超・格差社会アメリカの真実

現在のアメリカは超・格差社会ぶりを、統計結果やモデルケースを使いながら分かりやすく解説するとともに、なぜそのようになったのかをアメリカの建国以前までさかのぼって明らかにした本。

僕もそんなに詳しくないですが、個人的に専門書などを読んで知っているかなり仔細な出来事まで、的確にさらりと触れられていたりして、著者がかなり広範囲の知識を備えていることが分かります。

よく知らなかったアメリカの成り立ちを独立戦争から現在まで各時代ごとに知ることができて、非常に興味深かったです。また、アメリカの問題点を前提とした上で日本はどうすべきかにまで切り込んでいますが、これがまた非常に示唆に富んでいます。

というわけで、アメリカを知りたい方には非常におすすめです。

<抜粋>
・独立戦争の最大の勝者は誰か。それは、イギリスの商船を略奪する免許を得、7年間に渡って3000隻以上、当時の価格で1800万ドル相当という膨大な商船と積荷を略奪した船主たちだった。因みに当時のアメリカのGDPは2億5000万ドル前後と推計されているから、略奪額はGDPの7%に相当する。
・イギリスが1838年にカリブ海諸島で奴隷制度を廃止した時には、イギリスは所有者に2000万ポンドの損害補償金を支払った。しかし当時のアメリカ北部は、400万人の奴隷財産を放棄させるにあたって補償金を支払う気はなく、結局戦争という強硬手段で廃止するに至った。そして戦争に勝ったことで、北部は補償金を支払わずに済んだばかりか、農業地帯からさらに資金を吸い上げ、工業品の輸入には関税をかけて、工業化に邁進することになる。
・生き残った原住民は、ヨーロッパの進んだ軍事力で絶滅に近い水準にまで滅ぼされるか不毛地帯に追い込まれたため、アメリカへの移住農民は土地を無償で手に入れて、地主となって開墾することができた(リンカーン時代以降は、開拓農民は連邦政府の土地を、一世帯0.65平方キロから2.6平方キロの単位で、無償で賦与された。ただしこれによって賦与された土地の総面積は8000万エーカー強で、鉄道に賦与された2億エーカーの半分以下だった)。だから分け与える土地(資産)があった間は、税による所得の再配分をしなくても配分する原資があったわけで、そのため労働争議は起きず、エリート層の資本蓄積も早かった。
・アメリカ人は(中略)よほど親しい人に対してでない限り、問題を抱えていたり、心配したり悩んでいたりすることや、愚痴は口にしない。それを口にするのは、自分の弱さや無能さを認めるに過ぎないからである。(中略)だから、お互いに率直で親身な話し合いにはなりにくい。お互いにうまくいっていることだけを楽しそうに話し続けるのだから、逆にそこから生じるストレスの強さは、想像に難くない。
・アメリカ国内では貧富の差が拡大しても、特権層は物理的に隔離された世界に暮らしているから、貧困層の問題は身に迫る深刻な問題とは感じない。貧富の格差が拡大すれば、どこの国でも同じような隔離現象が次の解決策になるだろう。
・日本で生じている労働報酬の格差問題は、その大きな枠組みの中で生じている現象だから、給与格差の問題を扱うには、資本分布の問題と労働スキルの問題を、別個にかつ両方とも考える必要がある。日本における労働報酬の格差問題は、アメリカにおける資本分布の格差問題に比べたら、まだ対策を立てやすいように思える。
・(※日本の)ニートやフリーターの問題は、経験を積むにしたがって報酬が増える見込みがない、つまりキャリア・パスが見えないことが問題視されている。しかし学校を卒業した人全員が、自動的にキャリア・パスを保証される(べき)という前提は、非現実的と言わざるを得ない。

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