2020年謹賀新年+本ベスト5

パルテノン神殿@アテネ

■2019年の振り返りと今年のテーマ

2019年は、引き続き難しかった一年でした。

メルペイを無事にローンチし、500万人以上のお客さまに使っていただけるようになりました。これによりメルカリ本体も進化したと思うし、USも成長しています。また特に外国籍社員が激増したことでダイバーシティも進んで、強い組織になってきたと思います。鹿島アントラーズの経営のような新しい試みも始めました。

一方で、圧倒的な結果を出せたかというと出せていません。

メルカリグループの社員数は2,000人に迫っていますが、ゼロからこのような成長をしたスタートアップは最近の日本には存在していません。スタートアップの経営は数百人くらいまではノウハウもいろいろ蓄積しつつありますが、それ以上となると急に手探りになります。

アプリとしてほぼ一体のインターネット・サービスを1,000人以上でどのように開発していくのかというのはすごくチャレンジングです。マイクロ・サービス化してマイクロ・ディシジョンしていける(システム相互依存をなくして小さなチームで素早く決めていける)ようにすると共に、その判断を支えるデータを中心に据えるべくデータ基盤の作り替えも進めています。

また、事業規模拡大によりミッション・ロードマップ・OKRから事業計画・予算・管理会計まで一体感を持った経営が必要になってきています。もちろん採用・育成・登用(抜擢)・評価などのHRも重要です。またメルペイでは金融免許取得しましたが、実際にお客さまに迷惑をかけないようなガバナンス、セキュリティ、リスクなどについても対応していく必要も出てきています。アマゾンではスケールする仕組みのことをメカニズムと言っているそうですが、メルカリでもそれにならって各種メカニズム化を急ピッチで進めています。

メカニズムを作っていく上では、スタートアップだけでなく、様々な会社、例えばGAFAのようなテック・ジャイアントや、日本の伝統的な大企業、中国の新興メガベンチャーなどのよいところを集めてきて参考にしつつ、自分たちがこうありたいという意思も重要です。昨年は上記のような会社の方々にたくさんいろいろと教えていただき大変感謝しています。

大変なことばかりのように思えますが、メルカリは日本・USですごくたくさんの方に使っていただいているし、メルペイは1年経たずして500万人もの方に街中で使っていただいているわけです。社会的な責任を持ちながら事業をするのは当然だし、むしろこの責任を引き受けないと、世界中で使っていただくサービスになっていくのは難しいと感じています。

なによりも今は自分たちが理想とするテックカンパニーをイチからデザインできる大変貴重かつおもしろいタイミングだと考えています。まだ圧倒的な結果までは出せてはいないですが、今仕込んでいることは間違っていないと考えているし、もがきながらも前進しているという実感があります。この難易度の高い仕事を一緒にやってみたいという方はぜひ採用サイトをご覧ください。

前期(FY2019.6)の決算発表後、再三「勝負の年」と言ってきましたが、この土台を使って、今年はピュアに結果を出していきたいと思っています。昨年のテーマは「寛容(クレメンティア)」でしたが、今年は「結果を出す」にしたいと思います。

昨年に引き続き、今年もよろしくお願いいたします。

■2019年の本ベスト5

2019年は例年に比べて紹介した本が激減してしまいました。たくさん買ったのですが最後まで読了できた本が少なかったように思います(すぐに読み止める読書スタイルです)。これは僕の余裕のなさのせいかもしれません。いずれにせよ今年はたくさんのよい作品に出会いたいです。

5位 「中国全史」を描こうとする意欲作

知っているようで知らない中国の歴史を俯瞰できます。中国が一つの国というより多種多様な多民族がいてダイナミックに変わってきたのがよく分かります。

4位 気候変動が人類に与えた影響「気候文明史」

「恐竜は二億年近く地上で繁栄していたのに、なぜ知性を発達させなかったのか?」という問いかけがある。答えは知性を発達させる必要がなかったからだ。恐竜は知性を獲得せずとも生き延びることができた。人類が直面したような、生き延びるために知性を必要とする気候激変の連続という環境的な圧力は、中生代に存在しなかったのだ。

気候変動が人類の文明に多大な影響を与えたという事実を丁寧に描いています。

3位 より世界を知る「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」

人間によって大気に蓄積されてきた二酸化炭素の大部分は、現在レベル4にいる国々がこの 50 年間に放出してきたものだ。カナダのひとりあたり二酸化炭素排出量は、いまでも中国の2倍にのぼるし、インドと比べると8倍にものぼる。世界を金持ち順に並べて、いちばん上の 10 億人が毎年どれほどの化石燃料を燃やしているかをご存じだろうか? 全体の半分以上だ。次に金持ちな 10 億人が残りの半分を燃やし、その次の 10 億人が残りの半分を燃やし……と続いていく。いちばん貧しい 10 億人は、全体のたった1%しか使っていない。

ファクトを知ることで現実的な対処が可能になる。しかしファクトを知ること自体が難しいのだなと理解できる。

2位 自らを見つめ直す機会になる「残酷すぎる成功法則」

私たちは「最良」になろうとしてあまりに多くの時間を費やすが、多くの場合「最良」とはたんに世間並みということだ。卓越した人になるには、一風変わった人間になるべきだ。そのためには、世間一般の尺度に従っていてはいけない。世間は、自分たちが求めるものを必ずしも知らないからだ。むしろ、あなたなりの一番の個性こそが真の「最良」を意味する。

成功した人々がなぜ成功したのかをエビデンスとともに書いているのですが、残酷な事実が明らかになってしまう。

1位 21世紀の人類のための「21 LESSONS」

私たちがしだいにAIに頼り、決定を下してもらうようになると、この人生観に何が起こるのか? 現時点では、私たちはネットフリックスを信頼して映画を推薦してもらい、グーグルマップを信頼して右に曲がるか左に曲がるか選んでもらう。だが、何を学ぶべきかや、どこで働くべきかや、誰と結婚するべきかを、いったんAIに決めてもらい始めたら、人間の一生は意思決定のドラマではなくなる。民主的な選挙や自由市場は、ほとんど意味を成さなくなる。大方の宗教と芸術作品にしても同じだ。

『サピエンス全史』『ホモ・デウス』のハラリ新作。21のテーマに沿って解説をしてくれているので、未来を考える上で非常に参考になります。

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