本・芸術の最近のブログ記事

アンディ・グローブ[上]--修羅場がつくった経営の巨人
リチャード・S.テドロー
ダイヤモンド社
¥ 2,310



インテル創業者の一人で元社長のアンディ・グローブの生涯を綿密な取材により描いた作品(本人存命中ですが)。自伝である「僕の起業は亡命から始まった!」では、どちらかというと亡命するまでがメインだったので、いかにしてインテルがここまでの大成功を納めたのかはよく分かりませんでしたが、本書ではそういった部分まで細かく言及されています。

例えば、日本企業との戦いに敗れてメモリ事業から撤退する話、386リリース時に代替供給者を認めない戦略を取った話、RISKアーキテクチャの採用を見送った話、インテル・インサイドのキャンペーンの話などなど。かなりきわどい勝負をして、そして勝利してきたのが分かります。

思ったのは、大きくなる会社というのはどのタイミングでも現状に満足せず勝負をしてきた会社なのではないかということです。インターネット企業を見渡してみても、よい業績をあげている会社というのは、適度なタイミングでミラクルを何度も起こしています。例えば、楽天であれば「旅の窓口」や「DLJディレクト」の買収、プロ野球への参入など、DeNAであればモバオク、ポケットアフィリエイト、モバゲータウンなど。

ミラクルというと一見運次第な感じがしますが、ここでいうミラクルを起こすために冷静な視点や不断の努力が必要なわけです。しかし、必要なことをしても必ずしもミラクルが起こるわけではないので、常に努力するのは非常にきつい。それをして、かつ結果を出して来た経営者としてアンディ・グローブは尊敬に値するし、この本を読んで経営者としての心構えを学んだように思います。

世の中にあふれる嘘の常識を事例に出しながら、なぜそういったダメな議論があふれてしまうのか、そもそもどこがどうダメなのか、なぜそういう罠にはまるのかなどを論理的に解説した本。非常に分かりやすく書いてあるので、すらすらと読めます。

僕は、RSSリーダーやソーシャルブックマークなんかを使って普通より情報収集をしている方だと思うのですが、正直この本にあるようなダメな議論が氾濫しているのを感じます。一方で、マスコミだけを元にしているとネット上にあるような「上質な議論」に触れられないのも事実です(なぜならマスコミはマスに向かっているため深い議論はしづらい)。

玉石混淆なので、非常に弱肉強食だとは思いますが、すごく先端な議論があっておもしろいとは思っています。とはいえ、基本的に、直感でおかしいなと思っても、どうおかしいかじっくり考えたり、わざわざ批判しないでスルーします。自分が上質だと思ったものについてはじっくり考えるようにしてます。でないと時間がいくらあっても足りないので。。

それはさておき、本書は、そんな弱肉強食なネット上での渡り歩き方が分かる良書だと思います。オススメ。

<抜粋>
・「本当の○○は」「真の××は」という命題は哲学的な響きがあるためか愛用者が非常に多いようです。しかし「真の豊かさとは何か」「本当の幸せとは何か」という類の問いに答えはありません。仮にあったとしても、それが正しいのか否かを検証することは不可能なため、「確かにこれが本当の幸せだ」と確認することができません。
・データを用いた検証を行う訓練を受けていない人の中には、データによる検証のすべてを無意味に批判するというケースが見受けられます。そのような態度は、議論をつぶすというネガティブな結果しかもたらしません。代替的なデータや改善案の提示が見られないデータ批判に出会った場合には、まずは疑ってかかる必要があるでしょう。
・現実をはじめから「丸ごとそのまま」「総合的」に解釈することなどできないのです。ある現象をその関連事項まで含めて完全に理論化するモデルは、「世界そのもの」しかありません。「世界そのもの」を直接把握できるなら、理論など必要ないでしょう。

経済は感情で動く---- はじめての行動経済学
マッテオ モッテルリーニ
紀伊國屋書店
¥ 1,680

人がいかに感情に左右されて判断をしているかを何十通りも紹介して解説した本。例えば、「8000円をもらうか、あるいはジョージ・クルーニーかアンジェリーナ・ジョリーにキスするか」と「8000円儲かる確率が1%のくじ引きをするか、ジョージ・クルーニーかアンジェリーナ・ジョリーにキスできる確率が1%のくじ引きをするか」と聞くと前者ではお金をもらう人が多いが、後者ではキスを選ぶ人が多いらしい。

なぜこういうことが起きるのか、ということがひたすら書いてあります。最初はかなり新鮮でおもしろいのですが、最後までひたすら事例と解説が続くので結構あきてきます。とはいえ、それを知っておくのは自分の感情の「エラー」を防ぐためにも重要なことなんじゃないかと。読んで損はないと思います。

シルクドゥソレイユはラスベガスで2回しか観たことないのですが、ついに新浦安というかイクスピアリの隣に常設劇場ができたということで観に行ってきましたよ!

シルクドゥソレイユ ZED
シルクドゥソレイユ ZED posted by (C)Shintaro

シルクドゥソレイユ ZED
シルクドゥソレイユ ZED posted by (C)Shintaro

外観はこんな感じ。ちなみに、シルクドゥソレイユはカナダ生まれの新しいタイプのサーカスで、ラスベガスを中心に常設劇場がいくつかあります。マカオにもできるという話でしたが、すでにヴェネツィアンにできてるみたいです。

ショーですが、とにかく最初に度肝を抜かれました。えーそうなるのって感じで、ダイナミックで素晴らしい。それ以降もドキドキの連続(ただ前半の方がよかった気がする)。結構ミスもあったのですが、それだけ難易度高いのだろうなぁとよい方に捉えることにしました(苦笑)。この辺りはまだ始まったばかりなので、今後に期待ですかね。

ネタバレになっちゃうので内容は書けませんが、恐らく常設じゃないとできないような内容が盛りだくさんで、キダムとかドラリオンとかおもしろかった方は(僕は観てないですが)ものすごく満足できるんじゃないかなと思います。

今回席が真ん中辺りの通常席の一番前という良席だったんですが、2回目観るならもっと近い席でもいいかなぁと思いました。

おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)
後藤 和智
角川グループパブリッシング
¥ 740

宮台真司と香山リカを中心に「下流社会」三浦展、「存在論的、郵便的」東浩紀、「カーニヴァル化する社会」鈴木謙介、「バカの壁」養老孟司、藤原和博など世代論で語ろうとする論者を徹底的に批判する意欲作。

最近は、宮台本なども追ってなくて、意外にも昔は若者を擁護する立場として登場した宮台氏がいつの間にか権力者として、自分たちよりも若い若者を糾弾する側に回っていたのですね。「バカの壁」「下流社会」みたいな本が売れていることには憤慨はしてたのですが。

理論的に何がダメかを指摘していて非常に爽快感があります。すべてがすべて受け入れられるわけでもないですが、誰がどういう視点でものを見ているかが分かって、新しい見方ができそうだなと思いました。

市場リスク 暴落は必然か
リチャード・ブックステーバー
日経BP社
¥ 2,520

モルガン・スタンレー、ソロモンなどでリスク・マネージャーを勤めて来た著者が市場リスクについて書いているのですが、金融業界のいろいろなタイミングでどの会社がどんな戦略を取ったのかをかなり具体的に記載してあり、外から見ているとよく分からない各金融機関がどんな特徴を持って具体的に何をしているのか、なぜあの会社は破綻したり買われたりしたのかが分かる貴重な本になっています。

リスク・マネージャーとは、その金融機関の各部署がどんなポジションを持っているかを把握し、リスク分析を行った上でトップレベルの意思決定機関(取締役会など)へ進言をすることを仕事としているため、あらゆる情報を得ることができる立場のようです。

ソロモンの債券にしても、LTCMにしても裁定余地がある間は非常に儲かりますが、徐々に競合が生まれてそのうまみは薄れていき、最後に誰も予想もつかなかった現象が起こり破綻するというパターンを繰り返して来たのが金融業界なのだということがよく分かります。まさにチキンゲーム。

本書を読んでいると、サブプライム問題なども、過去にも何度も起こって来た金融危機と呼ばれていたことと何ら変わらず、金融分野では一定の確率で起こることなんだなぁと思います。

P.S.「ダークナイト」がそろそろ上映期間が終わりそうなので再度観てきました。改めて観るとジョーカーの訳の分からなかった語りにも意味があることが分かって、正義があるから悪が存在するという矛盾の奥深さに震撼する次第です。ほんと傑作なので、ぜひご覧ください。主要人物については予習していくといいと思います。

あたし彼女

第3回日本ケータイ小説大賞受賞作品。象徴的かつ特徴的なプロローグが紹介されて、ネット上では叩かれたり、パロディができたりしていますね。個人的にはパロディだけでかなり笑わせてもらって、周りで「てか」「みたいな」が大流行中なんですが、さすがに読まないで批判もないだろうということで、読破。だいたい2時間くらいかかりました。

印象としては、まず句読点なしだったり風景描写ほぼなしの常時一人称な視点が新しいなぁと思いました。もしかしたら、ケータイ小説では普通なのかもしれませんが、普通の小説では見たことない作風。テンポよく次ページ、次ページとクリックしていると、韻を踏んだ感じの文章と相まって、ラップを聴いているような感覚に陥ります。

ケータイ小説で250万部も売れた「Deep Love」シリーズが小説の体裁を一応は保っていたのに対して、「あたし彼女」はまったくケータイに最適化されており、新しいタイプの小説であると言えます。

一方、内容については評価しづらいのですが、個人的には悪くないと思います。嫌な女の心理や恋に落ちることなどが生なましく描いてあり、個人的にはまったく感情移入できませんでしたが、描きたいことは明確に伝わっていると思います。

ケータイ小説を読んだことがない方は、今後の参考のためにも読んでみて損はないと思います。ネットビジネスをする方は必読です。

ちなみに、PCでも読めますが、ケータイで読んだ方がよいです。後、パロディ化されている冒頭部分が生理的に受け付けないという方は、作者の意図通りですから、我慢して読み進めてください。

みたいな

【2ch】日刊スレッドガイド : あたし彼女のガイドライン

著者はOutlookやInternet Exploreの開発にも関わったことがあるという実業界の人ですが、本書は非常に幅広く、遺伝子治療や能力増強剤(例えば、記憶力を大幅に向上したりする)、クローン、脳直結型インターフェイスなどについて、どのような技術がどの程度進展しているかを解説しています。

恐らくほとんどの人は、こんなことまでできてるのかという驚きとともに、本当にここまでしていいのか、という倫理的な問題に直面します。例えば、最近では体外受精はよく行われていますが、特定の病気(ダウン病など)にならないように遺伝子をチェックする(PGD)ということは行われています。しかし、それではIQが高い低いを選べるとしたら、どうか?

著者は基本的に遺伝子治療や能力増強剤も、コーヒーを飲んだりレーシック(視力回復手術)するのと変わらないといい、一つ一つ論破していきます。例えば、不妊治療については、PGDでIQが高い遺伝子を選んでも、精神的に不安定であるケースもあるだろうし、そもそも遺伝子だけではすべての性格や容姿などを決定できるわけでもないと言います。そもそもが現在でも帝王切開をするし、未熟児には薬品や保育器を使う。さらに言えば、欧米で禁止しても、アジアではOKという可能性もあるし、もしそうなれば所得格差を広げるだけになると主張します。

また、最後の方に出てくる脳にメッシュ型のインプラントを埋め込む話が圧巻です。まず血管より細い線をメッシュ状にして脳内を被う手術をするところから始まります。それから各種トレーニングを行うと、イメージを他人に送ったり送ってもらったりすることができるようになります。脳内とはいえ電気信号であるから当然こういったことが理論的には可能です。インプラントがインターネットに接続することで即座に知識を得たり、記憶力を増強したり、はては睡眠や食欲、心拍数や気分までコントロールできるようになります。これらは、非常にSF的ですが、本書で示されている基礎的な研究を基盤にしています。

著者のラディカルな思想には嫌悪感を持つ人も少なくないと思います。が、個人的にはここ数十年だけでも非常に大きな感覚の変更が行われて来ているわけですから、今後も同様なことが起こることは間違いないと思います。そう言った意味で僕は基本的なスタンスでは著者を支持したいと思います。

非常に想像力が刺激されますので、これからの新しい世界が知りたい方はぜひ一読をオススメします。

新規事業がうまくいかない理由
坂本 桂一
東洋経済新報社
¥ 1,575

ページメーカーのアルダス、ウェブマネーなど数々の創業を行った坂本氏による新作。今回は企業内新規事業の立ち上げ方について、独自の理論を展開します。個人的にはベンチャー経営という立場が違うため、前作「頭のいい人が儲からない理由」ほどのインパクトはないものの、企業内で新規事業を作ることに頭を悩ませている経営陣や新規事業担当者には非常に役に立つのではないかと思います。例えば、社内公募がうまくいかない理由や、それを克服するためにどうすればよいかなどはなるほどと思いました。
※献本していただきました、ありがとうございます!

LAW(ロウ)より証拠
平塚 俊樹
総合法令出版
¥ 1,470

著者は裁判のための証拠作りを行う唯一の証拠調査士(エビデンサー)だと言います。どうやら弁護士はそういった業務をしないので、裁判でよい証拠が提出できずうまく機能しないそうです。この本では、事例をもとにどのような活動をしたのかが書いてありますが、現在の司法の矛盾がうずまいているようで非常に興味深く読めました。弁護士に駆け込んでもうまくいかず途方に暮れている方はぜひエビデンサーを利用してもいいのではないか。いずれにしても、こういった世界があるということを知っておいて損はないと思います。

人生を決めた15分 創造の1/10000
奥山 清行
ランダムハウス講談社
¥ 2,625

フェラーリなどのカーデザイナーの奥山清行氏によるエッセー本。「フェラーリと鉄瓶」と同じく超一流のデザイナーが何を考えているのかが書いてあります。イラストが多用されていて、それをぱらぱらと観るだけでも楽しいです。

まぐれ--投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社
¥ 2,100

大学教授にしてトレーダーである著者が金融業界の中心で何が起きているかを明らかにした本。シニカルなタッチですが、生々しいストーリーがたくさん出て来て非常におもしろいです。

多くのトレーダーがなぜ吹き飛ぶのかと言えば、例えば1/2のリスクがあるにしても、3年勝ち続けるもののは4000人いれば500人もおり、現役トレーダーは生き残りでしかカウントできないから、ほとんどのトレーダーが好成績を残し高年収でこの世を謳歌している。本人は運が良くて高年収をもらっているとは露とも思っていない。しかし、x年目に運が悪ければ、吹き飛ぶという。

また、モラルハザードの問題も。例としてジョンという人物は7年間で2億5000万ドルの収益をもたらしたが、最後に働いた会社では6億ドルを吹き飛ばしたという。しかし、ジョンの手元には100万ドルが残った(元々は1600万ドルあったのだが)。トレーダーにしてみれば、めったに起こらないことのリスクをとってゲームに残れるオッズを最大化する明確な理由があるからだという。

しかし、それではなぜ金融機関はやっていけるのでしょうか。著者は、自分はオプションを買って儲けているが、なぜそれが儲かるかという原因については「トレーディングにつきまとう直感に反する部分(そして、私たちの情緒はそういう部分に適応できないこと)のおかげで、私は有利な立場に立てる」と書いています。しかし、そういった「歪み」は何はともあれ裁定されるのが金融というものではないのでしょうか。

実際のところどの金融機関が生き残るのかすら「まぐれ」でしかないのかもしれません。ソロモンやLTCM、UBS(名前は残っているが)なんかもなくなってしまし、リーマン・ブラザーズもなくなるかもしれないわけで。

ビートルズ・サウンドを創った男--耳こそはすべて
ジョージ マーティン
河出書房新社
¥ 2,940

第五のビートルズとも言われ数々のアーティストのプロデューサーを勤めたジョージ・マーティンによる半自伝。まだ音楽プロデューサーというものがない時代、ビートルズなどの商業レコード業界、映画音楽への取り組みなどが非常に克明に描かれており、非常に興味深いです。

若干冗長な感じもありますが、それもまた今後資料的な意味も含めて重要になってくることでしょう。この本が書かれたのは78年ですが、すでにデジタル音楽の可能性にも的確に言及しているのがさすがです。自身は、ポールとジョン・レノンに比べると音楽的才能はなかったと断言しますが、レコーディングへのこだわりは凄まじいものがあり、まさに現代音楽を作ってきた巨人であると思います。

個人的には、特に音楽プロデューサーというものがない時代から徐々に、音楽プロデューサー像を確立し、憧れの職業にしたのにその先見性と才能を深く感じました。これは音楽プロデューサーをミュージシャンと同等のクリエイティブな仕事だと認めらさせてきたからだと考えます。

僕はウェブサービスを作るということに関して、クリエイティブなウェブプロデューサーが絶対的に必要だと思っています(これをはてなではサービスクリエーターと呼んでいますが、ここではウェブプロデューサーで通します)。

現状はエンジニアがやってみたり、企画や営業の人がやってみたり、試行錯誤が繰り返されています。そして、ウェブプロデューサーはその仕事範囲の曖昧さからエンジニア、企画、営業から突き上げをくらう孤立した存在になっているケースが多いように思います。

使われるウェブサービスは例外なく優れたウェブプロデューサーがいます。後から「同じこと考えていた」などという人は、本当に「同じ」なのか(自分に正直になって)考えた方がよいし、Twitterやmixi、ニコニコ動画に細かいことで(遅いとか儲かる訳ないとか)文句ばかりつけられるのもその実装のエレガントさに目がいってないからだと思います。

もちろん批判は常に必要ですが、「なぜそのサービスが使われるのか」「サービスが何をもたらしているのか」を考えれば、ウェブプロデュースの才能とエンジニアリング、企画、営業、デザインなどの才能は分けられるべきと考えます。

恐らく10年後には、ウェブプロデューサーという仕事が確立していると思いますので、特に心配はしてないのですが、願わくは自分もその一人でありたいと思います。と、だいぶ本の感想から外れましたが。。

P.S.単行本は若干高いですが、文庫版もあるようです。

リクルートのHotPepper事業の立ち上げ人が書いた本。わずか4年で売上300億、利益100億を叩きだしたというお化け事業がどのように立ち上げていったかが詳しく描かれており、非常におもしろいだけでなく、勉強にもなる良書です。リクルート的な熱い感動話も盛りだくさんで、まだまだリクルートの社風は健在なんだなと思いました。

なぜか僕の周りにはリクルート出身の人たちが非常に多いのですが、聞いたところによると、平尾氏は一時期楽天オークションの立て直しもやっていたとか。楽天オークションの立ち上げは僕が初めて仕事らしい仕事をした最初のプロジェクトなので、勝手ながら親近感を覚えました。

  • 「大阪は札幌とマーケットも戦略も違うのか。わかった。じゃ、お前の大阪のマーケットの戦略を説明する前に、お前が違うと断言する札幌のマーケットと戦略を、お前が説明してくれ。そのうえで、大阪との違いについて聞こう」
  • 「剣道には、小手・面・胴の3つしかない。戦う相手が変幻自在だから、技も変幻自在なのか? そうじゃない。相手の攻撃には傾向があって、それに対応する技があるんだ。営業だって一緒だよ」
  • 「マネジメントは要望することだ。自分ができないことを要望できない。変幻自在にやれなんて要望できない。ましてや、変幻自在を教育もできない。だから、型を決めて徹底的に訓練する。剣道が毎日小手100本、面100本、胴100本稽古するように・・・」
  • 「最初は中央集権でやる。やれと言ったら絶対にやれ。でも、やれと言われているからやれと言われたとおりにやるだけのバカになるな。言っておくが、会社とはそんなバカを一生懸命量産する仕組みを考えているものだ」
  • 「なぜやれと言われるのかを考えながらやれ、やれと言われる背景にあるものは何か? を考えながらやり切れ。そうすればその構造が分かってくる。そして、やがて自分でその構造そのものを創れるようになれ」
なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想
フィル・ローゼンツワイグ
日経BP社
¥ 1,890

分かりやすいところで「エクセレント・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー」「同2」などがいかに「エセ科学」なのかを明らかにする意欲作。これらの本は、誰もが納得する「ストーリー」を提供しますが、それらは「後付け」の説明でしかなく、集められた資料はハロー効果にまみれていて、科学的根拠はまったくないと言います。実際のところこれらの本で優れていると取り上げられた企業のその後のパフォーマンスは大幅に低下し、平均すら下回っています。

ハロー効果とは、結果について情報を与えられた人に客観的に測定できないことを言い、次のようなテストが例としてあげられています。被験者をいくつかのグループに分けて、あるテストを実施する。それに対して「成績がよい」と言われたグループと「成績が悪い」と言われたグループを「ランダム」に分けると、前者グループでは自分のグループはコミュニケーション能力と柔軟性とモチベーションに優れ、結束が高かったと評価するが、後者グループではそれらの評価は低くでた。

これは確かにまったくであり、ビジネス書やビジネス雑誌では分かりやすい因果関係のある(ように見える)ストーリーでまとめてあり、読んでいて気分がよくなります。本書では「ストーリー」を否定せずストーリーはストーリーとして読むべきであると主張し、多くのビジネス書の因果関係と相関関係を取り違える手法、上記のビジネス書のような「たくさん資料を集めたのだから科学的に正しい」という論拠などを真っ向から破壊していきます。

個人的には、「エクセレント・カンパニー」「ビジョナリー・カンパニー」「同2」は以前から何かおかしいと感じていたので、非常に腑に落ちた感じがしました。これらの本を信奉している人、および、よくビジネス書を読む方には必読の本です。

一方で、経営者として、この本には非常に考えさせられる部分が多いです。例えば、結局のところリーダーシップもモチベーションの高さもビジョンの浸透度も業績にはほとんど連動しない、ことを明らかにされています。ハロー効果により統計上、成功している企業では社員のモチベーションが高く、失敗している企業ではモチベーションが低いと出て、ハロー効果を抑えた調査結果では、どうやら統計上有意な結果は4〜10%程度しかないらしい。

本書の結論的には「これさえすれば成功するというものなどない」「成功と失敗は紙一重」「ビジネスは、私たちが考える以上に、運に大きく左右される」「原因と結果の関係は明確でない」という非常に曖昧なことになっています。これは一見がっかりするおもしろくもない話なのですが、正直に言えば会社を経営していると、非常に実感として感じる部分があります。例えば、自分はあまり変わっていないのに、社内外問わず捉えられ方の変動が激しく感じますし、成功と失敗の分かれ目に対しても非常に運の要素が大きいと思います。

であれば、何を規準にしてどういう経営をしていくべきなのか? これはじっくり考えていかなければいけません。

最底辺の10億人の人々はどのような状況で、どのような罠に陥っており、それを救うにはどうしたらよいかを論じた本。具体的にどうアクションすればよいかまで指摘しています。貧困撲滅といえば、ジェフリー・サックス「貧困の終焉」がありますが、著者もその想いには同意するものの、援助を重要視しすぎており、「援助」だけではなく「軍事介入」「法と憲章」「貿易政策」の4つをバランスよく行っていく必要があると言います。

確かに前半の天然資源や紛争、ガバナンス、内陸国の現状などを読むと、援助だけでは非常に難しいのだろうと納得ができます。しかし、著者の言う国の状態にあわせて、適切なタイミングで、適切な組織(ここでは世界銀行やOECDやG8など)が、適切な手段を講じるというのは非常に難しそうだなとも思います。

個人的には、「貧困の終焉」は確かに熱くて方法論的には足りない部分もあるのかもしれませんが、世界世論を動かすには、単一のメッセージで熱く問いかけ、まず先進国民を動かすのは重要なのではないかなと思いました。それからでないと、利害対立する国やNGOの意思統一が難しいのではないでしょうか。

いずれにしても、著者自身ができる限り平易に書いたというだけあって、非常に読みやすい本なので、「貧困の終焉」と共にぜひたくさんの人に読んで欲しい良書です。

僕は哲学者の中ではニーチェが一番好きで、自分の考えにマッチしていると思っています。哲学者なんていかがわしいと思っている方にもニーチェだけは知って欲しい。19世紀の哲学が現代においてますます威力を発揮することに驚くと思います。

前置きが長くなりましたが、、本書はニーチェの「ツァラトゥストラ」を中心にした言葉を元に、著者が数ページの解説をするという体裁になっています。著者曰く「私にとってのニーチェは、体系的に研究すべき対象というわけではない。ニーチェ自身は、思想を「研究」してもらうことより、「このことばが僕の今を、明日を、明るく照らしてくれた」と思われることを喜ぶタイプである。」。

僕も大学生の時に初めてニーチェに触れたとき、まさしくその思いを抱きました。そして、本当にそれが力になったものでした。この本は入門書としては、ちょうどよいと思いますが、もう少し詳しく知りたい方には、竹田青嗣「ニーチェ入門」をオススメしたいと思います。

ニーチェ入門 (ちくま新書)
竹田 青嗣
筑摩書房
¥ 756

フリードリヒ・ニーチェ - Wikipedia

ロッキー青木氏死去というニュースを見て、アメリカにいたときもよく名前は聞くけどレストランも行ったことないし、よく知らないということで購入。しかし、なんとこれ漫画(笑)。もちろん漫画でもいいんですが、ちょっと予定外です(苦笑)。内容は、レスリング日本代表として全米訪問中にそのまま居残ったとか、刺されながらハーレムで1万ドル稼いだとか、モーターボートでヒルトン出店の話を対等じゃないと断ったとか、ほとんど伝説の連続。さらりと読めておもしろいです。もっと詳しく知りたいなと思いました。

わたし、男子校出身です。
椿姫 彩菜
ポプラ社
¥ 1,260

下に貼付けた動画を観てかなり衝撃を受けたので。性同一性障害で心は女性なのに男性扱いされて悩む姿がすごく痛々しい。いろいろな事件を経て、性転換をするシーンでは素直によかったねと思えました。実際のところ手術は本当にものすごく痛いとか、法的な戸籍を変更するための条件とか、まったく知らなかったので、性同一性障害について知ることができてよかったです。文章は明快で読みやすくて頭いいのだろうなぁと思いました。あえていえば、タイトルがイマイチかも(といって、何かよい代案があるわけではないんですが)。

作風が独特ですが、スピード感があって、暴力的なところは町田康に似ているかもしれません。カテゴリ的には、ミステリーなのですが、作りは割と緩い感じ。感情をおもむくままに発散する暴力的で天才肌の主人公を起点に、むしろ語感のよさやトリップ感を重視している感じ。若干チープなのが気になりますが、それもまた計算づく? もう少し読んでみないと分かりません。

P.S.先日のアップグレードでRSSがうまく更新されていなかったっぽいです。すいませんでした。これでうまくいくのではないかと。

50〜60年代にソ連のポリショイ・バレエ、レニングラード交響楽団、ボリショイ・サーカスなどの公演を開催し、元祖「呼び屋」と言われた神彰(じん・あきら)の一生を追ったノンフィクション作品。その後、2度も破産しながら、「北の家族」を創業して奇跡の復活、そして上場。数々の盟友との出会いと別れ、人気作家有吉佐和子との結婚と別れ。激動すぎる。。スケール大きくやりたいなと思える作品でした。若干値段は高いですが、非常におもしろくオススメです。

神彰 - Wikipedia

宇宙に隣人はいるのか
ポール デイヴィス
草思社
¥ 1,890

最近読んだ宇宙論本たちに比べると、科学的には平易なのですが、哲学的な論点中心で、その辺りは難解です。宇宙論を掘って行くとどうしても誰が宇宙を作ったのか、なぜ宇宙はこんなにも奇跡的に生物が生きやすい環境になっているのか、などという哲学的な問いが出て来てしまい、一神教であるキリスト教は悩み、そうでない人もあまりの奇跡的な状況に「何か」を感じざるを得なくなるようです。最先端の科学が哲学的にならざるを得ないのは非常におもしろいなと思います。

幸運な宇宙: suadd blog
パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ: suadd blog
エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する: suadd blog
そして世界に不確定性がもたらされた: suadd blog

人間臨終図巻〈1〉 (徳間文庫)
山田 風太郎
徳間書店
¥ 760

その名の通り世界中の様々な著名人の臨終の様を描いたドキュメンタリー。一人一人は長くても数ページになっていて、10代から若い順に掲載してあります。いろいろな生き様と死に様があるのだなぁと思い、いったい自分は何をなしてどのように死んで行くのがいいのかと考えてしまいます。しかし、死に際に幸せの絶頂を持ってくるのは難しく、生きている間の充実感の方が重要なのかなと思ったりしました。それにしても昔の人は肺炎と梅毒で死ぬ人が多いですね。後は日本だと自決、海外だと死刑が目立ちます。

幸運な宇宙
ポール・デイヴィス
日経BP社
¥ 2,520

そして世界に不確定性がもたらされた」「エレガントな宇宙」「パラレルワールド」に続いての宇宙論を知るために読んだ本。本書でもまたもや斬新な考え方がいくつも提示されています。例えば、多宇宙(マルチバース)を認めてしまうと現宇宙がどこかの宇宙でシミュレートされた偽宇宙である可能性が捨てきれなくなってしまうこと、宇宙がほとんどイカサマのように生物にとって快適な状態になっている謎について、それに伴い神学者たちが(ダーウィンを渋々認めた後)持ち出して来た「インテリジェント・デザイン」という概念など。かなり哲学的な問いの連続で難易度は高いですが、宇宙論の最先端まで行くと非常に哲学と似通ってしまうというのが非常に刺激的でおもしろいです。

戦前に一時は三井物産の売上をも凌駕したという総合商社鈴木商店を、なぜ米騒動で焼打ちにあったのかを中心に、鈴木商店の内情を追って行くドキュメンタリー。失礼ながら先日、鈴木商店を知って、もっと知りたくなったので購入。内容は多少冗長ですが、個性的なキャラクターたちが活躍する様を読んで、商社ってこういうところから発展してきたのかあと思いました。鈴木商店から派生した企業としては、神戸製鋼、帝人、サッポロビール、太平洋セメント、IHI、昭和シェル石油、双日(日商岩井)、日本製粉、三井住友海上火災保険など。すごい会社だったんですねぇ。

鈴木商店 - Wikipedia

告白
町田 康
中央公論新社
¥ 1,995

明治に河内で起こった惨劇を元に再構成した小説。独特の文体で主人公が何をやってもうまく行かず、破滅に向かっていく様子を描いています。文章がリズムよくうねりながら展開されていくのが非常に新鮮。いままでにない感覚を覚えました。

ただストーリーは客観的に見ると、主人公の状況は客観的に見るとそんなに悪くもない(舎弟とか嫁さんとか実家とか)わけで、なんというか読んでてもどかしい思いがいっぱいになります。まぁそれが狙いなので、ものすごいうまく乗せられているということになるわけですが。。

アメリカで貧困層がどのように広がっているかをルポ形式で紹介している本。ちょっとした災害や怪我、無知などで最貧層へ転落して行く様が描かれていて、ものすごく恐ろしいです。

例えば、アメリカでは医療制度が完全に崩壊しており、会社で医療保険をカバーしてもらっているとしても、一度怪我して会社を追い出されると、高額な自己加入保険に入るか無保険になる他ないため無保険者が4700万人にも膨れ上がっています。一方で、医者も保険会社からの指定を外されないように保険会社の顔色をうかがい、保険会社は難癖をつけて医療費の支払いを拒むというどうしようもない構図になっています。

その他にも、軍のリクルーターが高額な教育費に苦しむ学生をうまくだまして予備兵にさせておいて、実際はほとんどがイラクに送り込まれている話とか、軍のコストカットのためハリバートン社などの子会社の戦争請負会社が輸送などを請け負い、世界中から労働者を集めて劣悪な環境で働かせている一方で、それらの人々が殺されても「自己責任」とされてしまう話とか、目も当てられない話が満載。ちなみに、ハリバートン社のイラク関連事業の売上げは8500億円を超えたそうです。

日本でもワーキングプアとかネットカフェ難民が話題になっていますが、それを遥かにしのぐひどい話が満載です。こういう国にならないようにして欲しい、していきたいと強く思いました。

P.S.一方で、この内容を鵜呑みにしてしまうのもどうかと思うので、決めつけず情報収集していきたいなと思いました。

臆病者のための株入門 (文春新書)