天才! 成功する人々の法則

天才!  成功する人々の法則
マルコム・グラッドウェル
講談社
¥ 1,785


ティッピング・ポイント(原題)」のマルコム・ブラッドウェルの最新作。勝間和代氏が訳しているということで、ノウハウ本かと思ってしまいますが、かなり深い本ですので、食わず嫌いしている方はぜひ読んで見てください。

内容は「成功する」ことに焦点を当てて、いくつかの条件について、豊富な事例を元に書かれています。ただ、統計的な情報は少ないというか、その条件が本当に重要なのか、については多少の疑問が出てきてしまいます。そうでない可能性も否定できない、というところでしょうか。とはいえ、感覚値にはかなり近いものがありますので、この後で本書の主張とそれに対して考えてみたいと思います。

<要約と考察>


  • カナダのアイスホッケー選手は1月〜3月に生まれた選手が多い。これは選抜が1月を区切りとして行なわれるためで、早く生まれたものが有利だからだ。
    これは統計的に明らかで、疑いの要素はありません。スポーツだけでなく勉学などにおいても、幼少であればあるほど1年の差は大きいということを示しています。であれば、日本においては子育てにおいて次の2通りを考えた方がよさそうです。1.子供はできる限り4〜6月に生まれるようにする。2.日本の教育制度を変える。まぁ海外に行くという手もありますが。

  • ベルリン音楽アカデミーでの調査では、優秀な学生はそれまでの累計の練習時間が例外なく長い。短いのに優秀なものは「いなかった」。これはスポーツでも同様であり、選抜に選ばれることで練習時間が増加する。マジックナンバーは1万時間である。これはビジネスでも同様で、ビル・ゲイツはPCが登場したときにコンピューターに1万時間触っていた。
    何かをなすにはそれだけの経験が必要という主張ですが、音楽やスポーツ、学術では明らかに相関関係が見られるのはよく分かるのですが、ビジネスの世界ではぽっと出でも成功する人は結構いるように思います。恐らくビジネスでは自らの実力よりもタイミングなどの運の要素もかなり大きいからでしょう。しかし、それは悲観すべきことではなくて、きちんと努力をしていれば報われる可能性は高くなるのではないかと思っています。そうして成功した時の方が自らに自信も持てるし、満足度も高いのではないでしょうか。

  • IQの高さは社会的な成功と比例していない。大学の授業についていくにはIQ115程度が必要ではあるが、それから先、IQ130の科学者とIQ180の科学者のノーベル賞を受賞する可能性は同じくらいである。
    何事も多ければよいというわけではないらしいのですが、それでは何が影響するのかというのが次の項目です。

  • (以下は抜粋)「中産階級の子どもは、まだ小学四年生のときから、自分自身の利益のために振る舞っているように見える。教師や医師に特別な要求を出し、うまく調整して、自分の欲求を受け入れさせる」 反対に、労働階級や貧しい家庭の子どもからは、「よそよそしさ、不信、遠慮が浮かび上がる」。裕福な家庭の子どものように、自分の最大の目的のために周囲の状況を自分の要求に応じて変えていく(中略)"カスタマイズ"する方法が分からない。
    本書ではIQ190だがみじめな生活を送っている天才が誰からも認められていない事例も紹介されています。確かに、IQのような才能よりも、むしろこういった文化的な優位性が影響するというのは非常に納得感があります。

  • 歴史上の富豪(クレオパトラまで含む)の75位までのうち20%が1831年〜1840年に生まれたアメリカ人である。これは1860年代〜70年代にアメリカの産業が大幅な転換期であったことに由来する。またビルゲイツは1975年のパソコン時代の到来を21歳という絶妙のタイミングで迎えたし、フロムという弁護士は敵対的買収や訴訟が重要となった1970年代にまさにその仕事を専門としていた。
    自らの仕事が好機であることが重要というお話。本書の言葉を借りれば「長年、技能に磨きをかけてきたところ、それが、とつぜんとてつもなく重要になったというわけだ」。これは本当に重要な要素であることは理解できるのですが、実際のところそれを予測するのが極めて難しいという難点があります。とはいえ、常にアンテナを張り巡らせて、しかるべき時にしかるべき場所にいる「努力をする」ことは重要なのではないでしょうか。

  • アメリカ南部の人間は北部の人間に比べて喧嘩をふっかけやすい傾向が「統計的に」ある。中国人はアメリカ人に比べて数字ルールが簡単がゆえに数字に強い。貧困な家庭では夏休み中の読む力が低下する。など「文化」が個々人に強い影響を及ぼしている。これらは「その文化」からいったん切り離すことで、解消は可能だ。
    もちろん貧困な家庭の問題などは解消されるべきですが、それ以外の文化についてはむしろ生かしていくべきなのではないかと思いました。例えば、日本人の子どもは難しいパズルを諦める時間がアメリカ人よりも40%も長いそうです。であれば、日本人はそれが生かせる仕事を選ぶ方がよいのではないか。

特に最後のポイントについては非常に重要だと思っていて、最近考えているのは、例えばマイクロソフトやヤフー、Googleのようにビジネスのルールを作るビジネスはアメリカはすごく得意だと感じます。一方で、日本人が得意な例というと電化製品、車、アニメなどクオリティ重視のものが多い。だから、日本人が世界でやっていくためには、クオリティで勝負した方がよいのではないか、と思っています。

P.S.北京から帰国しましたー

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