GEと言えば、ジャック・ウェルチ。業界で1位か2位でない事業は撤退する「ナンバー1、2戦略」などで、GEを「最強企業」に育てあげた、というイメージがあります。本書では、毎年きっちり15%の利益成長を続けていたウェルチGEが、実はGEキャピタルにより利益の調整を行っていたことを暴露しています。また、ストレッチゴールを常に設定することで、現場が強い圧力を受け、忖度が横行していたことなども描かれています。とはいえ、ジャック・ウェルチは、20年で売上を5倍、時価総額を30倍にしたのも事実で、事業会社の信用力で金融のレバレッジを効かせるなどし、事業を伸ばした名経営者であったことも確かだろうと思います。
本書は主に、そのほころびが出始めたところで引き継いだジェフリー・イメルトが悪戦苦闘するドキュメンタリーとなっています。ひたすらに構造改革をするために、事業を売買。その過程でGEキャピタルを事実上売却・解体することで、利益調整のレバーを失ってしまいます。さらに、大きくDXに賭け、しかし失敗し、強いGEを取り戻すことはできず退任となります。その後のジョン・フラナリーも退任し、現在は外部招聘されたローレンス・カルプが経営を担っています。
このような大企業がどう経営されているのか、国際M&Aの交渉過程(政府が頻繁に登場)、ガバナンス、後継者選定、カルチャーなども非常に詳細に描かれており大変興味深かったです。
GEは人材輩出企業としても有名ですが、余裕のある経営から人材育成も産まれてくるのだなと思いましたし、優秀な人材がいたとしても、それを成果に繋げていくためには、戦略やカルチャーを状況に合わせて不断にアップデートしていく必要があると改めて再確認しました。
GEも繁栄を目指しましたが、様々な理由からうまくいかなかったために今の状況があります。個人的には、ダイナミックに変化しようとする姿勢は評価するべきだと思います。
著者はGE自体には否定的なスタンスのため、割り引いてみる必要がありそうです。もしうまく行っていれば、まったく違う評価になっていたでしょう。経営は成果でしか評価されない、このことを改めて肝に銘じました。
P.S.「NOKIA 復活の奇跡」などと合わせて読むとよいかもしれません。どちらも非常にスリリングで、読みやすくおもしろいです。