万が一に備える「負けへんで!」

上場企業の創業社長が、検察に突然逮捕され、裁判となり、数年後に無罪として勝訴する。そんなことがこの日本であるのかと思いましたが、実際200日以上も過酷な環境で勾留され、取り調べをされ、創業して成長を続けていた上場会社を最大のライバルに売却せざるを得ず、1%も勝ち目もないと言われる検察との裁判を闘う、壮絶なストーリー。

拘置所の中で、検事や弁護士、裁判官、社員、家族などと限られた情報の中で精神的にも肉体的にも追い詰められ疑心暗鬼になりながら、少しづつ活路を見出して、勝訴にいたる様が克明に描かれており、非常に貴重なドキュメンタリーとなっています。

もちろん本書は著者側からの視点であり、検察側からの見方もいろいろとあるのでしょうけれども、、この日本でどういうことが起こりうるかを知っておくだけでも、万が一の備えとなるので、読んでおきたい一冊です、起業家に限らず。

抜粋コメントを少しだけ

前年 12 月 16 日に逮捕されてから、半年弱である。その間、わたしは狭い三畳一間の部屋に閉じ込められ、どこにも行けず、やりたいこともできず、好きなものも食べられず、一日の行動を逐一管理されて過ごしている。  就寝の時間も起床の時間も風呂の時間も運動の時間も食事の時間も、自分では決められない。テレビも見られない。電話もメールもできない。会いたい人と会うことができない、話したい人と話すことができない。  家族と会えるのは平日1日あたり 10 ~ 20 分だけで、しかも必ず刑務官が立ち会っている。  拘置所の中で過ごしているこの1分1秒がすべてストレスなのである。

逮捕されるとこういった状態になると

「山岸さん、こらえてください。無罪をとるには向こうが押収したものを全部見ないとダメなんです」 「でも、それが終わらないと保釈される可能性はないんでしょ。そんなん理不尽ですやん。どうしてこんな理不尽なことになるんですか? なんでこんな目に遭わなアカンのですか?」  弁護人は下を向いたまま答えない。  長期間にわたって監禁生活を送り、何度も保釈請求して拒まれることが続くと、冷静な判断力はどんどん失われていってしまう。

弁護団の先生方は、わたしの置かれている状況がいかに理不尽であるか心の底からわかった上で、誤った有罪判決が出ればもっと理不尽なことになると考えて、必死になってくれていた。  でも、このときのわたしにとっては、いつ終わるかもわからないブツ読みが完了するのを待てという弁護人のアドバイスこそが理不尽に感じられた。

なかなか正常な判断が難しくなってしまうようです。著者はすごく強い方だと思います