沈まぬ太陽


JALの内情をモデルにしたドキュメンタリータッチの小説。組合で首相フライトのストップも辞さぬ形で交渉した元委員長恩地を主人公に、その後、中東やアフリカをたらい回しにされるアフリカ編、御巣鷹山へのジャンボジェット墜落事件を中心とした御巣鷹山編、その事件により国から会長が送り込まれ恩地も会長室付け部長となる会長室編で構成されている。

組合員差別、キックバックなどによる汚職、豪遊、愛人などなどの腐敗っぷりがすごくて、目も当てられない感じ。これが事実なら本当に酷い。しかし、いろいろと異論反論もあるようなので鵜呑みにはしない方がいいかもしれません。それぞれのモデルについては、Wikipediaに詳しく書いてありますが、中曽根、金丸など大物政治家も出てきます。

小説としては、非常におもしろくて、一気に読んでしまいました。が、作者も言うように事実と創作を織り交ぜる「小説的技法」については、疑問はかなりあります。ほとんどの人物にモデルがいるようで、極悪人のように書かれてしまっている人物についてはかわいそうだなと思います。一方で、主人公たちは清貧な善人として描かれていますが、例えば、組合交渉でごり押しを繰り返すシーンなどは個人的には本当に正しいのだろうかとも思いました。

基本的に山崎豊子作品は、善悪がかなりはっきりしており、善人はすべて善人、悪人はとことん極悪人というように描かれています。これがすべて創作ならば構わないとも思いますが、個人的には、人は清濁併せ持っていると思っているので、実在の人物を極悪人に仕立てられているのを見るとかわいそうだなと思ってしまいます。

とはいえ、航空業界って(誇張があるにせよ)こういうところだったんだなというのも分かり、目から鱗な感じでした。また高度成長期の大企業の内幕という意味では、読売新聞の正力氏を描いた「巨怪伝 正力松太郎と影武者たちの一世紀」、その後の渡辺氏を描いた「渡邊恒雄 メディアと権力」なども合わせると、どの会社でも権力闘争に明け暮れている人々がいるのだなと思い、大企業って怖いなと思いました。合わせて読むとおもしろいかもしれません。




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