性善説で人を捉え直す「Humankind 希望の歴史」

現代では多くの人が性悪説で世の中を捉え、社会の仕組みもそうなっているが、それは本当だろうかと様々な側面から検証し、思想的転換を試みようとする意欲作。

「スタンフォード監獄実験」「ミルグラムの電気ショック実験」のような性悪説を裏付けてきた実験や、イースター島絶滅などの有名な事実がほぼ嘘であったことをバサバサと暴いてくのが痛快です。

私もハラリやタレブなどの性悪説とまでいかないにせよ、悲観的な世の中の見方が、実践論としては非常に参考になるものの、もっと人って温かいものなのでは、という想いもあったので、非常に共感するものがありました。

一方で、終盤で語られる「対話」「思いやり」「寛容」などといった概念はそれ以上はすばらしいと思いながらも、分かっていてもなかなか実践するのが難しく、だからこそ性悪説が受け入れられる土壌にもなっています。さらに言えば性悪説と性善説はコインの表と裏でもあるし、かつあるひとがいいところもあり時には悪いところもあるわけで、完全なる善も完全なる悪も存在しないとも思います。

しかし、そういった複雑性がある世の中であっても、自分としては性善説で生きていきたいとも思えたのはすごくよかったなと思います。