがあります。すると、とてつもなく社会的にも金銭的にも成功することができる。この万が一起こった場合のペイオフの大きさに注目することが重要だと言います。個人的には、起業という戦略はブラック・スワンを活かすには最適な戦略だと考えています。
P.S.2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2012年、2013年、2014年、2015年、2016年のベスト本はこちらからどうぞ。