睡眠について分かっていることを分かりやすく解説してくれているのですが、全然知らないことがばかりで非常に勉強になりました。そして、生活をいろいろ変えなければと思いました。調べながら、いろいろ試して行きたいと思います。
個人としては、寝ないとダメなタイプなため、できるだけ規則正しく8時間寝るようにしているのですが(平均7.5時間は寝ている)、当然夜ふかしすることもあります。今までは、一晩くらいは問題ないので、次の日きちんと寝よう、とくらい思っていたのですが、それはダメということが分かったのが一番大きかったです。
以下、抜粋・コメント形式で。
カフェインの半減期は、平均して5時間から7時間になる。たとえば 午後7時 30 分ごろに夕食後のコーヒーを1杯飲んだとすると、午前1時 30 分になってもまだ半分のカフェインが体内に残っている ことになる。 たった半分だと思って甘く見てはいけない。それでもカフェインはかなり強力であり、それにもう半分を分解するという大変な作業もまだ残っている。脳は夜通しカフェインの影響と戦うことになるので、その状態でぐっすり眠れるわけがない。ほとんどの人は、コーヒー1杯ぐらいなら影響はないと勘違いしている。そのため、よく眠れないまま朝を迎えたときに、まさか 10 時間前に飲んだ夕食後のコーヒーのせいだとは思いもよらない
夜(18時以降)はできる限りカフェインを取らない方がよい。ちなみにお茶やデカフェも多少のカフェインが入っているので要注意。
このように、 睡眠は巧みな技を使って、記憶スペースの容量不足という問題を解決している のだ。人生で経験することはつねに変化する。記憶のカタログも永遠に更新していかなければならない。記憶という彫刻が完成することはないのだ。そのため、脳は毎日眠らなければならず、そして眠るたびにこのサイクルをくり返さなければならない。これが、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に出現し、前半はノンレム睡眠が支配して、後半はレム睡眠が支配するという複雑なパターンができあがった理由の1つだ。(中略)夜になって眠るたびに、 深い眠りのゆっくりした脳波が、短期の記憶が保管されている場所から新しい記憶の入った荷物を受けとり、長期の記憶を保管する場所に届けている。 こうすることで、記憶がしっかりと脳に刻み込まれる
毎日睡眠が必要な理由
現在まででわかっているかぎり、地球上に暮らすあらゆる動物が眠る。または、眠りにとてもよく似た行動をとる。例外は存在しない。動物の中には、ハエ、ハチ、ゴキブリ、サソリなどの昆虫や、小魚から巨大なサメまでを含む魚類、カエルなどの両生類、亀、コモドオオトカゲ、カメレオンなどの爬虫類などが入る。
眠らない動物がいない、というのは驚き
生まれたばかりの時期に睡眠を奪われると、脳の発達の遅れは一生残る(中略)現在のところ、胎児や新生児の時期にレム睡眠を奪われると、成長してからどのような影響が出るか、完全にはわかっていない。アルコールが関係ある場合も、ない場合も同様だ。わかっているのは、 新生児の時期にレム睡眠を妨害された、または奪われた動物は、大人になってから社会性に異常が見られる ということだけ
まさに「寝る子は育つ」
新しい記憶を脳に刻みつけるうえで、深い睡眠が重要な役割を果たすということは、この実験を始める前からすでに解明されていた。そこで私たちは、この事実を踏まえたうえで、高齢者の脳の研究にひねりを加えることにした。 就寝する数時間前に、被験者の高齢者のすべてがいくつかの新しい情報を学習し、その直後でテストを受け、どれぐらいの新情報が定着したかを判定する。その日の睡眠の脳波をとり、そして翌朝、また前の晩と同じテストを受ける。2度目のテストで判定するのは、睡眠中にどれだけの新情報を維持できたかということだ。 テストの結果、高齢者は若い人に比べると、睡眠中に維持できる新情報の量がかなり少ないことがわかった。その開きは 50%にもなる。それに加えて、 高齢者は深い眠りが少なくなるほど、寝ている間に失われる記憶も増える ということもわかった。高齢になって眠りが浅くなり、物忘れが激しくなるのは、無関係な現象ではなかったということだ。
どうも毎日の英語学習の定着が悪いと思ってたのですが、加齢によるもののようです。。
寝不足の状態が1週間続いた後で、回復のための長時間睡眠を3日続けても(つまり、週末の寝だめよりも長い)、脳の働きは通常のレベルまで回復しない。そして最後に、寝不足の状態にある人は、自分がどれほど寝不足かわかっていない。
寝溜めはできない。かつ判断力低下の自己認識もできない
もしかしたら、将来的には画期的な方法が開発されるかもしれない。しかし現在のところは、一晩ぐっすり眠ったのと同じ効果がある薬は存在しない。世の中には「自分はショートスリーパーなので短い睡眠でも大丈夫だ」と豪語する人もいるが、ディンゲスは彼らに対しても、ぜひ自分の研究室に来て 10 日間の実験を受けてもらいたいと呼びかけている。彼らの普段の睡眠時間だけ寝てもらい、脳の認知機能をテストするという実験だ。これまでの志願者の中で、 短い睡眠時間で健全な認知機能を維持していた人は1人もいない。(中略)睡眠薬を飲んだ人は、夜はいつもよりほんの少しだけ早く寝つけるが、朝には昨日の記憶をなくしているのだ。
睡眠薬の効果は基本的にない。害はたくさんある。
北半球では、3月の夏時間に切り替わる日がやって来ると、ほとんどの人が1時間の睡眠を失うことになる。病院の日誌を大量に集めて表にまとめれば(研究者は実際にそれを行った)、 夏時間に切り替わった日に心臓発作が激増している ことに気づくだろう。そして夏時間が終わるときは、逆の現象が起こる。
サマータイムで死ぬ人もいる。夏時間に切り替わる日は特に注意した方がよい。
過去 30 年で行われたさまざまな研究の結果を総合すると、慢性的な睡眠不足の蔓延が、肥満の蔓延に大きく貢献していると考えて、まず間違いないだろう。疫学の世界では、睡眠が足りない人は過体重か肥満になりやすいということがすでに認められている。(中略)どちらのグループもたしかに体重は減った。しかし体重の減り方はまったく違った。 5時間半睡眠のグループは、落ちた体重の 70%が筋肉 だった。つまり脂肪ではなく、主に筋肉が減ってしまったということだ。 一方で8 時間半睡眠のグループは、落ちた体重の 50%以上が脂肪 だった。脂肪を落として筋肉を残すという、理想的な減量に近づくことができた。睡眠不足の状態になると、身体は脂肪を手放さなくなる。
睡眠不足は肥満につながるし、ダイエットの質も悪くなる。
その後プラザーは、ウイルスを注入されるまでの1週間の睡眠時間を基準に、参加者を4つのグループに分けた。睡眠時間はそれぞれ、5時間未満、5~6時間、6~7時間、7時間以上だ。 すると、睡眠時間と感染率はきれいに比例していた。ウイルスにさらされるまでの1週間の睡眠時間が短いほど、感染して風邪をひく確率が高くなる。 5時間未満のグループは、感染率は 50% にもなった。(中略)寝不足のマウスは、ガンが成長する速度も大きさも、十分に睡眠をとったマウスと比べて200%増加 した。私は一般向けの講演で、よくこの実験結果を紹介している。両方のグループのマウスの中で成長した腫瘍の写真を見せると、聴衆は一様に息をのむ。
睡眠不足は、ウィルス感染確率が増えるし、がんの成長も促す。
iPadの読書は、メラトニン分泌のタイミングだけでなく、睡眠の量や質に悪影響を与えている。その方法は3つだ。第一に、寝る前にiPadで読書すると、レム睡眠の時間が劇的に少なくなる。第二に、iPad組は、寝ても疲れがとれず、昼の間もずっと眠かった。そして第三に、iPadの使用をやめても、メラトニンの分泌が遅くなる効果はその後も続く。実験の参加者は、数日の間、メラトニンの分泌が 90 分遅れたままだった。まるで デジタルの二日酔い だ。
寝る前のデジタル機器を触るのはよくない。
しかし、真の驚きは第三のグループだった。初日の学習から2日間は健康な眠りを確保したにもかかわらず、3日目の夜のアルコールによって、初日に覚えていたことの 40%を忘れていたのだ。初日にアルコールを摂取したグループとほぼ変わらない結果だ。 学習した初日のレム睡眠には、複雑な知識を同化させるという働きがある。そのため学習初日にアルコールを摂取すると、この働きが阻害される。しかし、ここで特筆すべきは、どうやら記憶の処理は初日だけでは終わらないということだろう。初日をすぎても、何らかの理由で睡眠が阻害されると、記憶の処理と定着も大きな影響を受ける。そして睡眠の阻害には、アルコールの摂取も含まれる。初日と2日目にたっぷり寝て、3日目に睡眠が阻害されるケースでも、影響は大きかったのだ。(中略)夜のアルコール摂取は、あなたの睡眠を阻害する。望まれていない答えなのは重々承知しているが、それでも私からのアドバイスは、やはり「飲むな」にならざるを得ない
アルコールは記憶力への影響が大きい。これは悩ましいが、どう考えてもお酒は控えたほうがよさそう。
布団やパジャマが一般的なものであるなら、 ほとんどの人にとって、理想的な寝室の温度は摂氏 18・3度 だ。これを聞いて驚く人は多い。寒すぎるのではないかと感じるからだ。もちろん、その人独自の体質や年齢、性別によって多少の違いはある。
寝る時の最適な温度は、18.3度
それはたしかにその通りだが、理由はあなたの想像とは正反対かもしれない。お風呂に入ると寝つきがよくなるのは、身体が芯まで温まったからではない。温かいお湯につかると、血流が表面に集まる。皮膚が赤くなるのがその証拠だ。そしてお湯から出ると、拡張した血管から急速に熱が放出され、中核温が大幅に下がる。むしろ身体の芯が冷えることが、寝つきがよくなる本当の理由だ。
寝る前のお風呂は有効
しかし、意外な発見もあった。運動をした日と、その日の夜の睡眠との間に、それほど強い関係は認められなかったのだ。つまり、運動をした日の夜の睡眠は、運動しなかった日の夜の睡眠と比べ、必ず量や質が向上するわけではないということだ。または、こちらはそれほど意外ではないかもしれないが、睡眠と次の日の運動との間にも関係があるという結果になった。 前の晩によく眠れないと、次の日の運動は強度も長さも大幅に下がる。そして前の晩によく眠れると、次の日は精力的に身体を動かすことができる。簡単に言うと、運動が睡眠に与える影響よりも、睡眠が運動に与える影響のほうが大きいかもしれないということ
運動への影響
興味深いことに、先ほど紹介した実験の参加者たちは、 自分が寝不足のときは簡単な仕事を選んでいることも、仕事の効率が落ちていることも自覚していなかった。 すでに見たように、寝不足の人は、自分の能力を客観的に評価する能力も下がっているのだ。
これが一番大きな問題かもしれない。重要なミーティングの前は必ずきちんと寝ようと思います。
また、別の興味深い結果もある。リーダーが睡眠不足の日は、睡眠を十分にとった部下も、1日を通して仕事へのやる気が下がるのだ。これは 睡眠不足の連鎖反応 であり、トップが睡眠不足の状態だと、その影響はウイルスのように全社に広がっていく。その結果、せっかく十分に寝ている社員も、生産性やモチベーションが下がる。 さらに私たちの研究によると、睡眠不足の上司やCEOは、カリスマ性が低く、部下のやる気を引き出すことができないという結果になった。そしてボスにとっては残念なニュースだが、睡眠不足の部下は、たとえボスが睡眠十分でカリスマ性とリーダーシップを発揮していても、仕事のできないボスという評価を下す。 トップから末端の社員まで、すべての従業員が睡眠を十分にとれば、生産的で、正直で、協力的な、会社にとっての真の戦力になるだろう。
特にリーダーに十分な睡眠が必要な理由
最近の調査や臨床データによると、 ADHDと診断された子どもの 50%以上が、実際は睡眠障害だと推定される。 しかし、そのことを把握している医師はほとんどいない。この問題については、行政の対応が望まれる。製薬会社の影響を受けず、政府が独自で、子どもの睡眠障害の啓発キャンペーンを行うべきだろう
ADHDの症状と睡眠不足は似ているため誤診が多い
1つは、別の部屋に眠る家族全員の睡眠を記録できること。エアコンなど部屋の温度を調節する機器とネットワークでつなぎ、寝室の温度も記録する。装置には学習アルゴリズムも組み込まれていて、室温と睡眠の質の関係を学習し、やがてエアコンに正しい温度を教えるようになる。眠りの質を決める要素はたくさんあるが、中でも温度はカギになる要素の1つだ。 さらに、自分の自然な概日リズムを装置に学習させ、そのリズムに合わせて自動で室温を変えることも可能だろう。現在のエアコンでは、寝ている間に温度を変えることはできない。しかしこの新しいシステムでは、自然な眠りのリズムに合わせて室温を変えることができる。しかも、私たちは何もしなくていい。すべて機械におまかせだ。
こういったスリープテックの登場が望まれます。他にも様々なアイデア(衛生教育、会社の研修、福利厚生、保険など)があり非常に勉強になりました。