本・芸術の最近のブログ記事


橘氏の本は思考実験に富んでいて非常に楽しい。今回もマイクロ法人を使うとどのような節税や利点があるかを書いてます。正直言って橘氏の他の本で聞いたような話も多いのですが、個人的には結構すぐ忘れる方なので純粋に読み物としておもしろいし、勉強になるし、いいのではないかなと思います。

<抜粋>
・すなわち日本では中高年を解雇して若手社員を中途採用すると違法とされてしまうのだ。日本で派遣労働が急速に普及したのは、解雇規制が強すぎて容易に社員を雇うことができないからであった。だが格差問題の議論の中で、この事実に触れることはタブーとされている。
・(ダイエー)中内と(RJRナビスコ)ジョンソンの二人の企業人を比べてもっとも強く印象に残るのは、会社に対する考え方のこの大きな違いだ。中内は会社をひと、すなわち自分の分身と見なしていた。ジョンソンは会社をもの(道具)として扱い、資本市場で売買することになんの抵抗もなかった。これは、どちらが正しいという話ではない。法人がひとであると同時にものでもあることで、二人の男の波瀾万丈の物語が悲劇ありうは喜劇として成立したのだ。
・株式会社は、なにもないところから儲け話だけで資金を集める仕組みだ。その儲け話に実体があればビジネスで、実体がなければ詐欺になるが、おうおうにして両者の区別は不可能だ。
・(サラリーマンの払う)厚生年金は掛け金の総額に対して受給額が大幅に下回るという逆ざやに落ち込んでいる。(中略、自営業者の払う)国民年金の保険料は定額制で、現在の月額14100円が2017年には月額16900円まで引き上げられることになっているが、これでも平均寿命まで生きれば払った分の2倍程度は戻ってくる。
・金融市場が管理できるリスク世界なのか、管理不能の不確実な世界なのかは長い議論があったが、2008年秋の世界金融危機において、統計的にありえない出来事が毎日のように起きたことから「不確実説」が有力になった。それによれば、金融市場は複雑系のネットワーク(スモールワールド)で、システムに組み込まれたフィードバック機能によってバブルや暴落が頻繁に起きる。
・MSCBは欧米の株式市場ではありえない資金調達方法で、もし実行すれば確実に株式代表訴訟の対象になる(世界金融危機でも、MSCBで資金調達した欧米の金融機関はなかった)。ところが日本市場ではそれが当たり前のように行なわれ、金融庁や証券取引所も黙認している。

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天才!  成功する人々の法則
マルコム・グラッドウェル
講談社
¥ 1,785


ティッピング・ポイント(原題)」のマルコム・ブラッドウェルの最新作。勝間和代氏が訳しているということで、ノウハウ本かと思ってしまいますが、かなり深い本ですので、食わず嫌いしている方はぜひ読んで見てください。

内容は「成功する」ことに焦点を当てて、いくつかの条件について、豊富な事例を元に書かれています。ただ、統計的な情報は少ないというか、その条件が本当に重要なのか、については多少の疑問が出てきてしまいます。そうでない可能性も否定できない、というところでしょうか。とはいえ、感覚値にはかなり近いものがありますので、この後で本書の主張とそれに対して考えてみたいと思います。

<要約と考察>


  • カナダのアイスホッケー選手は1月〜3月に生まれた選手が多い。これは選抜が1月を区切りとして行なわれるためで、早く生まれたものが有利だからだ。
    これは統計的に明らかで、疑いの要素はありません。スポーツだけでなく勉学などにおいても、幼少であればあるほど1年の差は大きいということを示しています。であれば、日本においては子育てにおいて次の2通りを考えた方がよさそうです。1.子供はできる限り4〜6月に生まれるようにする。2.日本の教育制度を変える。まぁ海外に行くという手もありますが。

  • ベルリン音楽アカデミーでの調査では、優秀な学生はそれまでの累計の練習時間が例外なく長い。短いのに優秀なものは「いなかった」。これはスポーツでも同様であり、選抜に選ばれることで練習時間が増加する。マジックナンバーは1万時間である。これはビジネスでも同様で、ビル・ゲイツはPCが登場したときにコンピューターに1万時間触っていた。
    何かをなすにはそれだけの経験が必要という主張ですが、音楽やスポーツ、学術では明らかに相関関係が見られるのはよく分かるのですが、ビジネスの世界ではぽっと出でも成功する人は結構いるように思います。恐らくビジネスでは自らの実力よりもタイミングなどの運の要素もかなり大きいからでしょう。しかし、それは悲観すべきことではなくて、きちんと努力をしていれば報われる可能性は高くなるのではないかと思っています。そうして成功した時の方が自らに自信も持てるし、満足度も高いのではないでしょうか。

  • IQの高さは社会的な成功と比例していない。大学の授業についていくにはIQ115程度が必要ではあるが、それから先、IQ130の科学者とIQ180の科学者のノーベル賞を受賞する可能性は同じくらいである。
    何事も多ければよいというわけではないらしいのですが、それでは何が影響するのかというのが次の項目です。

  • (以下は抜粋)「中産階級の子どもは、まだ小学四年生のときから、自分自身の利益のために振る舞っているように見える。教師や医師に特別な要求を出し、うまく調整して、自分の欲求を受け入れさせる」 反対に、労働階級や貧しい家庭の子どもからは、「よそよそしさ、不信、遠慮が浮かび上がる」。裕福な家庭の子どものように、自分の最大の目的のために周囲の状況を自分の要求に応じて変えていく(中略)"カスタマイズ"する方法が分からない。
    本書ではIQ190だがみじめな生活を送っている天才が誰からも認められていない事例も紹介されています。確かに、IQのような才能よりも、むしろこういった文化的な優位性が影響するというのは非常に納得感があります。

  • 歴史上の富豪(クレオパトラまで含む)の75位までのうち20%が1831年〜1840年に生まれたアメリカ人である。これは1860年代〜70年代にアメリカの産業が大幅な転換期であったことに由来する。またビルゲイツは1975年のパソコン時代の到来を21歳という絶妙のタイミングで迎えたし、フロムという弁護士は敵対的買収や訴訟が重要となった1970年代にまさにその仕事を専門としていた。
    自らの仕事が好機であることが重要というお話。本書の言葉を借りれば「長年、技能に磨きをかけてきたところ、それが、とつぜんとてつもなく重要になったというわけだ」。これは本当に重要な要素であることは理解できるのですが、実際のところそれを予測するのが極めて難しいという難点があります。とはいえ、常にアンテナを張り巡らせて、しかるべき時にしかるべき場所にいる「努力をする」ことは重要なのではないでしょうか。

  • アメリカ南部の人間は北部の人間に比べて喧嘩をふっかけやすい傾向が「統計的に」ある。中国人はアメリカ人に比べて数字ルールが簡単がゆえに数字に強い。貧困な家庭では夏休み中の読む力が低下する。など「文化」が個々人に強い影響を及ぼしている。これらは「その文化」からいったん切り離すことで、解消は可能だ。
    もちろん貧困な家庭の問題などは解消されるべきですが、それ以外の文化についてはむしろ生かしていくべきなのではないかと思いました。例えば、日本人の子どもは難しいパズルを諦める時間がアメリカ人よりも40%も長いそうです。であれば、日本人はそれが生かせる仕事を選ぶ方がよいのではないか。

特に最後のポイントについては非常に重要だと思っていて、最近考えているのは、例えばマイクロソフトやヤフー、Googleのようにビジネスのルールを作るビジネスはアメリカはすごく得意だと感じます。一方で、日本人が得意な例というと電化製品、車、アニメなどクオリティ重視のものが多い。だから、日本人が世界でやっていくためには、クオリティで勝負した方がよいのではないか、と思っています。

P.S.北京から帰国しましたー

NGO、常在戦場
大西 健丞
スタジオジブリ
¥ 1,575


2002年、アフガン復興支援会議に鈴木宗男氏の圧力で出席を認められず不当さをマスメディアに訴えて一躍有名になったピースウィンズ・ジャパンの代表の大西氏による著作。2006年刊行です。

不勉強ながらNGOの実態はあまり知らなくて、本書によりNGOが具体的に何をしているのか、その存在意義は何なのか、が非常によく分かり、勉強になりました。

例えば、NGOが人道援助に有効な理由としては以下のように書いています。

イラクで自衛隊がやろうとしているのは、(中略)「人道援助」だという。軍隊組織が人道援助というのは、どう見ても得意分野だとは思えない。たとえば道路や橋を修復するなら、自衛隊よりも地元の建設業者に任せた方がスムーズにいく。病院や水道施設をつくるにしても、NGOの方が何十倍もコストパフォーマンスのいい仕事ができる。 NGOは現地スタッフを何十人も雇うから、事業のコストを抑えられるし、彼らのネットワークを生かして、危険を未然に防ぐために重要な一次情報を得ることもできる。現地の人にとっても雇用機会というメリットがある。

つまり、国や軍隊ではできないことを低コストかつ迅速に行なえるのがNGOのメリットということになります。

また、現場での仕事の行なわれ方は次のような形になっているようです。

世界各国からたくさんのNGOが集まる現場では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などが中心になってミーティングを開き、地域や分野ごとに支援の取りまとめ役となる団体を決めていく。コソボでは人や物を一気に投入できる欧米のNGOにその役割を独占された。資金力や交渉力も不十分だったため、苦労して練り上げてきた家の屋根修復のプロジェクトを他の団体にさらわれて、悔しい思いもした。

やはりNGOとしては、歴史のある欧米が圧倒的に強いらしいのですが、現場でこういった激しい競争が行なわれていることもよく知らなかったので、非常に新鮮でした。日本で国際支援というとODAのイメージが強く、ODAというと利権の固まりという印象すらありますが、本書を読む限りではありますが、NGO同士が競い合うことでサービスの向上が行なわれていて、非常に健全だなと思いました。

アフガン復興支援会議の件についても、かなり詳細に書かれていて、最後には、

私自身、あのころは無我夢中で、不当な圧力に負けてなるものかという思いばかりが先に立った。ありていに言えば「窮鼠猫を噛む」というせっぱつまった状況で、政策論の土俵に上がる余裕もなかった。もう少しNGOや私自身に実力がついていれば、世論の盛り上がりを追い風として外交や援助に関する本質の議論を深められたのに、と思うと、内心忸怩たるものがある。いつかこの「宿題」に本腰を入れて取り組めるよう研さんを積むことが、貴重な経験をさせてもらった私の責務だと思っている。

と書いています。個人的にも、事件については、なんだかよく分からないなという印象だったので、こういうこと(想い)だったのか、と思いましたし、このように謙虚に次を考えられるのは純粋にすごいなと思いました。

NGOの世界はまさにグローバルでピースウィンズ・ジャパンも世界のNGOを競争しています。ビジネスやスポーツの世界だけでなく、NGOという世界でも日本から世界に挑戦している人たち(団体)がいるのだなと思い、非常にうれしくなりました。何かしらできることがないか探っていきたいと思います。

国際協力NGO ピースウィンズ・ジャパン|peace winds Japan


(注:本書は献本いただきました、末尾参照ください)

刺激的なタイトルですが、内容はそのまま。新聞とテレビという二大マスコミ業界がいかにまずい状況におかれているか、豊富な事例をあげながら書かれています。また、それに対しての新しい生き残りの模索についてもとりあげられています。

佐々木さんは本書で辛辣にマスコミの状況への無理解ぶりを描いていますが、それは佐々木さんがジャーナリストであり、業界への愛からゆえなのではないかと強く思いました。

例えば、佐々木さんは「報道」自体が喪失する危機感を持っているように思いますが、はっきり言って報道への需要は0になることはないわけで、業界は相当縮小するにしても、報道自体は残ることは間違いがないでしょう。

そう考えると、マスコミに(あまり)関係しない僕のような人間からすると、適正なサイズに業界が縮小しつつあるだけで、それは今までいろんな業界でも起きてきたことであって、特別なことでないのではないかと思ってしまうのです。

なので、僕はマスコミを特別視はしていませんが、なぜマスコミというビジネスモデルがうまくいかなくなってしまったのかについて、本書を読むとよく分かって、自分が仕事をしていく上で非常に勉強になりよかったなと思いました。

<抜粋>
・(新聞社の幹部)「ネットの時代だろうがそんなことは関係なく、皆さんはどんなニュースを読むべきかというような情報取捨選択能力は持っていません。どの情報を読むべきかということを判断できないのです。だからわれわれが皆さんに、どの記事を読むべきかを教えてあげるんですよ。これこそが新聞の意味です」
・編集長や編集者が年齢を重ねたのにあわせて、雑誌の内容も年をとってしまったのである。この結果、本来は二十代前半向けだったはずの雑誌はいつの間にか三十歳前後の読者向けになってしまい、このため昔からの読者はついてきてくれているけれども、若い読者は呼び込めなくなっていたのだった。
・極論を承知で言い切ってしまえば、いまの二十代から三十代の若い読者は「カネと女と権力」なんて読み物はあまり望んでいない。彼らが求めているのは、「これからどうやってこの社会を生き延びていくのか」といった自分の生活にもっと寄り添った具体的な情報だ。(中略)だがそうした記事はサラリーマン向けの総合週刊誌にはほとんど掲載されていない。載っているのはあいかわらず政治家の腐敗か、そうでなければ風俗情報ばかり。そんな情報をいまさらだれがほしがっているというのだろう?
・典型的な例が「麻生首相の漢字読み間違い」問題だ。ネットでは「日本の新聞は首相の読み間違いばかりあげつらって、本当にレベルが低い」とさんざんに批判されているが、新聞社は何も読み間違いばかりを報道しているわけではない。(中略)実際に新聞の紙面を見ると、麻生首相の読み間違い報道はそんなに大きな扱いにはなっていない。どちらかといえばベタ記事扱いだ。 ところがネット上ではそうした新聞社側の編集権はいっさい無視されているから、新聞社がどの記事に力を入れて、どの記事をベタ扱いにしたのかは分からない。

<本の感想と献本について>
・ブログで取り上げるのは読んだ本のうちおもしろかったもの、何かしらひっかかりがあったもので、エントリされるものは、ごく一部です。
・読むスタイルは、面白くなかったら即座に読み止めなので、よほど正義感に燃えない限り、基本スルーであえて批判もしません。
・献本されたものも上記と同様で例外はありません。献本をいただける方は、このページのウノウ株式会社へのリンクから会社宛にお送りください。

ジョナサン マーゴリス
ヴィレッジブックス
¥ 1,680


ジャーナリストが表の歴史にはあまり現れない性に関する歴史を明らかにする貴重な作品。古今東西、あらゆる場所、時代におけるセックス観や事件が取り上げられていて、かなり驚きの事実がいっぱいです。

時によってあるときは、乱交からセックス愛好クラブまで何でもありだったり、異常に禁欲的なときもあったりする。そして現代において、誰もがセックスを楽しまねばならない神話が生まれているという。

ジャーナリストが書いていますが、割と学術的なので文は冗長なところもありますが、純粋に知識欲を刺激される良書だと思います。

<抜粋>
・あらゆるまじめな研究と大多数の事例によれば。従来型のセックスによる摩擦だけで女性がオルガスムに達することはまさに例外中の例外である。
・(古代ギリシャでは)軍隊に不可欠な身体の鍛錬が、そのまま同性愛文化に移行した。少年は、健康であるほど快いオルガスムを仲間に与えるとされ、容姿が美しいほど優れた精神の持ち主だとみなされた。したがって並外れて美しい少年には、年上の男たちがこぞってセックスの個人指導を買って出た。
・古代ローマ人の直近の先祖は、乱交パーティーで結婚を祝った。パーティーではまず新郎の友人全員が、立会人の面前で新婦とセックスした。これは夫婦の絆という概念がなかった昔に、結婚に先立っていわゆる「無報酬の売春」の時期が存在したことの名残と考えられる。
・(インドの)ひとりの男が多くの女たちをはべらせるハーレムの慣習がある地域では、去勢された男はクンニリングス要員であった。
・(ローマカトリック教会、1714年)教会がこの年、姦淫の相手となった女の名の告白を男性に課すことをやめたのだ。これは、必ずしも性の解放を進めはしなかった。その理由は前に見たとおり、聖職者が不貞を懺悔した男に、赦罪と引き換えに相手の女の名前を告白させ、自分自身がひそかに姦淫の罪を犯すことのできる女に関して信頼できる秘密情報を得ていたのである。
・ヴィクトリア女王にまつわる性的な逸話に、イギリス議会が同性愛を禁ずる法案を決議したが、女王は女同士でそのような行為が生じるとはどうしても信じられず、その法令に承認を与えなかったというものがある。
・フロイトは自慰を、成長の過程で卒業すべき行為と捉え(自分の息子には自慰を控えるよう忠告していた)、自慰を続けると自己嫌悪や不感症になると考えた。また、射精しないセックスは精神に悪影響を及ぼすとも訴えていた。
・(オーストラリアでロジー・キング医師曰く)だれもが1日24時間、週7日セックスを求めて楽しまねばならないという新たな神話が生じており、セックスがだれもが常にメダルを狙わねばならないオリンピック競技のようなものとして認識されていると語っている。

エルメスの道
竹宮 惠子
中央公論社
¥ 1,365


エルメスが1997年に初めて作った社史なのですが、なんとこれ漫画なんですよね。伝統的なブランドでありながら、革新的をする文化もあるんでしょうね。内容もすごくしっかりしていて、ストーリーも面白いし、クオリティも高いです。エルメスすごいなと思うこと間違いなしなのですが、まぁ社史なので当然と言えば当然ですね。。

馬具の下請けから始まったエルメスが、自社ブランドを持ち、2回の大戦と大恐慌を乗りこえ、ケリーバックやスカーフを生み出し、業態を変えながらも、手づくりの伝統とエレガンスを守っていく職人たちとエルメス家の物語。歴史書としてもよくできていますし、一読の価値ありです。

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P.S.ドラクエ9やってますが、、クリアまで当分時間かかりそうな予感。。

新世界より 上
貴志 祐介
講談社
¥ 1,995


新世界より 下
貴志 祐介
講談社
¥ 1,995


人間が超能力を使える設定のSFで、あまり長さは感じさせませんが、あまりにも世界観が壮大過ぎて、あれはどうなってるのか、もしかしてその説明で解決なのか、みたいな疑問が貯まってしまって、最後にもやもやした感じが残ってしまったのが残念な感じです。恐らくこれだけ世界観が違うとすべてのつじつまを合わせるのが相当困難で、作者も合わせられなかったのかなという感じかなと。しかし、こういううがった見方をしながらSFを読むのはフェアでないのは分かっていて、もっと疑問を持たずに読み進めればよかったかなとも思います。

P.S.これから上海に行ってまいります。

堕落する高級ブランド
ダナ・トーマス
講談社
¥ 1,680


元ニューズウィークでファッション・ジャーナリストである著者がルイ・ヴィトン、プラダ、エルメス、カルティエ、コーチ他、現在あるあらゆるブランドがどのように生まれ、どのようにグローバル化し成長してきたのかを丁寧に描いているだけでなく、コピー製品やアウトレットやネットへの取り組みから、日本、中国、ロシア、インドでの現状まで取り上げています。

さらに、すごいのは、タイトルにあるように、現在のブランドの問題点を詳細に調べていて、それに対するカウンターとしての新しい動きまでもを取り上げている点です。

例えば、ブランドがあまりにも大衆化し、グローバル化し金儲けを重視しすぎため、品質にまで手を付けはじめてしまったことが赤裸々に綴られ、それに対して、H&MやZARA、アバクロなどのファスト・ファッションが高級ブランドのデザイナーと組むことで、低価格帯からの追い上げが始まっていることなどが指摘されています。

一方で、ブルガリのホテルやブラジルの新しいラグジュアリー・デパート「ダズリュ」、元グッチのトム・フォードの新しいブランドやクリスチャン・ルブタンなどの新しい取り組みなども紹介していて、非常に刺激的です。

ブランドというのは、現代のあらゆるビジネスに欠かせないものでありながら、まだまだよく分からないものだと思います。しかし、本書によってまさにブランドがもっとも重要な要素になっているファッションの世界を包括的に知ることで、どのようにブランドを扱っていけばいいのか、というヒントを得ることができるように思います。

<抜粋>
・今日、約40%の日本人がヴィトン製品を所有しているという。「なぜブランドものを買うのか」と尋ねた市場調査で、日本人はもっともな理由を挙げている「長く使えるからだ」と。しかし、ある専門家によれば、「日本人が自分たちは階級のない社会にいると考えている」ことがおもな理由ではないかと指摘する。実際、別の調査では、85%の日本人が「自分は中流階級」と答えている。
・現代の香水の始祖ともいえるべき存在が、シェネルNO5だ。 第2次世界対戦が終結したとき、ヨーロッパに派兵されていた米国兵たちは愛する人へのプレゼントとして競って買い求めた。マリリン・モンローが「ベッドでつけるのはシャネルの5番だけ」と言ったのは有名な話だ。(中略)NO5は世界中のどこかで、30秒に1瓶ずつ売れていると言われている。(中略)『ウィメンズ・ウェア・デイリー』によれば、NO5の利ざやは40%で、競合する製品の4倍以上だそうだ。
・大半の香水を実際に創作しているのは大手の香水研究所である。スイスのジヴォータン・ルール、米国のインターナショナル・フレイヴァーズ&フレグランシズ、ドイツのシムライズやハーマン&レイマー、スイスのフィルメニッヒ、英国のクエスト・インターナショナル、日本の高砂香料工業などだ。総事業規模は年間200億ドルで、彼らは高級ブランドの香水からフライドポテトまで、あらゆるものの香りや風味をつくりだしている。
・香水づくりのすべてを外部に委託している高級ブランドでは、新製品の開発時には、まず「どんな香水をつくるか」というブリーフをまとめ、研究所数社でコンペを行なうのが一般的だ。
・プラダのバックパックは、会社自身も気づかないうちに、高級ブランドを急激に変化させるきっかけとなった。「卓越した技術で手づくりの商品を家族経営の小さな会社が販売する」というそれまでの高級ブランドビジネスは、「グローバルな企業が中間階層をターゲットに大量に売る」ビジネスへと変わっていった。
・中国で偽物製造者と闘うのは、いくつかの理由で簡単ではない。その最大の理由は、この国が歴史的に知的財産に所有の概念を持っていない点であろう。たとえば、教育を民主化した最初の人物である孔子は、すべての教室に知識を広げるべく、学者の偉大な作品を模写して学べ、と奨励した中国共産党の指導者が、個人でも企業でもなく、「国がすべての財産を所有する」と明言しているのも事態をさらに複雑にしている。(中略)国際商標協会元理事長のフレデリック・モスタートは言う。 「中国では何世紀にも渡って(コピーする)文化を脈々と受け継いできたのに、ある日突然止めるように命じられた。まさに文化的ジレンマを生んだね」
・(H&Mのマーケティング・ディレクターによると)カール・ラガーフェルドとのコラボは、クリスマス商戦に女性客を引きつけるアイデアを練っているときに浮かんだという。(中略)「女性に人気の高いカール・ラガーフェルドに白羽の矢を立て、電話をかけました。(中略)彼の考えでは、H&Mはシャネルと同じように流行を決定している。大手アパレル企業はファッションをつくっているが、トレンドはストリートで生まれている、ということでした。そこで我々は特別に作られた限定版を、限定された期間だけ大量流通させる、という『マスクリュシヴィティ』に挑戦することにしたのです。我々は民主的にどんな人にも商品を届けたいけれど、特別な日だけしか売らない限定商品もつくります」
・主要ブランドの中には本物の一流品を追求する姿勢を失っていないところもあるーーとくにエルメスとシャネルがそうだ。ケリーやバーキンの伝統的な手づくりのバックや、シャネルNO5の原料となるジョゼフ・ミュルのバラなど、クオリティが製品の要であるというブランドの哲学を貫いている製品もある。
・(トム・フォード曰く)「マクドナルドみたいになっているよね。どのブランドもそっくりと言いたくなるほど似ている。(中略)当時はそれが時代にあっていたんだよ。ぼくたちがしなければ、別の誰かがやっていただろう。あのころ世界の世界の文化はグローバルに均質化していた。そういう空気だったし、それに対応する必要があったし、ぼくたちがやったことに今でも誇りを持っている。でもぼくが関心を持っているのは今、現在のことだ。反動が来ているんだよ。昔ぼくが手がけたバックの広告を見ると吐き気がしそうだ。(後略)」

完全網羅 起業成功マニュアル
ガイ・カワサキ
海と月社
¥ 1,890


著名ベンチャー・キャピタリストのガイ・カワサキ氏による「企業成功マニュアル」。なるほど!と思うことも多くあったのですが、実際は状況によって違うことも結構ありますね。

後、僕自身いろんなフェーズでいろんな方々にアドバイスを求めて、いろいろとアドバイスをいただいたり、本を読んでヒントを得たりしてますが、実際の各フェーズにいる身としては、なかなか見えないことが多いです。

後で「そういうことだったのか」と気づくんですよね。逆に、アドバイスを聞いて、失敗したこともたくさんあります。

今の僕の考えは、

・本や人のアドバイスは真摯に受け止めるが、自分の中で腑に落ちない時は絶対にやらないこと
・自分にとって都合のよいアドバイスだけ聞き耳を立てていないか、都合の悪いアドバイスを無視していないか、常に自分を疑うこと

の2つが重要かなと思っています。

というわけで、こういう本はなかなか難しいなぁと思いました。今からベンチャーを起こす/起こした、という方は一読して損はないかなとは思います。

任天堂
井上 理
日本経済新聞出版社
¥ 1,785


昨年「日経ビジネス」に連載された任天堂特集をまとめた本。任天堂がなぜ今、好調なのか、そのルーツに迫り、どのように成功してきたか、これから何をしようとしているのかが描かれています。

任天堂の成功は、まさに自らの強みと弱みを徹底的に見つめ直して、努力して、天に任せた(任天堂の語源でもある)結果であって、これからの成功を保証するものではありません。しかし、本書に書かれているように、何十年にも渡って、多彩な人材が成功を生み出してきたことが任天堂の強さでもあるし、その経営哲学が一つの成功形であることを示していると思います。

個人的には、まさに今、ケータイゲームを作っていることもあって、すごく刺激的でした。宮本氏がマリオを作った時、たんに「おっさん」と呼んでいた話や、「星のカーヴィ」が発売直前でこのままではもったいないから発売中止された話など、おもしろい逸話の連続で非常におもしろかったです。そして、そういう中で任天堂が考える「ゲーム」とは何なのかが、おぼろげながら見えてきて、そうそうまさにこういうのがゲームのおもしろさなのだな、と思い、ゲーム作りの本質的なおもしろさにも触れた気がしました。

P.S.2年前の記事ですが、糸井重里氏のほぼ日の岩田さんとの対談(?)記事。これもすごくおもしろいです。

<抜粋>
・岩田は語る。 「私は、ゲーム作りそのものに、奥深さ、凄みみたいなものを感じるんです。ある一つのゲームを組み立てるということは、操作と遊びの構造を一体化させながら、何かのテーマ、コンセプトを貫いて延々と試行錯誤を繰り返すということ。膨大な可能性を追求して、究めるように収束させていく。そんな風に作られるものって、他にあまりないんじゃないかと感じるんです。」
・結果を伴ったというのは、幸運に恵まれた部分でもありますよね。だって、正しいことをしても常に結果がついてくるとは限らないわけで。人が何をもって面白いというかということもそうですが、とりわけ商品が何をもってヒットするかということに関しては、自分たちの力の及ばない部分がものすごく大きいんですよ。


漫画家でイラストレーターの西原理恵子による「カネ」にまつわるエッセー。

カネのない無惨な子供時代の話から始まり、その嫌な環境から抜け出すために、著者がどのように考え、どのように抜け出してきたのかが語られています。しかし、そこからギャンブル(麻雀)にハマって抜け出したこと、アジアの貧しい子供たちを見て考えたこと、家族が同じループにはまって苦しみながら再生したことなどが語られています。

子供や学生に向けて語りかけるようなエッセーになっていて、非常に平易な文章になっているのですが、書かれていることはものすごく奥が深くて、胸をうつ素晴らしい作品になっています。誰が読んでも、非常におもしろいと思いますが、すごく心から若い人に読んで欲しいなと思いました。

自分にとって、「カネ」とは一体なんなのだろうか。

僕はカネに困った、という記憶はあまりなく、そういう意味で非常に恵まれていたと思います。その多くは両親によっていて、それについていつでも感謝しています。一方で、自分よりカネを持っている人はたくさん知っていて、カネによってもっと豊かな生活も無駄な生活もできることも知っています。

そういった人は自らの能力でカネを得た人もいるし、運や家柄がよくてカネを得た人もいます。でも、人のことはあまり気にする必要はないと思っています。著者も言っていますが、自らを社会に問うていくことで、何が好きで何が向いているかを知ることができるし、そうすれば自然にカネを稼ぐことはできるようになります。

そして、その過程、つまり人生そのものを楽しむことができればよくて、人と比べることには意味はありません。運がよくてカネ得たからといって、それで自らを過信してしまえば、たとえそれを墓場まで持っていくことができたとしても、本当の意味で人生を楽しんだと言えないのではないと思います。

だから、成功も失敗もすべてを飲み込んで、幸せを噛み締めることができていることこそが重要であり、カネはそれにはあまり影響しない、と考えています。

もちろん、これをある程度カネを稼ぐことができている甘ちゃんの言葉だと思う人もいると思います。確かに僕は、現代日本という世界的にも恵まれた地域で育ち、好きなことを仕事にできているし、だからこそ言える言葉であるのも理解しています。

だから、僕は仕事を通じて、周りの人や世界を豊かにすることに少しでも貢献したいと思っているし、そのために仕事をしていると思っています。そして、そういうことを誰もがそれぞれの分野でやることによって、世界の富が増え、世界から貧困のループをなくすことができるのではないかと考えています。一人一人ができることは少ない。特に僕ができることなんて本当にちっぽけです。でも、自分の仕事をすることで、少しでも貢献できているのではないかと信じています。

<抜粋>
・最下位の人間に、勝ち目なんてないと思う? そんなの最初から負け組だって。 だとしたら、それはトップの人間に勝とうと思っているからだよ。目先の順位に目がくらんで、戦う相手をまちがえちゃあ、いけない。(中略)結局、わたしが予備校時代のまる一年をかけて学んだのは、自分の絵がどうダメなのか、うまい人と、どこがどうちがうのかということを、冷静に判断できる力をつけたことだった。
・「どうしたら夢がかなうか?」って考えると、ぜんぶを諦めてしまいそうになるけど、そうじゃなくって「どうしたらそれで稼げるか?」って考えてみてごらん。
・働くっていったい、どういうことだと思う? 子どもから見たら、大人の世界はすごくたいへんそうに見えて、何だか「感じが悪い」って思っているかもしれない。(中略)大人って、自分が働いて得た「カネ」で、ひとつひとつ「自由」を買っているんだと思う。 単純な話、働いてお金が稼げるようになれば、できることや行動範囲だって広がっていくからね。「大人になる」って、だから楽しいことなんだよ。
・わたしの場合も、人から「あれ描いて」「これ描いて」って注文されて、断らずにやっているうちに「このあいだのアレ、おもしろかったよ」「こういうのをまたやりましょう」って、ウケるほうに、食べていけるほうに、仕事が寄っていった。そうなると、ひとつの仕事が次の仕事を呼んで、仕事の道ができていく。 だから、わたしは思うのよ。 「才能」って、人から教えられるもんだって。
・今、自分のいる場所が気に入らなくって、つらい思いをしてる子だって、その「嫌だ」って気持ちが、いつか必ず、きっと、自分の力になる。 マイナスを味方につけなさい。今いるところがどうしても嫌だったら、ここからいつか絶対に抜け出すんだって、心に決めるの。 そうして運よく抜け出すことができたんなら、あの嫌な、つらい場所にだけは絶対に戻らないって、そう決めなさい。
・ギャンブルっていうのは、授業料を払って、大人が負け方を学ぶものじゃないかな。その授業料を「高い」って思うんなら、やらないほうがいい。まして本気で儲けようだなんて思うほうが、まちがい。(中略)人生だってそう。勝つことより、負けることのほうがずっと多いし、負けてあたりまえ。わたしにとってのギャンブルは、そういうときの「しのぎ方」を、型破りの大人たちから学んだところだった。
・「カネについて口にするのははしたない」という教えも、ある意味、「金銭教育」だと思う。でも、子どもが小さいときからそういった「教え」を刷り込むことで、得をする誰かがいるんだろうか。 いる、とわたしは思う。 従業員が、従順で、欲の張らない人たちばっかりだと、会社の経営者は喜ぶよね。(中略)そういう人間が育つように戦後の学校教育ってあったって思うし、そういう人間を使うことで日本の経済成長もあったと思うけど、もう、単純な経済成長なんか見込めないような今の時代に、そんな金銭教育のままでいいのだろうか。
・「自分は何をしたいか」を考えるのも、もちろん大切なこと。でもその前に、キミたちに聞いてみたい。 働けることのしあわせ、働く場所があることのありがたさについて、考えてみたことがありますか?
・人が生きていくということは、もしかすると遠い遠い家路なのかもしれない。 働くことも、お金も、みんな、家族のしあわせのためにある。 わたしは、いま、そう思っている。 働いていてよかった。自分の仕事があってよかった。そのおかげで、病気だった彼をちゃんと看取ることができた。子どもたちにも、お父さんのいい記憶だけが残った。 お金には、そうやって家族を、嵐から守ってあげる力もあるんだよ。

テンペスト  上 若夏の巻
池上 永一
角川グループパブリッシング
¥ 1,680


テンペスト 下 花風の巻
池上 永一
角川グループパブリッシング
¥ 1,680


開国直前の琉球王朝末期を舞台にした壮大な物語。沖縄には縁がなくて一昨年に初めて行って(昨年2回目)、その奥深さに関心を持ち始めていたところだったので、民俗の描写が非常に興味深かったです。清と薩摩の間、さらに黒船到来、新政府の日本で揺れ動く王朝、科挙のような試験と王府の仕組み、最高神官の聞得大君加那志(きこえおおきみがなし)や王妃、側室が対決する男子禁制の御内原(うーちばら)などなど。

もちろん小説ですから、すべてが真実ではないわけですが、沖縄がこれだけ豊かな文化を持った一つの王国であったということを知ることができてよかったです。沖縄に行ってももっと楽しむことができそうです。

さて、内容についてですが、基本的にはおもしろいのですが、主人公がいじめられて危機に陥りなんとか切り抜けることの繰り返しの展開に、正直だんだん飽きてきてしまうのは否めません。浦沢直樹「Happy!」や韓流ドラマのような展開と言えば分かりやすいかもしれません。個人的には苦手なタイプなので、もう少しカタルシスのある気持ちのいいストーリーだったらよかったのになと思いました。

とはいえそれは好みの問題で、琉球を知るにも非常によい作品だと思いますので、ぜひたくさんの方に読んで欲しいなと思います。

琉球王国 - Wikipedia

1Q84 BOOK 1
村上春樹
新潮社
¥ 1,890


1Q84 BOOK 2
村上春樹
新潮社
¥ 1,890


村上春樹新作。軽く100万部を超えそうだそうで、かなり売れているようですね。二つの物語が平行するスタイルは、僕のが著者作でもっとも傑作だと考える「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を彷彿とさせ、かなり期待して読み進めました。

しかし、内容的には今までのスタイルを踏襲しており、いつものようにときおりおっと思わせる台詞が出てきたり、語り口のうまさで引き込ませるものの、新しい要素があるわけではありません。特に今回はファンタジー色がかなり強いです。確かにおもしろいのですが、何か新しいところが欲しかったな、という印象でしょうか。

P.S.著者が「今までで最も長い小説になる」と発言していることからBOOK 3が出るのではないかという噂があるみたいですが、個人的な感覚からはない気がしますね。個人的には、かなり、きれいに、完結していると思いました。しかし、もし村上氏が新機軸を打ち出すのなら、あるいはありかもしれません。

ひと月15万字書く私の方法
佐々木 俊尚
PHP研究所
¥ 1,050


※本書は献本いただきました

CNETなどでよく拝見するジャーナリスト佐々木俊尚氏の新作。佐々木氏はなんと月10本以上の連載に加えて、書籍を4、5冊書き、さらに年間50回の講演をし、2つの大学で毎週教えているという。まさに驚異的な仕事量。

僕は以前に本を書いた際にかなり苦労したので、文章を書ける人というのはとても尊敬します。この本では、情報収集、構造化、フレームワークに分けて、著者が実際に行なっているやり方が紹介してあり、とても参考になりました。特にマインドマップの使い方とか、初めて知ったので大変勉強になりました。

しかし、ここまで意識的に最先端のテクノロジーを取り入れ、ブラッシュアップをし続けているジャーナリストというのはいないのではないでしょうか。新しいタイプのジャーナリズムの到来を予感させられます。

個人的には、僕はプレイヤーなので、そのとき関心のあることにフォーカスして情報収集も検討もしていますが、気になったものをclippしたり、おもしろかった本をブログに書くくらいで、それ以上、分類したり整理したりもしてません。どうせ本腰を入れて、できることは限られているので、情報の洪水を浴びながら、時折自分がぴんときたものや、好きだったりおもしろいと思うことを徹底的に考えて、実行すればいいかなと思っています。

P.S.日曜から風邪を引いていたのですが、もうだいぶいい感じです。ちなみに、病院で検査して新型じゃありませんでしたので、ご安心を。


25歳フリーターにして、1億2000万の借金を背負った著者が、どういう過程で借金を背負い、どうやって返済したかを書いた本。読みやすいので、さくさく読めますし、絶望的な割には暗い感じではないです。

個人的にヒットしたのは、著者が(借金を背負いながら)不動産会社で株式公開準備をした時に気づいた不動産業界の構造についての部分でした。新興の不動産デベロッパーがなぜ、どうやって勃興し、その時の内情はどうで、ほとんどすべてが倒産していく様子が書いてあります。

著者曰く「財閥系、鉄道系を除くほとんどのマンションデベロッパーは、10年でランキングTop10から消え去り、20年ですべて潰れる」そうで。結局のところ、不況期に財閥系や鉄道系の不動産デベロッパーが安く買いあさって、元通り、というのがまさに今リアルに起きていることで、なんだか切ないなぁと思いました。


ほっかほっか亭を義兄と共に立ち上げ、その後フレッシュネスバーガーを立ち上げた栗原氏が自らを振り返りながら、起業や仕事について語った本。経験に裏打ちされた起業や仕事への考え方は非常に勉強になります。考え方は非常にスマートなのですが、肩肘がはっていなくて自然体な人柄がにじみ出ていて、すごくいいなぁと思いました。何カ所か「若い人は」な話がありそれだけちょっと気になりましたが、若い人への期待感なのかなと思いました。

  • (どうしていつも楽しそうに仕事をしているのかと問われて)仕事をしている以上、必ず何かの問題にぶち当たるのだが、一言でいえば、その問題自体を楽しむこと。それが一番、手っ取り早くて、ブレないやり方だと僕は思う。
  • 「旅行など遊ぶことで解消しても、仕事の魅力は変わらない」と。これは確かにそうだなぁと思います。逆に言うと、そういうプロセスを楽しめる人の方が起業には向いているのでしょうね。
  • (フランチャイズで多店舗展開するときのメリットについて)なんといっても自分の提案する店舗、文化を世の中の多くの人に利用してもらえるという"ロマン"だ。
  • 「ロマン」ってすごくいい言葉だなと。そうそうまさに自分も「ロマン」のために仕事をしているのだった!と思いました。
  • (質問されて嫌な人はいない)もしあなたにも部下がいるなら、そのことがわかるはずだ。いろいろと質問してくる部下は、基本的に仕事熱心なのだ。こちらがアドバイスしたことを素直に聞いている姿を見ると、つい目をかけてしまうようになる。次第に先輩に可愛がられるようになるという意味でも、質問は大事なことなのである。
  • だんだん自分に自信を持ってくると質問をするのが恥ずかしくなってきます。もっと積極的に勉強していこうと思いました。
  • (昔は資料を探すのも、荷物一つ出すのも大変だった)今は何をするにも手間がかからなあい。やる気さえあればあらゆる知識をインターネットを使って簡単に入手できる。(中略)今の環境にありがたみを感じられるかどうか。そこが問われているということを言いたいのだ。あなたが今置かれている環境のありがたさに気づきさえすれば、それを利用していくらでも自分の知識や活動のフィールドを増やすことができるはずだ。
  • 先日の話でもないですが、世の中どんどん便利になっていることは忘れがちで、日々「今の環境にありがたみを感じられる」世界観というのはポイントだと思います。
  • (アイデアが出なくなったとき)夜な夜な先端スポットで遊んでいたら、ちょうど一週間くらいたった時、まるで憑き物が落ちたように、以前の感覚が戻ってきたのだ。(中略)「遊び」にはおカネも体力も必要だが、アイデアを生むにはそれらの投資が欠かせない。ちょっと怠っていると、世の中がわかならなくなり、やがてアイデアが枯渇してしまう。
  • すごくそう思います。もちろんこもってやる時期も必要だと思いますが、僕も遊びは投資だと思って必死でやってます。
ドキュメント長期刑務所
美達 大和
河出書房新社
¥ 1,890


※本書は献本いただきました

人を殺すとはどういうことか」の著者の新作。前作では人にフォーカスしていましたが、本作は長期刑務所とはどういうところなのかにフォーカスして描かれています。

入所の様子から始まって、運動会や正月など年中行事など非常に詳細に書かれており、かなりリアルに長期刑務所がどういうところなのか分かります。相当自由が制限されていることが分かるのですが、それでもやはり受刑者同士でコミュニケーションするうちに周りに感化されてそれが当たり前だと思ってしまうらしく、結果として反省しないままに出所してしまう模様も今回もばっちり書かれてます。

前作のようなインパクトは薄いかなと思いましたが、これもまた中の人が書いた貴重なドキュメントだと思います。本書により、何かしらの改善が行なわれるといいなと思います。


現在ミスミ社長で、再建請負のプロ経営者、三枝氏が経営指南本。実際にミスミ以前に請け負ったいくつかの会社のケースをミックスして小説仕立てになっていて、非常に読みやすいです。

経営者としては、ウノウはまだ20名程度の会社なので、もっと違う要素に左右される部分は大きいのですが、それでも本書にあるような経営能力が必要とされることも多く、いろいろと勉強になりました。

特にプロ経営者を目指している人、大企業の人にかなり参考になるのではないかなと思います。

<抜粋>
・東亜テックに初めて行ったとき、いったい何人の役員から「社員を不安にすることは言わないでください」と言われたことだろう。しかし、彼らは完璧に間違っていた。それが仲間を守ろうとする日本人の心情だというなら、偽善もほどほどにしろと言いたいくらいだ。社内で真実を語りたくないのは、それを言われて困る人たちなのだ。
・アスター事業部のタスクフォースメンバーは、あとで振り返って、「辛かった」「鬼気迫るものがあった」「狂気にも似た執念だった」と言った。(中略)しかし、この程度の集中的緊張状態はプロの経営コンサルタントの世界では決して珍しいことではない。タスクフォースの代わりにコンサルタント会社が入れば、10名どころか、その半分以下の人数のコンサルタントしか投入しない。そしてプロのコンサルタントたちは川端たちと同じかそれ以上に猛烈に働く。
・しかし、リーダー役になる外部コンサルタントの多くは「プロ的思考マインド」は強いが、一般に「リスクに立ち向かう経営者的行動マインド」は口ほどでもないことが多い。
・(抜擢に対して抵抗があったとき)改革が総論で語られているうちは、大多数が賛成する。それが各論に下りるに従い、立場や考え方の違いが表面化し、あちこちで新旧価値観の戦いが始まる。この問題の根源は、人事体系そのものではない。事実、この三人の任命が正式に決まったあとは、まるで初めから何の問題もなかったかのようにそれが実行された。人事体系などその気になれば、どうにでもなるのである。
・企業の人材が成功と失敗を経験して育っていくのと同じように、私も成功ばかりでなくこれまで失敗や屈辱をたくさん経験した。(中略)思い通りにいかないことが起きてみると、そのときは人のせいにして腹を立てたりするのだが、冷静に考えると結局、自分の「読み」が足らず、経営的力量が不足していたと反省することが多かった。

芸術起業論
村上 隆
幻冬舎
¥ 1,680


「スーパーフラット」やルイ・ヴィトンとのコラボなどで知られる芸術家の村上隆氏がどのように芸術や芸術家というものを考え、どのような作品をどのような考えで作ってきたのかなどを書いた本。

村上氏のことはあまり知らなかったので、正直ものすごい人がいたものだとクラクラしました。本人は自分は凡人であると言っていますが、芸術家になるための戦略への確信犯ぶりは並大抵の人物ではありません。

書かれている内容は平易なのですが、核心をついているものが多くて、ほぼ毎ページのようにしおりを付けてました。抜粋はあまりにも長くなってしまったのですが、あえて掲載します。

本書から得られる知見はあまりにも多いのですが、僕が個人的にまず考えたことを書きます。

村上氏は日本では敗残者でしたが、アメリカで成功しました。それは日本の「かわいい」や「オタク」的なものを、自覚的に「初めて」欧米芸術へ持ち込んだことが勝因であったと書かれています。

僕は、4年前にシリコンバレーから帰ってきて、日本人としてネットサービスを作って世界中で使ってもらうことを目標にしています。アメリカにいる時に考えたことは、「ここで3〜5年くらいベンチャーに潜り込んでやれば英語も能力もなんとかなるだろう、しかし日本人的なものを捨ててアメリカ人として勝負しなければならない」ということでした。また「日本でやる方が人脈も行かせるし、会社をやるための仲間も十分いる、日本から海外に持っていけばいいではないか」ということがあって帰国して会社をやっています。もちろん今のところまったく海外で足がかりを作れていないのは誤算ではありますが、そこは過信もあったでしょう。

しかし、重要なのは「日本人的なもの」だったのではないかとふと気づいたのです。

村上氏は次のように書いています。「変幻自在の発想力は日本人には吸っては吐くようなものだから、自分たちではその芸術的価値をまだ理解していないようにも思えるのです。ぼくたち日本人は自分たちの作り出したキャラクターを過小評価しているのかもしれません」。この話はキャラクターについてですが、基本的に文化的なものすべてに言えると思います。

本書から、僕はなぜ「日本人的なものを捨てて」と考えたかというと、まだ僕には自分の中で「日本人的なもの」が確立していなかったからではないか、と思いました。だからこそ、「捨て」ないと勝負できないと考えたし、そしてさらに「重要なのは」僕はそれを捨てたくないと思ったことです。

僕がもし大学生なら躊躇なくアメリカに住み続けたと思います。しかし、すでに日本人であった自分にはアメリカで何かをやるのであれば、自分のルーツである「日本人であること」を世界に組み込むことを考えたいと思いました。日本が好きだし、日本人であることを誇りに思っているから。でも、そのためには日本のことを知らなすぎたし力不足だった。だから、日本に戻ってきたのだと思います。

村上氏は30代半ばまでコンビニで弁当を分けてもらうほど困窮していたと言います。しかし、それからアメリカに渡り、欧米人に日本人の芸術を認めさせることに成功しました。しかし、それは長い長い日本での芸術活動があってこそ成功したのだと思います。

僕も今、いろいろなものを通じて日本的な素晴らしいものに触れて、日本人的な視点からネットサービスを作っているつもりです。その試みは成功するかどうかは分かりません(今まで失敗してきたわけですし)。もちろん作っているときは楽しいのですが、結果が出ないととても苦しいし、このまま自分の才能が枯渇してしまう「恐怖」を感じないときはありません。

村上氏はこうも書いています。「手塚治虫さんは、きっと「何か」を見たんだと思います。歴史に名が残るかどうかよりも、その「何か」が見えたかどうかが気になるのですね。僕はその「何か」を見たいと願い続けてきました。そのためならぼくは、地獄を見てもいいと思いました」。

僕も、光を見るためなら、地獄を見てもいいと思っています。

<抜粋>
・欧米では芸術にいわゆる日本的な、曖昧な「色がきれい・・・」的な感動は求められていません。知的な「しかけ」や「ゲーム」を楽しむというのが、芸術に対する基本的な姿勢なのです。
・芸術家とは、昔からパトロンなしでは生きられない弱い存在です。冒険家と変わりません。コロンブスは夢を語りましたが、命を賭けなければならない社会的弱者でもありました。ただし、コロンブスの名前が残ったように、芸術家の名が権威になることも起こりうるのですが、それはずっと先のことです。コロンブスがパトロンを見つけて航海に出たように、まずは弱者として生き抜かなければなりません。
・西洋社会と日本社会では大金持ちの桁が違います。(中略)栄耀栄華を極めた経営者には、ほとんどの問題はお金で解決できるものなのでしょう。人の感情もわかったような気になる・・・そんな時にこそ人間は芸術が気になるようです。なぜならば「人」こそ、そしてその「心」の内実こそ、蜃気楼のように手に入れたと思った途端逃げてゆくものだ、ということを彼らは知っているからです。
・日本の美術教育はデッサンに異様に執着することもあって、現代の日本人は総じて絵がうまくなっています。つまり、日本の頼るべき資産は技術で、欧米の頼るべき資産はアイデアなのです。
・なぜ、芸術作品には高い値段がつくのでしょうか。なぜ、芸術家は尊敬されるのでしょうか。理由は簡単です。すばらしい芸術はジャンルを超えて思想にも革命を起こすからです。(中略)歴史に残るのは、革命を起こした作品だけです。アレンジメントでは生き残ることができません。
・美術の世界の価値は、「その作品から、歴史が展開するかどうか」で決まります。
・天才が空白状態の中で作るものは歴史をガラリと変える可能性もあるのですけれども、水準が高すぎたり時代の先に行きすたりしているために、リアルタイムでは正当な評価を受けられないかもしれないのです。
・しかけのある作品でないとなかなか認められないという美術界の構造はおそらく天才でない大半の芸術家のために生まれたのだと思います。歴史や民俗を取りこんだ作品制作はあざといことでしょうが、凡人には必要な試行の過程なのです。
・株式市場と同じです。時代の価値と気分が市場という総体を形成するように芸術の世界も気分は重要です。作品制作の傍らで時代のリアリティを検索し続けることも大事ですね。つまり・・・生き残るのだ、という情熱が不可欠なのです。
・他のことでは絶対に得られない「コイツが欲しかったんだな」という一発があるから、つらくても、ついつい、作品制作に向かってしまうのです。「掴めたな!」という快感を知ってしまえば、たぶん、際限なく、そこに向かいたくなってしまいます。
・賢く得意技を権威づけていかなければ、知らないうちにアメリカがオタク文化の権威になってしまい、搾取されて何も残らないということも起こりかねません。今の日本の知的芸術的資源は「かわいい」と「オタク」なのですから、そのへんを更に発展させていかなければなりません。
・あるアニメ雑誌の編集長は「アニメに批評はいらない。視聴者の夢を壊しちゃう」と言いますが、正当な権威や評価が生まれないままではいつかアメリカのルールに搦め捕られてしまうでしょう。
・日本人は本質的に絵を見たり描いたりするのがとても好きなのです。
・変幻自在の発想力は日本人には吸っては吐くようなものだから、自分たちではその芸術的価値をまだ理解していないようにも思えるのです。ぼくたち日本人は自分たちの作り出したキャラクターを過小評価しているのかもしれません。
・作品には、一人の人生の考えのほとんどを封じこまることができます。その意味では作品は未来に託す最高のタイムカプセルでしょう。ある世界観の重要性を主張し続けられる媒体なのですね。人は死ぬ。ものはなくなる。しかし作品は生き残るかもしれません。人類の考えの痕跡を残すものが表現です。
・本人が死んだなら、残された人たちは個人の歴史を自由自在に操ることができます。そういう意味でゴッホは自由度が高かった・・・あれほどのゴッホ神話ができあがった原因はそこにあるのではなかと僕は思うんです。
・芸術の世界では、そんな死後の世界の価値を作りあげることこそが、かなり重要視されているのです。芸術家は自由な存在と思われがちですがそれは錯覚です。芸術家の自由はほとんど死後に限定されています。
・手塚治虫さんは、きっと「何か」を見たんだと思います。歴史に名が残るかどうかよりも、その「何か」が見えたかどうかが気になるのですね。僕はその「何か」を見たいと願い続けてきました。そのためならぼくは、地獄を見てもいいと思いました。
・「村上さんは私がこの会社に入った時に言っていたことをもうすべて達成してますよ。あとは計画していた美術館設立に向けて、ゆっくりやっていけばいいじゃないですか」違うんです。足りません。村上隆って、客観的に見るとどれだけ不充分なのか、ぼくには分かる。
・ぎゅうぎゅうにしめあげていると、しめあげているだけあって、やっぱり最低でも一回は、光が見えるかのような瞬間がやってきます。これは経験上だいたいの人がそうです。死ぬまで光が見えないよりは、苦しくてもつらくてもたまらなくても光を見た方が絶対にいいのだとぼくは思います。
・人間は滅びます。世界のすべては変化し続けます。予期せぬことも起こります。芸術はそんな不測の事態を一瞬で理解させられる媒体で、生きる意味を考えさせてくれます。芸術とは命の伝達媒体ですから時代を超えて人々に受け継がれてゆくものです。
・今は、日本から世界に飛び出すチャンスだと思います。本当に、何をしても、成功するのではないでしょうか。日本も戦後60年の「敗戦文化」みたいなものが身にしみているので、敗戦文化独特の強みが出てきているし、文化は重層化しているし・・・。
・日本の文化をそのまま持っていっても評価される時代がすでに来ているということだと思います。そのために必要なものは何か? もちろんそれは、世界に持っていくというガッツです。
・私は芸術を生業とすることに誇りを感じており、後ろめたさ等、万分の一もなく、そしてその「マネー」=「金」こそが人間が超人として乗りこえるべき時にでも、へばりつく最後の業でもある、だから、故に、この業を克服していく方法こそが真の、現代において練りあげられるべき「芸術」の本体であると思っているのです。

村上隆 - Wikipedia
・SUPERFLAT MONOGRAMールイ・ヴィトンの店頭プロモーション用短編アニメーション、素晴らしい、僕の村上隆のイメージはこれです

日本を変えた10大ゲーム機 (ソフトバンク新書 87)
多根 清史
ソフトバンククリエイティブ
¥ 798


個人的にゲーム業界というのはインターネット業界の今後を見据える上で非常に参考になるのではないかと思っています。まず非常に珍しい日本発で世界で通用する無形サービスであるということ(最近は崩れてきてるようではありますが)、それから試行錯誤しながらプロデューサー制とも言うべき制作体制を整えてきたということです。

恐らくゲーム業界で起こったことはインターネットの世界でも起こると思っています。まずいかにして世界に通用するようなサービスを作っていくかについては、恐らく大きな枠組みを発明することではなく、クオリティで勝負することです。アクションゲーム、RPG、カードゲームがある中で、スーパーマリオ、ドラクエ、FF、ポケモンなどを生み出したように、世界観から緻密な作り込みをしたサービスを作ることだと思います。

次に、ゲーム黎明期は様々な職種が入り乱れてゲームを作っていたのが、ゲームの世界観をまとめるゲームプロデューサーが最も重要であるという流れを作り、数々のスターを生まれました。本書でも飯野賢治氏がPS発売が決まっていた「エネミーゼロ」をよりにもよってソニー主催の「プレイステーションエキスポ」の席上で、セガサターンに乗り換えると発表された事件や、プレステで行われた「ゲームやろうぜ」というゲームクリエーターのオーディションの話も出てきます。

恐らくインターネットサービスもプロデューサーがキーになってくると思います。イメージは、はてなのサービスクリエーターがそれに最も近いですが、あのはてなでもサービスクリエーターという肩書きの人はわずか3名しかいません。それだけ希少性が高く、手法が確立していないということであると思います。しかし、ゲーム業界では専門学校でゲームプロデューサーは最も人気のある職種です。はてな近藤さんとも昔、「(善し悪しは別として)この業界もそういう学校ができるところまで行かないといけない」という話をしてました。

うーむ、かなり本とは関係ない内容になってしまいましたが、本書はゲーム業界をゲーム機という切り口で黎明期から現在までを俯瞰できる良書です。個人的には、上記のような理由で非常に参考になりました。

<抜粋>
・(スペースインベーダーについて)タイトーの正規品だけで30万台、違法コピーを合わせると60万台を超えたという未曾有のヒット。この記録を破る業務用ゲーム機は、30年後の今日までない。
・1977年、任天堂は「カラーテレビゲーム6」と「カラーテレビゲーム15」という二つのゲーム機を発売した。その名の通り、それぞれ6種類と15種類のゲームが遊べて、価格は9800円と15000円。しかし、中身はまったく同じ基盤である。
・(Wiiについて)ゲームをプレイしている最中のピーク時でも、Wiiの消費電力はわずか45ワット。Xbox360は350ワット、PS3は370ワットというから、発熱量の少なさや、冷却ファンの静かさも比べものにならない。また、スタンバイ時での消費電力は4ワットで、岩田社長いわく「豆電球1個程度」の省エネぶりだ。


いわゆるノウハウ本については、いくつかおもしろいネタがあったらOKだと思っていて、そういう意味ではよかったです。

<抜粋>
・本代が住居費の10分の1というのは、要するに、自分という人間は住んでいる家の10分の1しか将来価値を生まないと、自分で認めているようなものです。自分への投資をケチるなんて、いったいどこまでドケチなんだと思いませんか?
・自分の人生を映画化したら、いったい何人の観客を動員できるでしょうか? 人生で起こる出来事はすべて「ネタ」だと考えれば、お金より経験を選びたいものです。
・先日、知人と飲んでいるとき、「お金持ちはベンツをローンで買う」ということを聞きました。なぜかというとベンツのローン金利は4%ですが、彼らは自分のお金を年利15%以上で運用できるからだそうです。
・僕たちの生活の中にも、たくさんの等価交換が隠されています。いわゆるトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たない)というものです。手持ちの予算には限りがある、時間にも限りがある。割ける労働力にも限りがある。だからすべてを満たすことはできない。仕事でも日常生活でも、つねにそういう状況下での決断を迫られています。

世界は感情で動く (行動経済学からみる脳のトラップ)
マッテオ・モッテルリーニ
紀伊國屋書店
¥ 1,680


経済は感情で動く」の著者が、経済に限らず世界を題材に実例から行動経済学によって分かっていることを書いた本。基本的には「経済は〜」にかなり似通っており、重複していることも多いように感じました。個人的には「経済は〜」の方が(最初だからか)おもしろかったです。

いずれにしても、質問を前後させたり、ちょっと表現を変えたりするだけで、まったく違う結果が出てきてしまう統計結果をこれでもかというくらい見せられると、自分の判断を相当冷静に見ないとなという思いを新たにさせられます。

<抜粋>
・(宝くじの)当選者たちは、旅行で五つ星の部屋に泊まったとか、家を大きくしたとか、新車を買ったとか、それくらいのことはしただろうが、そうした変化が日々の幸福度を決定的に変えることはなく、至福感は短いあいだに消えてしまっていた。
・年収が10万ユーロ(約1250万円)を超える人は、銀行預金が非常に乏しい人と同じほどのいらだちや不快感を抱え、同じほどの時間をストレスのたまる不快な活動に費やしている。渋滞のなか一人で運転する、毎日混んだ電車で通勤する、会社での人間関係が好ましくないといったことも、幸福感を著しく妨げることが明らかになった。一方で、くつろぎ、セックス、友人との食事、祈りや瞑想、スポーツ、クッキング、ショッピングなどは、快感を非常に強める行動のうちに数えられた。
・他人への敵意や軽蔑は、自分の属する集団のアイデンティティやプライドを高めたいという欲求から生まれるものであるようだ。乏しい資源をめぐる競争(空き地の取りあいやトーナメント戦といった取るに足らないものも含む)の必要性が高いほど、したがって結束力の必要性も高いほど、衝突ははげしくなり、相手方への反感も強くなる。
・私たちのエゴはつらいことや苦しいことには耐えられないから、無意識のうちに、都合のいいことだけを記憶に残そうとする。こうしてゆがんだ記憶は、選ばなかった選択肢を惜しむ気持ちを一掃し、平穏で落ち着いた毎日を守る役目を果たしているのだ。
・人は年齢が増すほど、記憶を好ましいように色づけするという、特別な自己寛容の精神を身につけるものらしい。「老人の知恵」という言葉があるが、過去を公平な目で見ることができなければ、間違いから学ぶこともできないではないか。

20代、お金と仕事について今こそ真剣に考えないとヤバイですよ!
野瀬 大樹
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
¥ 1,365


20代ではないですが、いろいろ勉強になることがありました。ノウハウ本っぽいところも多いですし、自分には当てはまらないなと思うところもありましたが、こういう本はいくつかでも勉強になるところがあれば、よいのです。さくさく読めますしね。昨日に続いて、IDEA*IDEA風抜粋コメント形式で。

  • 例えば、100万円をある有名な都市銀行に定期預金として預けても、利息はせいぜい年間0.25〜0.35%くらいだと思います。100万円を1年預けてたった2500円〜3500円程度です。しかし、店舗を持たないインターネット銀行の存在を知り、なおかつそこで申し込みを済ませると、一気に定期預金の金利は1%以上に跳ね上がります。1年間で1万円の利息です。
  • これは当然知ってたわけですが、確かに貯金を眠らせておくのはもったいないなぁと思って、急にお金が入用になって解約しても減るわけでもないので、さっそくある程度を定期預金にしました。

  • リスクが大きいといわれる株式投資でも、その配当利回りは1〜3%。短期的には株価は変動しますが、10年以上という長期で保有すれば、配当および値上がりも含めたトータルでの利回りは年6%程度に落ち着くことが統計より分かっています。
  • これは正直どうなのかなと思います。今後も6%に落ち着くかは全然分からないですし、世界的にはそうなっても人口減の日本の株式市場がそうなるかは未知数。

  • 結婚に必要なお金は426万円(中略)一方、結婚で得られる「収入」は423万円(2008年)だそうです。結婚で得られる収入? と思う人もいるかもしれませんが、要するに「親の援助」と「お祝い金」です。(中略)自己負担は・・・なんとゼロ。
  • 結婚はお金がかかると言われてますが、「お祝い金」とかを考えると、実はほとんどかかってないですよ、というのは長年の疑問が解消した瞬間でした。

  • では、若者は結婚する際、どこにお金を使っているのでしょうか? それは、新生活にかかる費用です。これまたゼクシィの調べによると、その金額はおおよそ150万円。敷礼金30.7万円、引越し6.2万円、家具50.3万円、家電42.9万円、その他22.5万円だそうです。若者がお金を使う、意地悪な言い方をすれば「身銭を切る」のはこの新生活費用の150万円だけであることが予想されます。
  • そして、かかるというのは、新生活の費用なんですね。僕も新生活ではないですが、アメリカに引っ越した時と帰国した時は、予想以上にお金を使いました。。

  • 妻は海外ドラマが好きで、「24」や「デスパレートな妻たち」などをよく見ているのですが、彼女は決してレンタルでDVDを借りません。どうしているかというと、買っているのです。
  • この後、オークションで買って見たら売る、という方法が示されているのですが、これはなるほどなと思う反面、オークションって手間が結構かかりますからね。僕の場合はなるべくそういう手間は増やしたくないので、本とか映画、DVD、演劇とかは人生の肥やしだと考えて、躊躇せずに買うようにしてます。

アイバンのラーメン
アイバン・オーキン
リトル・モア
¥ 1,680


日本でラーメン屋をやっているアメリカ人がそれまでの半生を振り返った本。IDEA*IDEA風な抜粋コメント形式で。

  • 僕は飲食店の些細な問題にいら立つことが多くて、頭の中で"アイバンのいら立ちリスト"を作っているほど。今までの25年間、ラーメン屋を含めたあらゆるレストランで感じた小さな嫌なことまで詳細にリストアップしている。
  • こういうしつこさって重要なんじゃないかなと思うのです。アイバン氏は、ラーメン屋さんという観点からすると、非常にアウトサイダーなわけですが、だからこそ感じるものがたくさんあって、長年の想いを自分の店にぶつけていきます。こういう人の方がイノベーションを起こしたりするんですよね。

  • 自分が豚の脂をどれくらい摂取すれば気持ち悪くなるのか、その限界を研究してみた。その結果、一回の食事で10cc以上の脂は僕の身体に良くないということが分かった。
  • 確かによくラーメン食べた後、胃がもたれることがありますね。。脂の量の問題なのかも。

  • 自分のラーメンについて「インパクトがあるこってり味」「さっぱりと洗練」「王道の味」「この店ならではの独創性」など、あまりにも異なった意見が飛び交っている。みんなの要求に耳を傾けていたら、頭がおかしくなってしまうだろう。
  • これも正にネット上での声(レビューサイトなど)ですが、非常によくありますね。すべてを聞いていたら、サービスとしても矛盾の大きいものになってしまいます。もちろん顧客の意見でハッと気づくこともあるし、解決の糸口が掴めることもあります。だから、目は通すけれども、ストレスは感じないようにする、くらいがちょうどいいのではないかなと思っています。

  • 日本人は飽きるのが早過ぎてクレイジーだと感じることもある。変えなくてもいいところを、すぐに変えてしまう。ビデオショップの商品の配置も、三ヶ月経てばすべて変わってしまう。(中略)日本と違ってアメリカは何も変わらない。何かを変更したために、お客さんが満足できなかったら、そのお客さんは二度と戻ってこないから、極力何も動かさないし、何も変えない。日本と正反対。
  • なるほど! 僕も日本人なのでアメリカの店の変化のなさは一体なんなのだろう、と感じていました。その理由が「何かを変更したために、お客さんが満足できなかったら、そのお客さんは二度と戻ってこないから」というのは非常に納得感があります。アメリカというのは、外から見るとドラスチックに動いているように見えますが、実は意外に保守的な(自らのルーツの)民族スタイルを保つ傾向が強くあり、トレンドがあまり見られない傾向が強いと思います。だから、徐々に商品構成を変えるなどして、表面上はあまり変わっていないようなふりをしながら、年単位で見ると変わっているということが起こるのかなと思いました。


著者がひょんなことからマグロ船に乗ることになり、船の男たちから学んだことをまとめた本。薄い新書ですが、すごく含蓄の含まれた言葉が印象的です。抜粋だけ読むと一見テクニック的に読めるのですが、狭くて閉じ込められた環境の中で、屈強な男たちが気持ちよく仕事をするために何十年と磨かれたコミュニケーション力や自然との付き合い方がにじみ出ていて、とてもいいなあと思いました。

<抜粋>
・人間はの、幸せのなかにいるときは、幸せに気づかんもんよ。マグロだって、海にいるときには、自分の幸せにはきっと気づいておらんち。おいどーらが釣り上げると、マグロはバタバタと大暴れしよる。海から引き離されて初めて、海のありがたみがわかったんじゃねーんのか? 斎藤も、陸(おか)から離れて、陸にいられることのありがたみがわかったんじゃねーんか?
・「一体、なにやっとんじゃ! せっかくうまくさばけるようになったお前がここでケガしよったら、みんなが困りよろうが! こんバカ」(中略)口調は怒っているのですが、「お前はさばくのがうまい」、「お前が欠けると、戦力が劣ってしまう」、「お前はこの船でとても役立つ人間だ」という3つの点を伝えているのです。
・ベテランは若手を褒めますが、私がおもしろいと思ったのは「上から目線で褒めないこと」です。たとえば、「お前も、マグロの処理がだいぶ上達したな」というような言い方をするのではなく、「お前の処理作業が上達しちょるおかげで、今まで以上にマグロが高く売れるようになるの」と、「あなたのおかげで助かっている」といった表現を使っているのです。
・私「アドバイスをたくさんされると、『余計なお世話』みたいに感じて、ちょっと腹が立つことってありませんか?」親方「斎藤、それはお前が間違うちょる。人のアドバイスに期待しすぎるから、的がはずれたアドバイスに腹が立つんど。えーか、『他人からのアドバイスは、たいてい的がはずれちょる』。これが普通ど。他人はみんな、自分の立場でものを考える。わざわざこちらの立場に立ってアドバイスをしてくれるなんてことはないんど。じゃから、ほとんどのアドバイスはアテになりよらん」


「トイストーリー」「ファインディング・ニモ」などを作っているアニメーションスタジオ、ピクサーの誕生からディズニーによる買収までを追ったノンフィクション。誰もコンピューターでアニメーションが作れると思っていなかった時代から辛抱強く、時にはジョージルーカスやスティーブジョブズの庇護にあり、時にはコンピューターメーカーのふりをしたり、CMを作ったりして耐えてきた男たちの物語。

我慢した期間が長いだけに、その後、ピクサーが快進撃を続けていく様がものすごく爽快で、さらにディズニーによる買収という劇的なクライマックスまであり。非常におもしろいのでおすすめです。

ちなみに、個人的には、ピクサー作品では、ダントツに「モンスターズ・インク」が最高傑作だと思います。その他の作品も悪くないのですが、「モンスターズ・インク」に比べてしまうと。。観たことないかたはぜひご覧ください。

流星の絆
東野 圭吾
講談社
¥ 1,785


流星を観に行っている間に両親を惨殺された子供3人。成長した後、ふとしたきっかけから犯人らしき人間を見つけて、というミステリー小説。子供たちは成長して、協力して詐欺を働いてるのですが、個人的に詐欺ものとかのドキドキ感はかなり好きなので、非常に楽しめました。ラストも見事でおもしろいの一言です。

ゴールデンスランバー
伊坂 幸太郎
新潮社
¥ 1,680


ケネディ暗殺をモチーフにして、やってないのに暗殺犯に仕立て上げられて行くミステリー。どんどん追い込まれて行く感じで窮屈な感じではあるのですが、キーになってくる学生時代の友達との回想シーンが青春ものとしての水水しさが感じられて、懐かしい気持ちになりました。

個人的にも世間を敵に回して窮地に陥った時に本当に助けてくれそうなのは、損得抜きで時間を共有してきた大学時代の友人たちだという感覚はとてもあるし、実際この小説でも掛け値なしに信じてくれる友人が助けてくれて、すごく気持ちのいい物語でもあります。

のぼうの城
和田 竜
小学館
¥ 1,575


戦国時代、北条家に近しく現在の埼玉県行田市辺りを治める豊田家が石田三成に圧倒的兵力で攻められる。豊田家の若い総大将成田長親は農民から「でくのぼう」の「のぼう様」と呼ばれていて、頼りない。戦いの時、長親と個性的な武将たちが取った行動とは。

歴史小説なのですが、登場人物がとにかく個性的でおもしろい。読めない展開とラストのカタルシスがすごい。久しぶりにすごく気持ちのいい小説読んだなぁという感じです。すかっとしたい時おすすめです。


マクドナルドの創業者レイ・クロックによる自伝。マクドナルドがマクドナルド兄弟によって生み出され、セールスマンだったレイ・クロックによって世界最大のフランチャイズ・チェーンになったことは知ってましたが、それ以上のことは知らなかったので、純粋にアメリカンドリームな話でおもしろかったです。

とはいえ、「ファストフードが世界を食いつくす」のような裏側の話も知ってしまった今としては、純粋に感動することもかなわず。。もちろん時代によって求めらる倫理観が違うというのは分かってはいるのですが、、

P.S.自宅からは割と夜景がきれいに見えるのですが、変わった感じに見えたのでぱちり。

新宿夜景
新宿夜景 posted by (C)Shintaro

徹底抗戦
堀江 貴文
集英社
¥ 1,000


元ライブドア堀江社長の新作。ライブドア事件については、いろいろな人が書いているので、照らし合わせると非常に興味深いです。本書での堀江さんの主張は、

1.すべての取引は(当時の法律に照らし合わせれば)違法性はない
2.一部は「知らなかった」という道義的責任を感じから社長辞任したが、刑事責任はない

ということのようです。1.については、会計的には1つ1つの取引に違法性がなくても、全体として作為的に利益を作り出すこと自体が粉飾なので、明らかに違法です。

2.については、エンロン事件などでは知らなかっただけで無期懲役になったりしており、粉飾には刑事責任がある、というのが世の中の流れだと思います。

が、日本においては今までそういった例はなく、ライブドア事件のように目立つものから検挙して実例を作って行くのは国策捜査と言える部分はあるとは思います。

大きな流れとして、違法性のハードルが年々あがっていて、今までは大丈夫だったじゃんというスレスレのラインで捕まったのがライブドア事件だったのかなと思ってます。

ここに関しては、若干同情の余地はあると思うのですが、だからといって、反省しなくてよい、というわけでもないので、そこにはがっかりしたなというのが正直な感想です。

虚構--堀江と私とライブドア - suadd blog
ライブドア監査人の告白 - suadd blog


東京タワー下の「ガープ ピンティーノ」や丸の内の「カフェ ガープ」を運営するバルニーバーピ佐藤氏による経営哲学エッセー。すごく人情味あふれていて、飲食業が本当に好きで、こういう人だから厳しい飲食業界でやっていけてるのだろうなと思いました。

飲食店をやるということを知れる本。これだけの成功者でも厳しい状況になることもあるわけで、それでも乗り越えていけるだけの気持ちがあるかが重要なんじゃないかと思いました。

 そして改めて感じたのは、
 「やっぱり僕はこの仕事が好きなんやなぁ」
 ということ。
ほかのことをしていても、遊んでいても、それこそ何もやっていなくても、フト気づけば、この仕事のことを考えている。考えながらニヤニヤしている。
 やっぱり食べることが好きです。

僕もインターネット・ビジネスが大好きだし、いつでも同じくニヤニヤしてしまいます。僕のレベルはまだまだ低いけれども、十年でも二十年でもこの仕事に関わって、いつもニヤニヤしていたいなと思っています。

<抜粋>
・飲食業を目指す人に、僕はいつも聞くんです。「大切にしている身のまわりの物が、5点以上ありますか?」
・真面目で、誠実で、勤勉で、いろいろと物を知っていて・・・人間的には実にいいヤツだったり、おもしろいヤツだったりしても、残念ながらサービス業という仕事には向いてない人は確実にいると、僕は思っています。(中略)店のなかで、お客さまとスタッフが会話を交わすのは、実際、ごく短い時間です。最初に店に入ってきていただいたときの、お迎えの笑顔の一秒で決まるんです。
・僕たちも、プロセスチーズよりもナチュラルチーズでありたい。常に生きた空気のなかで働きたい。未来に向けて、無限大の変化の可能性を持っていたい。危険性もまた、同時にはらんでいるけれど、それでも変化を恐れずにいきたい。そう思うんです。
・僕のほうから「あいつを辞めさせろ」と店長に指示することがあります。でも、自分で指示を出しておきながら、「わかりました」という返事を聞くと、寂しくなるんです。逆に、「僕は諦めませんから、僕が絶対になんとかしますから」という答えが返ってくると、本当に嬉しくなる。

ヤバい社会学
スディール・ヴェンカテッシュ
東洋経済新報社
¥ 2,310


著者は現在はコロンビア大学の社会学者で、学生時代の90年代にシカゴの貧困地域に出入りして、その実態をドキュメンタリー的にまとめたのが本書。よく仕事をしているスティーヴン・レヴィットの「ヤバい経済学」(この本も無茶苦茶おもしろいですよ)でも触れられていて、ようやく本になったということのようです。

貧困地域のひどい生活環境やギャングの実態、コミュニティや政府や警察との関係などが実体験の上で描かれていて、ものすごいリアル。こんな社会があるんだという驚きの連続です。

著者はまずギャングのリーダーJTに気に入られて、コミュニティに食い込みます。それからは本当に驚きの連続で、完全に企業体となっているギャングを徐々に理解していき、でも実際は麻薬の販売ネットワークであることに道義的な責任を感じたり、社会学によって起案される政策についての無力感に苛まされたりします。

コミュニティはコミュニティで、仕切り屋が別におり、権力を持っているし、警察や政府は腐敗しており、時には悪徳警察官はギャングからかつあげすらする。住民は警察や政府が当てに成らないため、ギャングすら頼る他ない、という微妙なパワーバランスの中で生活をしています。

まったく想像できない社会で、アメリカという経済力のある国で警察の治安も行き届かない、暴力的な社会が形成されていたことに非常に驚きを覚えます。

また、一方でドキュメンタリーとしてJTの信頼を徐々に得ていったり、彼がギャング社会でのし上がって行ったりするのもものすごいスリリングで面白いです。最後は切ない気持ちになること間違いなし。

とにかくおもしろいので、是非読んでみてください。

<抜粋>
・(混ぜ物をしてヤクを売っていた部下に対して、ギャングのリーダーJTは)「そんな風にして稼ごうなんて思いつくやつはほとんどいないんだ」と彼は言う。「で、ここに、もっと稼ぐにはどうしたらいいかって考えられるやつがいる。オレの手下は何百人もいるけど、そんなことを考えられるやつはほんの一握りなんだよ。そういう連中を放り出すのはうまくないんだ」。JTが言うには、マイケルの作戦をぶっ潰して、なおかつその背景にある精神は潰さない、そんな解決が必要なのだ。
・団地の生活はあまりに荒っぽく、あまりに厳しく、あまりにむちゃくちゃで、社会科学者が思いつくクソまじめな処方箋では太刀打ちできないような気もする。若い子に学校をちゃんと卒業させてもちょっとしか助けにならないのはとてもショックだった。学校を出てつける、給料の安い、つまらない仕事の価値ってどんなもんだろう? 通りに立てばもっと稼げるっていうのに?
・例えば、同じ階に住む女性五人が、アパートのメインテナンスが悪くて困っているとする(建物の状態がああいう調子なので、これはよくあることだ)。修繕を申請しても、CHAが五人全員に対応してくれる可能性は低いし、ベイリーさんやCHAの管理人に、五人がそれぞれワイロを贈るのも懐具合からいって難しい。そういうとき彼女たちは、最低限の修理に必要なだけのワイロをみんなで出し合う。つまり、ネットワークのメンバーのうち少なくとも一人のアパートはお湯が出て、少なくとも二人のアパートに使える冷蔵庫とストーブがあって、その二つのアパートのうちどっちかでは、ケーブル・テレビがタダで見られるように、ワイロを払って修理をしてもらうのだ。そうやっておいて、みんなで同じ部屋のシャワーを使い、別の部屋でごはんを作り、食べ物はまた別の部屋に貯めておいて、エアコンの利いた一つの部屋に集まってテレビを見て、なんて調子だ。部屋の電気や水道やなんかが全部きちんと使えるなんてのは贅沢で、ロバート・テイラーでは誰もそんなことは考えない。
・Tボーンの帳簿で一番驚きだったのは、一番汚くて一番危ない仕事をしている若いメンバーの給料が信じられないぐらい安いことだ。Tボーンの記録によると、彼らの稼ぎは最低賃金に届くかどうかくらいだった。(中略)でも、ふたを開けてみると、プライスやTボーンだって年に3万ドルぐらいしか稼げていない。


マイクロソフトが覇権を握っていく様をマイクロソフト日本法人で体験した著者によるドキュメント。今から考えるとマイクロソフトは一直線に今の地位を築いたかのように思ってしまいますが、実際はMSXやらOS/2やら失敗に失敗を積み重ねてタイミングよくWindowsをデファクトスタンダードに押し上げたということがよく分かります。もちろんそれに値するだけの努力はありますが、あのマイクロソフトですら、運良くであるならば、会社経営とは何なのかを考えさせれました。

特に今、一時期持ち上げられた会社が不況にあえいでマスコミから叩かれたりしているのをみると、結局のところ着実に努力を積み重ねることと、毎日を楽しむこと(公私ともに)が重要なのではないかなと思っています。少なくとも今持ち上げられている会社について「書かれていること」をまともに信じない方がよいというのだけは確かです。

少しずれましたが、マイクロソフトが何者でもなかったときの奮闘ぷりがかいま見れて非常におもしろいですし、内容も一気に読めるので、一読されてはいかがでしょうか。


上巻ではトルコ帝国公認の海賊にやられっぱなしのキリスト教側でしたが、それは下巻になってもあまり変わらず。ただ、ルネッサンスなどヴェネチアが最盛期を迎え、スペインが力を持つことで、それに対抗しようとする動きが随所にみられます。海賊とか奴隷とか敗れた側を虐殺したりとか、相変わらず人が生きていくには大変な時代だったのだなあと。ちょっとしたバランスやタイミングで命運が決まってしまう不条理さ。今の時代に生きていてよかったと思いました。

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マサイの恋人
コリンヌ ホフマン
講談社
¥ 1,995


ケニアに旅行に行ったら彼氏がいるにも関わらずマサイの男に一目惚れ。言語も通じないのに、うまくいっていたスイスの店も手放し、マサイの村へ移住してしまう。さらに、結婚、出産までもを本人が描いた実話。

こう書いてたら本当にすごい話ですね。現代的に考えるとかなり劣悪な環境に行っても(何度かマラリアで瀕死にもなる)、マサイの恋人と文化の衝突が起こっても、へこたれないどころか、さらに恋愛に盛り上がってしまうというありえない展開にあぜんとするばかりです。

言葉も通じないのに彼が「美しい」というだけで、どんなことがあっても乗り越えていくのが繰り返されるのですが、正直言って僕は、最初はまったく共感できませんでした。。。が、途中からだんだんすがすがしい感じになってきて、最後は著者にエールを送ってしまっているという不思議な作品です。

マサイというかアフリカの文化などがリアルに知れて、それだけでも非常に意味のあるドキュメンタリーと思います。

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どういう人がどういう心理状態でどういう方法で人を殺すのか、さらにその後、どのように考え、刑務所で暮らし、どのように生きていくのか。日本において人を殺すということはどういうことかを、自らも殺人を犯し長期収監中の本人が語り、さらに同じ受刑者に聞いて書き起こした作品。

やはり著者自身に関する記述が多く詳細で、いつの時点でどういう考え方をしているから殺人に手を染め、紆余曲折を経て、考え方を改めていったのかが描かれています。著者は、自分でも言うように、非常に頭脳明晰ですが、それゆえに他の人が何を考えているのか分からなかったというのが、大枠での理由で、その後の展開も含めて、かなりリアルな感覚で迫ってきます。その後考えを改めてどのように自分が考えているのかも詳細に独白しています。

一方で本書では、長期受刑者のほとんどは更生どころか反省すらしていない、という衝撃的な事実も明らかにしています。そういった受刑者が無期懲役でない場合は、世の中に出ていっているわけで、かなり寒い気持ちにさせれます。著者は、どういう環境にすべきなのかいくつかのアイデアを出していますが、どれも決定的というわけではありません。

たくさん人がいればおかしな考えを持つ人もいるのだとは思いますが、自分たちを守るために、何かできないのかなと考えさせられました。文章も明快で分かりやすいです。


自分探しが止まらない」の著者が、ケータイ小説はなぜこんなにも売れるのか、内容に地名が出てこなかったり、出てくる車は国産車ばかりなのか、サラリーマンがほとんどいないのはなぜか、のは社会学的に分析している評論。ヤンキー文化や浜崎あゆみ、DVやアダルトチルドレン、地元重視の志向性などから、なぜ今の若い人(主に中高生)にとって、ケータイ小説を「リアル」に感じるのかを論じていて、非常におもしろいです。

<抜粋>
・ケータイ小説に「東京が出てこない」と言い切った意味の中には、物理的に東京の描写が出てこないだけに留まらず、あこがれの場所としての東京、つまり進学や就職先としての東京も描かれないということも含まれている。(中略)まるで上京という概念自体がこの世に存在していないかのように思われるほどだ。
・ローカルな走り屋的な価値観によって渋いと定められた旧車を中心とした国産車しか登場しないこの作品(注:『頭文字D』)において、茂木なつきの援交相手が乗っているクルマはメルセデス・ベンツなのだ。これは『頭文字D』という作品内において、唯一登場した外国車である。
・つまり、携帯電話の腐朽が、郊外化という現代の兆候に変化を与えているのだ。大きな流れで言えば、宮台が指摘するように「大きな物語」が消滅し、共同体は解体され、郊外は流動化するという流れは否定できないものであるだろう。しかし、一方で新しい「地元つながり」が維持され、再生産されるベクトルも生まれているのだ。
・ネット文化圏はヤンキーに関しては頭から否定する向きが強いが、彼らを「DQN」即ち「頭の悪そうな暴力的な感じの人」と悪意を込めて呼ぶのは、必ずしもかつてDQNにいじめられたというルサンチマンから来ているというわけでもないのだろう。ネット文化圏で声が大きく主張が通りやすいのは、アニメやゲームといった元々「子ども文化」であるものを大人になっても消費し続けることにアイデンティティを見出すオタク層である。彼らは、「早く成熟したい」とは逆に、「いつまでも子どものままでいたい」というメンタリティと親和性が高く、当然立場としてはヤンキーと相反する存在なのだ。
・尾崎の1980年代には反抗すべき敵として、権威や大人の社会が存在したのだが、浜崎の1990年代においては、敵は社会ではなく自分の内面であるという具合に変化したのである。現代のヤンキーとは社会に反抗する存在ではないのだ。これはケータイ小説が、学校を舞台としながらも、一切それが反抗の対象として描かれていないことともつながっているのではないだろうか。
・携帯メール、束縛、暴力、セックス、またメール・・・・。ケータイ小説の登場人物たちは、常に携帯メール依存的な「つながること」へのアディクションと、濃密なコミュニケーションからの逃避としてのセックスを繰り返す日常を過ごしているように見える。その間をつなぐ、感情の交換や価値観のせめぎ合いのようなものは、基本的に欠如しているのだ。「つながること」だけに重きを置く恋愛像とは、ケータイ小説における恋愛像そのものなのだ。


経済学ではみなが合理的に動くことを前提としていて、一見それは正しいように思いますが、実際はぜんぜん違いますよ、という実験例をこれでもかとばかりに取り上げている本。

例えば、著者ははじめてスターバックスに入った時「高い」と思わなかったか? と問う。そして、次にスターバックスに通りかかった時、前にその決断をしたことを自己肯定し、またスターバックスに入る。さらに、それを繰り返すうちにもっと高いコーヒーすら頼んでしまう現象をあげ、アンカー効果や最初の決断の重要性について説明します。

その他、無料と有料の間に存在する壁、社会的規範による従業員のやる気の出させ方、効果のない手術が効果を発揮するプレセボ効果、お金はちょろまかさないが代替貨幣ならごまかしやすい人間的性質などなど。対象は広範囲に渡りますが、どれも人が合理的だとすると説明できず、非常に興味深いことばかりです。

また、それぞれに対して実験結果だけではなくて、そこから示唆される応用方法や考え方などが書かれており、非常に考えさせられます。文章も平易で読みやすいですし、必読本と思います。


闇金融を営むウシジマを中心に様々な人間模様を描いた漫画。全体的に淡々とコミカルに、人がどうやって落ちていくかをじっくり描いていて、それが逆にリアルで暗い気持ちにさせられるという構造。

僕はインターネットという大好きな分野があり、その分野でそれなりに知識をつけて、楽しく仕事をしているので、日々自分は非常に幸せだと思ってます。しかし、もしそういったものがなかったらと想像すると、人生に楽しみを見いだせず、ギャンブルなどで一線を越えて落ちて行くのは可能性としてありえると思っていて、この作品の中の主人公たちのどうしようもない心情を考えると胸が苦しくなります。

確かにそれは、精神的な弱さもあると思いますが、それだけではない人生に対する意義の見いだし方への方法論が確立されていない問題は歴然としてあると考えます。

この数十年間、いわゆるサラリーマンという万人が受け入れられる人生観がありましたが、高度成長期が終わりバブルが崩壊して以後、そういった時代は終了していて、自らが自らの人生の意義を見つけなければいけない時代に突入しています。

しかし、現在それを見いだすための教育や方法論は確立されておらず、多くの人が「自分探し」と言われる意義付けに対して、自ら到達しなければならないという厳しいことになっています。

モデルケースがない以上、一つの方法論はないと思いますが、もっと明確に自分の好きなことをとにかくやってみること、そしてその「損切り」の見極め方を示唆するようような仕組みがあってもいいのではないかというのが自分の考えです。

話は逸れましたが、もちろんこの作品はダメダメな主人公たちをモデルにしているわけですが、こういったドロドロとした可能性があることを直視してこれからの世の中は成り立っていく必要があるのではないかと思います。


宗教学者の著者が日本の新宗教を10取り上げ、創始者の生い立ちから誕生、その宗教の特徴、なぜ信者を獲得していったのか、現在の状態までを詳細に解説した本。正直、各新宗教は名前は聞いても、内容まではほとんど知らなかったので、非常に勉強になりました。特に創価学会の特徴、二代目戸田氏から三代目池田氏への移り変わりとその違い、公明党と創価学会の関係、日蓮正宗との関係、創価大学とそのエリート養成システムについて知ることができたのがよかったです。

それからもう一つ重要なことが、本書でなぜ日本人が自らを無宗教と思うのかについて「明治に入って、宗教という概念が欧米から導入され、神道と仏教とが二つの宗教に分離されたにもかかわらず、日本人は、片方の宗教を選択できなかったため」としており、さらに「近代の日本社会において、新宗教ということが問題にされるようになるのも、無宗教という意識が広まったことと関係している。国民の多くは、自分は特定の宗教を信仰していないと考え、特定の宗教に入信して、活動している人間を特別視するようになった」としています。

僕も無宗教だと考えていましたが、最近肉親を立て続けに失い感じるのは、やはり最後は葬式をして、お坊さんにお経をあげてもらうことを必要とするし(そうしないとしたらとてつもなく失礼な話だと思う)、一方で初詣もすれば、すべてのものに対して小さな神、いわゆる八百万の神というのも存在するように感じるということ。つまりは、仏教と神道を「信じている」と感じています。

恐らくほとんどの日本人が無宗教といっても、それではあなたは肉親が亡くなっても火葬だけで骨は捨てて済ませられ、神社で神頼みで賽銭を投げ入れたことがないのかと問われればそれはちょっと、となるのではないでしょうか。

無自覚なのは、二つの宗教がミックスされていて選べないからというのはかなり納得感がありました。仏教と神道というのはいずれも多神教ですし、どちらも信じるということはありだと思います。だから、宗教と問われれば、自分は無宗教ですなどと言わず仏教と神道です、と言えばいいのではないでしょうか。
※そもそも宗教を問うことがそもそも一神教的な思考であることは否定できませんが。確かにそういう意味での宗教と言われると違和感があるのも確かです。

そう考えるとまさに、新宗教を特別視するのもまさに自分が信じているものへ無自覚だからだと思います。よく考えたら、欧米人だって、キリスト教やイスラム教を信じているわけですから、とある日本人が新宗教に入信するのも不思議なことではないのかもしれません。

しかし、一方でこの本にあるような生々しい内部の出来事を考えると、新しい宗教だからこそ慎重に選んだ方がいいのではないかなと思います。僕は仏教と神道で十分ですが(苦笑)。自分のルーツを考える契機にもなりますし、オススメです。


普段、日本人が見聞きするアメリカとは別のアメリカをニヒルな視点で紹介するエッセー。タイトルのように、ニューヨークの場所を知らない、中絶絶対反対、ゲイに反対しながらゲイの政治家、選挙におけるひどいネガティブキャンペーン、イラクの傭兵アウトソース会社、CIAの拷問、崩壊している医療制度、FOXのひどい世論操作などなど、目を覆いたくなるばかり。

それでも、著者は「希望がないわけではない」と言います。なぜかは読んでのお楽しみということで。後、著者は映画評論家なので、いろいろな映画が紹介されていて、観てみようかなと思ったものを抜粋してます。

・グアンタナモへの道
パキスタン系イギリス人がアルカイダのゲリラと疑われ、キューバにあるグアンタナモ基地で2年間拷問された事件を、彼ら自身のインタビューと再現フィルムで描いたイギリス映画
チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
・ウォルマート/激安の代償
ウォルマートの元従業員や管理職たちへのインタビューを元に低価格の実体を暴いたドキュメンタリー
シッコ

迷惑な進化--病気の遺伝子はどこから来たのか
シャロン モアレム
日本放送出版協会
¥ 1,890


進化医学研究の博士である著者が糖尿病やアルツハイマー病、ソラマメ中毒など分かりやすい例を使いながら、なぜ進化の過程でそういった迷惑な遺伝子が受け継がれているのかを中心に最新の進化医学の本。

分かりやすい文章で書かれていながら、研究に裏付けされた斬新な説が語られており、非常におもしろいです。例えば、寒冷期を行きのびるため体内の糖度をあげるための性質が今となっては糖尿病のもとになっているとか、患者の血を抜く瀉血(しゃけつ)は迷信ではなくそれなりの効果があるから行われてきたとか。確定していることだけではなく、人類がなぜ毛がなく、二本足歩行で、皮下脂肪があるのかについて、実は人類は昔水の中および水辺に棲んでいたという水生類人猿説などまだ説の域をでない物も積極的に紹介してあり、最新の進化医学をかいま見ることができます。

<抜粋>
・あなたの祖先がノルウェーのイヌイットの漁師など、ひじょうに寒冷な地域に住んでいた人だったなら(中略)寒さで手や足の毛細血管が閉じはじめて、しばらくすると、あなたの体は短時間だけ欠陥を開いて暖かい血液を手足に送りこみ、ふたたび欠陥を引き締める。(中略)イヌイットの漁師は、零度以下になっている手の表面温度をほんの数分で10度にまで高めることができる。
・(アメリカアマガエルは)冬のあいだずっと体を完全に凍らせて、仮死状態になっている。だが、冬眠をする哺乳類が厚い皮下脂肪で体温と栄養を保ちながら深い眠りにつくのとちがい、このカエルは完全に冷えきっている。
・ALDH2-2変異型はなぜアジア人に多くて、ヨーロッパ人には皆無なのだろうか。その答えは飲料水にある。人類が町や都市に集まって住むようになると、飲むための水と汚れを流すための水の問題が発生する。(中略)それぞれの文明はそれぞれの解決策に行き着いた。ヨーロッパでは発酵を利用した。(中略)一方、地球の別の場所では涌かした水で茶を飲むという方法がとられた。煮沸消毒だ。ヨーロッパではアルコールを解毒する遺伝子をもっていなければおそろしく不利だったがアジアではそうでもなかったため、アジアのALDH2-2保有者は生き延びて子孫を増やしたというわけだ。
・成人の体内に棲みつく「よそ者」微生物の細胞は、哺乳類としての人間を形作っている細胞の10倍も多いのだ。よそ者を全部かき集めると100種を超え、重さにして1キロ半、数にして10兆から100兆個となる。
・胃潰瘍の原因のひとつは感染症だというのはいまなら常識だが、10年前までの科学界ではだれも信じていなかった。現在の僕たちが疑ってもいない症状の原因が、じつは感染症だったと近い将来に見出されることは大いにありうる。(中略)トキソプラズマが統合失調症を引き起こすという説を裏付けるような実験結果が出てきた。トキソプラズマに感染したマウスに統合失調症の治療薬をあたえると、マウスの行動に変化が見られるというのだ。※注:トキソプラズマは世界人口のおよそ半数が感染しているという説がある

越境者 松田優作
松田 美智子
新潮社
¥ 1,680


松田優作の最初の妻から見た松田優作伝。したがって、一方的な見方ではあるとは思います。しかし、松田優作について、その人となりを浮き彫りにしていて、非常に興味深く、おもしろかったです。また当時の芸能界や昭和な雰囲気も伝わってきて、すごくよかったです。

松田優作 - Wikipedia

阿佐田哲也の麻雀秘伝帳
阿佐田 哲也
青春出版社
¥ 1,470


麻雀放浪記」などの阿佐田哲也著。積み込みの仕方、思った通りの数を出すサイコロの振り方、すり替え、コンビ技、握り込み、死角の使い方など、あらゆる麻雀の裏技を詳細に解説してあります。

先日、ふらりと麻雀をやりたくなったので、10人くらい土曜の昼間に雀荘に集まってやったのですが、やっぱり楽しいわけです(まぁ勝ったというのもあると思いますけど、、)。でも、そんな素人からすると、ここまでの技をよく思いつくなぁというのが本音。麻雀独特の配牌やドラの決まり方などから逆算して積み込む技など完全に芸術の域に達しています。

ギャンブラーというと、なんとかして楽して儲けようとしているチンピラという感じですが、麻雀のプロ(阿佐田哲也的には玄人(ばいにん))は、毎日何時間もトレーニングをしたり、嫌われないように努めて明るくしたりしていて、その情熱は尋常ではありません。

僕は世界のどこに行ってもカジノがあれば必ず行くのですが、確かにあのサイクルの速い、ひりひりとする非日常的な感覚は非常におもしろいと思ってます。もちろんビジネスでもそういったシーンはあって、ビジネスの方がうまくいった時の喜びは圧倒的に大きいと思います。それは金銭的な大きさもありますが、人に役に立っているというのが大きいのではないでしょうか。でも、その頻度は非常に少ない。ギャンブルは、数秒から数分で浮き沈みを経験できるのが特徴だと思います。

とはいえ、あくまで遊び。日本ではパチンコを年に数回やるくらいで、競馬も宝くじもやらないですけどね。でも、こういう賭け事に全身全霊で挑む話は非常におもしろいです。麻雀好きにはたまらない本です。

<抜粋>
・全部裏返しにしておいて、模牌だけで積む。"ロッケン"といって、小指と親指の間に六枚の牌をはさむ。六枚という数がどの積み込みにも重要な数なのである。いちいち数えているようではおそくなるから、すっと六枚はさめるように、指にその感覚を教えこまなければならない。すると、不自然な手の動きをずいぶんとなくすことができるのである。こうして数時間、汗を流す。このトレーニングは玄人ならば1日も欠かせない。この点に関してはみな勤勉である。
・素人はどうか。ふだんは、ふとっ腹のように見える人でも、賭という状況のなかでは、陰険になり、こまかく文句をいいはじめる。さらに喜怒哀楽をはっきり表情に出す。極度の緊張感が、自分をかくせなくなる。


JALの内情をモデルにしたドキュメンタリータッチの小説。組合で首相フライトのストップも辞さぬ形で交渉した元委員長恩地を主人公に、その後、中東やアフリカをたらい回しにされるアフリカ編、御巣鷹山へのジャンボジェット墜落事件を中心とした御巣鷹山編、その事件により国から会長が送り込まれ恩地も会長室付け部長となる会長室編で構成されている。

組合員差別、キックバックなどによる汚職、豪遊、愛人などなどの腐敗っぷりがすごくて、目も当てられない感じ。これが事実なら本当に酷い。しかし、いろいろと異論反論もあるようなので鵜呑みにはしない方がいいかもしれません。それぞれのモデルについては、Wikipediaに詳しく書いてありますが、中曽根、金丸など大物政治家も出てきます。

小説としては、非常におもしろくて、一気に読んでしまいました。が、作者も言うように事実と創作を織り交ぜる「小説的技法」については、疑問はかなりあります。ほとんどの人物にモデルがいるようで、極悪人のように書かれてしまっている人物についてはかわいそうだなと思います。一方で、主人公たちは清貧な善人として描かれていますが、例えば、組合交渉でごり押しを繰り返すシーンなどは個人的には本当に正しいのだろうかとも思いました。

基本的に山崎豊子作品は、善悪がかなりはっきりしており、善人はすべて善人、悪人はとことん極悪人というように描かれています。これがすべて創作ならば構わないとも思いますが、個人的には、人は清濁併せ持っていると思っているので、実在の人物を極悪人に仕立てられているのを見るとかわいそうだなと思ってしまいます。

とはいえ、航空業界って(誇張があるにせよ)こういうところだったんだなというのも分かり、目から鱗な感じでした。また高度成長期の大企業の内幕という意味では、読売新聞の正力氏を描いた「巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀」、その後の渡辺氏を描いた「渡邊恒雄 メディアと権力」なども合わせると、どの会社でも権力闘争に明け暮れている人々がいるのだなと思い、大企業って怖いなと思いました。合わせて読むとおもしろいかもしれません。





15巻にも及んだ「ローマ人の物語」が完結してしまって、残念に思っていたところその後の地中海世界を描いた作品が登場。ローマ滅亡後から近代までというのに非常に興味があったので、待ってましたという感じでした。

上巻はとにかくアフリカのイスラム教徒サラセン人にやられっぱなしになります。地中海の制海権がなくなり、首長公認の海賊行為が横行し、沿岸地域は壊滅的な打撃を受けることになります。街は襲撃を受け、金銭はもちろん、無差別に殺され、成人男子は奴隷として連れ去られる。完全に無法状態、暗黒時代です。

そんな中で勃興する海洋都市国家アマルフィ、ピサ、ジェノヴァ、ヴェネチアなど。そして、十字軍と奴隷解放運動。下巻ではもう少し巻き返すのかな、というところで終わり。下巻が楽しみです。

なお、特に「ローマ人の物語」を読んでなくても問題ないと思います。

うかうかしていたら大晦日ですが、まず本のまとめです。2008年も素晴らしい作品が多くて、これ以外にも捨てがたい本がかなりありました。。順位もあくまで参考までに。

  1. まぐれ--投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか - suadd blog
    金融が世間を騒がせた年でしたが、本書はそれ以前に大学教授にしてトレーダーである著者によって書かれた本。まぐれ、を実力を勘違いしたのが、今の状況を招いたのでしょう。「市場リスク 暴落は必然か」も同じように金融専門家が書いた本で非常におもしろいです。
  2. リスク - suadd blog
    古代から現在にいたるまでの「リスク」に関する出来事を描き出す名著。作者のあまりにも膨大な知識がすごいの一言です。
  3. なぜビジネス書は間違うのか - suadd blog
    「エクセレント・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー」などのエセ科学ぶりを暴いた意欲作。
  4. 世界を変えた6つの飲み物 - suadd blog
    そんなバカな、というタイトルですが、本当に世界を変えてた飲み物の話。飲み物から見た世界が非常に新鮮。
  5. パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ - suadd blog
    今年は宇宙論・量子論に目覚めた年でした。結構難解なものが多いのですが、この本から入ると分かりやすいのではないかなと思います。
  6. ヤバい経済学 - suadd blog
    「統計」のすごさを実感できる本。統計にはまだまだ未踏な部分が多く、これからが楽しみです。「その数学が戦略を決める」も合わせてどうぞ。
  7. 「みんなの意見」は案外正しい - suadd blog
    個人より集団の方が正確な判断を下せることを解説していて、非常に衝撃的。タイトルにだまされないで読んだ方がよいです。「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」もおもしろかったです。
  8. 虚業成れり--「呼び屋」神彰の生涯 - suadd blog
    元祖「呼び屋」神彰(じん・あきら)のドキュメント本。高度経済成長の空気感がよいです。「野中広務 差別と権力」もおもしろかったです。

see also: 2007年の本 - suadd blog

著者は「Bバージン」などの売れっ子漫画家であり映画「ゼブラーマン」などにも関わっている多彩な人物。才能というのは、「どこにも属せない感覚」すなわち非属のうちにこそある、というのがこの本の趣旨です。僕もつよく非属を感じる人間なので、非常に納得感がありました。そして、今の自分は非属を大切にしているだろうかと思いながら読みました。

会社の経営者というのはある意味で常識を求められる存在でもあり、僕も日々失敗しながら、いろいろなことを勉強しながらなんとかやっているわけですが、そうして常識的な物事の考え方を身につければつけるほど、自分のエッジな部分が失われているような気がするのも事実です。その折り合いをどうつけて行くのかは、ここ数年の大きなテーマでもあり、こういった本を読むと普段忘れ去られていた感覚を刺激されます。恐らく結論はないので、いろいろなものを忘れないようにしながら、やっていくしかないのでしょうけども。

気になったのは、「バカの壁」を誤読しているところと、インターネットはダメと頭ごなしに否定しているとこでしょうか。でもまぁ人と同じ考え方をしていれば、何も得られないのも事実。

・「空気が読めない奴」と言われたことのあるあなた
・まわりから浮いているあなた
・「こんな世の中おかしい」と感じているあなた
・本当は行列なんかに並びたくないと思っているあなた
・のけ者になったことのあるあなた
おめでとうございます。

この序文は傑作だと思います。ぴんと来た方は是非読んでみてください。

<抜粋>
・斬新な発想や創造性が決定的にものを言ういまの時代において、疑問を持たず、自分でものを考えず、受験だけに努力しろと言うのは、開国から幕府滅亡までの激動の時代に、「藩で出世するために刀を振りまわせ」と言うのと同じことだろう。
・ムラの掟と場の空気を最優先し、とりあえず無難に生きた人間が歴史を変えることなどあり得ない。
・パチンコに行って、少しの時間で大儲けした人は、その後、その何十、何百倍もの時間と財産をつぎ込んでしまう。
・手塚治虫の時代はまだ漫画家の社会的地位は低く、収入面も厳しかったため、その道は王道などではなく、まして渋滞の高速道路でもなかった。ビル・ゲイツや三木谷氏は、インターネットなど誰も知らない時代から、その将来性に自分の未来を賭けたから成功したのだ。(中略)王道とは、みんなが知っている漁場なのだ。すでに定置網である可能性が高い。
・「まわりの友達はみんな"いい車"に乗ってますよ。軽トラに乗ってる人間なんて僕くらいです。だから、軽トラに関しては誰よりも詳しい自信があります。ライバルゼロですよ。まさに原野に道を通す屯田兵の気分です」
・僕の事務所では絶対に多数決をしない。なぜなら一見、公平なやり方に見えても、多数決をすれば多数派が勝つに決まっているからだ。
・メスの遺伝子ははるかに優秀で、何が人間にとっての価値かということを見抜いてしまう。(中略)(『Bバージン』について)女性が何か特別なものにのめり込んでいる男性に惹かれるものだと感づいていたからこそ、そのように描いたのだ。
・「興味ない」の生き方は、楽しみのほうも圧倒的に少なくなってしまう。(中略)いつも「何かおもしろいことないかなあ」と言ってくる僕の友人たちはたいてい新しい旅をしない。
・自分の感覚で決めるのは大いに結構なのだが、自分が常に正しいかどうかは分からないという自覚だけは必要だ。

旅する力--深夜特急ノート
沢木 耕太郎
新潮社
¥ 1,680


沢木耕太郎氏自身が深夜特急を振り返ったエッセー。割とふらふらと思い出を語っているだけで、説教臭かったり自慢めいた部分などもありますが、当時の雰囲気だけは伝わってきて、非常に旅したくなりました。でも、後からこうやってノートという形で出さなくてもよかったんじゃないかなとも思いましたが。。いずれにせよ「深夜特急」は必読本です。

アフリカ 苦悩する大陸
ロバート ゲスト
東洋経済新報社
¥ 2,310


エコノミストの元アフリカ担当編集長が描くアフリカの問題点と解決への道筋。今までの貧困解決本よりも実地での体験がベースになっているので非常に具体的で興味深かったです。正直、あまりにも貧しくあまりにも危険なところを聞くと、かなり暗い気持ちになりますが、意外に立ち直れば早いのかもしれないなとも思いました。実際、人種差別撤廃や民主主義導入については一部の国ではうまくいきつつあるようですし。本書でも書かれていましたが、例えば電話もいきなり光ファイバーや携帯電話などコストの安いものを導入して間をすっ飛ばすことができるという利点もあります。

若干、資本主義に任せて海外資本をばんばん導入すべきだという主張で、そういった企業が不正をしてもインターネット時代の今はすぐに告発されるから大丈夫、というようなことを書いていてあって、そこだけはどうかなとも思いましたが、それ以外については非常に納得の話ばかりでした。特にフェアトレードについては、アフリカでは売春自体が1ドルからという衝撃的な現実に目を向けるべきだと思いました。

アフリカの現実を知りたい方におすすめです。「最底辺の10億人」および「貧困の終焉--2025年までに世界を変える」などと合わせて読むとよいかもしれません。

<抜粋>
・欧米では、一般的に家を担保にして金を借りる。アメリカでも多くの起業家が使う手だ。(中略)しかしアフリカの大部分の人々はこの手を使えない。家を持っていても、たいてい権利証書がないから証明できない。証明できなければ家を担保に銀行から金を借りることもできない。だから資本をーー資本主義の源泉たる資本をーー手にできない。
・所有権が確立されているとさまざまな利点があるが、欧米では当たり前すぎて、誰もほとんど意識していない。
・(南アフリカの「鉱山および労働に関する修正法」について)これは給与が高い職位から黒人を排除するための法律だが、「企業が黒人を雇わないようにしてくれ」という白人系労組の訴えに応えて制定されたのだった。企業家たちは(人種差別主義者も含めて)、会社の利益が損なわれるという理由で、こうした「人種別職種制限」には反対した。
・ザンビアでは、各民族の政治的有力者と支持者らが「保護者=庇護者」の関係にあり、これが有権者の投票行動を決める「根本的」な要素になっている(中略)「人々は政治家を指示する見返りに、具体的な支援を期待する。この一点においてのみ、政治は彼らにとって意味を持つ(中略)ザンビアのある大臣はこう述べたというーー『私が地元の連中を採用してやらなければ、ほかに誰がしてくれるというのですか?』」
・貧困国との貿易に異を唱える人はよくこう主張するー貧困国は労賃を安く抑え込んでいるから競争として不公正だ、と。心情的には説得力がある。(中略)だがアフリカの貧困層はひとつもありがたくない。多くのアフリカ人にとって、低賃金の長時間労働に替わる選択肢は、無賃金の長期間失業しかない。アフリカ人から貿易の機会を奪うことで、先進国は彼らをいっそう貧しくしているのである。
・一般的には、豊かな国が猛烈なペースで技術革新を進めていくにつれ、貧しい国はおいてきぼりを食うと思われている。しかしそれは違う。(中略)現在、欧米人の平均寿命は78歳で、一世紀前より約70%伸びた。一方、開発途上国の寿命の延びはさらに大きいーー今や平均寿命は64歳だから、1900年の2.5倍にもなる。

現在のアメリカは超・格差社会ぶりを、統計結果やモデルケースを使いながら分かりやすく解説するとともに、なぜそのようになったのかをアメリカの建国以前までさかのぼって明らかにした本。

僕もそんなに詳しくないですが、個人的に専門書などを読んで知っているかなり仔細な出来事まで、的確にさらりと触れられていたりして、著者がかなり広範囲の知識を備えていることが分かります。

よく知らなかったアメリカの成り立ちを独立戦争から現在まで各時代ごとに知ることができて、非常に興味深かったです。また、アメリカの問題点を前提とした上で日本はどうすべきかにまで切り込んでいますが、これがまた非常に示唆に富んでいます。

というわけで、アメリカを知りたい方には非常におすすめです。

<抜粋>
・独立戦争の最大の勝者は誰か。それは、イギリスの商船を略奪する免許を得、7年間に渡って3000隻以上、当時の価格で1800万ドル相当という膨大な商船と積荷を略奪した船主たちだった。因みに当時のアメリカのGDPは2億5000万ドル前後と推計されているから、略奪額はGDPの7%に相当する。
・イギリスが1838年にカリブ海諸島で奴隷制度を廃止した時には、イギリスは所有者に2000万ポンドの損害補償金を支払った。しかし当時のアメリカ北部は、400万人の奴隷財産を放棄させるにあたって補償金を支払う気はなく、結局戦争という強硬手段で廃止するに至った。そして戦争に勝ったことで、北部は補償金を支払わずに済んだばかりか、農業地帯からさらに資金を吸い上げ、工業品の輸入には関税をかけて、工業化に邁進することになる。
・生き残った原住民は、ヨーロッパの進んだ軍事力で絶滅に近い水準にまで滅ぼされるか不毛地帯に追い込まれたため、アメリカへの移住農民は土地を無償で手に入れて、地主となって開墾することができた(リンカーン時代以降は、開拓農民は連邦政府の土地を、一世帯0.65平方キロから2.6平方キロの単位で、無償で賦与された。ただしこれによって賦与された土地の総面積は8000万エーカー強で、鉄道に賦与された2億エーカーの半分以下だった)。だから分け与える土地(資産)があった間は、税による所得の再配分をしなくても配分する原資があったわけで、そのため労働争議は起きず、エリート層の資本蓄積も早かった。
・アメリカ人は(中略)よほど親しい人に対してでない限り、問題を抱えていたり、心配したり悩んでいたりすることや、愚痴は口にしない。それを口にするのは、自分の弱さや無能さを認めるに過ぎないからである。(中略)だから、お互いに率直で親身な話し合いにはなりにくい。お互いにうまくいっていることだけを楽しそうに話し続けるのだから、逆にそこから生じるストレスの強さは、想像に難くない。
・アメリカ国内では貧富の差が拡大しても、特権層は物理的に隔離された世界に暮らしているから、貧困層の問題は身に迫る深刻な問題とは感じない。貧富の格差が拡大すれば、どこの国でも同じような隔離現象が次の解決策になるだろう。
・日本で生じている労働報酬の格差問題は、その大きな枠組みの中で生じている現象だから、給与格差の問題を扱うには、資本分布の問題と労働スキルの問題を、別個にかつ両方とも考える必要がある。日本における労働報酬の格差問題は、アメリカにおける資本分布の格差問題に比べたら、まだ対策を立てやすいように思える。
・(※日本の)ニートやフリーターの問題は、経験を積むにしたがって報酬が増える見込みがない、つまりキャリア・パスが見えないことが問題視されている。しかし学校を卒業した人全員が、自動的にキャリア・パスを保証される(べき)という前提は、非現実的と言わざるを得ない。


いかに現在が英語の世紀に突入しており、日本人はどうやって日本語を「護って」いけばよいかを論じたエッセー。非常におもしろい論考だと思いましたが、自身の主観的な体験により自分に酔いながら筆を進めている部分が散見され、ところどころに登場する偏見(学力不足のクラスをアフリカの田舎の子供を集めたのと同様としたり、アイルランドの自国語保護政策を贅沢としてみたり)がかなり気になりました。

また、優れた文学として過去の作品のみが取り上げ現代作品については「文学の終わり」を憂える声があるとしていたり、英語のみが普遍語として流通するということを前提にしているのが個人的にはあまりピンと来ない感じです。例えば、前者で言えば、村上春樹のように海外でも高い評価を得ている作家や後者で言えば中国語やスペイン語はどうなのだろうかと思いますが、それらの疑問には答えられていません。

とはいえ、国民国家の成立と国語の成立が密接にかかわり合っていること、中世におけるラテン語の使われ方、日本における漢字文化とひらがなの成立、明治維新後の国語の成立と翻訳の意味などの指摘には非常に新鮮な部分があり、読んでおいて損はない作品だとは思います。

アンディ・グローブ[上]--修羅場がつくった経営の巨人
リチャード・S.テドロー
ダイヤモンド社
¥ 2,310



インテル創業者の一人で元社長のアンディ・グローブの生涯を綿密な取材により描いた作品(本人存命中ですが)。自伝である「僕の起業は亡命から始まった!」では、どちらかというと亡命するまでがメインだったので、いかにしてインテルがここまでの大成功を納めたのかはよく分かりませんでしたが、本書ではそういった部分まで細かく言及されています。

例えば、日本企業との戦いに敗れてメモリ事業から撤退する話、386リリース時に代替供給者を認めない戦略を取った話、RISKアーキテクチャの採用を見送った話、インテル・インサイドのキャンペーンの話などなど。かなりきわどい勝負をして、そして勝利してきたのが分かります。

思ったのは、大きくなる会社というのはどのタイミングでも現状に満足せず勝負をしてきた会社なのではないかということです。インターネット企業を見渡してみても、よい業績をあげている会社というのは、適度なタイミングでミラクルを何度も起こしています。例えば、楽天であれば「旅の窓口」や「DLJディレクト」の買収、プロ野球への参入など、DeNAであればモバオク、ポケットアフィリエイト、モバゲータウンなど。

ミラクルというと一見運次第な感じがしますが、ここでいうミラクルを起こすために冷静な視点や不断の努力が必要なわけです。しかし、必要なことをしても必ずしもミラクルが起こるわけではないので、常に努力するのは非常にきつい。それをして、かつ結果を出して来た経営者としてアンディ・グローブは尊敬に値するし、この本を読んで経営者としての心構えを学んだように思います。

世の中にあふれる嘘の常識を事例に出しながら、なぜそういったダメな議論があふれてしまうのか、そもそもどこがどうダメなのか、なぜそういう罠にはまるのかなどを論理的に解説した本。非常に分かりやすく書いてあるので、すらすらと読めます。

僕は、RSSリーダーやソーシャルブックマークなんかを使って普通より情報収集をしている方だと思うのですが、正直この本にあるようなダメな議論が氾濫しているのを感じます。一方で、マスコミだけを元にしているとネット上にあるような「上質な議論」に触れられないのも事実です(なぜならマスコミはマスに向かっているため深い議論はしづらい)。

玉石混淆なので、非常に弱肉強食だとは思いますが、すごく先端な議論があっておもしろいとは思っています。とはいえ、基本的に、直感でおかしいなと思っても、どうおかしいかじっくり考えたり、わざわざ批判しないでスルーします。自分が上質だと思ったものについてはじっくり考えるようにしてます。でないと時間がいくらあっても足りないので。。

それはさておき、本書は、そんな弱肉強食なネット上での渡り歩き方が分かる良書だと思います。オススメ。

<抜粋>
・「本当の○○は」「真の××は」という命題は哲学的な響きがあるためか愛用者が非常に多いようです。しかし「真の豊かさとは何か」「本当の幸せとは何か」という類の問いに答えはありません。仮にあったとしても、それが正しいのか否かを検証することは不可能なため、「確かにこれが本当の幸せだ」と確認することができません。
・データを用いた検証を行う訓練を受けていない人の中には、データによる検証のすべてを無意味に批判するというケースが見受けられます。そのような態度は、議論をつぶすというネガティブな結果しかもたらしません。代替的なデータや改善案の提示が見られないデータ批判に出会った場合には、まずは疑ってかかる必要があるでしょう。
・現実をはじめから「丸ごとそのまま」「総合的」に解釈することなどできないのです。ある現象をその関連事項まで含めて完全に理論化するモデルは、「世界そのもの」しかありません。「世界そのもの」を直接把握できるなら、理論など必要ないでしょう。

経済は感情で動く---- はじめての行動経済学
マッテオ モッテルリーニ
紀伊國屋書店
¥ 1,680

人がいかに感情に左右されて判断をしているかを何十通りも紹介して解説した本。例えば、「8000円をもらうか、あるいはジョージ・クルーニーかアンジェリーナ・ジョリーにキスするか」と「8000円儲かる確率が1%のくじ引きをするか、ジョージ・クルーニーかアンジェリーナ・ジョリーにキスできる確率が1%のくじ引きをするか」と聞くと前者ではお金をもらう人が多いが、後者ではキスを選ぶ人が多いらしい。

なぜこういうことが起きるのか、ということがひたすら書いてあります。最初はかなり新鮮でおもしろいのですが、最後までひたすら事例と解説が続くので結構あきてきます。とはいえ、それを知っておくのは自分の感情の「エラー」を防ぐためにも重要なことなんじゃないかと。読んで損はないと思います。

シルクドゥソレイユはラスベガスで2回しか観たことないのですが、ついに新浦安というかイクスピアリの隣に常設劇場ができたということで観に行ってきましたよ!

シルクドゥソレイユ ZED
シルクドゥソレイユ ZED posted by (C)Shintaro

シルクドゥソレイユ ZED
シルクドゥソレイユ ZED posted by (C)Shintaro

外観はこんな感じ。ちなみに、シルクドゥソレイユはカナダ生まれの新しいタイプのサーカスで、ラスベガスを中心に常設劇場がいくつかあります。マカオにもできるという話でしたが、すでにヴェネツィアンにできてるみたいです。

ショーですが、とにかく最初に度肝を抜かれました。えーそうなるのって感じで、ダイナミックで素晴らしい。それ以降もドキドキの連続(ただ前半の方がよかった気がする)。結構ミスもあったのですが、それだけ難易度高いのだろうなぁとよい方に捉えることにしました(苦笑)。この辺りはまだ始まったばかりなので、今後に期待ですかね。

ネタバレになっちゃうので内容は書けませんが、恐らく常設じゃないとできないような内容が盛りだくさんで、キダムとかドラリオンとかおもしろかった方は(僕は観てないですが)ものすごく満足できるんじゃないかなと思います。

今回席が真ん中辺りの通常席の一番前という良席だったんですが、2回目観るならもっと近い席でもいいかなぁと思いました。

おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)
後藤 和智
角川グループパブリッシング
¥ 740

宮台真司と香山リカを中心に「下流社会」三浦展、「存在論的、郵便的」東浩紀、「カーニヴァル化する社会」鈴木謙介、「バカの壁」養老孟司、藤原和博など世代論で語ろうとする論者を徹底的に批判する意欲作。

最近は、宮台本なども追ってなくて、意外にも昔は若者を擁護する立場として登場した宮台氏がいつの間にか権力者として、自分たちよりも若い若者を糾弾する側に回っていたのですね。「バカの壁」「下流社会」みたいな本が売れていることには憤慨はしてたのですが。

理論的に何がダメかを指摘していて非常に爽快感があります。すべてがすべて受け入れられるわけでもないですが、誰がどういう視点でものを見ているかが分かって、新しい見方ができそうだなと思いました。

市場リスク 暴落は必然か
リチャード・ブックステーバー
日経BP社
¥ 2,520

モルガン・スタンレー、ソロモンなどでリスク・マネージャーを勤めて来た著者が市場リスクについて書いているのですが、金融業界のいろいろなタイミングでどの会社がどんな戦略を取ったのかをかなり具体的に記載してあり、外から見ているとよく分からない各金融機関がどんな特徴を持って具体的に何をしているのか、なぜあの会社は破綻したり買われたりしたのかが分かる貴重な本になっています。

リスク・マネージャーとは、その金融機関の各部署がどんなポジションを持っているかを把握し、リスク分析を行った上でトップレベルの意思決定機関(取締役会など)へ進言をすることを仕事としているため、あらゆる情報を得ることができる立場のようです。

ソロモンの債券にしても、LTCMにしても裁定余地がある間は非常に儲かりますが、徐々に競合が生まれてそのうまみは薄れていき、最後に誰も予想もつかなかった現象が起こり破綻するというパターンを繰り返して来たのが金融業界なのだということがよく分かります。まさにチキンゲーム。

本書を読んでいると、サブプライム問題なども、過去にも何度も起こって来た金融危機と呼ばれていたことと何ら変わらず、金融分野では一定の確率で起こることなんだなぁと思います。

P.S.「ダークナイト」がそろそろ上映期間が終わりそうなので再度観てきました。改めて観るとジョーカーの訳の分からなかった語りにも意味があることが分かって、正義があるから悪が存在するという矛盾の奥深さに震撼する次第です。ほんと傑作なので、ぜひご覧ください。主要人物については予習していくといいと思います。

あたし彼女

第3回日本ケータイ小説大賞受賞作品。象徴的かつ特徴的なプロローグが紹介されて、ネット上では叩かれたり、パロディができたりしていますね。個人的にはパロディだけでかなり笑わせてもらって、周りで「てか」「みたいな」が大流行中なんですが、さすがに読まないで批判もないだろうということで、読破。だいたい2時間くらいかかりました。

印象としては、まず句読点なしだったり風景描写ほぼなしの常時一人称な視点が新しいなぁと思いました。もしかしたら、ケータイ小説では普通なのかもしれませんが、普通の小説では見たことない作風。テンポよく次ページ、次ページとクリックしていると、韻を踏んだ感じの文章と相まって、ラップを聴いているような感覚に陥ります。

ケータイ小説で250万部も売れた「Deep Love」シリーズが小説の体裁を一応は保っていたのに対して、「あたし彼女」はまったくケータイに最適化されており、新しいタイプの小説であると言えます。

一方、内容については評価しづらいのですが、個人的には悪くないと思います。嫌な女の心理や恋に落ちることなどが生なましく描いてあり、個人的にはまったく感情移入できませんでしたが、描きたいことは明確に伝わっていると思います。

ケータイ小説を読んだことがない方は、今後の参考のためにも読んでみて損はないと思います。ネットビジネスをする方は必読です。

ちなみに、PCでも読めますが、ケータイで読んだ方がよいです。後、パロディ化されている冒頭部分が生理的に受け付けないという方は、作者の意図通りですから、我慢して読み進めてください。

みたいな

【2ch】日刊スレッドガイド : あたし彼女のガイドライン

著者はOutlookやInternet Exploreの開発にも関わったことがあるという実業界の人ですが、本書は非常に幅広く、遺伝子治療や能力増強剤(例えば、記憶力を大幅に向上したりする)、クローン、脳直結型インターフェイスなどについて、どのような技術がどの程度進展しているかを解説しています。

恐らくほとんどの人は、こんなことまでできてるのかという驚きとともに、本当にここまでしていいのか、という倫理的な問題に直面します。例えば、最近では体外受精はよく行われていますが、特定の病気(ダウン病など)にならないように遺伝子をチェックする(PGD)ということは行われています。しかし、それではIQが高い低いを選べるとしたら、どうか?

著者は基本的に遺伝子治療や能力増強剤も、コーヒーを飲んだりレーシック(視力回復手術)するのと変わらないといい、一つ一つ論破していきます。例えば、不妊治療については、PGDでIQが高い遺伝子を選んでも、精神的に不安定であるケースもあるだろうし、そもそも遺伝子だけではすべての性格や容姿などを決定できるわけでもないと言います。そもそもが現在でも帝王切開をするし、未熟児には薬品や保育器を使う。さらに言えば、欧米で禁止しても、アジアではOKという可能性もあるし、もしそうなれば所得格差を広げるだけになると主張します。

また、最後の方に出てくる脳にメッシュ型のインプラントを埋め込む話が圧巻です。まず血管より細い線をメッシュ状にして脳内を被う手術をするところから始まります。それから各種トレーニングを行うと、イメージを他人に送ったり送ってもらったりすることができるようになります。脳内とはいえ電気信号であるから当然こういったことが理論的には可能です。インプラントがインターネットに接続することで即座に知識を得たり、記憶力を増強したり、はては睡眠や食欲、心拍数や気分までコントロールできるようになります。これらは、非常にSF的ですが、本書で示されている基礎的な研究を基盤にしています。

著者のラディカルな思想には嫌悪感を持つ人も少なくないと思います。が、個人的にはここ数十年だけでも非常に大きな感覚の変更が行われて来ているわけですから、今後も同様なことが起こることは間違いないと思います。そう言った意味で僕は基本的なスタンスでは著者を支持したいと思います。

非常に想像力が刺激されますので、これからの新しい世界が知りたい方はぜひ一読をオススメします。

新規事業がうまくいかない理由
坂本 桂一
東洋経済新報社
¥ 1,575

ページメーカーのアルダス、ウェブマネーなど数々の創業を行った坂本氏による新作。今回は企業内新規事業の立ち上げ方について、独自の理論を展開します。個人的にはベンチャー経営という立場が違うため、前作「頭のいい人が儲からない理由」ほどのインパクトはないものの、企業内で新規事業を作ることに頭を悩ませている経営陣や新規事業担当者には非常に役に立つのではないかと思います。例えば、社内公募がうまくいかない理由や、それを克服するためにどうすればよいかなどはなるほどと思いました。
※献本していただきました、ありがとうございます!

LAW(ロウ)より証拠
平塚 俊樹
総合法令出版
¥ 1,470

著者は裁判のための証拠作りを行う唯一の証拠調査士(エビデンサー)だと言います。どうやら弁護士はそういった業務をしないので、裁判でよい証拠が提出できずうまく機能しないそうです。この本では、事例をもとにどのような活動をしたのかが書いてありますが、現在の司法の矛盾がうずまいているようで非常に興味深く読めました。弁護士に駆け込んでもうまくいかず途方に暮れている方はぜひエビデンサーを利用してもいいのではないか。いずれにしても、こういった世界があるということを知っておいて損はないと思います。

人生を決めた15分 創造の1/10000
奥山 清行
ランダムハウス講談社
¥ 2,625

フェラーリなどのカーデザイナーの奥山清行氏によるエッセー本。「フェラーリと鉄瓶」と同じく超一流のデザイナーが何を考えているのかが書いてあります。イラストが多用されていて、それをぱらぱらと観るだけでも楽しいです。

まぐれ--投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社
¥ 2,100

大学教授にしてトレーダーである著者が金融業界の中心で何が起きているかを明らかにした本。シニカルなタッチですが、生々しいストーリーがたくさん出て来て非常におもしろいです。

多くのトレーダーがなぜ吹き飛ぶのかと言えば、例えば1/2のリスクがあるにしても、3年勝ち続けるもののは4000人いれば500人もおり、現役トレーダーは生き残りでしかカウントできないから、ほとんどのトレーダーが好成績を残し高年収でこの世を謳歌している。本人は運が良くて高年収をもらっているとは露とも思っていない。しかし、x年目に運が悪ければ、吹き飛ぶという。

また、モラルハザードの問題も。例としてジョンという人物は7年間で2億5000万ドルの収益をもたらしたが、最後に働いた会社では6億ドルを吹き飛ばしたという。しかし、ジョンの手元には100万ドルが残った(元々は1600万ドルあったのだが)。トレーダーにしてみれば、めったに起こらないことのリスクをとってゲームに残れるオッズを最大化する明確な理由があるからだという。

しかし、それではなぜ金融機関はやっていけるのでしょうか。著者は、自分はオプションを買って儲けているが、なぜそれが儲かるかという原因については「トレーディングにつきまとう直感に反する部分(そして、私たちの情緒はそういう部分に適応できないこと)のおかげで、私は有利な立場に立てる」と書いています。しかし、そういった「歪み」は何はともあれ裁定されるのが金融というものではないのでしょうか。

実際のところどの金融機関が生き残るのかすら「まぐれ」でしかないのかもしれません。ソロモンやLTCM、UBS(名前は残っているが)なんかもなくなってしまし、リーマン・ブラザーズもなくなるかもしれないわけで。

ビートルズ・サウンドを創った男--耳こそはすべて
ジョージ マーティン
河出書房新社
¥ 2,940

第五のビートルズとも言われ数々のアーティストのプロデューサーを勤めたジョージ・マーティンによる半自伝。まだ音楽プロデューサーというものがない時代、ビートルズなどの商業レコード業界、映画音楽への取り組みなどが非常に克明に描かれており、非常に興味深いです。

若干冗長な感じもありますが、それもまた今後資料的な意味も含めて重要になってくることでしょう。この本が書かれたのは78年ですが、すでにデジタル音楽の可能性にも的確に言及しているのがさすがです。自身は、ポールとジョン・レノンに比べると音楽的才能はなかったと断言しますが、レコーディングへのこだわりは凄まじいものがあり、まさに現代音楽を作ってきた巨人であると思います。

個人的には、特に音楽プロデューサーというものがない時代から徐々に、音楽プロデューサー像を確立し、憧れの職業にしたのにその先見性と才能を深く感じました。これは音楽プロデューサーをミュージシャンと同等のクリエイティブな仕事だと認めらさせてきたからだと考えます。

僕はウェブサービスを作るということに関して、クリエイティブなウェブプロデューサーが絶対的に必要だと思っています(これをはてなではサービスクリエーターと呼んでいますが、ここではウェブプロデューサーで通します)。

現状はエンジニアがやってみたり、企画や営業の人がやってみたり、試行錯誤が繰り返されています。そして、ウェブプロデューサーはその仕事範囲の曖昧さからエンジニア、企画、営業から突き上げをくらう孤立した存在になっているケースが多いように思います。

使われるウェブサービスは例外なく優れたウェブプロデューサーがいます。後から「同じこと考えていた」などという人は、本当に「同じ」なのか(自分に正直になって)考えた方がよいし、Twitterやmixi、ニコニコ動画に細かいことで(遅いとか儲かる訳ないとか)文句ばかりつけられるのもその実装のエレガントさに目がいってないからだと思います。

もちろん批判は常に必要ですが、「なぜそのサービスが使われるのか」「サービスが何をもたらしているのか」を考えれば、ウェブプロデュースの才能とエンジニアリング、企画、営業、デザインなどの才能は分けられるべきと考えます。

恐らく10年後には、ウェブプロデューサーという仕事が確立していると思いますので、特に心配はしてないのですが、願わくは自分もその一人でありたいと思います。と、だいぶ本の感想から外れましたが。。

P.S.単行本は若干高いですが、文庫版もあるようです。

リクルートのHotPepper事業の立ち上げ人が書いた本。わずか4年で売上300億、利益100億を叩きだしたというお化け事業がどのように立ち上げていったかが詳しく描かれており、非常におもしろいだけでなく、勉強にもなる良書です。リクルート的な熱い感動話も盛りだくさんで、まだまだリクルートの社風は健在なんだなと思いました。

なぜか僕の周りにはリクルート出身の人たちが非常に多いのですが、聞いたところによると、平尾氏は一時期楽天オークションの立て直しもやっていたとか。楽天オークションの立ち上げは僕が初めて仕事らしい仕事をした最初のプロジェクトなので、勝手ながら親近感を覚えました。

  • 「大阪は札幌とマーケットも戦略も違うのか。わかった。じゃ、お前の大阪のマーケットの戦略を説明する前に、お前が違うと断言する札幌のマーケットと戦略を、お前が説明してくれ。そのうえで、大阪との違いについて聞こう」
  • 「剣道には、小手・面・胴の3つしかない。戦う相手が変幻自在だから、技も変幻自在なのか? そうじゃない。相手の攻撃には傾向があって、それに対応する技があるんだ。営業だって一緒だよ」
  • 「マネジメントは要望することだ。自分ができないことを要望できない。変幻自在にやれなんて要望できない。ましてや、変幻自在を教育もできない。だから、型を決めて徹底的に訓練する。剣道が毎日小手100本、面100本、胴100本稽古するように・・・」
  • 「最初は中央集権でやる。やれと言ったら絶対にやれ。でも、やれと言われているからやれと言われたとおりにやるだけのバカになるな。言っておくが、会社とはそんなバカを一生懸命量産する仕組みを考えているものだ」
  • 「なぜやれと言われるのかを考えながらやれ、やれと言われる背景にあるものは何か? を考えながらやり切れ。そうすればその構造が分かってくる。そして、やがて自分でその構造そのものを創れるようになれ」
なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
フィル・ローゼンツワイグ
日経BP社
¥ 1,890

分かりやすいところで「エクセレント・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー」「同2」などがいかに「エセ科学」なのかを明らかにする意欲作。これらの本は、誰もが納得する「ストーリー」を提供しますが、それらは「後付け」の説明でしかなく、集められた資料はハロー効果にまみれていて、科学的根拠はまったくないと言います。実際のところこれらの本で優れていると取り上げられた企業のその後のパフォーマンスは大幅に低下し、平均すら下回っています。

ハロー効果とは、結果について情報を与えられた人に客観的に測定できないことを言い、次のようなテストが例としてあげられています。被験者をいくつかのグループに分けて、あるテストを実施する。それに対して「成績がよい」と言われたグループと「成績が悪い」と言われたグループを「ランダム」に分けると、前者グループでは自分のグループはコミュニケーション能力と柔軟性とモチベーションに優れ、結束が高かったと評価するが、後者グループではそれらの評価は低くでた。

これは確かにまったくであり、ビジネス書やビジネス雑誌では分かりやすい因果関係のある(ように見える)ストーリーでまとめてあり、読んでいて気分がよくなります。本書では「ストーリー」を否定せずストーリーはストーリーとして読むべきであると主張し、多くのビジネス書の因果関係と相関関係を取り違える手法、上記のビジネス書のような「たくさん資料を集めたのだから科学的に正しい」という論拠などを真っ向から破壊していきます。

個人的には、「エクセレント・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー」「同2」は以前から何かおかしいと感じていたので、非常に腑に落ちた感じがしました。これらの本を信奉している人、および、よくビジネス書を読む方には必読の本です。

一方で、経営者として、この本には非常に考えさせられる部分が多いです。例えば、結局のところリーダーシップもモチベーションの高さもビジョンの浸透度も業績にはほとんど連動しない、ことを明らかにされています。ハロー効果により統計上、成功している企業では社員のモチベーションが高く、失敗している企業ではモチベーションが低いと出て、ハロー効果を抑えた調査結果では、どうやら統計上有意な結果は4〜10%程度しかないらしい。

本書の結論的には「これさえすれば成功するというものなどない」「成功と失敗は紙一重」「ビジネスは、私たちが考える以上に、運に大きく左右される」「原因と結果の関係は明確でない」という非常に曖昧なことになっています。これは一見がっかりするおもしろくもない話なのですが、正直に言えば会社を経営していると、非常に実感として感じる部分があります。例えば、自分はあまり変わっていないのに、社内外問わず捉えられ方の変動が激しく感じますし、成功と失敗の分かれ目に対しても非常に運の要素が大きいと思います。

であれば、何を規準にしてどういう経営をしていくべきなのか? これはじっくり考えていかなければいけません。

最底辺の10億人の人々はどのような状況で、どのような罠に陥っており、それを救うにはどうしたらよいかを論じた本。具体的にどうアクションすればよいかまで指摘しています。貧困撲滅といえば、ジェフリー・サックス「貧困の終焉」がありますが、著者もその想いには同意するものの、援助を重要視しすぎており、「援助」だけではなく「軍事介入」「法と憲章」「貿易政策」の4つをバランスよく行っていく必要があると言います。

確かに前半の天然資源や紛争、ガバナンス、内陸国の現状などを読むと、援助だけでは非常に難しいのだろうと納得ができます。しかし、著者の言う国の状態にあわせて、適切なタイミングで、適切な組織(ここでは世界銀行やOECDやG8など)が、適切な手段を講じるというのは非常に難しそうだなとも思います。

個人的には、「貧困の終焉」は確かに熱くて方法論的には足りない部分もあるのかもしれませんが、世界世論を動かすには、単一のメッセージで熱く問いかけ、まず先進国民を動かすのは重要なのではないかなと思いました。それからでないと、利害対立する国やNGOの意思統一が難しいのではないでしょうか。

いずれにしても、著者自身ができる限り平易に書いたというだけあって、非常に読みやすい本なので、「貧困の終焉」と共にぜひたくさんの人に読んで欲しい良書です。

僕は哲学者の中ではニーチェが一番好きで、自分の考えにマッチしていると思っています。哲学者なんていかがわしいと思っている方にもニーチェだけは知って欲しい。19世紀の哲学が現代においてますます威力を発揮することに驚くと思います。

前置きが長くなりましたが、、本書はニーチェの「ツァラトゥストラ」を中心にした言葉を元に、著者が数ページの解説をするという体裁になっています。著者曰く「私にとってのニーチェは、体系的に研究すべき対象というわけではない。ニーチェ自身は、思想を「研究」してもらうことより、「このことばが僕の今を、明日を、明るく照らしてくれた」と思われることを喜ぶタイプである。」。

僕も大学生の時に初めてニーチェに触れたとき、まさしくその思いを抱きました。そして、本当にそれが力になったものでした。この本は入門書としては、ちょうどよいと思いますが、もう少し詳しく知りたい方には、竹田青嗣「ニーチェ入門」をオススメしたいと思います。

ニーチェ入門 (ちくま新書)
竹田 青嗣
筑摩書房
¥ 756

フリードリヒ・ニーチェ - Wikipedia

ロッキー青木氏死去というニュースを見て、アメリカにいたときもよく名前は聞くけどレストランも行ったことないし、よく知らないということで購入。しかし、なんとこれ漫画(笑)。もちろん漫画でもいいんですが、ちょっと予定外です(苦笑)。内容は、レスリング日本代表として全米訪問中にそのまま居残ったとか、刺されながらハーレムで1万ドル稼いだとか、モーターボートでヒルトン出店の話を対等じゃないと断ったとか、ほとんど伝説の連続。さらりと読めておもしろいです。もっと詳しく知りたいなと思いました。

わたし、男子校出身です。
椿姫 彩菜
ポプラ社
¥ 1,260

下に貼付けた動画を観てかなり衝撃を受けたので。性同一性障害で心は女性なのに男性扱いされて悩む姿がすごく痛々しい。いろいろな事件を経て、性転換をするシーンでは素直によかったねと思えました。実際のところ手術は本当にものすごく痛いとか、法的な戸籍を変更するための条件とか、まったく知らなかったので、性同一性障害について知ることができてよかったです。文章は明快で読みやすくて頭いいのだろうなぁと思いました。あえていえば、タイトルがイマイチかも(といって、何かよい代案があるわけではないんですが)。

作風が独特ですが、スピード感があって、暴力的なところは町田康に似ているかもしれません。カテゴリ的には、ミステリーなのですが、作りは割と緩い感じ。感情をおもむくままに発散する暴力的で天才肌の主人公を起点に、むしろ語感のよさやトリップ感を重視している感じ。若干チープなのが気になりますが、それもまた計算づく? もう少し読んでみないと分かりません。

P.S.先日のアップグレードでRSSがうまく更新されていなかったっぽいです。すいませんでした。これでうまくいくのではないかと。

50〜60年代にソ連のポリショイ・バレエ、レニングラード交響楽団、ボリショイ・サーカスなどの公演を開催し、元祖「呼び屋」と言われた神彰(じん・あきら)の一生を追ったノンフィクション作品。その後、2度も破産しながら、「北の家族」を創業して奇跡の復活、そして上場。数々の盟友との出会いと別れ、人気作家有吉佐和子との結婚と別れ。激動すぎる。。スケール大きくやりたいなと思える作品でした。若干値段は高いですが、非常におもしろくオススメです。

神彰 - Wikipedia

宇宙に隣人はいるのか
ポール デイヴィス
草思社
¥ 1,890

最近読んだ宇宙論本たちに比べると、科学的には平易なのですが、哲学的な論点中心で、その辺りは難解です。宇宙論を掘って行くとどうしても誰が宇宙を作ったのか、なぜ宇宙はこんなにも奇跡的に生物が生きやすい環境になっているのか、などという哲学的な問いが出て来てしまい、一神教であるキリスト教は悩み、そうでない人もあまりの奇跡的な状況に「何か」を感じざるを得なくなるようです。最先端の科学が哲学的にならざるを得ないのは非常におもしろいなと思います。

幸運な宇宙: suadd blog
パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ: suadd blog
エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する: suadd blog
そして世界に不確定性がもたらされた: suadd blog

人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)
山田 風太郎
徳間書店
¥ 760

その名の通り世界中の様々な著名人の臨終の様を描いたドキュメンタリー。一人一人は長くても数ページになっていて、10代から若い順に掲載してあります。いろいろな生き様と死に様があるのだなぁと思い、いったい自分は何をなしてどのように死んで行くのがいいのかと考えてしまいます。しかし、死に際に幸せの絶頂を持ってくるのは難しく、生きている間の充実感の方が重要なのかなと思ったりしました。それにしても昔の人は肺炎と梅毒で死ぬ人が多いですね。後は日本だと自決、海外だと死刑が目立ちます。

幸運な宇宙
ポール・デイヴィス
日経BP社
¥ 2,520

そして世界に不確定性がもたらされた」「エレガントな宇宙」「パラレルワールド」に続いての宇宙論を知るために読んだ本。本書でもまたもや斬新な考え方がいくつも提示されています。例えば、多宇宙(マルチバース)を認めてしまうと現宇宙がどこかの宇宙でシミュレートされた偽宇宙である可能性が捨てきれなくなってしまうこと、宇宙がほとんどイカサマのように生物にとって快適な状態になっている謎について、それに伴い神学者たちが(ダーウィンを渋々認めた後)持ち出して来た「インテリジェント・デザイン」という概念など。かなり哲学的な問いの連続で難易度は高いですが、宇宙論の最先端まで行くと非常に哲学と似通ってしまうというのが非常に刺激的でおもしろいです。

戦前に一時は三井物産の売上をも凌駕したという総合商社鈴木商店を、なぜ米騒動で焼打ちにあったのかを中心に、鈴木商店の内情を追って行くドキュメンタリー。失礼ながら先日、鈴木商店を知って、もっと知りたくなったので購入。内容は多少冗長ですが、個性的なキャラクターたちが活躍する様を読んで、商社ってこういうところから発展してきたのかあと思いました。鈴木商店から派生した企業としては、神戸製鋼、帝人、サッポロビール、太平洋セメント、IHI、昭和シェル石油、双日(日商岩井)、日本製粉、三井住友海上火災保険など。すごい会社だったんですねぇ。

鈴木商店 - Wikipedia

告白
町田 康
中央公論新社
¥ 1,995

明治に河内で起こった惨劇を元に再構成した小説。独特の文体で主人公が何をやってもうまく行かず、破滅に向かっていく様子を描いています。文章がリズムよくうねりながら展開されていくのが非常に新鮮。いままでにない感覚を覚えました。

ただストーリーは客観的に見ると、主人公の状況は客観的に見るとそんなに悪くもない(舎弟とか嫁さんとか実家とか)わけで、なんというか読んでてもどかしい思いがいっぱいになります。まぁそれが狙いなので、ものすごいうまく乗せられているということになるわけですが。。

アメリカで貧困層がどのように広がっているかをルポ形式で紹介している本。ちょっとした災害や怪我、無知などで最貧層へ転落して行く様が描かれていて、ものすごく恐ろしいです。

例えば、アメリカでは医療制度が完全に崩壊しており、会社で医療保険をカバーしてもらっているとしても、一度怪我して会社を追い出されると、高額な自己加入保険に入るか無保険になる他ないため無保険者が4700万人にも膨れ上がっています。一方で、医者も保険会社からの指定を外されないように保険会社の顔色をうかがい、保険会社は難癖をつけて医療費の支払いを拒むというどうしようもない構図になっています。

その他にも、軍のリクルーターが高額な教育費に苦しむ学生をうまくだまして予備兵にさせておいて、実際はほとんどがイラクに送り込まれている話とか、軍のコストカットのためハリバートン社などの子会社の戦争請負会社が輸送などを請け負い、世界中から労働者を集めて劣悪な環境で働かせている一方で、それらの人々が殺されても「自己責任」とされてしまう話とか、目も当てられない話が満載。ちなみに、ハリバートン社のイラク関連事業の売上げは8500億円を超えたそうです。

日本でもワーキングプアとかネットカフェ難民が話題になっていますが、それを遥かにしのぐひどい話が満載です。こういう国にならないようにして欲しい、していきたいと強く思いました。

P.S.一方で、この内容を鵜呑みにしてしまうのもどうかと思うので、決めつけず情報収集していきたいなと思いました。

先日エントリした「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」と被る部分が多くさらに初心者向けという感じ。確かに「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」はある程度の知識を前提としているため、証券会社で株を買ったことがない、という方にはこちらから読むことをお薦めします。

人類が消えた世界
アラン・ワイズマン
早川書房
¥ 2,100

今すぐに人類が消えたらどうなるか、を主に科学的側面から予測した本ですが、一つ一つはかなりディティールに迫っていて、例えばプラスチックの登場と現在における影響とか、過去どのような種が絶滅したり勃興してきたか、宇宙に対する取り組み、原生林とは何かなど、過去から未来に関して相当多岐に渡る言及がされています。本書における、人類が今すぐ消える、というのは知的な刺激のための一つの手法であると考えてもよいと思います。頭が非常に刺激される良書です。

「ドラゴン桜」の作者が書いたビジネス本。中学高校の教科書に立ち返れというのは極端だなぁと思いましたが、いろいろとはっとすることがあり勉強になりました。すらりと読めますが、内容は奥深くて、おもしろいです。

<抜粋>
・(学校や新入社員研修と比べて)ところが、現場ではまったく違う。先輩社員の言っていることなんて矛盾だらけだし、とても「正解」とは思えない。そしてなにより、ロジックで語ろうとせずに、自分勝手な経験則だけを押しつけてくる。はっきり言って「教えること」に関しては、ずぶの素人なのだ。
・心理学的な話をすると、サラリーマン川柳を読んで共感し、喜んでいるのは「下方比較」という心理だ。これは「自分と同等か、それ以下の人間を見て安心する」という心理で、人の成長を阻むもっとも大きな要因になる。(中略)サラリーマン川柳に共感し、喜ぶ心があると、普段の読書も「共感系」の本を読むようになってくる。要するに「あなたはこのままで大丈夫ですよ」とか「ありのままの自分で生きていきましょう」といった癒し系の自己啓発本だ。冗談じゃない!
・プロ野球やJリーグの監督でも、ほんとうに優秀であれば日本語能力の有無に関係なく通訳をつけてでも雇い入れるのがプロの世界だ。語学力なんて「あれば助かる」というレベルで、仕事力の本質にはまるで関係がない。
・本当の読書家は根気があるし、いざというときの集中力が高い。そして根気も集中力もない人間は、本が読めない。内容に多少心惹かれるところがあっても、読み進めていくことができないのだ。

P.S.今日の一枚

築地場内2
築地場内2 posted by (C)Shintaro

政治家野中広務のルーツとその政治家としての業績に迫った本。「影の総理」と言われ黒幕的な印象しかありませんでした。しかし、特に若かりし時には京都で政治家として豪腕を振るい、衆議院に初当選は57歳と若くなかったにも関わらず、その卓越した調整能力で権力の中枢まで駆け上がって行ったようです。古いタイプの政治家らしく、今なら完全にアウトの選挙活動や政治活動も描かれています。政治家としてのスケール感は、それ以前の政治家と比べるべくもないですが、いろんな意味でおもしろいエピソードが盛りだくさんで、泥臭い人生が非常に興味深いなと思いました。

主人公はアフガニスタンで裕福な家に育ち、兄弟同様に育ったハッサンという召使いの子供もいる。そんな中で戦争が勃発し。。という出だしから始まる小説。予備知識なしで読み始めたので、最初冗長だと思いましたが、中盤ぐらいから先が読めないストーリー展開でぐいぐい持って行かれました。伏線がかなりうまく張られており、えーそれの伏線っ! と思うことしきり。アフガニスタン自体にもほとんど知識がないので、その豊かな自然や社会や街の感じなどものすごく新鮮に感じました。難を言えば、先ほどの最初が冗長なのと子供とかその辺りのおじさんなのに操る言葉が高度すぎるかなと思うところがあるくらいで、素晴らしい小説だと思います。著者もアフガニスタンからの亡命経験者で、この処女作は世界中で800万部も売れているそうです。ドラマチックなストーリー展開に酔いたい方にお薦めです。

最近、経験のために株式投資をやろうかと思って、これまでの知識と経験から「ファンドを買うのはありえない(手数料+統計から)」「買うなら個別株orインデックス連動」「為替はどっちに転ぶか分からない」「短期より長期」くらいは漠然と考えてたのですが、いざ買おうと思うとよく分からないので、いろいろ勉強しているところです。橘氏の本は以前から結構読んでいるのですが、いつも金融の最先端を見せてくれて、非常におもしろいです。今回は特に当事者意識を持っていたので、非常に勉強になりました。

<今回学んだこと>
・金融資産に比べて人的資本が圧倒的に大きい場合、全資産を海外資産で保有すべきである
・外為投資をやるなら、手数料&金利&レバレッジから外貨FXの方が明らかに有利
・インデックスファンドを買うなら、手数料&レバレッジから同様のETFを買う方が明らかに有利(ただし流動性には注意する)
・世界株ポートフォリオの作り方は、ドル建てならSPY+iShares MSCI EAFE(EFA)or iShares MSCI KOKUSAIがよい→楽天証券で扱っている模様、後者は流動性に注意
・ヘッジファンドの収益率が高い理由は、潰れたヘッジファンドが統計に入ってないから
・LTCMの破綻の理由:ファットテールと正規分布

桶川で女子大生がストーカーによって殺害された事件を追った元FOCUS記者のドキュメンタリー。真実は小説よりも奇なりという言葉通り、次々と明らかになる事実がドラマチックでものすごいよくできた物語のように思えてしまうくらいのドキュメンタリーになっています。記者という職業やスクープの裏側が知れてよかったのですが、それよりも警察の対応に頭にきます。この事件によって、ストーカー法ができたというのも納得。一人の記者が徐々に事件に深く関わって行く様も興味深いです。

夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル
みすず書房
¥ 1,575

アウシュビッツなどを生き抜いた著者が1947年に出版した精神科医からみた収容所を描いた本。といっても本人も収容されほとんど骨と皮になり、ほとんど奇跡の連続で生き延びています。想像を絶する絶望感に収容所というものを言葉だけ知っていてまったく理解できてなかったのだなと思いました。もちろん今でも理解できてるとは思えませんが。。究極の状況に置かれた時にどんなことを思うのかを描いています。

わたしたちを取り巻くすべての苦しみや死には意味があるのか、という問いだ。もしも無意味だとしたら、収容所を生きしのぐことなどに意味はない。抜け出せるかどうかに意味がある生など、その意味は偶然の僥倖に左右されるわけで、そんな生はもともと生きるに値しないのだから。

P.S.PerfumeのGAME初回版にプレミアがついているようです。すごいですね。

先日上場したネットイヤーグループ社長の石黒さんの書き下ろし本。経営本というよりは、むしろ石黒さん本人の半自伝になっておりどういった経緯で今に至ったかが描かれています。最初は冗長な部分がありますが、シングルで子育てをしながらシリコンバレーにMBAを取りに留学した辺りから非常に生々しくておもしろかったです。シリコンバレーでは日本人女性で活躍している方が多いですが、少し昔の日本は本当に女性を生かせなかったんだろうなあと改めて思いました。今は昔よりはやりやすくはなっているとは思いますが、まだまだこれからでしょうね。そして、それなのに堅実に経営されて上場するまで育て上げた石黒さんは本当にすごいと思いました。

P.S.久しぶりに風邪を引きました。。明日までになんとかして治さないと。。

最近ハマっている量子論/宇宙論をもっと知るために読んだ本。「そして世界に不確定性がもたらされた」「エレガントな宇宙」に比べると、もっと未来に焦点を当てた内容で、現在行われている最新の研究からM理論、パラレルワールド、タイムマシンなどの今後の可能性、人類が現宇宙の終わりに生き残るために考えられるシナリオなど。

特に今いる空間のすぐ隣に別の宇宙が存在しており行き来が可能かもしれないというパラレルワールドの存在、銀河中のエネルギーを利用しているタイプIII文明でできることのシナリオにはどぎもを抜かれること間違いなしです。

ちなみに現在はタイプIのバージョン0.7に辺り、今後数百年でタイプIに到達すれば地球上で使える太陽のエネルギーをほぼ100%利用し、現在の1000倍のエネルギーを利用できるらしいです。タイプIIIでは、銀河中に入植しておりタイプIの100億倍の100億倍のエネルギーを使えます。そして、現宇宙が終了する時には時空にワームホールをあけ、別の宇宙へと脱出することが可能かもしれないとしています。

とにかくスケールが大きくて、非常に斬新でおもしろかったです。

FrancFrancなどを経営するBALSの高島社長によるタイトル通り「経営しながら考えたこと」。FrancFrancはいつの間にかとても好きな場になっていたのに、どういう会社なのか全然知らなかったので、手に取ってみました。なぜFrancFrancが他の数あるインテリア・ショップの中で抜け出せたのかがとてもよく分かります。「都会で一人暮らし25歳のA子さん」に絞り込んだターゲット、BALS TOKYO、AGITOなどの多ブランド展開の意味など、非常におもしろかったです。とはいえ、戦略/戦術だけではない社長のセンスをびしびし感じました。こういう経営をしたいなぁと思った次第です。

著者は、フリーライターであり、会社再建も何度かしたことがあるらしいです。ライフハック的な100コの法則(?)に対して、見開き2ページで解説するというスタイルになっています。サクサク読めるのに、なるほどーと思うことしきり。ちょっとどうかなというものもありますが、いくつかでもすぐに取り入れたいよい話があってよかったです(という法則もあります)。

<抜粋>
・NGな人には説明しない。NGな人とはモメない
相手に説明させれば無駄なエネルギーを使うことなく、NGな人か否かの真偽も確かめられます。いっさい口を利かないなどして避けて通るよりも、リスクが少ない現実的な対人術です。
・クレームは成長に不可欠なもの(一割)と、無駄(九割)に分かれる
合理的に数値化して、無駄なクレームを排除していくことにしましょう。私のルールは「100人に1人程度の割合で、クレーマー的またはストーカー的会員をクビにしてよい」というもの。
・三日かかることは一日でやる
(歴史学者C・N・パーキンソン曰く)<仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する>どんな仕事も、三時間あると思えば三時間かかってしまうし、逆に一時間しかなければ、追い込まれてなんとかするのが人間です。
・今いるメンバーを前提にする。「上手くいかない」のを彼らのせいにしない
自分の部下を「あいつは使えない」と言った時点でその素質に疑問符が付くことになってしまいます。

シャングリラ・ダイエット
セス・ロバーツ
フォレスト出版
¥ 1,050

なぜか百式田口さんが監訳というダイエット本。献本いただきました、ありがとうございます。>田口さん

個人的には、あまりそう見られないのですが、放っておくとすぐに太ってしまうので、よくダイエットしてます。高校生のときに部活を止めたら異常に太ってしまって、半年で20kgくらい落としたこともあります。この時はさすがに人相変わりました(苦笑)。最近は、毎回3、4kgくらいの減量が普通で、今年に入ってからも4kgくらい痩せました。

やり方は超原始的で、お腹があまり減ってない時に一食抜いたり、間食を一切禁止して、徐々に一食の量を減らしていく、というところでしょうか。僕は週に1度運動(スカッシュ)をしてますが、それ以上は難しいので、後は摂取カロリーの問題だと思ってます。

というわけで、シャングリラ・ダイエットですが、食事制限系でも運動系でもないのが新しいなと思いました。正直言えば、これで痩せるのか分かりませんが、効果がありそうな気もとってもします。少なくとも身体を食べなくても気にならないモードに持って行くというのは、個人的なダイエット法にもかなり似ていると思いました。食べないことになれちゃうんですよね。

僕の場合はダイエットは気合いでやりますが、シャングリラ・ダイエットならお手軽だし、お金もほとんどかからないし、痩せたいのに痩せられないならだまされたと思ってやってみたらいいと思います。もし効果が出なくても被害ないですしね。

というわけで、ご興味のある方はどーぞ。

そして世界に不確定性がもたらされた」のコメントで教えていただいた本書は、ハイゼンベルクの量子力学のさらに先、相対性理論と量子力学を統一する(と言われている)超ひも理論およびM理論についての、ドラマを丁寧に描いています。「そして〜」に比べると、難しくて頭を捻っても分からない部分も多いですが、それは超ひも理論が未だに発展途上の物理学であり、そのものが難解であることに起因しています。

この本を読んで、アインシュタインがなぜハイゼンベルクの量子力学に強硬に反論したのかがとてもよく分かりましたし、それすら統一しようとする超ひも理論およびM理論の美しさに目を見張りました。世界が「ひも」でできてるとか、世界は実は11次元であるとか、宇宙がたくさんあるとか、非常に衝撃的ですが、この本を読んだ後ではそうなんだなぁと納得しています。

また、この本は超ひも理論の第一人者でもあるブライアングリーン教授によって書かれていますが、本人からして自分が生きている間に統一できるのかも分からないし、本当にこれが最後の統一理論なのかも分からないし、そもそもそんなものはないのかもしれないと語っています。しかし、こういう天才のおかげでだんだん人の叡智というのは高まって来たのだなと思いました。

世界をもっと知りたい方にオススメします。

P.S.これからソウルに行って来まーす!

マネックス証券創業者の松本大氏の仕事術本。さくっと読めますが、身につまされる話が多くて非常におもしろく勉強になりました(下部に抜粋しておきます)。松本氏は超一流のビジネスマンであると思います。

一方で、新しいものを生み出す例としてあげられていたのが、アービトラージ(裁定取引)と元上司の立ち上げたLTCMというのにはちょっとがっくりしました。マネックス証券の理念でもある「日本の資本市場をよくする」、というのはアービトラージ的な意味であり、「何かを創造する」とはだいぶ違うのだろうなと思いました。「ビジネスとアートとは、対極の関係にあると私は思います」とも書かれています。

個人的には、アービトラージではないアートとビジネスの狭間を考えて行きたいと思いました。

<抜粋>
・(何か新しいことをやる時にメールで意見をもらうようにしたが、徐々に少なくなってきたので、期限を作るようにした。しかし、それでも来なくなってしまった。また、あるMTGが閉鎖的で見えづらいという意見があり、議事録をメールで送るようにした。しばらくすると書いてある内容と重複する質問が来るようになった)これを社員の怠慢と位置づけるつもりは、まったくありません。ニーチェ曰く「人間は慣れる動物である」だからです(中略)常にメンテナンスを繰り返し、コミュニケーションを維持できるよう、普段の努力、工夫を積み重ね、次の手を考え続ける必要があります。まさに「コミュニケーションに王道なし」なのです。
・会議で心がけているのは、会議を終わった後の意見は聞かないということです(中略)そうしないと、いつでも後から言えるとか、皆の前で発言するのは恥ずかしいとか、誰も会議で発言しなくなってしまうからです。
・野茂選手や中田選手が経験したであろう苦労を考えれば、やはり先駆者である2人の価値は、後の人たちとは、比べるべくもないほどに光っています。
・誰も無駄な仕事をしているとは思いたくありませんし、会社のことをきちんと思っているひとほど、自分の今している仕事に責任感を強く持って望むので、すべての仕事を取りこぼしなく遂行しようという気持ちが強く働くはずです。でも、それではいけません。自ら積極的に無駄な仕事を見つけ、ストップさせなければならないのです。

黒瀬 昇次郎
致知出版社
¥ 1,890

笹川良一といえば、日本船舶振興会会長としてCMで「一日一善」「戸締まり用心、火の用心」と呼びかけていた謎のおじいさんという印象しかなく、競艇という性質上怪しいものを感じていました。おそらく多くの人はそうなんじゃないかと思います。

しかし、この本によるとそれはまったくの誤解であり、本人は超天才型の投資家・実業家であり、戦前と戦後にそれぞれ数百億づつは稼ぎ、さまざまな援助の呼びかけに応じて、死ぬまでにすべてを使い切った聖人であったと言います。実際、日本船舶振興会は天然痘根絶、ハンセン病根絶、緑の革命などに多大な貢献をし、それ以外も合わせて年間拠出金はロックフェラーなどの財団を上回り民間最大だそうです。

また、戦前には戦争反対を説いて回り、一方で戦後はA戦犯として巣鴨プリズンに進んで入り、ソ連を批判し、国民を飢えさせないためなら命をささげる、やましいことは一切ないと豪語し、他の収監者を心から支え、家族を私費でかくまったという。それにより「ヒーローであった」と称され、そのお礼状は8000通近くに及んだらしい。もちろん本人は無罪放免されている。

どうやら、日教組や労組批判を繰り返すなどして、朝日新聞などから批判を浴び世間的なイメージが歪曲されているようです。ちなみに、日本船舶振興会を蓄財に使っているのではないか、という批判に対しては、金なら(昔から)いくらでもあるからそんなことをする必要はない、と言っており、本人としては当然すぎて弁明する必要もないと思っていたのが、世間はそう取らなかった、ということらしいです。そういった批判にも、本人は「そのうち分かる」と言って寿命を迎えたらしい。

文章はやや冗長ではありますが、スケールがあまりにも大きくて、気持ちのいいエピソード満載で非常におもしろいです。笹川良一が再評価される日はいつになるのか分かりませんが、個人的には非常にかっこよくて、こんな風に生きていきたいなと思いました。

笹川良一 - Wikipedia