大成功事例としての「インスタグラム:野望の果ての真実」

Instagramの創業からFacebookへの売却、そしてその後のTwitterやSnapchatやFacebook自体との競争、Facebook内での躍進と葛藤、Facebook自体のフィルターバブル問題とその中でのInstagramの立場などなど、ジャーナリストによる丁寧な取材から描かれており、ものすごいリアリティで非常におもしろく勉強になります。

Instagram創業者のシストロムは天才肌のサービス・クリエーターだと感じました。若くしてTwitter/Squareのジャック・ドーシーやFacebookのザッカーバーグとも交流があり、いくつかの失敗をしたあと、Instagramで成功しました。わずか十数人の段階でFacebookに1,000億円以上で売却しますが、その後もCEOとして、Facebookの数分の一という規模にまで育て上げます。

これは客観的に見ると非常に成功した事例であると言えますが、Facebookからすると我々のリソースやノウハウがInstagramをここまでにした、と思うし、Instagramからすると独立していればもっとうまくやれたはずだ、と思います。

僕は前の会社を売却し、結果うまく発展させることができなかったのですが、やはり親会社の方針は非常に影響力が大きく、個人的にはFacebookが非常にうまくやったと言ってよいのではないか、と思います。もちろんシストロムの天才的な判断が本書には随所に出てくるのですが(その逆にストーリー導入に強硬に反対したというような例もありますし)、本書が基本的にInstgramサイドへの取材が多いことから考えても、ニュートラルに見れば、FacebookのInstgram支援が的確であったと考えてよいのではと思います。

ただし、もし買収が行われなかったとしても、シストロムが覚醒し、今くらいの成功を手にした可能性もあると考えます。しかし普通に考えれば、Facebook内のあらゆるリソースやノウハウが成功に影響したし、今のTwitterやSnapchatのような苦戦を強いられた可能性は高いと思います。

辞めた理由は、シストロムが資源と独立と信頼を求め、それが叶えられなかったとあります。ここまで大きくなってしまうと相互依存度が高くなりすぎて、両者にとってコンフリクト(軋轢)を低減するのはすごく難しかったのだろうなと思いました。であれば、そのまま気持ちよく次のチャレンジに移ってもよかったのではないか、と思いました。ただそれをさせなかったのも、Facebookのカルチャーやザッカーバーグ個人でもあったのでしょうね。。。

客観的には、誰がどうみてもInstgram買収は大成功しており、GoogleにおけるYouTubeやAndroidと同じく買収の大成功例であるので、非常に勉強になりました。特にコンシューマー向けサービスをしている方々には必読だと思います。