人生への考え方を変えるコンセプト「DIE WITH ZERO」

実は2年前に読んだのですが、その時はおもしろいなと思ったものの書評にしませんでした。しかし、その後「DIE WITH ZERO」すなわち「ゼロで死ね」という言葉をよく使うようになりました。そして、それを聞いた友だちが読んで感銘を受けた、という話もよく聞くようになりました。影響力が非常に大きいので、改めて読み返してみました。

その名の通り、お金を使い切って「ゼロで死ね」ということを提唱しています。多くのひとはお金を貯めるためにがんばりすぎている、もっと早くから自分のやりたいことにお金を使うべきだし、仕事も早くリタイアして健康なうちに楽しむべき、そして最後に資産がゼロになって死ぬことが望ましい、という主張です。

死は人を目覚めさせる。死が近づいて初めて、私たちは我に返る。先が長くないと知り、ようやく考え始めるのだ。 自分は今までいったい何をしていたのだろう? これ以上、先延ばしをせずに、今すぐ、本当にやりたいこと、大切なことをすべきだ、と。 ふだん私たちは、まるで世界が永遠に続くかのような感覚で生きている。

人生はテレビゲームとは違って、果てしなく高スコアを目指せばいいわけではない。 にもかかわらず、そんなふうに生きている人は多い。 得た富を最大限に活かす方法を真剣に考えず、ただひたすらにもっと稼ごうとし、自分や愛する配偶者、子ども、友人、世の中に、 今、何ができるかを考えることから目を背けている。

老後のお金の心配も分かるが、そのための保険もあるし、そもそも病院でチューブに繋がれて数日だか数十日長生きするために何千万も取っておくことに意味はない、と説きます。

また、子どもにお金を残したい、という意見にも、多くのひとが50代になって遺産を受け継ぐが、共通して、子育てに忙しく、健康であった若い頃(30歳前後)にそのお金があればよかったのに、と思っている、と言います。

譲り受けた財産から価値や喜びを引き出す能力は、年齢とともに低下する。 金を楽しい経験に変えるあなたの能力が、老化とともに衰えていくのと同じだ。何かを楽しむには最低限の健康が必要になる。 その能力のピークが、気力と体力が充実している 30 歳だと仮定すれば、 50 歳では同じ価値を引き出せなくなる。あるいは、 30 歳のときに1ドルから引き出せた価値を得るのに、もっと多くの金(たとえば 1.5 ドル) が必要になる。 つまり、子どもが一定の年齢を過ぎると(あなたが財産を分け与えるのが遅くなるほど)、分け与えられた財産の価値は落ちていくことになるのだ。

確かに言われればその通り、ということばかりなのです。なぜこういうことが起こるかというと、老いというのは毎日実感するものではないため、いつまでも若い頃と同じことができると思ってしまうからだと言います。

クリスのような人は、自分の体力がどれほど落ちているかに気づかずに、若き栄光の日々を生き続けている。だが実際は、元水泳コーチであったにもかかわらず、もう 30 メートルも泳げなくなっていた。 こんなふうに、昔の感覚を引きずり、今の自分の体力をうまく把握できていない人は多い。 その感覚のズレが、老後もいくつになっても若い頃と同じようなことができるという思い込みにつながっている。

老衰し、身体を動かすこともできず、チューブで栄養をとり、排泄も自力ではできない。そんな状態では、人はそれまでの人生の経験を思い出すこと以外ほとんど何もできない。プライベートジェットを自由に使えたとしても、もうどこにも行けないだろう。貯金が100万ドルあっても、 10 億ドルあっても、残された人生でその金を使ってできることはほとんどない。 また、旅行に行くことを考えてもよくわかる。旅行を楽しむには、時間と金、そして何よりも健康が必要だ。 80 歳の人は、体力面を考えると、あまり遠くには出かけられない。長時間のフライトや空港での乗り継ぎ、不規則な睡眠など、旅にはストレスがつきものである。年を取って体力が落ちると、こうした旅のストレスへの対処が難しくなってくる。

僕も40くらいから、今の瞬間の経験値を最大限にするために何ができるかを真剣に考えるようになりました。お金で解決できることは解決するようになったし、消費だけでなくて今の世界に資することであれば寄付のような使うことにも、より積極的になりました。

稼ぐことについては、非常に幸運なことに今の仕事が大好きなので、辞めることはないですが、ワークライフバランスはより考えるようになったと思います(もともと長時間労働するタイプでもなかったですが)。またいつか死ぬ、辞めることも意識して、会社を永続的に発展していけるような仕組みにしていこうとしています。

それから、なんといっても健康が重要、ということで、健康への投資(筋トレなど)もするようになりました。

このように考えると、「DIE WITH ZERO」というコンセプトには人生への考え方として非常に同意できるし、実際影響も大きかったなと思っています。内容は荒削りな部分もありますが、すべてのひとにオススメできる一冊です。