いかに現在が英語の世紀に突入しており、日本人はどうやって日本語を「護って」いけばよいかを論じたエッセー。非常におもしろい論考だと思いましたが、自身の主観的な体験により自分に酔いながら筆を進めている部分が散見され、ところどころに登場する偏見(学力不足のクラスをアフリカの田舎の子供を集めたのと同様としたり、アイルランドの自国語保護政策を贅沢としてみたり)がかなり気になりました。
また、優れた文学として過去の作品のみが取り上げ現代作品については「文学の終わり」を憂える声があるとしていたり、英語のみが普遍語として流通するということを前提にしているのが個人的にはあまりピンと来ない感じです。例えば、前者で言えば、村上春樹のように海外でも高い評価を得ている作家や後者で言えば中国語やスペイン語はどうなのだろうかと思いますが、それらの疑問には答えられていません。
とはいえ、国民国家の成立と国語の成立が密接にかかわり合っていること、中世におけるラテン語の使われ方、日本における漢字文化とひらがなの成立、明治維新後の国語の成立と翻訳の意味などの指摘には非常に新鮮な部分があり、読んでおいて損はない作品だとは思います。
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