先日、立教大学MBA主催のパネルディスカッションに呼んでいただいたのですが、そこで、なかなか起業家が生まれない日本の現状についての問いがあり、他のパネラーと僕が教育が変わらないといけない、という話をしたところ、リナックスカフェの平川さんが「起業家はアノマリー(突然変異)なのであって出現する確率は変わらない、起業家はよく教育に関わりたがるが、それは思い上がりである」という主張をされていました。僕はそれを聞いて少し考え込んでしまいました。
今まで疑うことなく、教育はもっとも重要であり、日本の教育は変わるべきだ、と思ってきたのですが、確かによくよく考えてみると、起業家というのは教育がどんな状況であっても一定数生まれてきていたし、僕自身教育がよくても悪くても起業にいたったような気がします。
起業というのは、もっと強い衝動に突き動かされて行われることであって、全員に起業するための教育を施さなくても、学びたい人は学んでするだろうし、もし学びたいと思った時の環境的容易さは年々増しています。
また、シリコンバレーでの起業の多さについて僕が質問したところ、平川さんは、シリコンバレーは世界中からスターの集まるメジャーリーグであって、確率が高いのではなく量が多い、したがって日本のような単一国家とは比べられないと答えられました。
これもまさしくその通りであって、日本が移民を世界中から受け入れられるかというと現実的には相当な困難を伴うだろうし、そうなるとも思えません。つまり、日本は量的拡大が見込めない以上、確率をあげていくしかないわけです。
それでは、教育によって確率があがるかを考えると、起業=衝動という原則を考えると、まったく変わらないのかもしれません。
知識社会への移行、新興市場の創立、成功者のエンジェル化などによって、衝動のある人にとっては、環境はよくなっていて、自然に確率が上がっているのは間違いないと思います。
もしかしたら教育に関してはもっとリベラル・アーツを充実させることの方が重要なのかもしれません。
いずれにしても、僕自身は今そこに関して明確な回答が出ません。もっと今自分がやるべきことをやりながら考えていきたいと思います。
※もう一つの問い
起業を増やすことがよいことなのか? ということに関しては、僕はポジティブです。なぜなら、みんながもっと世の中はこうあるべきだと思って行動を起こすこと。その繰り返しによって人類はたくさんの失敗をしながらもそれ以上の成功をしてきたし、進化してきたと思うからです。